2023/02/17 のログ
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
■メイラ・ダンタリオ > ◆
城塞都市アスピダ 城門前にて
時間帯は、明朝前の出来事
今日の日明りは少し昼間の空気をマシにする程度に訪れるはずだった。
だがその手前 まだ夜が消えていない時間帯は、頬に突き刺す冷気が辺りに満ちている。
雪で覆われた柔らかい層などは既になく、周りは湿った黒い土 乾いた黒い血染みの雪
踏み荒らされて名残も糞もない 荒らされた雪の大地というものはこうも醜くなる。
城門前ならば、それは猶更だった。
―――その場所を、今またぶつかり合う勢と勢がいる。
メイラ・ダンタリオを含む待ち構えていたかのように激突する勢
城門から夜の終わらない内から動き出そうとしていた勢
この二つが、空が白む手前から激突していた。
「―――ウ゛ォラァ゛ッッッ!!」
飼い慣らされていた馬ではない、山育ちには打ってつけな毛深い角蹄獣
その首ごと、地面を奔るメイラが両手に携える大剣擬きを振るい、すれ違いざまに落とす。
ドンッ という音が周囲に響く。
騎手と蹄主の二つの首が、宙を舞う 狂々 狂々 と。
その描かれる円の向こう 赤い瞳はぎらつき、この暗い中でも見えているかのよう。
ギザ歯から漏れ出る凍り付いていく白い吐息の濃さ
臓腑の熱がどこまで高まっているのか。
その吐息の色だって、先ほどまでは隠していた。
口の端から細く、鋭く吐き、 ハァ ではなく シィ の発音。
細く鋭く出す呼気は冷えることで、その白さを消し、悟らせにくなる。
狩人の呼吸の一つだろう。 だが今ではまるで違う 反転して、獣の呼吸のよう。
■メイラ・ダンタリオ > ◆
ただでさえ黒い塊が、黒鉄の鉄塊を乗せてやってくる。
甲冑の擦れる音 靡くマントの音 白い肌 ギザ歯 赤い瞳
それらが、走りながら色を伸ばして迫ってくる。
騎手を跨らせる蹄主からしてみれば、それらは大きな黒い獣
脂を載せた熊や育ったコヨーテと変わらない。
逃げを打つ前に、足が震え 怯える。
獣でも人間でもないなにかという認識は 逃げと恐れを同時に蹄主に抱かせた。
轡の先 手綱を懸命に引く騎手の言葉も届かず、黒い眼は最後、騎手と共に宙を舞い
ぐるぐる ぐるぐる と空で回るという崖から落ちた時と同じ景色だと、悟らせて暗転した。
「シャアアッ!!」
メイラが、首を落とし、ぐらりと傾いて躯が倒れる前に、足首を回して次へ迫る。
肩に乗せる鉄塊をまるで片手剣を扱うかのような、腰と下半身の動き。
足踏みだけが重く早く、ギュウウウウと雪を抉って黒い地面を覗かせる。
それに対し、周りが間合いを取って混乱に乗じた動きで蹄主を 徒歩兵擬きの賊らを屠る。
獣と同じ 首に噛みつくように剣を突き立て 弩を放ち 時には数人で押し倒しす
切っ先が上方から下方へと、両手で思いきり突き込めば、膠で固めた革の鎧程度、ずぶりずぶりと押し込まれる。
一度目で切っ先だけだったならむしろ拙い 手ごたえの無さから何度も突きこまれていく。
メイラの狂気を滲ませた動きは、周りに狂気を伝染させる。
勝ち戦に跨る士気のように 続けていく。
低俗な者は顔を歪ませる。
なんで今お前らが待ち構えているんだよと 悪態をつく。
経験を重ねた者らは顔を歪ませる。
騎士になれなくて賊になった 落ちぶれて賊になったのに
なんで狂っているお前が、そんなに満ち足りた貌で騎士を立派に勤め上げているような顔を
狂笑の間から覗かせて、己こそが王に対し勤め上げていると笑みを覗かせるのだと。
嫉妬の灼けつく息を吐く。
なんでお前が
なんでお前なんかが
ずっとまともに見えるんだと
狂った者と落ちぶれた者らの激突の感情は泥と澄み切った水のようで
全員が歯をそれぞれ違う理由で強く噛んだ。
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。