2022/05/12 のログ
タマモ > 九頭龍山脈、それなりに深い山中か。
そこを通る獣道の一本、そこに少女は居た。
がさごそと、何かを漁ったり、もそもそと、何やら行ったりしている。
その手元を見れば、ところどころ、結び目を付けたロープ。
そして、地面に散らばる落ち葉やら小枝やらが、見える事だろう。

まぁ、何をしているか、なんて言う必要もないだろう。
この獣道、そこに点々と罠を仕掛けているのだ。
…とは言っても、見ての通り、大層なものは仕掛けていない。
そこを踏んだら、ロープの結び目が引っ掛かり、吊るされる、その程度の悪戯である。
しかも、たまに結び目が解けてしまう、結構いい加減な罠だったりも。

もちろん、手抜きはわざとだ。

巧み過ぎて、簡単に引っ掛けられる、そんな罠よりも。
たまには、そうした罠も面白い、との趣向であった。

ご案内:「九頭龍山脈 山中」にガウムさんが現れました。
ガウム > 山の中には様々な生物が存在する。
虫や小動物を初め、熊や鹿等といった大型の動物も存在しており、それぞれが共存して生活していた。
だが、増えすぎたものを少し減らすことも時には大事である。
この鬼もその行動を行っていた。

「大分、採レタ…」

腰には狩りで捕まえた熊の首がぶら下がっており、皮を剥いだ鹿肉を背負いながら森の中を歩いていた。
狩りと共に生きる鬼の魔族、ガウムは生きるために森の中を歩いていた。
そんな時、また1匹程度なにか捕まえようかと鼻を鋭くさせながら獲物を探すも罠には気づかなかった。
仕掛けられた罠に思わず引っかかってしまい、足を取られてしまった。

「ウガッ…!!」

勢いよく動く視界を見ながら一瞬逆さまのなり、狩っていた獲物を落とす。
そして、適当な罠ゆえにすぐに紐は解けてしまい、地響きと共に地面に落ちてしまう。

タマモ > ぴくん、少女の耳が揺れる。
それはまず、何者かが、罠に引っ掛かった事に気付いた事に対するもの。
そして…

「………おや?」

すぐに、それが解け、落ちた音、なのだが。
落ちた際に、聞こえた声に、かくん?と首を傾げた。
それが、聞き覚えのある声、だったからだ。

そうなれば、気になるのは、仕方の無い事。
その場から、よいせ、と腰を上げると。
そちらへと向かい、移動を始めるのだ。
まぁ、そう遠くはないのだ、すぐ到着するのだが。

ガウム > 「グゥゥ…」

ゆっくりと起き上がり体に付いた土を払ってその場に座る。
状況を確認するべく周りを見れば、頭の上には千切れた縄、地面にはその先っぽが落ちてる。
どうやら、獲物を探しているのに夢中になり、小さな罠に気づかなかったようだ。

「獲物…大丈夫カ…。
ン…?」

落としてしまった獲物を確認するもどれも食べれる状態であるのを確認した。
そして、鼻を動かして気付いた何かの存在。
どこかで嗅いだことのある匂い、一先ず敵では無いため、その匂いの先を見続けることにした。

タマモ > 考える必要もなく、重い相手なんてもの、想定した罠ではない。
鬼が引っ掛かろうと、すぐに落ちるのは、当然の事だろう。
少女からすれば、引っ掛ける事に、意義がある。
だから、それに関しては、無問題なのだが…

音は間違いなく、罠を設置した場所の一つ。
相手が、己に気付いているように。
己もまた、相手に気付いている。
お互いに、視界内に捉えるのは、ほぼ同時だろう。

「っと、居た居た…あー…やはりか。
久しいのぅ、妾の罠に、引っ掛かってしまったか?ん?」

そして、ひらひらと、挨拶代わりに手を振りながら。
そんな事を言いながら、更に近付いて行くのだ。
反省?大丈夫、そんなものを容易くするならば、今の人生…人?まぁ、そんなものを、歩んでいない。

ガウム > 目の前に現れた少女。
以前にも出会ったことのあるその姿を見るも、名前までは思い出せなかった。
長い事人と合っていなかった故に名前も忘れることはあるのだ。

