2022/12/05 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にエレイさんが現れました。
エレイ > 「──ほいほい、ほいっと……」

山奥の、とある山賊のアジト。
その中で現在、薄汚れたなりをした屈強そうな男が、金髪の男に組み伏せられて縄で縛り付けられているところだった。

縛られている男は山賊の頭領。すでに気絶させられているようで、白目をむいて力なく開いた口から涎さえ垂らし、
縛り上げられている最中も無抵抗でピクリとも──否、時折ピクリと身じろぎはしている。
そしてその頭領を捕縛した金髪の男は、山賊たちの生け捕りの依頼を受けた冒険者。
すでに他の山賊たちの捕縛は済ませ、今縛っている頭領を残すだけだった。

「ふぅ。これに懲りたらもう悪いことは改心するべきだろうなまああ聞こえちゃいないだろうが」

などと眉下げて笑いながら、捕縛を終えた男はウエストバッグから何かしらの紙を取り出すと、ベシっと雑に頭領の身体に押し付ける。
するとその紙に書かれているもの──魔法陣が光を放ち、そこに刻まれた魔術が発動。
紙が消滅するとともに陣が頭領の下の床に広がり、彼の姿をそこから光とともに消し去ってしまう。
転送魔術により然るべき場所へと送られたのだ。他の山賊たちも同様に送られているため、今やアジトの中に山賊は一人もいない。
転送を見届けると、男はのそりと立ち上がり。

「これで依頼は早くも終了ですね……すぁて、軽く中を見回ってから帰るとするかねぇ」

ひと仕事終えてぐーっと両腕上げて背筋を伸ばしてからそう独りごちると、男は
アジト内を見物すべく悠然と歩き回り始め。

「……んー? 地下室があったのかという顔になる。まああド定番だが」

見回っているうちに、地下に通じる階段を発見して男は眉を持ち上げる。
山賊のアジトの地下室といえば、奪った金品類の隠し場所か、抜け道か──あるいは牢屋あたりか。
適当に推測しつつ、すたすたと階段を降りて地下へと向かう。
やがて降りた先に見えてきたのは──ちょっとした部屋と、その奥に張られた鉄格子。

「……なんだ牢屋か。おや……誰かいるのか。もしもーし、大丈夫かね?」

詳しく見てみようと足を踏み出したところで、鉄格子の向こうに身じろぎする人影らしきものが見えて眉を持ち上げ。
運悪く山賊たちに捕らえられてしまった誰かかな、と思いながら、間延びした声をかけつつ、ゆるりと牢屋へ近づいて
中の人影の姿を確認しようとする。