2018/04/24 のログ
ご案内:「ミレーの隠れ里」にレイカさんが現れました。
レイカ > 「……………。」

月明かりもない夜、今日はあいにくの空で木々の間から雨粒が私に降り注いでくる。
その程度のことならば、私はこんなに殺気立ったりはしない。
雨は嫌いじゃないし、この時期の雨はだんだんと、外の空気が熱くなってくるから気持ちいいと感じるくらい。

…それに、血塗れの私の足を洗い流してくれる。
目の前で命乞いをしている、奴隷商人の傍らには死体がいくつか。
この商人の護衛、もしくは雇われた傭兵というところか。

いや、そんなものはどうでもいい。
こいつが奴隷商人であり、ミレー族を…こともあろうに、私の里のミレー族を狙った。
そのことが一番問題だ。
九頭竜山脈の奥に防壁があり、その中にミレー族がいると知れれば必ずこぞって、こういうやつらが来る。
だから……。

「………遺言くらいは聞いてやる。」

私の声は、自分で思うのもなんだが非常に冷たかった。
そっと、弓を構え屋を引き絞り、命乞いをしていた奴隷商人にめがけて撃つ。
その背中に刺さった矢を、ゆっくりと倒れていく商人を見て。
私は弓を、その背中に戻した。

レイカ > 「死体を片付けておいてくれ。
どうせこの季節なら、飢えたオオカミが食べると思うが…。」

何かしらで探しに来た商人組合なんかが、この死体を見つけて里の存在を外に知らせたりしないように。
結界を張れず、人目に付きやすい里の奥にいるミレー族が何も恐れないように。
弓を戻した私は、後ろを振り向き誰にともなくつぶやいた。

こう言っておけば、あとはドリアードたちが始末してくれる。
もともと、好戦的じゃない精霊たちだけど、使役しているおかげで私の言うことは聞いてくれる。
ほどなくして、動かなくなった数人はこの森の『どこか』に消えるだろう。

「…………ふう。」

やっぱり、いつかは見つかるだろうと思っていた。
見つからないはずがない、結界があってもミレー族狩りはいまだに行われている。
見つかって、蹂躙されて、奴隷市場に彼らが並ぶ。
どんなに取り締まっても、それが繰り返されている。

「……夢物語でしかないんだ……。」

私のつぶやきは、精霊たちにも聞かせない。
かつて、夢を持っていた私だけれども、今はその夢はかけらも残っていない。

レイカ > 「……雨、強いですね…。」

幸いここは森の中だから、雨が大量に降り注ぐなんてことはない。
幹に沿って雨粒が地面に流れてくるのを感じながら、私は里への道を歩く。

こんなにも血塗れになった私の体を見たら、きっとみんな驚くだろう。
今が夜でよかった、子供たちに見られなくて済むというのが、本音だ。
どこかで水浴びでもしていこうかとも思うけれども、少し里から離れてしまっている。
さっきの一団以外にも、商人が来ていたらと思うと少し恐ろしい。

できるだけ急いで、私は里へと戻った。

ご案内:「ミレーの隠れ里」からレイカさんが去りました。