「カッカッカ…久シイ…。
オマエノ、罠カ?」

手を振りながら挨拶する相手に対して愉快に笑う鬼。
罠にかかったことに対しての怒りは無く、引っ掛かってしまったのは自分の責任である。
これは狩人の心得でもあるからだ。

「獲物、探シテタラ、見エナカッタ…。
コイツ、兎デモ、捕マエルノカ…?」

さらに近寄る少女に向けて千切れた縄を見せる。
わざと緩めて居たり、手抜きにしていたりすることも知らない為、罠の作りが甘いと思っており、話しかけたのだった。

タマモ > そんな、己の名前を思い出せない鬼に対し。
少女もまた、鬼の名前を思い出せないでいた。
まぁ、少女の場合、名前を覚えるのが苦手なだけ。
会った後、結構日が経つと、なかなか思い出せなくなるのだ。
まさに、今この状況な訳なのだが…

どうやら、お互いに、そこは気にしない性格らしい。
類は友を呼ぶ、と言うやつだろうか?
ともあれ、罠に掛かった事には、怒ってないみたいだ。
うん、ありがたい。

「獲物…あぁ、食料調達、みたいじゃな?
妾は………うむ、まぁ、そんなところじゃ」

食べる為の獲物、それを求め来ていた鬼。
しかし、己の獲物は、悪戯の罠に引っ掛ける相手。
さすがに、それを直球で言うのも、とあるのか。
それとも、いつも悪戯している為、癖付いているのか。
視線を逸らし、そう誤魔化すのだ。

ガウム > 「…クァッカッカッカッカ!!」

目を逸らし誤魔化すような少女の行動に対して鬼がやったのは大笑いだ。
木々を揺らし、空気をグラつかせるような大声で笑った。

「コノ罠、兎、捕マラナい…。
結ビ目、固ク…ソレデ、捕マル…。」

ニヤニヤと少々小ばかにするような顔で縄を結ぶ鬼。
どうやら狩りの知識が乏しいと受け取って、馬鹿にするような意味を込めながら大笑いをしたのだった。
千切れた縄を回収すれば、腰に付けてある小さな袋から新しい縄を取り出して、同じ様な罠を作る。
慣れた手つきで木々に引っ掛けて、踏めば反応して獲物が掛かる仕組みに仕上げた。

「コレデ、イイ…。
獲物、高ク吊ルサレル…獣、捕レナイ…。」

引っかかればかなり高い位置に吊るされることになり、獲物を狙う獣も取ることができないようになり、縄も頑丈なのを使った。

「ソロソロ、夜ダ…。
獲物、待ツ、危険…飯、食ウカ…?」

自分が掴まえた肉を見せつける。
夜に待ち伏せをすれば背後から襲われる可能性もある。
一日程度なら獲物は死ぬことはないため、引っ掛かってから回収しても遅くないと考えた。
一先ずは、久しぶりの再会を祝して、飯に誘うことにした。

タマモ > よし、誤魔化せた。
心の中で、ぐっ、と拳を握り込むも。
誤魔化す必要もない相手、なのだが、これもまた、癖みたいなものなのだ。
まぁ、その互いの思いの違い、知ったところで、そう気にもしないだろうが。

「ほほぅ…ふむふむ、なるほどのぅ?」

うん、分かってる、分かってはいる。
しかし、そんな風に伝わっている手前、無碍に断れず、そこは素直に聞いておいた。

…あ、高く吊るすと、奪われない意味もあったのか。
そこに関しては、狩りで罠をそう張らない為、納得気味に、ぽむ、と手を打つ。

と、そんな説明を受けていれば。
相手からの、食事のお誘い。
軽く、思案するような仕草を取るも。

「よし、そうするか。
今は、この近くに住んでおるのか?」

結局は、タダ飯には勝てなかった少女であった。

ガウム > 「縄、頑丈ナヤツ…。ソレ以外、食イチギラレル…。」

高く吊るす様に設計しているが、あくまでそれは縄が頑丈である場合の話だ。
そこら辺の普通の縄を使えばすぐに千切られ、獲物を取られることになるのだ。

「俺、寝床、必ズ作ル…。
近クダ、コイ…。」

そのまま少女の歩幅に合わせてゆっくりと森を歩く鬼。
森の深くにある洞窟だが、そこからは風が吹いており、奥の方からはガウムと同じ匂いが漂ってくる。
松明が垂らす廊下を奥まで進めば、少女と鬼にとってはなじみ深い部屋が広がっている。
調理台、燻製台、研ぎ場に薬草置き場、狩りには必要不可欠なものが揃っており、簡易的な寝床がある。

