2023/05/27 のログ
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」にラディエルさんが現れました。
■ラディエル > 「――――……失敗、したかもな……」
溜め息交じりに呟いて、立てた片膝の上へ顎を乗せた。
両手はその膝を抱え込むようにしているが、手首には黒鉄の枷が填まり、
立てていない方の足、前に投げ出された方の足首にも枷が填まって、重い鉄球が鎖で繋がっている。
薄暗く、じめじめとして黴臭い、何処かの小屋の片隅。
同様に自由を奪われた者たちと共に此処へ閉じ込められたのは、少なくとも半時は前のことか。
つまりは捕虜、あるいは獲物、呼び名などどうでも良いけれど、
自由意思を主張し、行使することは、恐らく難しそうだった。
己以外の囚われ人は、若い娘が多いせいか、
皆で肩を寄せ合い、震え、啜り泣いているけれども、
己の場合、其処まで差し迫った恐怖を覚えてはいなかった。
何しろ人ではない訳で、彼女たちのように守りたい純潔も無い訳で。
つい先刻、此処へ連れ込まれる直前に一人だけ、何処かへ引き摺られて行ってしまった、
中でもひときわ可憐だった少女の行く末など、案じるだけ無駄だと解っていても―――――
「………いてて」
ついつい余計な口を利いて、思い切り脇腹を蹴り飛ばされた。
多分痣になっているだろうし、未だ痛みも残っている。
結局何の役にも立たなかったから、胸の奥にも苦いものが蟠る。
けれど、もし、次に小屋の扉が開かれて、例えばすぐ隣に蹲って泣く子供が引き摺り出されそうになれば、
きっとまた、無駄な口を利いてしまいそうな気がしていた。
■ラディエル > すぅ――――― はぁ――――― すぅ―――――……
暫し、意識して深く、ゆっくりと呼吸をしながら、目を伏せて神経を研ぎ澄ます。
せめてもう一度蹴り飛ばされても大丈夫なように、先刻の痛みは排除しておきたかった。
丸めていた背を少しずつ起こし、ひとくくりにされている手を、そっと腹の辺りへ宛がう。
掌で触れて、そろり、力を込めて―――――溜め息。
「……もう一度、―――――……」
上手く力が巡らなかったようだ、と鈍く広がる痛みを遣り過ごしながら、
再び、最初から手順を繰り返すことに。
隣から聞こえる啜り泣きが、か細い寝息に変わる頃。
己もまた、束の間、まどろみの中へ落ちて――――――――――。
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」からラディエルさんが去りました。