2018/05/11 のログ
ご案内:「ミレーの隠れ里」にレイカさんが現れました。
レイカ > ――――――里の会議室。

会議室というよりも、食堂に男衆が集まっている状態だ。
私はその奥、皆を見渡せるところに座らされていた。

上座、というらしいけれども私はそこまで偉いわけじゃない。
それを何度も説明しても、ここの里の長は自分だとみんなが言い張るから。
だから、私はここのみんなをまとめ上げていた。

そのみんなが、今日はずいぶんと殺気立っている。

『今こそ王都の腐り切った者どもに制裁を加えるべきだ!』
『星の聖猫派の者たちと一緒に、王都に血の制裁を!』

それが、皆がこわ高々に叫んでいる内容だった。
ここ最近、王都でテロ活動を行っているミレー族の一派。
それに参加し、自分たちを苦しめた王都の人間たちに復讐しようといっている。

私は、奥で腕を組みながらうつむいていた。
みんなの気持ちはよくわかる、わかるけれども……。

ご案内:「ミレーの隠れ里」にワルセイ・イダーヤさんが現れました。
レイカ > 『レイカ様、我々も王都に乗り込み星の聖猫派に加入して……』

「いけません…。」

皆の気持ちはよくわかる、今まで虐げられてきたのだから復讐したい気持ちは、本当によくわかる。
だが、だからといって「よしじゃあいこう」とは、絶対に言えなかった。
王都で、誰も知らなさそうな名前を叫びながら破壊行動を行っているテロ集団。
同じミレー族としてではなく、王都にて虐げられ続けた皆は復讐したい、その一途にとらわれている。
だからこそ、私は絶対に彼らを止めなければならない。
そう感じていた。

「王都に攻め入るのは、絶対に認められません。
皆さんの気持ちはよくわかります、しかしどうかこらえてください。
皆さんの安全だけではありません、この里の存在のこともあります。
王都でテロ活動をして、皆さんがとらえられても助けられる保証もないんです。
…私は、皆さんに復讐の機会を与えるために、この里を作ったわけではありません。」

どうかお願いします…。
私は頭を下げ、皆にそう訴えかけた。

ワルセイ・イダーヤ > 聖樹の守護するとあるミレーの里。そこに、一人の青年貴族……のような見た目の老貴族と、その娘、アルシャが遊びに来ていた。数か月前に一度訪れてから、ちょくちょく遊びに来ていて……

「アルシャよ、はしゃぎ過ぎるなよ?」
『はい!今日は私が焼いたパンをみんなに食べてもらうんです!』

そう言って、子供ミレーたちの中に入っていくアルシャ。そして、ワルセイはふぅと息を吐き……

「さて、どうも最近、俺を見る男衆の視線がきついな……」

アルシャはともかく、自分が歓迎などされていないことは分かっているが、それでも、最近睨むような視線を感じる。自分にのみ向いていれば良いのだが……アルシャの事が心配で……

「……ん?」

そして、里の守護者、レイカと男衆が食堂に集まっているのを見れば……少し、配下の蛇を使い聞き耳を立てて……どうやら、かなり穏やかではない話題の様だ。

「…………」

そして、アルシャ達、遊ぶ子供たちを見やって……そして、意を決し、食堂へ……

「やれやれ、何とも物騒な話をしているな」

そう言いながら食堂に入って……男ミレーたちの視線が突き刺さるだろうか…だが、ひるまず。

「レイカ殿が困っているではないか……少し、俺も混ぜてもらおうか」

そう言って、レイカとミレーたちを見つめて……

レイカ > 『しかしレイカ様!こんな機会はそうめったに訪れるものじゃありません!
第一、レイカ様だって以前……。』
「それでもです、皆さんを危険に晒すわけにはいかないんです。
確かに私も、王都に対しては非常に強い恨みを持っています、私一人だけならば、喜んで参加したでしょう。
しかし、今はそういう立場ではないんです。」

そう、私はここの里のみんなの命を背負っている。
そのみんなが危険を冒し、王都に攻め入ろうとしているならばそれを止めなければならない。
そっと私はテーブルに手を置き、それを訴えた。

そのタイミングと、ちょうどあったのだろう。
食堂の扉が開き、外の空気が流れ込んでくる。
今、この里の空気は非常に重たいが、子供達には関係ない。
この里の隅で子供たちが遊ぶことに関しては、大人たちはむしろ好都合だと。
その人物が入ってきたときに、一気に空気が張り詰めた。

「………ワルセイさん…いらしてたんですね。」

どうしても、この人物に対してはみんなの視線はきつくなる。
仕方がない、王都に住んでいるのだからどうしてもみんなの印象は悪くなる。
だけど、私の印象はそこまで悪くはなかった。
その事実が、何とか皆を押しとどめているのだろう。