「今ハ、熱イ…。壁、ギリギリマデ掘ッテ、風、流シテイル…。」

洞窟の中はかなり中間地点と外の間まで掘ってた。
壁に小さな穴をなるべく広い感覚で穴を開けて風を入れ込み、風通しをよくしていた。

「サテ、食ウカ…。」

新鮮な肉で出来る肉の刺身である。
よく研がれたナイフで持ち帰った肉を綺麗に切り分け、内臓を取り出し、骨を切り取り、綺麗に肉を切り分けていく。

タマモ > 説明に、うんうんと頷きながら。
いつもの、ゆっくりとした歩調。
普通に歩めば、実は、どちらかと言えば速い方なのだが。
基本的に、少女は意図して緩い歩みをしているのだ。
理由は…まぁ、今のところは、秘密としておこう。

「お、いつもの…と言った感じじゃが…
時期によって、作り方を変えておる訳か、考えておるのぅ」

入った洞窟内の感じと、鬼の説明に、なるほど、と。
確かに、この時期、風通しが良いのは涼しくて良い。

「相変わらず、手際が良いものじゃな。
して、もちろん…あるんじゃろう?」

目の前での調理の様子を眺めつつ、見た目に合わぬ…と言っては失礼か。
ともあれ、器用に捌くのを眺め、出来上がりを待つのだ。
が、その際、こう…酒を一口、付けるような仕草。
前回同様に出るとも限らないが、一応、それを聞いてみた。
刺身なのだ、酒も合うだろう。

ガウム > 「狩リハ、常ニ時期ガ変ワル…。
ソレ相応…適応デキナケレバ、獲物ハ取レナイ…。」

この世界に春夏秋冬の四季が存在すれば、熱い時期、寒い時期は存在する。
そのため、寝床を作るも同じ構造で作ったとしても環境に耐え切れない状態を作ってしまえば狩りもまともに行えない。
ただ、取って食うだけの狩人ではないのは明らかになっただろう。

「…カッカッ…運ガ良イイナ…。」

肉は捌き終えた。
端に寄せれば元に戻る様な簡単な切り方をして盛り合わせを行った後、寝床にしていた藁の下から作りの良い壺を取り出す。

「コノ前、怪我シタ人間、助ケテ、オ礼、貰ッタ…。」

栓を取り、少しボロボロになっている盃に注ぐ。
匂いだけでわかる上等な酒。
ガウムを始めとする鬼の魔族は人間との共存を考えていた。
助け合えるなら共に過ごし、傷つけるのならば殺す、それが彼らの掟である。

「ジャ…再会、ダ…!」

盃を軽く降り乾杯の合図を出して酒を飲む。
臭みや強すぎる辛みの無い酒が体に染みわたり、手づかみで食べる肉の刺身も新鮮故に、変な獣臭も無く、肉としてのうま味を引き出した味わいとなっていた。

タマモ > 「ふむ…狩りで食を繋ぐならば、そうなるじゃろう。
山中ならばともかく、街中では、不要と言うのが、あれじゃな」

腕を組み、そんな鬼へと、そう伝える。
基本的には街中が多い、外での飲食は、気紛れで行うのだ。
半端な知識や技術なのは、仕方なし。
まぁ、目の前の鬼と比べて、な訳であって。
経験の多さが、その辺り、なんとか誤魔化していたりもする訳だが。

「お…そうかそうか、なかなか良いものを、貰ったようじゃ」

取り出された壷、そこから盃に注がれる酒は、結構上質なもののようだ。
それは、匂いだけでも、それなりに分かるもの。
これは、味の方も期待が出来そうか。

「…おっと、そうじゃな。
再開に、乾杯じゃ」

乾杯の合図に合わせ、己も盃を掲げ、ぐいっと一口。
…うん、思った通り、良い味である。
その味を残したまま、肉の刺身も頂けば、合う味に満足気に頬を緩める。
美味しければ、手も進むもの、そもそも刺身は食べ易いものなのもあって。
そう経たず、結構な量を食べるのだった。
とは言っても、少女は小食。
普通に比べては、少なめではあろうが。

