2020/04/26 のログ
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > そんな悩みを抱えながら、少年は天幕へと消えていった――
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」2(イベント開催中)」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」2(イベント開催中)」にティクスさんが現れました。
■ティクス > 砦の外にて。
じ、と遠方を見透かすように、近隣の山道を眺めていた。
散発的な戦闘が続いている中で、昨夜、二人連れの傭兵か冒険者かに。してやられた者達が居た。
這々の体で逃げ帰ってきた彼等だが。女の方には手傷を負わせた筈だというので。
こうして夜が明けた後から。態勢を組み直し捜索が図られている。
正直を言えば。籠城している事こそが、団の強みなのだから。
物資の掠奪等、必要な事以外で。わざわざ無駄に出て行く回数を増やす事は無い気もするのだが。
やられっぱなしは我慢ならないという者が居たり。結構な美女だったという女を諦めきれない者も居たり。
それ故に押し切られてしまったという所だった。
「………………。」
それに関して。少女からは何も言うまい。どうせ使われるだけの身である。
目の良さ故に引っ張り出され、今はこうして砦の近辺、山道の中。
遠く近く、周囲を探る団員達の気配がしている中。
……一応。逃げられた獲物の代わりをさせられるでもなく、普通に走狗として使われているなら。マシなのだろうと思っておく。
■ティクス > …見つからない。その可能性が高いだろう。
相手もプロなのだから。夜明けと同時に直ぐ様動いている、既に近辺から遠離っている。恐らくは。
よしんば依頼の為に、退却には到っていないのだとしても。そうそう見つかるような距離内には留まっていないだろう。
実際、最初は恨みを晴らす、あの体にぶつけてやる…などと息巻いていた団員達も。
少し落ち着けば、そういう事実を察したのだろうか。いまいち、やる気を欠いていた。
中にはもう大っぴらに。占領中のゾス村にでも赴いて、憂さを晴らそうと言いだしている者もおり。
「…こっちに来ないなら。…好きにしてって、思う。…けど」
少女としては、そんな感想。
城壁や城内の警備。本当はそれらで忙しいのだから。
加えて、憂さ晴らしの対象にされたりすると、体力が持たない。…命じられた場合、断れないから。
少し頭を掻きながら。もう少しだけ、この辺りを見ておこうと。
昨夜の者達が見つからなくても、新たな傭兵などが急襲してきたり、何かの準備をしているかもしれない。
あるいは、同胞達から。声を掛けられる事も有るだろう。
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」2(イベント開催中)」にグライドさんが現れました。
■グライド > (――其れは余りにも強固な砦で在った。
盗賊団崩れ、だのと騒がれて居た頃の印象なぞ
何処にでも放り捨てて仕舞わなければならぬほどに
此れは最早――軍隊に、或いは、騎士団にほど近い物が在る
昨晩、撤退を余儀なくされた二人組からの言伝を経て
様子を見る為に此処まで辿り着いた物の――)
「……馬鹿野郎、迂闊に手を出せる代物じゃねぇぜ…。」
(――なるほど、手練れの傭兵達に多く声が掛かったのも納得する
砦からは決して近くない距離、単独行動のフルアーマーは
森の、茂みへと身を上手く隠しながら、僅かでも情報を得る為に砦の形を頭に入れている
普通の眼ならば見渡した程度では、余程其の一点を注視しない限り
其処に、何かが潜んで居るとは判らぬだろう、が
だが、其れでも、油断は出来ぬと、そろそろ離脱を考え始めた、其の折
――気配が、近付いて来る。
速足とは言い難い速度で、何者かが、此方に
其方を注意しようと、ほんの少しだけ姿勢を変えた折