ワルセイ・イダーヤ > 「ああ、すまないな、レイカ殿、挨拶が遅れた……」

そう言って、軽く頭を下げ、挨拶の遅れた非礼を詫びようか。

「さて、最初に断っておくが、俺はそなた達が味わった痛みも、屈辱も知らぬ人間だ。その人間が何を言うのかと思うかと思うが……」

そう前置きを言っておいて、真剣なまなざしで、男衆を睨まない程度に見よう。

「そなたたちがやろうとしている、力による復讐……その果てに、何があるのだ?」

そう、問いかけようか……

「そなたたちが今、王都で活動をしている過激派どもに参加したとしよう……王族や貴族は、そなたたちに慈悲などかけず、拷問の末殺すだろうな……関係ない、子供達も」

そう言うワルセイの目は、じっと、一人一人の目を見て……

「そして、仮に過激派どもの革命が成功したとしよう……その次には、何をするのかね?王都の人間を皆殺しにするのか?老若男女、それこそ、赤子にいたるまで……そんなことが、そなたたちにできるのか?」

そう語りかけながら……しっかりと響く声で。

「そなたたちは、そんな血で濡れた道を、子供たちに胸を張って歩かせられるのか?」

そう、二つ目の問いをかけよう……

レイカ > 挨拶が遅れたのは仕方がない。
食堂にこもっていたし、何よりドリアードたちが声をかけてこなかった。
おそらく重い話をしているのを、彼女らも聞いていたのだろう。
あえて声をかけなかった、とドリアードたちの声が聞こえてくる。

力による復讐の果て、私はそれを考えていた。
そう、仮に成功しても失敗しても、あとに残るのは虚しさだけ。
血塗れの平和か、それとも屈辱による死か。
私も彼らに、そんなものを歩んでほしくはなかった。
狭い里だけれども、この場所だけでいい。みんなが穏やかに過ごせるならば。

しかし……。

『うるさい、貴様に何がわかる!!俺は、俺は妻も子供も、犯され殺された!
それを嘲笑った貴族に、血の制裁を与えようとして何が悪い!』
『そうだ、俺の子供も貴族の慰み者にされ、精神崩壊を起こし自殺した!
王都の人間など、それこそ女子供まで俺たちの苦しみをわからせてやるんだ!』

「………。」

皆、それぞれが人間に恨みを抱えている。それも相当大きな恨みを。
わかっているからこそ、私は強く出れなかった。
だけど、やはりここでみんなを止めないと、大変なことになってしまう。


「………認められません。絶対に…!
皆さん、絶対に王都に行くことはしてはなりません、これは長としての勅命です!
ワルセイさんの言う通り、王都の貴族は必ず皆さんを捉え、そして最後にはギロチンにかけるでしょう。
みすみす殺されに行くというならば、この里を捨てる覚悟を持ちなさい!」

それに、王都には騎士団がある。
戦いになれている彼らとこの里のみんな、戦力差ははっきりとしている。

ワルセイ・イダーヤ > 「ああ、そうだな……」

妻を、子を失った男達の慟哭。それは子を持つ自分にも、痛いほどわかる。
だが、だからこそ、彼らを止めないといけないのだ。子を持つ、親として……

「復讐の恐ろしいところは、そこだよ。例えば、誰かがアルシャを犯し、殺したとしよう…俺は、その誰かを殺す。そして……その誰かの血縁者に、殺されるだろうな」

そう、悲しい目で話そう…

「復讐は、止まらない。復讐するのなら、血縁者も友もみな殺さねば……次に殺されるのは、復讐されるのは自分だ。そして、そしてが続く……それを、止めるにはどうすればいいか…80年生きたが、答えは分からん。だが……」

そして、真剣な声で。

「重要なのは、力による復讐ではなく、泣き寝入りでもなく……次の世代。子供たちにどう、その復讐の連鎖を残さないか…それを考えることではないか?」

そう、語りかけよう。

「俺は、そなたたちに、聖人になれとは言わんが……そなたたちになら、人間にはできない、人間には考えられない決断ができる……そう、期待している」

そう言いながら、レイカの言葉を聞き……

「……レイカ殿の言葉を聞くか、無視するか……きっと、正しい判断ができる。そう思っている」

そう言って……

レイカ > ワルセイさんと、私の言葉に皆は押し黙った。
この里はみんなで作り上げたもの、ようやく手に入れた平穏な場所。
精神論ではない、帰る場所を捨てる覚悟。
それがあるならば、もう私には止めることはできないだろう。

だけど、皆は味わってきた。
地獄のような、廃墟地区での生活を。

「……皆さんお気持ちを、私はよく、よくわかります。
ミレーを守れず、あまつさえ自分を育ててくれたミレー族の里を売ったような女です。
だからこそ、私はもうそんな思いもしたくない…だから。」

