2023/03/09 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にキョウカさんが現れました。
■キョウカ > ――狩りを調子に乗ってしていると、血に塗れてしまうことがある。
つくづく修業がなっていない。そう思わずにはいられない。
視線が通るのであれば、射る方が早い。あるいは灼く方が早い。
それをあえて刀を使おうと腐心をするからそうなるし、避けずとも良いという心構えが良くない。
反省がなっていないと思えばそれまでである。だが、其れよりも先に身体を洗いたい。
山賊街道の周辺に出没するという盗賊の痕跡を辿り、討ち入っての切った張ったの後。
その姿は山奥でひっそりと湧いた温泉の一つにある。
温泉街まで下りて、美食で舌鼓を打ちたいところでもあったが、仕方がない。
人里に降りるにしてもせめて、身体を洗っておいてからでなければ、何かと困る。
「――あ……つくづく何とも僥倖の限りでござる。ご馳走の類でもあればもっと良かったでござるが……」
森が囲う中、川沿いに温泉が湧いている。発見者が整備など手を加えたのだろうか。
数人がまとめて浸かれる位に深く掘り、自然石を並べ、敷き詰めるように体裁を整えた場所に肩まで浸かる姿がある。
長い髪を解いて透明な湯の中に晒し、裸体も隠すことなく沈めた女の姿だ。
脱ぎ捨てられた服は、近くの川で洗ったのだろうか。
乾き切らぬ布地が、角が削れて丸くなった大きな岩の一つに放り出されている。
湯に半ば浸かった陶器の瓶の中身は、酒であろう。酒器も何もなく直接瓶から呷り、酒臭い息を零して空を見る。
丸い丸い月がぽっかりと浮かぶ。風流は詳しくはなくとも、成程。酒が美味く呑めそうな空であった。
■キョウカ > 「あれらから蓄えでもついでに奪っておけば良かったのでござろうが、いいや、良くないでござるな」
略奪者からさらに略奪するというのは食って食われるもの、捕食者と被捕食者の関係と似る。
だが、そうすると周辺の集落から奪われたものを取り戻しに来た民が困るだろう。
故に放置されていた食料や酒樽の類には手を付けなかった。
金銭狙いではなく、武者修行としての行為である。如何にヒトデナシの血が入っていても、それは良くない。
巷に戦乱が続く世と是とできる時勢でなければ、少なくとも良い行為ではないものと教えられている。
額から垂れた前髪が垂れてくれば、それを払いのけるように髪をかき上げる。
そうする所作で嫌でもすぐに触れてしまうものがある。
まるで紅玉で出来た刃のように硬く、鋭利な突起物である。角である。真っ先に人目に触れてしまう箇所である。
顔を隠すやら、外套で隠す等いろいろ試したことはあったが、結局駄目だった。嫌でも目につかざるを得なかった。
「……――難儀なものよな」
ぽつとこぼしつつ酒瓶を呷り、足を延ばす。それだけの所作で大きく二か所揺れる箇所がある。否、三か所か。
湯面に浮かぶ大きな肌色の半球と湯の中の肌色の性器だ。
どちらも中身がみっちり詰まっているかの如く、夜風にさざめいて生じる湯面の波に踊らない。
それぞれ持ち主の身じろぎによってのみ、揺れる。揺蕩う。遠く遠く、聞こえる吠え声は狼のそれだろうか。
■キョウカ > さて、気づけば酒瓶の中も軽くなる。
そろそろ洗った服も夜風に吹かれ、多少は乾いた頃だろうか。
そんなことを思いつつ、のっそりと湯の中から身を起こし、立ち上がろうか。
「……しまった。服を乾かすも、吾身を乾かすも等しくやるべきでござったか」
そこでふと、気づく。
ひとまず服を洗ったのまでは良かったが、自分の身体を乾かす算段と手段が無かったのだ。
身体を洗いたいという欲を先にしたのがまずかったか。
あちゃぁ、と言わんばかりに顔を手で覆い、水が滴る髪を身にまつわりつかせつつ、近くの岩場に座す。
容易く風邪をひかないのだけは救いか。火を熾して乾かすにしても、火力が強過ぎては面倒なことになりかねない。
そのまましばし、じっと佇んで――。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からキョウカさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にエレイさんが現れました。
■エレイ > 「──あーもうベトベトだよ……」
月の明るい夜。
そんなウンザリした声を漏らしながら、悠然と山道を歩いて下っている金髪の男が一人。
その全身は、今は何やら赤黒い液体で言葉通りにベトベトである。
──というか、それはあからさまに血であった。
そんな男の挙動は何かしらの不具合を感じさせるものではないことから、この血は
男自身のものではなく、返り血の類であることも読み取れる。
「麓に降りるまでに一度流しでもしないと血だらけのやべーやつ扱いされてしまうのは
確定的に明らか。んんむ、どっかこの辺に川とかありましたかねぇ……」
ぬぅん、と唸りながら記憶をたどりつつ。
全身血まみれのホラー状態の男は、ざしざしと歩を進め続け。