ぱきりと、小さく枝の折れる音が響いた)
■ティクス > 『……!!』
極小さな音。だが、大勢がそれに気が付いた。
たちまち物音がした茂みへと。盗賊達が次々、大挙して押し寄せ始めるだろうか。
茂み、それ自体を外から見ようとも。潜んでいる者の姿は見えないかもしれないが…
『聞こえたな、其処だ!』
『何をしでかすか分からんからな…燻り出すんだ、準備しておけ!』
(其処で血眼になって飛び込まない辺りも。
二年前の盗賊団からの変化…なのかもしれず。
装備の潤沢さを示すように。がちゃ、がちゃりと金属音がひしめく中。
…男の足元へ投げ込まれ、転がってくるのは。
小さいがみっしりと火薬の詰め込まれ、そして既に火の着いている焙烙だ。
破裂すれば癇癪玉のように音を立て、それ以上に盛大な煙を上げるであろうそれ。
茂みや森に火が着いても構わない、そういうやり口を思わせて。
「………、違うかな、でも、居たな…」
集う盗賊達の中。少女は、後方に詰めている。狙撃手なのだから。
じっと取り囲まれていく茂みを見やりつつ。装備を選んで。
■グライド > (――――舌打ちは、内心で、だ
警戒も強く、些細な変化も見逃さない辺り
烏合の衆が多い、小さな盗賊団とは訳が違うと判る
程無くして足元に転がり込んできた、火薬玉を目にしては
一瞬の判断の後、其れを鉄鋼に覆われた手で、拾い上げよう――熱いに決まっている
だが、今なら其れも、一瞬で済む。)
「―――――……訓練されてやがる。 燻り出す気かい。」
(そうして――其れが破裂する前に、其れが放られてきた方向へ向けて
決して狙いが在る訳では無い、ただ、大雑把に投げ返せば
恐らくは其れが、空中で爆発して煙幕と為るだろうか
森に火が付いた所で、己も一向に構いはしない
余り回ると逃げ道を奪われるだろうが、其処まで追い込まれた時点で詰みに近い
故に――即時、撤退戦だ。)
「討伐処か、戦争の間違いじゃねぇのかよ…」
(小さく、呟いた後――一度、後退だ
爆発の瞬間に紛れて、物音を気にせず兎に角駆ける
囲まれる事を防ぐ為に、一度大きく距離を空けようと)。
■ティクス > ただ流石に。既に火が着いた、そして今この瞬間にも炸裂しようとする火薬玉を。
掴み上げ投げ返してくるなどという無茶は。想定していなかったのだろう。
油断なく茂みを取り囲んだ者達の頭上で。投げ上げられ、爆発が起きた。
それ自体で倒れる者が出るような発破ではないが、本来の使用目的である、盛大な煙が。
頭上で湧き、そして地面に垂れ込める。
『…、くそ!やってくれやがる……!!』
『良いか、兎に角包囲を空けるんじゃ…うぉ、っ!?』
それでも、密集隊形にて。飛び出して来る何かを、鼠一匹すら逃さないとばかりでいた団員達が。
混乱に乗じて飛び出して来る影を、押し留めようとして…弾き飛ばされた。
全身鎧の重量をぶつけられ、幾人かが地に転がる。
他の者達が振り回す刃物は…当たっても、鎧を裂くには到らないか。
「また、鎧…嫌な、縁が有る…っ」
少女含め幾人かが。脱兎せんとする人影へ、次々に矢を撃つが。
当然それも煙に邪魔されためくら撃ち。
相手と同じように舌打ちしつつ。……前方へと。人影の方へと、走り出した。
■グライド > (加熱された鉄鋼が熱を帯び、手の表面を焦がす
だが、其の無茶を通す也の隙は、どうやら得られた様だ
混乱に乗じるのは戦場での常とう手段、と言える程度には…其れなりに、生き延びて来た
戦場に存在する多種多様な兵士の中でも、最も重武装となるのが盾兵だ
幾ら通常よりも質の良い金属装備を構えて居たとて、単純な『重さ』比べでは此方に分が在る
剣が鎧を叩く音は、けれど、手応えには程遠いだろう
普段ならば精密な射撃を誇る矢とて、的を絞れねば意味が在るまい
ただ、其の中の一矢が――偶然、背に背負った盾を叩いたのには
流石に思わず、口笛を吹いて仕舞ったが。)
「――――やぁれ、森の中だからって、鎧を渋らなくて良かったぜ。」