どうか、思いとどまってほしい。
テロリストに加担するのではなく、この里の平和を守る方法を。
子供たちに、自分たちはこんなに平和な場所で楽しく暮らしているんだと思わせたい。
父親も母親もいる、この里で……。

「……今日はここで解散しましょう。
ワルセイさんは残ってください、少しだけお話が…。」

ワルセイ・イダーヤ > 自分の言葉と、レイカの言葉で、黙った男たち。
ワルセイは、彼らに、もう自分が掛けられる言葉はないと思って。
レイカの、願い。その言葉を聞いた彼らが、きっと……きっと、
未来へと復讐を残さないよう……そう、願うだけだった。

そして、一人、一人とミレーたちは姿を消す。ワルセイを睨む者もいたが……恐らく、アルシャにまでは危害はないだろう。
そして、残ってくれと言う言葉には……

「ああ、分かった」

そう頷いて。そして、最後のミレーが去った後……

「さて、レイカ殿……すまなかったな。恐らく、俺が来ずとも彼らはそなたの言葉に従っただろうが……老人として、未来ある若者たちが復讐とテロに走るのが悲しかったのでな……つい、口を挟んでしまった」

そう謝罪の言葉の後、思い出したように……

「そうだ、アルシャが、レイカお姉さまに、パンをと言っていた。」

そう言って。レイカにパンを差し出そう……そのパンは、レイカの顔をかたどっていて……

「頑張って作っていたぞ。「いつも頑張ってるレイカお姉さまのために!」とな。
……さて、話とは……?」

そう、聞いてみようか……

レイカ > まだ、ワルセイさんが受け入れられるには難しいのだろう。
私が大丈夫だからといって、受け入れているだけに過ぎない。
ここで受け入れられる人間は、本当に鵜数少ないのだ。

「いえ……おかげで助かりました。
私一人では、果たしてみんなを止められたかどうか…。
気持ちがわかるだけに、止めきれないのも事実なんです…。」

私は、食堂の奥へと向かった。
そこには、火を通したり煮込んだりできる設備が、簡素的なものとはいえこさえられている。
買い出しをしてくれている人が、この里の工芸品を売り、そのお金で調味料なんかをそろえてくれている。
狩りをして、いささかではあるが食料もあるし、少しだけお礼をしようと思う。

「アルシャさんが……?」

受け取ったそれは、少しだけ笑っている私の顔のパンだった。
なんだか食べるのがもったいなくて、つい笑みをこぼしてしまう。

「…お礼ですよ、お酒は飲まれますか?」

私は、彼にお礼として食事をふるまうつもりだ。
皆を止めてくれたお礼として…。そして、もう一つ。
ここのところ、王都で暗躍しているというテロ集団のことを聞きたくて。

ワルセイ・イダーヤ > 恐らく、彼らが自分を受け入れるのは難しいだろう……
それほど、彼らの受けた迫害は酷かったであろうことは、想像できる。
だが、自分にとっての宝の一つであるアルシャ。そして……
彼女の友人たちが、過去の復讐に巻き込まれるのは、あまりにも……悲しい。だから、口出しをしただけなのだ、

「いや、俺も……彼らの心の傷を癒す方法を知らぬ。年ばかり取った老人だ。
彼らにとっての救いが……皆にとって、良い形で訪れることを願っているよ」

そう、レイカの言葉に返し……そして、お礼との言葉。

「ふむ…頂こうか」

礼を言われることなどできなかったが、断るのも失礼だし、頂こうと言って、手近な椅子に腰を掛けよう。

「しかし……近頃は、王都ではミレーに対する迫害が強くなっている。
「星の聖猫派」……彼らの神が、望んでいるにしろ、望まぬにしろ……神の意志関係なく、
その神を信奉する者達の、復讐のために……な」

そう、愁いを帯びた表情で……

レイカ > 切り分けておいたイノシシの肉、それをさらに小さく切り分ける。
精霊の力とは便利なもので、水の精霊を少し応用すれば天然の冷凍庫を作ることもできる。
勿論私の魔力にも限界はあるので、節約しながらにはなるのだが。

パンは、本当に食べるのがもったいない。
いや、それよりも自分の顔を自分で食べるというのも、なんだか複雑な心境だった。
いつも使っている棚の上に、そっと飾っておこう。
小麦粉を付け、熱した油の中に投入していく。
町で買ってきてもらった、お酒も準備して。

「…名前も知らない、神を崇めるミレー族の一派ですね。
こっちにまで、噂程度は流れてきています。」

だからこそ、皆が過敏に反応してしまった。
復讐を、血の断罪を、同じ目に合わせてやろう。
言い方を変えるのは簡単だが、結局は彼らの手が血で汚れることになる。
せっかく手に入れた平穏を、そんな物で穢されたくはない。

