2017/12/15 のログ
■レイカ > 私は少しだけ目を閉じて、その話を聞いていた。
私は、人間だから…ミレーだから…魔族だからと、種族で判別するのはやめた。
その境界線はただ一つ、私の敵か、それとも味方かというだけだ。
このワルセイという人物が、謝罪も同情もしないのは…自分が人間だからということか。
私は、その表情に軽く肩をすくめて見せた。
彼の所為じゃない、人間が起こした罪は決して彼の所為じゃない。
それを謝罪されても困惑するだけだし、道場などされたくもない。
だからこそ、私は彼のその態度には聊か、感服を覚えた。
その幼児というものが何か、と答えたのは…まさかハーフミレーの女の子だとは。
「………そうでしたか…。」
まず、私はそう短く答えた。
ハーフミレー族というのはすぐに分かったが、その事情は分からない。
だが、それを詮索するのはなんだかためらわれた…。
彼が父親だと推測するものの、なぜかと聞くつもりはない。
あの腐都(ふと)は…ミレー族が暮らすには厳しすぎる…。
「…分かりました、そういう事ならば歓迎しましょう…。
ですが、一つだけ条件があります…。
王都に帰られても、この里のことは他言無用で…。」
理由は、合わせて言う必要はないだろう。
先ほど言ったことが、すべての理由になる。
だから、あえて語りはしなかった。
こちらへ、と二人を先導して歩く。
行き先は…私のすぐ後ろのミレーの里の入り口だ。
■ワルセイ・イダーヤ > (相手方が自分と、娘のアルシャとの間の関係を聞かずに、短く返事をしてくれたのは助かった。あまり、詮索されるのは好きではないのだ。
歓迎すると言われれば、娘は目を輝かせて、「やった!」と嬉しそうに…
ワルセイも、感謝の言葉を口にして…)
ありがとう。だが、俺も入っていいのか?里のミレー族の者達に、変に恐怖など与えぬか不安なのだが…
(そう正直なところも言った後、他言無用と言われれば)
うむ、無論わかっている。俺の娘の友人の住まう土地を、どうして腐った者共に売らねばならぬのだ。
(そう、しっかりと答えて…レイカの先導の元、ミレーの里の入り口から、里に入れば……アルシャが、飛び出していって……)
『初めまして!アルシャは、アルシャって言います!アルシャは、皆さんとお友達になりたいです!今まで、私の話せる人は、お父様や従者の蛇だけでした。だから…だから、皆さんと一杯いろんなこと、お話ししたいです!いろんなこと、したいです!だから…アルシャの、お友達になってください』
(そう大きく澄んだ声色の声が、里に広がっていくだろうか…そして、ワルセイは慌てて)
こら、アルシャ!いきなり飛び出していって危ないだろう。それに…初めにいきなりお友達になってくださいと言っても、皆が困るだろうが…、ゆっくりと、相手の事を知って、相手に自分の事を知ってもらわねば、トモダチにはなれぬ。里の皆さん、娘が失礼した……
物事をよく知らぬ娘だが……もし、皆がよければ、娘の、話し相手から、初めてやってはくれぬだろうか…
(そう言って、頭を下げ…)
すまぬ、レイカ殿。娘が飛び出していったから、里に入ってしまった。
(そう、レイカにも謝罪しておいて…)
■レイカ > 「…敵でないならば、私は構いません。
ですが…少しでも可笑しな真似をしたら…ドラゴンを嗾けます。」
さて、このセリフが脅しに聞こえるかどうか。
ドラゴンなど、そう簡単に会えるようなものじゃない。
だけど、この精霊の力が満ち溢れた場所は、其れすらも信じてもらえるかもしれない。
彼らを通したその先では、夜だというのに子供たちがたき火を囲んでいた。
皆ミレー族…その数は10人ほど。
最初はこっちに気づいたけれども、見知らぬ二人がいると知って、少し警戒しているようだ。
しかも、後ろにいる男は人間と見ればなおのことだ。
だが、私が通したという事ならば、大丈夫だと思われているらしい。
そう、里の中に飛び出していったアルシャを少しだけ、ほほえましく思いながら。
「いえ、先ほども言った通り可笑しな真似をしない限りには、こちらも気にはしません。
…アルシャさん、皆は少し人見知りなので……少しだけ、ね?」
私は、アルシャさんのことを子供たちに説明した。
半分でも、ミレー族だということを知れば、子供たちは皆アルシャさんの手を引いて。
つい最近、できたアスレチックへと誘うだろう。
彼らも遊び盛りだ、同じ相手だけじゃつまらないのだろう。
「最近、夜更かしで困っていたので…。
新しい友達と一緒に、遊び疲れてくれればいいんですけどね。」
■ワルセイ・イダーヤ > (ドラゴンを嗾ける、そう言われれは、苦笑しつつ)
安心しろ…と言うには、まだ出会って時間がたっていないが…大丈夫だ。
娘に敵意や害意が向き、傷つけなければ…な。
(娘を悪意を持って傷つけたら、ドラゴンとだって戦って見せよう。そう決意を持って、そんなことを言った。そして里の内部で、レイカがアルシャを諫めれば…)
『うん…ごめんなさい。レイカお姉さま、お父様。』
(そう謝罪して。少しシュンとなって…だが、子供たちが自分の手を引いていいけば、機嫌も元通り)
「お父様!レイカお姉さま!行ってきます!」
(そう言って、子供たちとアスレチックへ向かって行くであろう…
レイカが、子供は遊び疲れてほしいと言えば)
ああ、子供は夜更かしより、遊び疲れて眠るほうがいいからな……
俺は父親として遊び相手になってやれても……友人として遊ぶことはできない。
だから、アルシャには寂しい思いをさせていたのだが……どうやら、安心して遊べるようだ。
(そう、安心した様子で、ほっと一息)
そういえば、レイカ殿は、なぜこの里の守り人をしているのだ?