(煙に紛れるうちに、再び森の中へ
盗賊達の視界から一度消えては、其の儘、茂みの一つへと身を隠そう
その際、周囲の木々に、手にした盾の、刃上に磨がれた鋭い先端にて
周囲の木々を滅多切りに傷つけて――支えを、脆くして置き。
そうして、様子を伺い息を顰める。
一度見失った事で、先刻の数も一度また、散開せざるを得ない筈だ
諦めてくれれば其れが一番だが――相手取るならば、ひとりひとり、だ。
そうしてそのうちに、森の中で、鈍い悲鳴が響くだろう
間をおいて、今度は別の方向で――単独の連中が、ひとりひとり、ぶん殴られて行く、気配が)。
■ティクス > ……ようやく煙が晴れてくる頃には。
大質量の直撃を受けた幾人かが。転がって呻いていた。
思うさま鈍器でぶん殴られたような物なのだから。そのダメージは大きいのだろう。
暫く戦闘不能であろう者達を尻目、速やかな追跡が行われるものの。
矢張り煙の影響が大きかったのだろう。追い着ける事なく。再び相手を森の中へと逃してしまった。
其処まで来ると。団員達の中でも意見は分かれ。
『どうする。深追いせず退かせた方が良いかもな…』
『馬、っ鹿野郎!二度も舐めた真似を許してどうするよ!』
『しかし…茂みと森じゃ、勝手が違うからな、ぁ…』
(外から取り囲んで火を放つなら、焼け死ぬのは内側ばかりだが。
自分達も森まで入ってしまった状況下では。流石に、再び火を点けるのは躊躇っていた。
真っ先に深追いしてしまった辺りが。既に失策だったのだと気が付いて。
やむなく団員達は二人ずつ、三人ずつ、等の小グループで。少しずつ周囲を探りだすのだが。
『がっ…!?』
『ど、どうした!?真逆背後に… 、っぐげ…!』
そんな中でも、あぶれて一人になった者や。
グループ内から突出した者などが。一人、また一人。地に伏していく。
だから、矢張り。危険だったのだと。
直に気が付いた団員達は、再び、集まる気配を見せ始めるが…その頃には。相当数が気絶させられている筈だ。
このタイミングで逃げるか否かは、男次第。
■グライド > (潜伏戦術自体は、己の体格では不向きで在ると言うのが一般的な考えだろう
だが、不向きであるからと言って、避けて居ては「もしも」で命を落とす
故に、不向きでは有るが、決して不得手では無くして居た。
重鎧装備と言う不利も、有利に変わる様――敢えて音を立て、そして消し
位置の攪乱を狙いながら、可能な限りの戦闘不能者を作って行く
恐らく死んでは居ないだろう、が、暫くは目覚めても真面には立てまい
そうして、散開していた盗賊達が、再び集結するなら
――先刻よりも大分減った人数、そして、其の瞬間を待って居たとばかりに。)
「―――……よう、頑張って避けな。」
(声を、響かせた。 ――同時に
支えを削って居た木々を、盾でぶん殴る様にして蹴り倒し――集った中へ、ぶち込もう
流石に大木までは無理だが、其れでも、其れなりの重量が在る木々が
一本、また一本と音立てて折れては、集団目がけて倒れて行くだろう
足場や視界の悪さ、そして、倒木による逃げ場の消失
武器を使わぬ、対集団の戦術で――さて、どれだけを押し留める事が出来るだろうか)。
■ティクス > 付け焼き刃ではあれ、盗賊団も。一角以上の戦術を覚えていた。そう言って良い。
だが其処に差が生じてしまうのは。
矢張り、此処最近覚えたての付け焼き刃と。長年研鑽してきた者との違いなのだろう。
教わったセオリーを、ある程度は忠実に守ろうとする者達に対し。
追跡される男の方は、そういった常套を、崩された場合も想定していた。
当たり前にやれば勝てるという者達が、その当たり前を奪われた時、どうすれば良いのか。
…今後課題として、突き詰めてくるだろう。無事今日を終える事が出来ればだが。
『良いか、一度退いて人数を集めろ。森の端から隙間無く詰めていくぞ』
『犬も必要だな、犬舎の鍵は誰が持っていた?』
一度集合し、次善策を詰める者達…の、周囲から。
『………!?』 『っな、ぁ、があぁぁっ!?』
