2020/05/03 のログ
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」2(イベント開催中)」にラディエルさんが現れました。
ラディエル > 「――――いや、知らねぇよ!そんなの、ちゃんとした医者拉致って来いよ!」

つい先刻、帰還したばかりの部隊―――とは名ばかりの盗賊の根城に、
タイミングが良かったか、己の怒声は案外、大きく響いた。
奴隷らしく首輪をつけられ、身体の前で両手首を鉄枷に戒められているものの、
そもそも、ヒトの世界の括りでの立場など如何でも良いと考えている身、
気に入らなければ斬り捨てろ、と言わんばかりの言動は、何処へ行っても変わらなかった。

傍らの質素な寝台には、戦場で女騎士に手を出そうとし、
まんまと返り討ちに遭ったという男が、血塗れでうんうん唸っている。
申し訳程度に腹から下へ被せられた布が、すっかり血を吸っているが――――

「あのなぁ、俺はこんな格好しちゃいるが、ヒーラーでも何でもねぇの!
 治せねぇよヒトの傷なんか、いっそお針子でも呼んで縫って貰えよ!」

ちょうど捕えて引っ張ってきた奴隷の中に、僧衣の男が居る、というので呼びつけられたが、
ヒトの子の治療など、生業とした心算も無い。
遣ろうと思えば、策が無い、訳でも無いが――――

「……ま、普通に考えて御免だわな。
 こういうタイプの男の下半身とか、治んねぇ方が世の為、人の為って奴だろ」

独り言ちた言葉は、患者たる男の盛大な呻き声に掻き消えたが。

ラディエル > 「―――――ぁあ?」

どん、と背中を小突かれ、てめぇの怪我は治してたじゃねぇか、と怒鳴られる。
片目を眇め、深く眉間に皺を寄せた剣呑な表情で振り返ると、
態とらしく肩を竦ませ、大きな溜め息を吐いて。

「そりゃ、特異体質って奴だ、治した訳じゃねぇ。
 治したくなくても、勝手に治っちまうんだよ。
 ………他人の傷は専門外だ、良いじゃねぇか、多分、死にゃしねぇよ。
 精々、もう二度と女を抱けなくなるぐらいだろ」

ベッドの上の男が、今度はおいおい泣き始めた。
うんざり顔でそんな男の姿を見下ろし、今度はもっと深く溜め息を吐いて。

「……餓鬼じゃあるまいし、そんなに泣く程の事かね」

肉欲などという煩わしいモノ、捨て去れるなら其れもまた幸せでは、なぞと。
本気でそう考えてしまうのだから、成る程、己はヒトデナシであるようだ。

ラディエル > 例えば、周囲を取り囲む連中の誰かが。
腹立たしい程に平然としている、此の似非僧侶に手を挙げた時は。

己が傷つき、僅かにでも血を流せば、
そして其の血が、ベッドの男に降りかかったなら。

己が敢えて秘匿している、治癒の絡繰りに気付く者も居るやも知れず、
そうなれば其れこそ、己など、此の場で血祭りにあげられるかも知れないが。
―――――まあ、そうなったなら其れで、と目を伏せる、
己の頭の中に在ったのは、煙草吸いたいなぁ、なぞという場違いな欲求だった、とか―――――。

ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」2(イベント開催中)」からラディエルさんが去りました。
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」2(イベント開催中)」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
ギュンター・ホーレルヴァッハ > 激戦続く城塞都市を見据える王国軍陣地。
兵士達の怒号、馬車の駆け回る音、軍司達の唸り声がそこかしこから聞こえてくるだろう。
そんなアスピダの一角。所謂本丸、と目される天幕にこしらえられた簡素な木造の小屋に少年貴族の姿はあった。

「……今回の補給物資は以上になる。少なくとも、兵が餓える事はないだろう。だが、ゾスからの輸送ルートが不安定だ。何時までも民間頼りの輸送では、優先度の低い物から補給が滞る可能性がある。前ばかりではなく、後ろにも気を遣って欲しいものだな」

小屋の造りに似付かわしくない重厚な執務机に腰掛けた少年は、緊張と焦燥の色が滲む指揮官達に淡々と言葉をかける。
書類を受け取った指揮官達が敬礼と共に立ち去れば、室内に残されるのは己一人。

「……嫌味を言っている訳では無いんだがな…。やはり、年下の小僧に口を出されるのはお気に召さないか」

小さく溜息を吐き出すと、書類の山の中からシガーケースを掘り起こして一服。
深々と吐き出した紫煙が、部屋中に漂うだろう。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 戦況報告だの作戦計画だのは此方は門外漢であるし、王国運に口出しするつもりは無い。
此方が口を出すのはつまるところ補給、兵站、鹵獲物資や捕虜の売買等。結局、金に纏わるところの話ばかりである。
持ち込まれた資料に目を通しても、紫煙と共に吐き出される溜息は増えるばかり。

「…敵に物資を奪われては元も子もあるまい。とはいえ、補給隊に過度な護衛を割く余裕も無い、か。此方の懐が痛まぬ話とはいえ、流石に嫌になってくるな」

いっそ、冒険者でも雇って荷馬車の護衛につけた方が良いのだろうか。勿論支払いは立て替えた後に王国に請求するのだが。
どうしたものかなと悩ませつつ、遠くに響く兵士達の喧騒にぼんやりと耳を傾ける。