人間の、私の敵の血で汚れた平和は、私もいらない…。

「……でも、私も人間は憎い…。
もし、この里がなければ…私はその、神を信仰する一派に喜んで参加していたでしょうね。」

ワルセイ・イダーヤ > 「うむ。彼らの行動は……ミレーの立場を悪くしている。神の名のもとに、復讐を行う……
気持ちは、理解できる。が、彼らと同じ立場ではない俺では、理解しきれぬところもあるのだ……
これは一例だが…とある貴族の子供が、星の聖猫派の手にかかった。
その貴族は、まだミレーに理解があったにもかかわらず……だ。
そしてその貴族は、関係のないミレー奴隷に復讐し、その子供たちは逃げて星の聖猫派に参加し……
復讐し、復讐され……それに巻き込まれたミレーたちも、子供もたまった物ではないよ」

そう悲しそうな表情で……
そして、鼻腔をくすぐる香ばしい香り。イノシシか。

「……人間を恨むのはいい。復讐も…悲しいが、否定はできない。だが……」

レイカの、人間が憎いという言葉には……

「復讐の先にあるのは、自分たちへの復讐。
復讐の血で濡れた道を歩くのは……その、子供達。
過去の復讐の炎に身を焦がすか、未来を生きる子供たちの道を作るために生きるか。
……それは、その個人個人にしか決められん。
Ifの話をしても仕方がない……そなたは、その道を選ばなかった。この里がそうさせてくれた……その事実に感謝しよう」

そう言って……

レイカ > 子供たちが巻き込まれていく、それはとても由々しきことだ。
だが、この憎しみの連鎖をどこかで止めないと、もっと多くの子供たちや、関係のない人まで巻き込まれてしまう。
正直、人間がどうなろうと知ったことではないし、この里に危害を加えるもの。
すなわち、私の敵ではないならば私が何か行動を起こすつもりはない。

だけど、私だって馬鹿じゃない。
いくら力があるといっても、私一人でみんなの復讐ができるわけじゃない。
それに、もしもこの里の誰かが参加したとして…私はそれを助けられない。
皆がせっかく手に入れた平穏を、自ら手放しそうになっていた。
だから…止めたかった。

「………選ばなかったのではなく、選べなかったんですよ。
私は自分の保身のために、数多くのミレー族を見殺しにしてきましたから。」

そんな私が、今更ミレー族の復讐など言えたものじゃない。
結局は私は、今も昔も偽善者でしかないのかもしれなかった。

イノシシ肉の唐揚げと、王都でよく出されているお酒。
その二つをワルセイさんの前に出し、向かい合うように私は座った。

ワルセイ・イダーヤ > 「ふむ………そのことは、深くは掘り下げないでおこう。せっかくのから揚げと酒だ」

レイカの過去は、正直想像できなかった。
彼女がここに至るまでに、どのようなことがあったか……それをつついて、ケガをするのも、させるのも悲しい。
いま重要なのは…レイカの過去ではなく、この里の、未来なのだ。

「……過去にくいがあるなら、未来を作るのだよ。
未来は、知らぬうちに来るものではない……作ってこそ、迎えられえるのだ。
彼らこの里のミレーの未来を作るのは……とても大変だろうがな。
……俺も、協力する。娘の、友の未来を作るためならな」

そう言って、ふっと笑おう。まあ、人間の協力など不要だろうが……
協力したい。そう思って。

「では、乾杯でもしようか」

そう言って、軽くコップを前に出し……

「アルシャと、その友の未来が、より良くなるように……」

そう言って、コツン、と軽くコップ同士を鳴らして…酒で、のどを潤そうか……

レイカ > 掘り下げないという言葉は、私としても助かった。
あの過去は、この里のみんなが知らないこと、誰にも話していない。
私は過去に捕らわれるわけにはいかない、この里を導いていかなくてはならない。
たくさんの協力してくれる人たちがいるからこそ、私はできる気がした。

「…ええ、その通りです。
私はこの里を守っていかなければならない、皆の未来がありますから。」

私の未来など、どうでもいい。
すでに捨ててしまった未来など、私にとっては何の意味もないもの。
それよりも、私が生きているうちは絶対に、この里を守り抜いていかなければならない。
彼らが安心して暮らせるこの場所を、絶対に侵させたりはしない。

だが、彼にも一つだけ忠告しておこう…。

「…ええ、この先の未来に。
あと、アルシャさんにも伝えてください…ここのところ、ミレーを探る動きがあります。」

これは王都の動き…誰かがミレー族を探っているらしい。
その誰かまではわからない、けれども少しでもミレーの血が入っているならば、用心したほうがいい。
ワルセイさんがいるならば安心だろうが…一応忠告だけ。