2016/03/28 のログ
ご案内:「ミレーの隠れ里」にリーゼロッテさんが現れました。
リーゼロッテ > 隠れ里からの支援を求める声にPMUの戦闘員が辿り着いた時には、既に遅かった。
荒れ果てた隠れ里と、その報告を少女越しに耳にしてしまった大きな隼は怒り狂っていた。
少女の制止も聞かずして気配をたどり、一部の輸送団を言葉通りに食い殺し、血祭りにあげるほど。
それでも全ての敵と救助が出来たわけではない。
今は一通りの落ち着きを取り戻した使役獣と共に隠れ里から少し離れた場所で生き残ったミレー族の手当を手伝っていた。

「……」

無言のまま、浅い息を吐くミレーの娘に包帯を巻いていき、ゆっくりと横たわらせていく。
飲ませた薬が効いてきたのか、そのままストンと意識を失うのを見やれば、起こさぬように静かに立ち上がり、テントを抜け出る。
周囲には無数の戦闘員、手練の精鋭を差し向け厳戒警備を敷いていた。
テントが無数に集まった一帯は茂みや木々に囲まれ、容易にここを見通すことは出来ない。
とぼとぼと中央へと抜けると、いまだに怒りが抜けぬ隼を暗い表情のまま見上げた。

「…ザムくん、何でこんな酷いこと…出来たのかな」

魔物、闇から生まれたものか、人だったとしても心を闇に囚われた存在だからだと吐き捨てるのが聞こえる。
そっかと浮かぬ表情で彼の隣に腰を下ろすと、彼に預けていたライフルを手にとった。
もしここに…この騒ぎに関わったものが現れたら、自分はどうなるだろう、と静かに考える。
怒るのか、問い詰めるのか、そんなことよりも浮かんでしまうのは死ねと吐き捨ててトリガーを引き絞りそうな自分。
ぞっとする想像に緩々と頭を振って、それを否定していく。

リーゼロッテ > そんな憤りの強い物思いに耽っていると、テントの一つから悲鳴が響いた。
ビクッと顔を上げれば慌ててそのテントへと駆け込んでいく。
散々陵辱を受けて心身が傷だらけとなった幼いミレーの娘が、あの夜の記憶をフラッシュバックさせて錯乱してテントから這い出そうとしているのが見える。
許しを乞う消え入りそうな悲鳴が聞こえると、表情が青ざめるほどに胸が締め付けられていく。
ゆっくりと娘の傍へ両膝を付けてしゃがみ込むと、その体を抱き寄せるようにして捕まえてしまう。

「大丈夫だよ…誰も、あなたを虐めないから…」

不安にさせないように、声を必至に落ち着かせながら絞りだす。
震える小さな体を包み、背中を撫でていくと徐々に落ち着きを取り戻しながらも、無理に動いた分の体力消耗でくたりと意識が沈んでしまう。
ぎゅっと服の裾を捕まえてくる彼女を見つめながら、近づいてくる警備の男達に苦笑いで振り返る。

「大丈夫です、その…怖がっちゃうと大変ですから、私が運びますね」

小さい体とはいえ、自身も小柄なので結構な力がいる。
それでも何故かすんなりと抱え上げられるのは何でだろうか。
抱えたままゆっくりとテントに戻ると、広げられた毛布の上へその体を横たえ、別の毛布をかぶせていく。
よしよしと撫で続ければ、次第に安心して裾を掴む力が緩み、ぽてりとその掌が布団に沈んだ。

「……」

無言のままに静かにテントから抜けると、再び隼の元へと戻っていく。
その合間も浮かび上がるのはじっくりと煮沸していくような怒りの感覚だった。
すとんと再び座り込むと、ぎゅっと肩紐にかけたライフルを前と回し、細いグリップを握りこむ。

「ザムくん…やっぱり、許せないよ…」

俯きながらに、怒りの言葉がまた一つ溢れた。

ご案内:「ミレーの隠れ里」にリーユエさんが現れました。
リーユエ > 今、九頭龍山脈にある麓でちょくちょくとお世話になっていた。
今日も色々と教わろうと思いやってきていたのだけど、なにやら慌しい様子。
折角なので自分も何か手伝える事はあるか、それを伝えれば、付いて来るように言われて同行をした。
付いて行けば、ある村の惨状が伺えた。
何があったのかはよく分からない、ただ、この村が何者かに襲われたという事だけは嫌でも分かった。
しかも、自分達が神獣族と呼ぶ者達が襲われた対象である。
自分も医術師の端くれだ、勿論、問われるまでもなく治療に当たった。
普通の怪我もあれば、あんまり想像もしたくない被害を受けた方達も見える。
細かい事を聞く事もないまま、自分は自分の出来る事を続けていた。

そして、今に到る。
後は自分達がやるから君は一度休憩でもしてくると良い。そう他の方達に言われ、テントの外へと出る。
テントの中も酷い有様だったが、テントの外も別の意味で酷い有様。
それを見るのも少し躊躇われて、そういった所の見え難い片隅へと腰を下ろした。
のんびりと眺めている中、ふと少女の姿が見える。
年齢的には自分と同じくらい、銃と呼ばれていたと思われる武器を肩に掛けていた。
それだけならば、あんまり気に掛ける事もなかった。
ただ、その少女からは明らかに怒りの気配を感じる事が出来た。
だから、少し気になって声を掛けようかと思ったのだ。
だけど出来ない、初めて見る相手に簡単に声を掛ける度胸がいまいち湧かない。
相手から見れば、自分と、周りに視線を巡らせる挙動不審な少女の姿が見えるかもしれないか。

