2022/10/17 のログ
■エリーシャ > 男が熱くなればなるほど、娘のこころは冷えてゆく。
そもそも見ず知らずの男に、指図を受けねばならない謂れは無い筈だ。
怒りを露わにするよりも、能面じみて表情を消してゆきながら、
眼前に立ちはだかろうとする男を睥睨し。
「おまえが誰とわたしを同一視しているのか知らんが、迷惑極まりない。
わたしの生き方も、わたしの死に場所も、皆、わたしのものだ。
おまえがそれをどう解釈するのも勝手だが……」
おのれにとっての善を、正しさを、押しつけられるのは迷惑なのだ。
何気無い風情で柄に手を掛け、うんざりしたように肩を揺らして息を吐く。
僅かに俯いた刹那、ほんの一瞬だけ、瞳の奥に金色が閃き。
――――――次の瞬間、娘はしろがねを一閃する。
男に当てるつもりは無い、ただ、少し隙を作れれば充分だ。
そうしてその一瞬の隙に、娘は傍らを擦り抜けてゆくだろう。
人並外れて敏捷な娘の、全力疾走だ。
瞬く間に、漆黒の娘は闇に紛れて――――――。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からエリーシャさんが去りました。
■クレイ >
「強いていうのなら今まで俺が殺してきた相手や、死んでいったバカ共だよ」
なんてニヤリと笑って言い切る。
能面の様な顔に対して表情を前面に押し出す。
相手の動きは見ていた。剣による一閃。それに正面から迎え撃とうと動くが。
「カハッ」
血が漏れ出しそれ所ではない。何とか振るうもその剣は虚空を切り裂く、もしかしたら髪の毛数本くらいは持って行けたかもしれないが暗闇ではわかる由もなく。
去っていったその後ろ姿は既にみる事も叶わない。当然追いかける力などあるわけもなし。
「ホント、死にたがりは嫌いだ」
自分も傭兵をしている。死んだらそこまで、だから人の事は言えないのかもしれない。
それでも自分はその上で生き残るように立ち回る。だから似ていてもわずかに違う。
「しかもどうすんだよこいつ。愛馬を置いてくんじゃねぇよ」
体を引きづり、馬を見る。何か痕跡はないかと。そして鐙を見る。
こういうのには家紋などが入っている事がある。自分は家紋など覚えていないのでわからないが、わかる人が見ればわかるだろう。
「こいつがあれば十分か。一応退却部隊までは連れてってやる。ご主人様に再会できるかは……運次第だ。まぁほぼあきらめとけ」
と馬に言えばそのまま手綱を引いていく事だろう。彼女の別れの挨拶の意味を理解していたのか、その馬は引かれるままについてくる。そのまま任務が終われば帰還して馬を軍に引き渡すだろう。
その後再開できたかは、少なくとも自分は知る事はない。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からクレイさんが去りました。