さながらドミノ倒しの如く。次々と木々が倒れだす。
周囲を囲んで、捜索していた団員達の方へ。
けたたましい轟音と、男達の悲鳴とが入り混じり。
…やがて、もうもうと立ち籠めた木くずと土埃が収まりだせば。
うんともすんとも言わない侭、倒れた者達が大半だろうか。
だが。
「………………」
木々が倒れた事で。視界が空けた。
…だから、男には見えた筈だ。後方で控えており、倒木に巻き込まれなかった支援兵。
幾人か残った彼等の中から。一人の少女が男を目掛け。
真っ直ぐに、膝上で構えた大振りなバリスタを向けているのが。
■グライド > (戦術とは絶対の物では無い
其の通りに行えば絶対に上手く行く、なんて物は存在せず
だからこそ、数ある騎士団の中には、戦術家と言う物が存在する
――其れでも、教えられた戦術を、忠実に実行出来るという時点で
この集団が、脅威である事には何の違いも在るまい。
なぎ倒して行く木々が、土煙を、そして木の葉を撒き散らす
彼らにとって不運だったのは、慣れぬ森の中で、本来の機動性を確保出来なかった事だろう
凡その相手を巻き込めたことで、周囲が静かに為る
木々の間から、漸く――様子を伺いに姿を現せば、戦果を確かめよう、と)
「――――――――……っ!」
(――其の、瞬間
土煙の向こう側に見えた、影
己に向けて、明確に其の切っ先を向けるバリスタと、弓兵の姿
反射的に、木々に隠れるのではなく、盾を構えたのは
下手な若木では貫通される予感を抱いたからだ
もし、あの射手が手練れであるなら――いや、きっと手練れで在るだろう
先刻、己が背に当たった矢の音を、聞いて居たなら
――威力の高い矢を、用意して居ても不思議は無い。)
「―――――…………外したら、次が難しそうな弓じゃねぇか。」
(声を響かせたのは、僅かなりと相手に重圧をかける為だ
とは言え、余り期待なぞはしなかったが――其の儘、盾を構え、真っ直ぐに弓兵へ向かい、距離を詰め行こう
――僅かでも隙を、急所を晒せば
其れだけで、致命打と為り兼ねぬ、故に――集中を、重ねて)。
■ティクス > 色々と教わった。覚えた。…強くなった。それは紛れもない事実。
だが、其処に慢心してしまうような人間性ばかりは。早々矯正出来るものではなかったのだろう。
よって、隠れ果せても、各個撃破を果たしても、尚油断を見せる事のなかった盾兵の方に。軍配が上がる。
正直を言えば。少女他数名も後方控えだからこそ巻き込まれなかっただけであり。運が良かっただけなのだ。
だが、残ってしまった以上。兵としての役目は続く。
退くのではなく、一気に突っ込んで来る男の姿に。隻眼を軽く見開くものの。
「 ………はずさないよ。」
(挑発へと返した声は。自信でも慢心でもなく。淡々と、事実を宣告するような声。
実際男の言葉は否定出来ない。ぎりぎりと機械仕掛け、バネ仕掛けで巻き上げていく弦は時間が掛かる。
そもそもバリスタとは大型であり。本来、地面に設置して使う物。
どうにか人間サイズには収めていても。避けられて、直ぐ動く、など出来ない。
それでもこの武器を選んだのは。以前砦を探っていた人物と同じく、この男も重装で。
普通の矢では、それこそ先程弾かれた通り。何の効果もないだろうから。
待つ。待つ。
他の若年兵などが、ぱらぱらと矢を射掛けるが。それらは効果がないだろう。
だから待って、待って、どんどんと距離が詰まり…
「…!」
(撃ち放ったのは。…これが普通の矢であれば。手練れならばかわせるだろう、そんな距離ギリギリで。
だが、撃ち出されたその矢は。普通よりも重く大きく、その癖圧倒的に……速い。機械仕掛けである故に。
男が速度を見誤っていれば、かわすのは難しい…筈。
狙いは違わず盾の中央、それすらぶち抜いてみせる、と。
■グライド > (普通の矢であれば問題無い
衝撃こそあるものの、鍛え上げた体躯が止まる事は無く
弓兵たちとの距離は、直ぐに縮まって行くだろう