ガウム > 「俺ノ村、常ニ狩リト一緒…。
狩リアッテ、生キテイル…。」

少し歩けば自由な生活が手に入るような都会とは比べて不便さがあるように見えるのは仕方なかった。
だからこそ、生きるため、生存し続けるために知識と技術、己の肉体を鍛え続けて来た。
その結果もあり、今でも外で生きることができるのであった。
人間世界で見つかる動物と比べ、魔族の生物はかなり危険な生物が多く、独自に成長した生物も居た。
その修羅場もあったおかげで、こうやって外でも生きることができたのだった。

「カッカッカ…中々、イイ酒ダ…。
肉ガ、ウマイ…。」

細かな酒の味などは分からないが、口に入れただけでわかる、この風味。
肉の味を引き出すのに最適な組み合わせを行い、すぐさま体も温まり、酔いも入る。

「フゥ…。
ナァ、オマエ、ドウスル…?
山、夜ニナッタ…動物、動キ出ス…。」

部屋に流れて来る冷たい風を感じて暖炉もどきに火を灯して部屋を少し温める。
外はすっかりと夜になった様子であり、動物も動き出す頃間。
しかも、ここが山中となればそれなりに数も多く、生物の数も多めだ。
咥えて、生存能力の高い個体も居ると考えられており、暗い中では不利になることが多くなるだろう。

タマモ > 「ふぅむ…妾ならば、狩りはたまに、で良いかのぅ。
それに、誰かと共に居る時じゃ。
妾一人では、狩ったところで、食い切れん」

自然とも、都会とも、共に生きているも。
便利不便利、それもまた、良いものとの考え。
何もかもが便利過ぎては、つまらない、と言うものだ。
その辺りが、同じ力を持つ鬼とは、少々違うところなのだろう。

ある程度食べ終え、腹も満たされた、そんな感じ。
もう一杯、盃を傾けながらも、そう問われれば。

「うん?…せっかくの機会、もう少し、付き合うのも良いじゃろう?
ここならば、そのまま寝る事も出来る、便利ではないか、のぅ?」

少女はとっくに、今日はここで泊まる予定だと。
そんな意味合いの言葉を、鬼へと伝える。
このまま、飲み明かすにしても。
他に何か、あるにしても。
…まぁ、結局のところ、酔い潰れはしないのだが、その前に許容量を超え、飲めなくなって終了、なのだろうが。

ガウム > 「狩リヲスルナラ…喰エヌ物以上ハ取ルナ…。
腐ル前ニ食イキル…ソレ以上ハ取ラナイ…。」

生きる物を狩り、肉をいただくとはそう言う行為である。
魔族であれど、奪った物を最後までいただく心得は持っていた。
言ってしまえば、おそらく人間以上に純粋で真面目な方と思えるだろう。

「カッカッカ…ソレガ、イイ…。
ドウセ、一人…増エル所デ、変ワリハ無イ…。」

空になった盃に酒を注いでもう一杯、少女の分が無くなれば、注いでもう一杯。
共存生活を心得とる魔族の文化故に、避難できるためにも少し大きく作ることも視野に入れていた。
急に泊まる事になったとしても、向かい入れる準備は整っていたのだ。

「ダガ…俺タチ、等価交換、基本…。
オマエ…俺ニ、何ヲクレル…?」

共に生きると言うことはそれ相応の対価を互いに支払うことだ。
肉と酒、寝床を用意するとして少女からも何かを支払うことは互いの共存の為の糧であった。
図々しく思われるかもしれないが、これも一つの礼儀であり、代償でもある。

タマモ > 「それは、狩りの基本、じゃろう?
釣りにおいても、きゃっちあんどりりーす、なんてものも、ある程じゃからな。
食わぬならば、無駄に死なせる事は無し、と言うもの。
それを気にせんのは、一部の阿呆達、じゃろうなぁ」

