2020/06/08 のログ
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」にエラさんが現れました。
■エラ > ―――――暗い、と、ぼんやり思った。
月の見えない夜なのか、其れとも曇天の夜なのか、此処から窺い知る術は無い。
蒸し暑い夜なのか、肌寒い夜なのか、其れともそもそも、夜ですら無いのか、も。
感じるのは只、気怠さ、そして、身体の奥に重く蟠る熱の名残。
苦痛も快楽も恐怖も憎悪も、何もかもが遠く翳みつつあった。
「―――――…眠い、わ」
溜め息交じりにそう呟けば、自ら回復させたばかりの関節が僅かに軋む。
いっそ意識を手放して、良い夢も悪い夢も見ずに眠りたいけれど、
――――果たして、其れは何時の事になるものか。
此処は城塞都市の一角、古びてはいるが頑丈な作りの小屋。
壁は分厚く、唯一の出入り口である扉には重い錠が降り、
窓の無い小屋の中から、外の様子を知る事は出来ない。
出来たとしても、何の希望にもならないだろうが―――――。
調度の類はほぼ皆無、寝台すら無く、与えられたのは敷布一枚。
両手を後ろ手に括られた不自由な格好で、何とか其れに包まって身を丸めたが、
身体を満足に休ませられる環境とは、御世辞にも言えなかった。
けれども此れは罰なのだと、男たちは言った。
逃げ出す気は無かった、と訴えたところで、聞き入れられはしなかったろう。
彼等には、只、己を痛めつける口実が欲しかっただけであろうから。
一陣の嵐にも似た時間が過ぎ去り、身体は少しずつ回復しつつあるが、
―――――回復した頃合いを見越して、また誰かが来るかも知れぬ、と思えば。
癒しの術等持たぬ方が良かった、と、もうひとつ溜め息が零れる。
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」にホースディックさんが現れました。
■ホースディック > (其の話を伝え聞いたのは、朝になってからだった
丁度己の帰還と入れ違いになって居たらしい
夜の森を彷徨うなぞ、自殺行為だなぞと言う者も居れば
逃げ出せる筈が無いだろ、と嘲笑する者も居た
其の中の何人が、果たして、女を小屋の中で嬲ったのかは知る由も無いが
騒がしさが静まり、小屋の様子が落ち着いた暫く後で、扉を、錠を開く音が響く
まるで、牢屋めいた其の場所に拘束された女の前に、現れた新たな男、一人
外鍵を、内側に掛けて、相変わらず密室を保ちながら
毛布に包まる事だけを赦された女の傍へと、歩み寄り。)
「――――自棄にでもなったか。
それとも、逃げる気が沸いたか?」
(響かせる声が、早々に女へと問いかける事で
其の正体が暗闇の中でも、誰であるかは女にも判るだろう
体力と魔力を使い果たして居るのか、其の消耗を感じ取るのは
同じ様に、魔力を使う術を得ているから、だろう。
明かりを灯す事は無く、暗闇の中、女の傍へ屈み込み。)
「―――……如何なるかは、予想出来た筈だ。」
(淡々とした、嘲りとも、同情とも異なる音色の問いが
女へと、向けられるだろう)。
■エラ > 静寂が重く圧し掛かるような空間に、鈍い金属音が響く。
扉を封じた錠前の解かれる音だと気づいて、無意識に敷布の中の身体が強張った。
息を潜め、身を縮こまらせていたところで、此の場に於ける唯一の虜囚たる身には無意味だろうけれど。
扉が開け閉てされる音を丸めた背中で聞きながら、行動を起こさないのは、
当然、其れだけ消耗しているからであり。
近づいて来る足音はひとつ、―――――其れをせめてもの救いだと、判断する気力も無く。
「―――――――――、」
其れでも、掛けられた声が誰のものであるか気づけば、そっと息を詰める。
闇に乗じて動く事に慣れた男が、傍らへ屈み込む気配。
其方へ顔を向けるでも無く、敷布からはみ出た白い背中を向ける儘、
「―――――今度こそ、殺して貰えるかと思ったの、に、
………ツイてないわ、……私、未だ、息をして、る」
問い掛けへの返答と言って良いものか、少しばかりずれているようでもある。
何れにせよ、返した声は未だ、嵐の余韻に擦り切れていた。
剥き出しの肩を上下に一度、呼吸ひとつの間を空けて。
「………其れとも、貴方が私を、殺してくれるの」
付け足された其の言葉にだけ、僅か、感情的な揺らぎが有った。
其れは願望だったか、或いは、怯えの色だったか。
■ホースディック > 「―――――……俺は、死を救いだとは思わん。」
(女の答えは――答え、ですら無いのかも知れぬ言葉は
確かに、自暴自棄めいた様に聞こえるのだろう
破滅を望む台詞に、返った言葉は生憎、女とは真逆の代物であったが。
女の首に手を掛ければ、其れこそ容易に、息の根を止める事が出来るだろう指先は
けれど、緩やかに女の被る毛布に手を掛け、其れをゆっくりと引き剥がして行く
其の、白い背を暗闇の中、静かに眺めながら、そっと掌を這わせ。)
「――――――……死にたいなら、何故治療した?」
(――問いを、女の言葉へ合わせて重ねれば。
治りかけの擦り傷や、乱暴に扱われた故だろう打撲の
薄らとだけ残る痕を辿り、そして、其の掌を、女の腰へと添え
此方側へと、向き直らせては、其の体躯に影を落とし
――女が暴れなければ、口付けよう
其の唇を割り開き、緩やかに舌先を押し込みながら
其の身に、自らの魔力を受け渡してやる為に)。
■エラ > 「………救われたい、訳じゃ無い……わ」
何方かと言えば、只、眠ってしまいたいだけだ。
考える事も、思い悩む事も、堕ちた己を嘆く事も無く。
けれども心の何処かで、此の男が己を殺してくれる事等無いと知っていた。
辛うじて身に絡ませていたものが引き剥がされ、闇夜に溶け切れぬ白磁が粟立つ。
男の掌が触れて辿れば、熾火のように燻る熱が、ぞろりと肌の内側へ這いずり、
己は軽く口唇を噛んで、其の感覚を遣り過ごさねばならなかった。
「放って、おいても……此の程度じゃ、死ねない、もの。
……無駄に、痛い思いをしたい、とは、―――――……」
思わない、と続ける事は出来なかった。
細く括れた腰へ男の手が掛かり、反転を促され向き直った己に、
男が顔を寄せ、口吻を仕掛けてきた所為だ。
――――逃れる気力も、抗う体力も既に無く、己は諦めて口唇のあわいを解く。
忍び入ろうとする濡れた軟体を受け容れ、緩慢な挙措で己が舌先を絡ませれば、
其れだけで僅かに染みた、男の魔力に咽喉が鳴る。
洩らした吐息が一層熱を孕み、仰臥する裸身が甘くのたうつ。
口吻の作法を知らぬ身でも無い癖に、金色の双眸は薄く開かれた儘、
己に口吻ける男の貌を、茫洋と見つめ続けていた。