だが――バリスタはまだ、放たれない。 唯一警戒すべき矢は、まるで待ち構える様に
己が鎧は、頑丈で有れど決して、特殊な、名の在る防具と言う訳では無い
もしその嚆矢が、鎧に到達する重さを持つので在れば、血を流すのは此方だろう
其れでも――弓兵に対して、背を向けると言う選択肢が在り得ぬのは
戦場での、経験則故――背を向けた傭兵仲間が、其の心臓を射抜かれて行く様を
もう、何度も、何度も、見て来たからだ。)
「――――――……遣ってみやがれ。」
(声が、果たして相手に届いたかは、怪しい。
或いは其れよりも早く、矢が、放たれるのだろう。
狙いは真っ直ぐ盾の中央、己が胴体を貫き、心臓を射止める為の物。
重量のあるバリスタを長く構えながら、其の正確な狙撃は優秀な射手の証だろう
だが――其の刹那、眼光は、鋭さを増して。)
「―――――――……ぬ、おぅ…!!」
(刹那、相手に対し、受け止める形で平面に構えていた盾を、斜めに傾ける
放たれた其の切っ先が、盾へとぶち当たる其の瞬間
回避ではなく、直撃でも無く、矢の軌道を盾によって、強引に横へと逸らそう
パリイング――金属が、盾が、大きく抉られる耳障りな音が響く
直線で在った突進が、僅か衝撃で斜めに弾かれ、減速する、が
止まる事無く再び――其の、加速を取り戻して
――今度こそ、平面に構えた盾にて、ただただ、猪の様な重量の突撃を
次の矢は、決して撃たせぬとばかり、弓兵の集団へぶちかまそう、と)。
■ティクス > 寧ろ、普通の矢でないからこそ。こちらも退かずに撃ったと言える。
通常狙撃が何ら効果を得ない事が、既に分かっているのだから。
引き付けて、引き付けて。…近すぎる程に近付いて。其処でようやく引き金を引いた。
これだけ近ければ、例え重量級だろうが、狙いを違える事は無い。
撃ち放たれた矢は真っ直ぐに。盾すら貫き、鎧も穿ち、男の命を奪おうと…
「………! あい、つ…!」
(だが、その光景は実現しなかった。
男は斜めに傾けた盾で、弩めいた大型の矢を「逸らした」のだから。
思わず、唇を噛む。斜めに逸らすというのは、簡単なようでいて…その実、非常に難しい。
鏃の硬さや鋭さ、速度、それ等に応じて。的確な角度と。弾かないだけの力が無ければ成立しない。
頭が回るだけではない、その力も優れた相手である事を。この一瞬で思い知れば。
その先。判断は早い。
大弓を放り出しながら、たん、たんっ!と後方に跳ねていく。
振り翳された盾と弓とがぶつかって。木と鉄と。歯車やばねの欠片が其処ら中に飛び散る中。
若年の兵達は砦の方へ退き始める。
その頃には男の背後で。木々に巻き込まれつつも、辛うじて動けそうな者達が。
意識を取り戻し、身動きし始めつつもあり。
■グライド > (――漸く――此方が明確に、押し始めた様に見えなくも無い。
だが実の所状況は、ほんの一瞬優勢になっただけで在り
此処からさらに長引けば、再び窮地に晒されるのは己の方だろう
もし、此処から増援を呼ばれて仕舞えば、最早単独での太刀打ちは難しい
故に、今この瞬間で己が出来る事は、この優位を保ったまま
出来る限りの「土産」を抱えて、逃れる事だ
そう、考えて――眼ではなく、意識で、狙いを定めたのは。)
「――――……御前らにゃ、用はない、ぜ…!」
(傍に居た若年兵を、盾を振り回し木々へ叩き付ける
そうして道を開き、一度立ち止まって、若年兵の腰元へ手を伸ばせば
其処から、引き千切った物を、不意打つように全力で――後退し始めた、女弓兵へ向けて
そこいらに落ちて居た、似たような大きさの小石と共に、投げつけた
弓兵、或いは斥候が用いる装備の一つ――そして盗賊で在るからこそ用いるだろう、道具――粉爆弾の袋
其れが眠り粉や麻痺粉、催涙系の粉や、性質が悪ければ麻薬系の粉と言う場合も在るだろう
ただ、何れにしても其れが、相手を無力化せしめる類の物で在る可能性は高い
もし、相手に命中したなら――いや、この際命中せずとも構わない
其処から、一気に狙いを、彼の女弓兵へと定めて駆けようか)。
