2023/06/24 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山中」にユンジェンさんが現れました。
ユンジェン > タナール砦を経由しない、王都への進軍経路の模索中では、あるが──
その案の実行可能性が現状では極めて低いとも、また重々承知の上であった。
何故か。
城塞都市アスピダの存在だ。
纏まった軍勢を動かす場合はどうしても、地形により進軍路が限定される。その途上に存在するアスピダは──タナール以上の鉄壁城塞。
王国が正常に機能しているなら、進路として検討する理由はどこにもない。
……が。

「──そろそろ、歩哨の活動圏内でしょうか」

少女は巨木の影から顔を出し、遠く、木々の合間から見える、都市の炊飯の煙を眺めていた。
アスピダが現状、王国の統治下を離れ、賊徒の手にあるというのは誰もが知るところだ。
ならば同じく王国と敵対する魔族側としては、協調路線を取って、あわよくば通過する軍勢を素通りさせてはもらえないか──と考えている訳である。
とはいえ現状、アスピダを守るのは盗賊の集団。護衛もつけない少女の姿など、彼らには美味なる餌に見えよう。

「下手に見つかって、戦いになるのも……あまり好ましくはありませんか……」

敵対したい訳ではないのだ。
どうにか荒事にせずアスピダまで行けないか。それが目下の悩みであった。

ご案内:「九頭龍山脈 山中」にネメシスさんが現れました。
ネメシス > 九頭竜山脈に響く複数の蹄音。
アスピダの監視に派遣された王国側の戦力の一隊である。
数機の軽装騎馬を引き連れた白銀の騎士、ネメシスは久方ぶりの侵入者の報告に胸を躍らせていた。
それを察してか、供の者達も馬の速度を上げる。

やがて土煙をあげながらドレス姿の女性らしき人物を取り囲むように展開。
馬の足を止めてから、白銀の騎士が一人女性の前に近づいてく。

「貴女、この辺りでは見かけないわね。
こんな物騒な場所に何か用かしら。」

馬上から身を下す白銀の騎士。
その表情からは今後の展開への期待が伺える。

ユンジェン > 蹄の音が聞こえた時、少女が選んだのは逃走ではなく、その場で待つことであった。
馬。山中。周囲の木々。
巨木に背を預けるように立ちながら、〝仮想敵〟と周辺の地形を照らし合わせ、状況を鑑みる。
……やがて〝仮想敵〟が現れた時、少女はいつものように、人形の如く無機質な表情をしていた。

「使い古された表現とはなりますが──他者に誰何を問うならば、まずあなたから。
 アスピダの賊の一党か……それとも、煙たがられて僻地に送られた騎士か、いずれでしょう……?」

視線がちらりと、馬の方へ。
先んじて潰そうか。いいや、森の木々の中なら、馬はさほど驚異ではない。
脅威は寧ろ──馬から迷わず下りた騎士の方か。

ネメシス > 馬の速度を振り切るのは難しいとはいえ、隠れることも考えず向かい合う。
それだけで相手の強さの一端が垣間見えた。
事実、取り巻き連中は囲ってはいるものの及び腰だ。
練度の低い兵たちでは目の前の相手は手に負えない、ネメシスはそう判断した。

「仕方ないわね。
私はネメシス。 貴女が言う所の僻地に送られた騎士になるわね。
でも煙たがられて着てるわけじゃないのよ?
ここだと思わぬ強敵と出会えたりするからね。」

現に今そうだと言わんばかりに笑みを向ける。
少女の居る場所は草が茂り、少し走れば森が広がっている。
ネメシスは少女を見やりながらも周囲の状況を把握していく。

そして、供の兵たちは馬に乗ったまま手槍を携えていた。
距離を取って戦うことで格上相手でも足止めはできるようにとの考えである。

「さて、こっちは先に名乗ったわよ。
貴女は? そもそもこんな所で何をしてるのかしら。」

変わらず笑みを湛えたままのネメシス。
だが問いかけと言うには聊か語気が強い。

ユンジェン > 得物のハルバードは、右手に軽く掴んだまま──鎧を砕く重量武器としても使える代物ではあるが。
しかしその穂先は地面に落ち、突き刺さっている。傍目にはただ保持しているだけと映るだろうか。
少女自身の手足も脱力している。が、それは、戦いに備えていないことを意味しない。
寧ろ明らかに、戦いに挑む為の備えを、身体の内に完成させている──

「──ユンジェン。魔族」

名乗った。名乗らずとも良かろう──外見では判別のし難い──己の種族まで。

「ダイラスを陥とすにあたって、アスピダと連携を取れないか。
 或いは素通りはできないか……と、考えていたところです。
 ……ご一緒にどうですか、港湾都市の略奪など?」

ネメシス > 相手の道具はハルバート。
斧槍とも言われ、使い手次第で多様な行動がとれる武器だ。
目的は兎も角、油断して当たれるような相手ではない。
全身の力を抜いているようだが、それも所謂達人の類だとよくあることで。

「あら、素直に魔族ってことまで教えてくれるんだ。」

事前に偵察隊から報告を聴いているし、実際に一目見た時点で検討はついていたのだが。
ネメシスは口角を吊り上げる。

「いやいやいや。
こっちは王国の騎士だって言ってんでしょ。
いくらなんでもそんな悪事の提案には乗れないわよ。
それより…。」

そう言うとネメシスは腰に差している剣の握りに手を伸ばす。

「そんな悪いことを企む魔族ちゃんにはおしおきが必要だと思わない?」

まだ抜いてはおらぬが、いつでもそうすることができる状態で問いかける。
大人しく従うのなら取り調べと称して楽しめるし、そうでないのなら組み伏せる手間を加えればいい。
久方ぶりに強者と出会ったネメシスはそんなことを考え、声に感情が載ってしまう。

ユンジェン > 「私はまだ、軍勢を持っていませんから」

背後の巨木に預けた背を、少しだけ浮かせた。
ほんの僅かな姿勢の移行だが、戦闘に於いては十分に大きなファクターの変化。
そして少女は変わらぬ表情のまま──幾分か声に甘さが混ざったような。

「もし本心から〝強敵との戦い〟を望む場合、些か物足りない……かと、存じます。
 ああ、いえ。もちろん私ひとりでも、お連れの方を皆殺しにした後、あなたを犯す程度の事はできましょうが。
 それでも、たったひとり。仰々しく部下を連れて駆けるには……物足りないのでは……?」

攻撃が始まっているのだ。それは魔力だとか催眠だとかではなく、ただ純粋に言葉だけのものではあるが。

「……忠義の士という風情でもありませんが。王国に忠義立てするのは……敵に回すのが怖い、のでしょうか……?」

貴女より一回り小柄な身体が、上目遣いに見上げながら、挑発的な言葉を吐く。