正しくは、一部どころの人数ではないのだろうが。
それを愚痴っていても、何も変わらぬ、と言うもの。
今は、酒を楽しもうと、そちらに集中する事にした。

「おや、妾にそれを今求めるか?
施しも、いずれそれが返って来ると考えれば、それもそれで損は無いと思うがのぅ。
………ふむ、ばらんす、を考えて山菜や木の実、とも良さそうじゃが。
それでは、普通過ぎて面白味が欠けるか。
ならば、何が面白そうか…考えるのも、面白そうじゃな?」

そして、話が進む内に、その話が持ち上がれば。
そう鬼へと伝えながら、くす、と笑みを浮かべる。
食のバランス、もしそれで良いとか言われたら、本当に準備は出来るのだが。
あえて、そこから逸れるような、そんな言葉を続けるのは、少女の性格ゆえのもの。

純粋に、他の何かを探るのか。
あの時の様に、悪戯心のままに、動いてしまっても良いだろう。

その結果が、結局は何となったのか?
それを知るのは…この二人だけ、であろう。

ご案内:「九頭龍山脈 山中」からタマモさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山中」からガウムさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にシャノンさんが現れました。
シャノン > 初夏の日差しが容赦無く照りつける、山麓を走る街道の片隅。
ふらふらと歩き続けていた足を止め、道端に佇む常緑樹の足もとへ、
崩れるように座り込む、白い小柄な娘の姿があった。
上気した頬、荒く息を継ぐ唇、乱れて頬に打ち掛かる銀糸の髪。
絵に描いたような、ぐったり、といった風情を晒して、
埃じみた街道の続く先を眺めやりながら、

「あ……ぁ、もぉ、無理………。
 歩くの、疲れた……おなか、空いたよぅ……」

そっと掌で押さえて、宥めるように撫でる先。
おなかの奥にまだ残る、熱く切ない違和感については、敢えて、無視したい。
――――――発情期でもないのに、交尾を強いられたせいで、
なんだかからだの調子が――――さすがの娘もひとに言いたくない感じに、
ちょっと、否、ひどくおかしくなっていた。
少しでも気を抜いたら、今、変な触られ方でもしたら、
昼間から聞かせるにはアレな声のひとつも、零してしまいそう、で。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」に黒須さんが現れました。
黒須 > (熱く明るい日差しが照りつける街道を歩く男がいた。
皆、常に熱さから逃れるために、なるべく熱を逃がすための服装をするようなこの時期、その男の姿は熱を集めるような格好をしていた。)

「依頼は…終わったか。
さっさと帰って、休むか…」

(冒険者ギルドに掲示されていた依頼書通りの任務を受注し、魔族の侵入による偵察や撃退として山篭りしていた。
しかし、匂いも気配も感じず、安全と判断し、今帰っている途中であった。)

「…ん?この匂い…」

(不意に鼻が察知した匂い。
魔族では無く、どこにでもいる人の匂いだが、ほのかにメスの匂いを感じていた。
その匂いのする方へ寄れば、常緑樹の足もとでぐったりとしている少女を見つける。)

「…おい、大丈夫か?」

(低い声で声をかけ、鋭い目つきで睨むような目線を送りながら、倒れる少女を見る。
夜だけで熱そうな服装と動物の耳を生やした男が目の前に現れる)

シャノン > ふと、違和感。

どれだけ疲れ果てていても、生き物としての本能が、
なにがしかの危険信号を受信することはある。
物音だったか、微かな空気の流れだったか、それとも風に乗って漂う、
他者の匂い、だったかもしれない。
ぞくりと背筋が粟立つようなそれの元凶を探るべく、
きょろきょろと辺りを見回し――――――

「――――――― ふぎゃっ!?」

まったく見当違いの方角から、男の声がかかった。
と同時、驚くほど近くに現れた、黒ずくめの影。
見上げる長躯の男――――――そう、つい最近。
このくらい大柄な男に、イタイ目に遭わされた娘は、
ぴゃっ、と勢い良く飛び退り、男から距離をとった。
銀髪の合間から覗く、銀色の尖り耳。
パンツの腰裏から飛び出した長い尾が、ぱすん、と地面を叩いた。

