2022/05/13 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にユージンさんが現れました。
■ユージン > 街道から少し脇に逸れた空き地。
灰色の煙がひとすじ、ゆらゆらと風に煽られ静かに揺れている。
――――煙の出処を目で追えば。
大小さまざま、サイズも不揃いな石を重ねて作られた小さなかまど。コの字に組まれたかまどの中では赤々と薪が燃えている。
そしてかまどの上に掛けられた金網の上では、ぐつぐつと湯の煮え滾る粗末な鍋がひとつ。
「…………」
いかにも食い詰めていると言った風のみすぼらしい雰囲気を身に纏う男がひとり。
かまどの傍らから鍋の中身を虚ろな眼差しで覗き込んでいる。
「……だめだ、湯が沸いてるのを見てたらかえって腹が減ってきたぞ。
気が紛れるとか言ったのはどこのアホだ。…………おれだったわ」
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にクローナさんが現れました。
■ユージン > 「……流石に煮えたぎった湯を飲むわけにもいかねえ。
せめてなんか煮てみるか」
言いながらポケットの中身を漁る。
糸屑だとか埃だとか、どこで引っ付いたか分からない木の欠片だとか…… 見事にそんなものばかり。
「……シケてやがるぜ」
ポケットの中身をそのへんに捨てて、溜息を溢す。
何かないものか。そう思って周囲を見回せば、一応使えそうなものがないということもない。
「あるじゃねえか……」
草。
貧乏人はそのへんに生えてる草でも食ってろ。
■クローナ > 朝から遺跡を漁るに漁りそれなりな戦利品を得た帰りの街道。
何時もよりも満足の出来る結果に軽くなった足取りで麓に向け歩いていれば風に揺れる煙に気が付く。
一瞬山火事かと思いその方向へ視線を凝らせれば、そこには空き地と石で作られたかまどで鍋を煮ている男の姿。
最初は食事の用意でもしているのかと思ったが何かを捨てる仕草の後に周囲を見回す行動は不審に見える。
しかしこんな場所でそんな事をしている事に興味も持ってしまい、街道から空き地へと進路を変え。
「…邪魔だったらごめんだけど。何してるの?」
近づいて行くと鍋の中はお湯のみな様子。
それを見て食事の用意かと思うが食べ物が見当たらず、何をしているのかと更に疑問が強くなり。
多少迷惑かなと思いながらも声をかけてみる
■ユージン > 「……ん?」
不意に掛けられる声に振り返る男。
その両手はそのへんに生えた雑草をぶちぶちと引っこ抜いたもので埋まっている。
「べつに邪魔ではないが、特に面白いことは何もしてないぞ。
草煮るんだよ。で、煮て食うの」
言いながら男は、両手に持った雑草を鍋の中へと放り込む。
漂うのは、得も言われぬような青臭さ。
乱暴に引き千切った雑草から滲んだ汁によるものだろう。
「……身体には良さそうな匂いだな」
意訳:クソまずそう。
余り見たことのない草だが、たぶん毒はない。
最低限ヤバい種類の植物知識ぐらいは頭の中に入っている。
背嚢から取り出した木の椀に玉杓子で湯だった汁ごと草を流し込む。
漂う湯気には一層濃厚な草汁の匂いが籠もっていた。
■クローナ > 「それならいいんだけど……え?」
声をかければ相手は振り返るがその手には雑草。
邪魔でないという言葉に安堵をするも、それを煮ると聞けば目を点にしてしまう。
正気かと問う前に鍋に投げ込まれた雑草は直ぐに煮えたのか、周囲に漂い出す青臭い匂いに思わず鼻を押さえ。
どう見ても毒にしか思えない雑草の煮汁から目を逸らして。
「やめた方が良くない?私が食料分けてあげるから」
何種類の雑草を煮たのかは分からないが臭いからして確実に体に悪そう。
それを良さそうな匂いという言葉に思わず静止をかけ。
草汁を椀に流し込むのを見れば慌てて荷物を漁りはじめ、食料を探しながらそれはやめた方がと止めに掛かる。
■ユージン > 「いやあ、野菜だって草みたいなもんだろ。
大丈夫。ワンチャンこっちの草だっていけるいける」
草を食うだけの気概があるなら、真面目に仕事を探せば良いと思う者も居る事だろう。
しかし違うのだ。
追い込まれない限り発露しない気概を常日頃から出しっ放しになど出来るものではない。
娘の親身な忠告にも耳を貸さず、男は躊躇なく草汁入りの椀の中身を啜り――
「ブハッ」
そのまま傍らに吐き捨てた。
「こりゃあ人類が食うには遅過ぎる味だった……。
まだパンツ穿かずにそのへんうろつくような猿だった頃に出会いたかったぜ」
せめて調味料や香辛料があればマシにはなっていたかもしれないが。
ともかく食事をするという計画はあっさりと頓挫したのである。
「で、なんだっけ。
……食料分けてくれるんだっけ。ありがたくもらっちゃうけどいいの!?
