2023/03/31 のログ
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
メイラ・ダンタリオ >
 夜の戦場
 盗賊共は 少ない群れ 弱い村 見えない夜 を好む
 乗じること 夜襲すること それらは盗賊らからしてみれば潜みながら行う行為として
 そう、いつもしていることと変わりない。

 勇ましい強盗ばかりが盗賊共ではない
 集団性を帯びながらも性質はコソ泥のほうが 勇気も肥えるというもの
 生き延びることを優先にしたのならそれもまたありえたもの

 でも今そこは 火に包まれている。


        「(ニィィィィッ)」


 黒い真銀に身を包み、膝までの長い黒髪を一本の三つ編みに変えた姿
 三つ編みは尾ではなく、付け根と尾でぐるりと回って束ねているのなら
 それは戦場の装いの一環だろう。
 右手には長槍を携え、腰には変わった拵えの剣を纏う。

 赤い瞳は炎に照らされ 牙連なる口元は、三日月の笑みを浮かべて地獄絵図を眺めていた。


        「“アレ”の言葉が発端とはいえ、中々いい付き具合ですわね。」


 地獄の光景を見ながらメイラは、周りで燃える盗賊らを眺める。

 魚脂の柔蝋 燃ゆる琥珀水 錆びた鉄 金属の粉末
 べっとり と 激しく燃えて 反応し 火花を肥やす

 それらに後は火が掠めればいい
 雨が四度降ったいい湿り具合の山中 燃える心配すらない
 灰色雲の続いた空は森を滅さない
 目の前の盗賊ただけが、こびりつく火泥に喘ぐ。

 火で攻めようと誰が言ったのか
 手持ちの火薬と明りの材料 そこらに転がる屑鉄錆鉄
 膠着し 現状余り進まない今だからこそできる御遊びだ。
 暗い夜の山 今や火祭りのように周囲で火が踊っている。
 抱き着く前に 槍が 弓が 飛ぶ


        「剣撃と剣花だけでは得られない気持ちでしょうね。
         わたくしの隊の皆は猛烈で苛烈 でも他はそうはいかない。」


 悲鳴 悲鳴 悲鳴 嗚呼


        「少しは溜飲が下がったと思えるのだけれど、どう?」


 隣の同輩に声を掛けながら 周りの弓と弩持ちが近づく火に、矢を打ち込む。
 これでは矢がもったいない 燃えては回収もできないかと顎を撫で。


        「槍を主力に 火泥に触れないよう 礫も用いなさいな。」


 逃がさず まとめて 投げて 塗れて 火を打って
 突っ込まずにその結果を上げるなど久しぶりだと、メイラは炎に照らされながら笑みを浮かべた。


        「嗚呼 王にもこの光景を見ていただきたかった。」


 そう述べて 自身に迫る火達磨の首を、大笹穂の刃が ぞぶり と片手で振り切るや
 ごろり ごろん と、しとど濡れる葉の上に転がって、バチバチと音を立てるだろうか。

ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。