「………なに、あんた。
 いったい、どっから湧いたの?」

低く掠れた声も、警戒心いっぱいに。

黒須 > 「ん、ミレーか…。」

(おかしな悲鳴を上げて距離を取る少女を見て、目線を合わせるためにしゃがんでいた体を起こして立ち上がる。
真っすぐに立てば圧倒的にこちらの方が大きく見えるのは当然のことだろう。)

「どっからか…まぁ、ついさっき山を下りて来たばかりだがな?
ギルドの依頼で、ここら辺の調査と監視を受けて、何もないから帰っていただけだ。」

(嘘偽りのないことを話しながら少女に説明した。
こちらは特に敵意があるわけでなく、倒れている所を匂いで見つけ、息も荒そうだったために声を掛けただけだ。)

「…めんどくせぇ…。
おら、これで良いか?」

(ひとまず警戒心を取られては少々面倒であった。
持っていた手荷物を少し遠くに投げ捨て、ついでに革ジャンも脱ぎながら両手を上げる。
危害を加えなと言った、降参の意として)

シャノン > 相手が口にした、ミレー、という単語に、金色の瞳を僅かに見開く。
反射的に片手を臀部へ回して、小さな舌打ちを洩らし。

「……あたしは、ミレーじゃない」

これ、会う人ごとに言わなきゃならないんだろうか。
零れそうになる溜め息を呑み込んで、やはり低い声のまま。
相手が善人か悪人か、一見しただけではわかるものではないけれど、
――――――とりあえず。とりあえず、娘の歩幅で三歩ほど離れたところから、
距離を削ろうともせず、相手を睨みつけたまま軽く頭を振って。

「――――――そぉゆうの、良い。
 いま、なにされても……あんまり、ひと、信じる気になんないから。
 とりあえず、それ以上近づかないでくれたら良いから」

武装解除の必要は無い、ただ、近づいても欲しくないのだ、と。
告げながらも更に、じり、と半歩ほど後退る。

黒須 > 「…そうか。だったら、同族だな…。」

(少女が言うミレーではないと言う言葉を聞けばふぅっと息を吐きだす。
そして、合わせるようにズボンの腰辺りから、狼の尻尾を出してぶら下げる。
普段は邪魔なため、締まっているが、今は出してしまおうと思っていた。)

「ま、俺も信用されるつもりはねぇよ。
ただ、お前が倒れていたから安否確認で近寄っただけだしな…。」

(革ジャンを拾って、汚れた部分を払いながらも着直し、投げた荷物を回収する。
その後、再度相手の方を見ればまだまだ警戒している様子があるが、漂う雌の匂いにこちらも引き寄せられてしまっている。)

「所で、一つ聞きたいんだが…。
お前、どうしてこんなところで興奮している…?」

(そう言えばニヤリと笑う。
匂いだけでわかった、体の奥底が切なく感じているのが、それをあえて無視している。
我慢していると言った方がいいかもしれないが、そんな少女の行動に対して、男も少々興奮していた。)

シャノン > 「――――――同族?」

なんの話、と問い返す前に、相手が黒い尻尾をあらわした。
獣の耳、獣の尻尾、けれどもそれで同族かといえば――――――

「ちがうよ。
 あたしと、あんたは違う。
 ――――――心配、してくれたってのは信じても良いけど……」

同族、なんてものが居るとは思えない。
目の前の男が、そう、だとも思えなかった。
相手の言葉にいちいち反発したくなる、この頑なさの原因に、
自身でも思い至らないからこそ、余計にいらいらしていたら。
相手がとんでもない台詞を吐いたものだから、今度こそ、
娘は全身の毛を逆立てる勢いで、立ち上がって、ひょん、と大きく後ろへ飛び退り。

「興奮、なんかしてませ、ん!
 えっろい笑いかた、しないでくれる、こんな、まっ昼間から!」

頬っぺたを真っ赤に染めて、甲高い声でそう言い放ったあと。
娘はふるん、と身を震わせ――――――ほんの一瞬で、姿を消した。

正確には、その姿を小さな銀色の猫に、変えた。
あとはもう、身軽な矮躯にものをいわせて逃げ去るだけ――――――。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からシャノンさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」から黒須さんが去りました。