2022/12/10 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にティタノキマイラさんが現れました。
■ティタノキマイラ > 刻限は真夜中。
夜空は厚い雲に覆われ、切れ間より月光が降り注ぐ。
此処は九頭龍山脈の木々に挟まれ獣道よりマシ程度に整備された山賊街道である。
ズシン……ズシン……ズシン……。
山賊街道に重装備の騎士よりも重たい足音が響く。
僅かに地面より砂埃が舞い、重いその音がする度に小動物が木々の合間から逃げていき、明らかに異様な空気が山賊街道を山中を支配する。
重たい足音の主は1匹の巨大な獣。
雄獅子の頭部、巨猿の身体、蛇の尾に巨熊の毛並みを合わせた子供が作る出来の悪いパズルか落書きのような魔物である。
それが毛並みに包まれた大きな足で地面を踏み固めながら歩き、時折立ち止まり、獅子の鼻腔をふすふすと拡縮させ匂いを嗅ぐと共に、また歩くを繰り返し、巨体を隠しもせず街道を闊歩し続ける。
「………グルルルル。」
巨獣は喉を小さく鳴らし探しものが見つからない事に苛立ちを覚え始めている。
巨獣が探しているのは今夜の食料、或いは今夜の雌。
喰らえ、増えよ、進化せよ、と促す本能に従い、そうすべく獲物を見つけるべく、魔獣はティタノキマイラは山賊街道を進む。
鋭い獅子の眼光は闇夜の中を見通し、鼻腔は微かな匂いも捉え、もう一つの眼である尻尾の蛇の眼は僅かな熱も逃がさない、そして存在を隠しもせず街道を闊歩しているからこそ、今夜の街道には酷く獣臭が匂うだろう。
■ティタノキマイラ > ギシギシギシギシ……。
街道まで延びた邪魔な太い木の枝を器用に動く巨猿の手で掴むと、握り締め半分以下の太さまで圧縮すると、そのまま太い枝を圧し折り、圧し折ったその枝を口寂しさを紛らわせる為か、口に放り込み噛み締めながら、闊歩を続ける。
鼻腔にふすふすと音をさせ拡縮させても美味そうな匂いはしない、立ち止まり耳を澄ませても音を捉えることはできない、どうもこの辺りには己しかいない様だと理解するまでそう時間は掛からない。
獲物は見つからない。
かといって八つ当たり出来る魔物もいない。
それを理解してしまえば街道を歩く理由も無くなり、巨獣は身体を揺らしながら、山中の方へと重たい足音と地響きと共に入って行き、木々の合間へとその姿を消したのだった。
翌朝
街道には馬車だった物の残骸や半分ほど食われた二頭の馬の亡骸が発見されたという一方が冒険者ギルドに舞い込むだろう、それが巨獣の憂さ晴らしか、山賊の仕業かどうかはまだ議論中である。
もし前者であればギルドには巨獣討伐のクエストが張られるのは当然のことで。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からティタノキマイラさんが去りました。