■ティクス > 得意の得物がバラバラに砕け。さすがに歯軋りしただろうか。
…だが、そのまま。ぎょ、と目を見開いてしまう。
構わず突っ込んで来たその男が。最初と同様、再び。自分達盗賊団の得物を掴み取り、投げてきた。
反射的に、外套内から抜き撃つハンドボウ。それもまた、外れる事なく、飛来物を撃ち貫いたのだが…
「っ、………!!、っぅ、ぇ゛、げほ、かは……!?」
結果的にそれが失敗だった。
破裂し、盛大に撒き散らされるのは。唐辛子等をふんだんに混ぜ合わせた催涙の粉。
反射的に撃ち、撒き散らしてしまった為。無造作かつ無作為に、赤々とした煙が其処等中に拡がって。
…もう、大惨事だ。起き上がりきれない団員達も、退こうとした若年兵達も。事を引き起こした少女自身も。
まず、目をやられる。強烈な激痛で涙が止まらなくなる。
更には噎せて、喉が嗄れ、呼吸もままならなくなりそうな程。
当然煙は誰に対しても遠慮しないから。
その中を、男が無事に突っ切れるかは。彼の気合いだの肺活量次第だのとなる、筈。
■グライド > (あ゛、と、目元しか空いて居ない兜の奥で、若干の顰め面
辺りに漂う刺激臭は、其れが唐辛子系の粉で在ると直ぐに知れる
盛大に撒き散らされたおかげで、効果は目覚めている連中全員に届いたけれど
――突っ切るのは、根性しか無い。
大きく息を吸い、止める。
其処から、大盾へと隠れる様にしながら煙の中を突っ切れば
可能な限り薄目で視界を確保しつつ、身動きのとれぬ相手を足元に認めよう
そうして、其の儘女の、多分身体のどっかを掴んで、持ち上げたなら
肩へと担ぎ、煙の中から至急、飛び出して―――)
「―――――う゛ぇっほ…っ! う゛ぅ゛えっほ……ッ!!」
(盛大に――咽ながら、走る。
多少目に入ったせいで、びりびりする痛みが途轍もなく鬱陶しい
其れでも、肺を其処まで遣られなかった分、何とか辛うじて、動ければ。)
「――――…ったく、帰ったら割り増し請求してやるぜ…
……よう、嬢ちゃん。 案内して貰う、ぜ…!」
(人質だ、と、一言だけ言捨ててから。
他の連中は放って置いて、其の儘森の中へと再び奔ろう
今度は、途中で待ち構えたりもせず、一目散に逃走だ
恐らく何人かは、騒ぎの中で砦に逃れて仕舞って居る筈であり
もう、此処へ留まって居るのは、限界だ。
――夜は近い、最早今日の内に街まで戻るのは無理だろう
せめて――娘を人質にしながら、道先案内人を、務めて貰おう)。
■ティクス > 「なっ、ぁ゛……ぅ、っげほっ、お…おまえっ、 …かふ、ぇ゛ほ…!!」
何せ人の半分で、視界を奪われてしまうのだ。
少女は完全に暗中の状態。涙が止まらない視界に、一瞬、何か影が映ったかと思えば。
次の瞬間中空へと掻っ攫われて。肌に感じる冷たさは。結構な速度で移動する向かい風。
自分が捕まったのだと気が付く頃には。もう、再び森の中へと。連れ込まれているのだろうか。
…その頃になればようやく。男と遭遇した盗賊団達も、態勢をたてし始めるのだろうが。
這々の体といったありさまの彼等が、一人だけ連れ去られた兵士を、態々取り返しに来る…というのは。先ずないだろう。
それよりは、加速度的に数を増す、依頼を受けたのだろう傭兵や冒険者達についてを。
出来得る限り事細かく報告する為。砦への帰還を優先してしまう筈。
…結果、そのまま連れ去られる事となった少女がどうなるのかは。恐らく男次第。
少なくとも、盗賊団の支配域を抜ける辺りまでは。解放されるとは思えないが。
その先どうなったのか、無事解放されるなり逃げるなりしたのかは…また後日。
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」2(イベント開催中)」からティクスさんが去りました。
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」2(イベント開催中)」からグライドさんが去りました。