リーゼロッテ > 「ザムくん…私、悪い子になっちゃったのかな。こんな事をした人を殺してやりたいって…本気で思っちゃうほど、怒ってるみたい…」

俯いたままに呟く言葉に、隼は思念の声で答える。
我が眷属達を辱め、踏み躙った報いを受けさせねば気がすまないと。
それは仇討であり、何一つ汚れたものではないと、いつも留め金になる隼まで彼女を炊きつけてしまう始末。
カツンッ!と銃床で地面を打ち付ける音を立てながら立ち上がると、何時もは迫力のない顔が怒りに満ちて隼を見上げる。

「……やった人、探しに行こう。私、準備してくるから…」

分かったと答える隼へ背を向けると、今になって同じ年頃の少女の姿に気づいた。
何処か挙動不審な様子が見えるものの、確かお兄さんが連れてきた北から来た人だと、少し覚えていたらしい。
少しだけ怒りが引っ込みながらも、どうにか浮かべることが出来た笑みと共に彼女の元へと歩いて行く。

「こんばんわ、確か…組合長さんと一緒に来た人…ですよね? お手伝いいただき、ありがとうございます」

確かめるように語りかけながら、一緒に治療にあたってくれたお礼を紡ぐと、ペコリと頭を下げる。
薄茶の髪がふわりと揺れて、甘い香りが僅かに香るものの、先程まで怒りを纏った少女とはある意味相反した香り。

「ご挨拶遅くなってごめんなさい、私はリーゼロッテです。えっと…偵察、とか…魔法銃の先生とか、雑用とか、いろいろしてます」

よろしくですと言葉を添えて、微笑みながらいつものように挨拶を紡げたのも、彼女へ語りかけて少し落ち着いたからかもしれない。

リーユエ > 少しの間だろう、そうして困っていた処で相手の少女が気付いてくれた。
こちらに気付いた事で、少しだけ自分を少し取り戻したのだろう、向けられていたのは笑顔だった。
同年代という事で、こちらも話を伺っていた。
尤も、話の殆どが銃の講師をしている方、程度なのだけれども。

「…はい。アーヴァインさんに、こちらで私の知りたい事を教えて貰えると伺いまして。
貴女は、えっと、銃の講師を為さっているリーゼロッテさん?
いえ、お世話になっている事を考えれば、この程度のお手伝いは当然と受け取って下さい」

聞いた話を思い出すように言葉を返し、頭を下げる相手に、少しばかり小首を傾げて微笑む。
相手の甘い香りを感じれば、教わっている事の関係上で自分から漂う薬草の匂いに、ちょっと困ったような表情を浮かべた。

「…あ、いえ、こちらこそ気付いていながら挨拶も出来ずに申し訳なく思います。
その、どう声を掛けたものかと、少しだけ考えてしまいまして。
私はリーユエ、北の方から医学を学びに来た医術師です。
それにしても、偵察に雑用も為さっておられるのですか?
医術程度しか自慢の出来る事のない私とは違い、色々と出来るなんて羨ましいです」

こちらこそ、宜しくお願いします。と、今度はこちらが深々と頭を下げた。
どことなく、ちょっと落ち着いた様子が見えたのか、安心する。

リーゼロッテ > 「ふふっ、お医者さんが可愛いお客さんが来たって喜んでましたよ?」

大半が男としか関わらない専属医のオジサンの嬉しそうな世間話を思い出すと、クスッと微笑みが溢れる。
素直でいい子だの、あれぐらいの誠実さがちょっとでも他の男共にあればいいのにだのと、たまにお世話になりにいったときの光景が蘇る。
続く言葉には肯定するように頷くも、当然と手助けを受け取れることはなく、頭を振ってこちらこそお世話になっていますと微笑んでいた。
ただ、不意に困ったような表情を見れば少し慌てふためく。

「ごめんなさい、私なにか変なこと言っちゃいましたか…?」

先程までピリピリしていたのもあって、無礼を働いてしまったかなとあわあわしながら問いかける。

「いえ、私も……ずっとピリピリしていましたから。 リーユエさん…えっと、もしかして同い年ぐらい、ですか?」

私は16ですと言葉を添えて、何となく近い歳の子にあまりよそよそしいのも疲れるかなと思えば、確かめるように問いかけていく。

「そんなことないです、魔法銃は…ここの中で私しか教えられなかったからってだけで、元々は森の調査とかをするお仕事をしようとおもってたものですから。ぁ、雑用っていってもあれですよ? ザムくんと一緒にお届け物したりとか、庭いじりとか、そんなのですよ?」

と、少女とは対照的に、いまだに怒りがふつふつしている通常よりはるかに大きな隼がテント集まりの中央に鎮座している。
こちらの声が聞こえたのか、獲物で見つけたかのように素早くこちらへと視線を向けてくると、急かす思念の声が脳裏に響き、苦笑いを溢す