おれ恩知らずだけど! 返すアテがないからせめてもの誠意として先に言っとくよ!」
■クローナ > 「どう見ても野菜じゃないって。
絶対に体壊すよ、それ」
雑草を食べるなら動物でも探せばいいにと思う。
此処ならば頑張れば兎の一羽や二羽、運が良ければ猪あたりも居そうだし。
何よりこんな場所で食あたりは命に関わるけどな、そう思いながら草汁を啜るのを見つめ。
「そうなるよね、やっぱり」
啜った後に吐き出すのを見れば予測できた光景に呆れを見せ。
「猿でももう少しまともな物食べるよ。
木の実とかそう言うの……あそこにもあるよ」
猿以下じゃないかなとは言わず、少し先の高い木に見える食べれそうな果実を指差して。
「私も後は帰るだけだしいいよ。
少しでも荷物を減らしたいし…持って来過ぎて痛まないかも心配だから。
それって誠意って言わないよね?恩知らずって自分で言うのもどうかなって思うよ」
素直なのか飢えて考えていないのかあまりな言葉に放置すればよかったかもと思い始め。
しかし声をかけた分けるといった以上今更駄目とも言えず、荷物から干し肉や乾燥野菜を取り出すと男に差し出して。
■ユージン > 「……せめて塩がありゃ良かったかも知れねえな」
野良犬と戦って苦戦するような男に狩猟という選択肢は思い浮かばないものだ。
ギリギリで仕掛け罠による狩りや、魚釣りというところ。
……だが、動き回るの面倒くせーじゃん、という理由で結局雑草採りになったのだ。
「土食ったこともあるし、いけるかなと思ったんだけどなあ。
考えてみりゃそん時はもっと腹減ってたから、ぶっちゃけ何食っても御馳走モードだったわなあ……」
娘の向けてくる呆れ顔には気付いていないのか、そもそも気にしていないのか。
どこ吹く風、という調子で肩を竦める。
「おおー……あんなトコに木の実なんてあったんだな。
まあ、おれは高い所苦手だから気付いても採らなかっただろうけど……。
……いやいや、絶対に恩なんか返しませんってもらった後に言うより誠意ある対応だと思わねえ?」
ともあれ情報と食料の提供に感謝するぜ!
と、途端に機嫌を良くした様子で娘から差し出された食料を男は受け取るのだ。
■クローナ > 「あっても意味ないよ、きっと。
それなら汗でも入れればよくない?」
食料も塩もないのにここに来ている無謀さには呆れを通り越しそうになり。
どうやって意味ているのだろうと不思議そうに見てしまう。
「人間らしい生活やってる?
土を食べるなら働こうよ、それが嫌なら遺跡に一攫千金でも目指すといいよ」
話しを聞けば聞くほどに凄い生活。
もしかしてやばい人なのかとしみじみと思い始め。
「なんていうかさ……猿より生活水準が低くない?
こんな所で雑草を煮てる人からないか返してもらおうなんて思わないから」
それは誠意じゃないと言いたいが堂々巡りになりそうなのでそれで良いとして。
男が食料を受け取ればもう草汁を食べないだろうと考え。
「そのままでもいいし、お湯を沸かし直して煮込んでも食べれるからね?」
■ユージン > 「……おまえさんはいちいち試すまでもないくだらない事をおれがやっていると思うのだろうが……。
おれはこのプロセスを自分自身愚かしいと思いながらも、それなりに真面目に楽しんでやっているのだよ。
ちなみにどうせ汗入れるんなら美少女のがいいわ。何が悲しくて自分味の鍋なんて食わにゃあならんのだ」
ふう、と大きく溜息を吐き出せばかまどの中の薪を爪先で蹴り崩し、それから土をかけて火を消した。
「一攫千金を目指して遺跡に潜るのは普段おれのやってることのひとつでもある。
…………その答えがこれだ。上手くいかなかったから草食おうとしてんだよ!」
フシャーッ!
……と尻尾を踏まれた猫が相手を威嚇するような雰囲気を醸し出す、のは一瞬。
怒りはエネルギーを必要以上に消費する。クズはケチれるエネルギーはギリギリまでケチる。
怒りが消えるのは一瞬。食い溜めと寝溜めは大好き。
「あんたは猿以下の生活をしている野蛮人を観察できた。
おれは見物料にエサをもらえた。よし、円滑な取引ができてよかったな文明人」
背嚢に食料を詰めると、かまどの上の鍋の柄を掴んでひっくり返し、中身の草汁をぶちまけることで、燻りかけの火にトドメを刺した。
「それじゃ、おれはもう行くぜシティーガール。
おれなんかを構うヒマがあるなら、あんたは親孝行でもするがいい。
そっちのほうがよっぽど有益だ」
そう告げれば、空の鍋を担ぐようにして男は口笛まじりに歩き出す。
次の冒険のネタを考えながら。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からユージンさんが去りました。
■クローナ > 愚かしいと判っていてそれを真面目にやっているというのが先ず理解が出来ず。
それをわかっているのならどうしてそれを他でしないとかと考えてしまい。
「私もそれをやってるけど、そうなる前に何か他の仕事しないの?」
食事にすら困るなら他で稼げばいいのにそれもせずに遺跡に潜る。
そこまでして遺跡に潜りたい気持ちは分かるがそれで飢えては意味がないのではと見て。
「なんで変な風に取るのかな」
自分の言い方も悪かったとは思うがそう言ってしまうほどの事をしていた男もどうかと。
渡した食料を仕舞えば草汁をひっくり返して火を消す行為に慌てて後ろに下がって逃げ。
鍋を担いで去っていく男を見送れば、まあいいやと考えて街道に戻り麓を目指して歩き出して。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からクローナさんが去りました。