…ああ、気を悪くしないでくれ。力の強いものが弱い物を守る……それは美徳であり、素晴らしいことだ。
だが……全てにはきっかけがある。
ふと、そのきっかけが気になったのでな……老人の、好奇心だ。許してほしい。
(そう言いながら、遊ぶアルシャと子供ミレーを、見守って……)
■レイカ > 「…この里の中に入っている限りには、それはありません。」
この里は私が護る、この命の変えても。
もう、決してミレーを…この目に移る人を傷つけさせはしない。
その誓いだけは、決して破ろうとは思わなかった。
行ってきます、その言葉に私は軽く手を振った。
何のことはない、簡易的なものなのでそこまで複雑なつくりはしていない。
木を束ね、くみ上げて作っただけのものだ。
それを見ながら、私はワルセイの言葉に…。
「……そうですね、私は以前…とある組織に組していました。
彼らを、王都から連れ出し…その組織の下、保護してもらっていました。
ですが…その組織の足元の脆弱さ、そして…不安定さを目の当たりにして…。」
彼らを連れ出した。
今でこそ40人規模のものだが、最初は30名ほどだった。
この30名が、私がかつて王都で匿っていたミレー族たち…。
その人たちを、組織からも王都からも匿うために…私はここに、里を作った。
守り人を…長を務めているのは、そのためだ。
「責任…といえばいいんでしょうか。
権力を使っても、この国ではすぐに握りつぶされ、欲望が支配してしまう。
だから…その欲望から、私は彼らを護ってあげたいんです。」
自嘲気味に、私は笑った。
ただの偽善だし、ただの自己満足だということもわかっている。
美徳なんて欠片もない…私のただのわがままだ。
■ワルセイ・イダーヤ > (ワルセイは、自分の質問に答えるレイカを、じっと見つめる。
彼女のきっかけ、それを少し、知ることができて…
そして、守ってあげたい。そう言って自嘲気味に笑う相手に、しかめっ面気味の顔を、優しく緩めて…)
レイカよ。もしかしたら、そなた…自分の行為を、偽善とか、そんな風に考えているのか?
(そう言えば、子供たちの方をむいて、語り始めて…)
レイカよ……そなたの行為を、偽善か。本当の善行か決めるのは…そなたではないよ。
そなたが連れ出し、守ってあげたいと思っている…あの子たちを初めとした、この里の住人だけだ。
俺はこの里の住人ではないから、そなたの行為がただの自己満足に終わる偽善かどうか…何も言えぬし、言う資格はないが。予想で言っていいのなら……きっと、この里の住人、誰もが、そなたの今行っていることは、偽善ではないと答えるだろうな。
(そう言いながら、楽しそうなアルシャを目で追って……)
……まあ、あくまで、俺の価値観での話だ。気にするな。
(そう言いながら……
ミレーの隠れ里での楽しい時間は、アルシャにとってはあっという間に過ぎて…いつの間にか、子供たちも、アルシャも寝てしまっていた。
そしてワルセイは、アルシャをおんぶすると、レイカに…)
さて、今日は感謝の言葉もない。だがあえて言わせてくれ、ありがとう。
……俺は医者をやっている。もし、そなたたちが俺を信用してもいいと思ったら…
俺に、診療をさせてほしい。俺の娘の、友人には、健康であってほしいからな。
では…な。また、アルシャを連れてくるぞ。
(そう言って別れを告げ……転移魔法で、自分の足跡をたどってここに誰かが来ないよう、去っていくのであった……)
■レイカ > 「……よく、言われます。
ですが…私はたとえそういわれようとも…この行為はただの偽善であり続けようと、そう思います。」
そう、この行為は…たとえ皆には善行であっても。
救われた、助けられたと言っても、私のこれはただの偽善だ。
ワルセイの言葉には頭を下げる、だが…。
さりとて、私はこの偽善を止めるつもりなんかない。
だからこそ、私は…空色のワンピースを捨てたのだから。
「…ええ、またいらしてください。
今度は…アルシャさんの分のお菓子も、用意して待っています。」
…医者であるワルセイの姿を、私は見送った。
眠ってしまったアルシャさんは、酷く安らかな寝顔だっただろう。
里の子供たちも、今日は夜更かししなくて済みそうだ…。
「……偽善であるほうが……私は気が楽なんですよ。」
言わなかった出来事を胸に。
私は、そう独り言ちていた。
ご案内:「ミレーの隠れ里」からワルセイ・イダーヤさんが去りました。
ご案内:「ミレーの隠れ里」からレイカさんが去りました。