2022/02/27 のログ
エレイ > 「──んー? 地下室があったのかという顔になる」

見回っているうちに、地下に通じる階段を発見して男は眉を持ち上げる。
山賊のアジトの地下室といえば、奪った金品類の隠し場所か、抜け道か──あるいは牢屋あたりか。
適当に推測しつつ、すたすたと階段を降りて地下へと向かう。
やがて降りた先に見えてきたのは──ちょっとした部屋と、その奥に張られた鉄格子。

「……牢屋か。おや……誰かいるのか。もしもーし、大丈夫かね?」

詳しく見てみようと足を踏み出したところで、鉄格子の向こうに身じろぎする人影らしきものが見えて眉を持ち上げ。
運悪く山賊たちに捕らえられてしまった誰かかな、と思いながら、間延びした声をかけつつ、ゆるりと牢屋へ近づいて
中の人影の姿を確認しようとする。

エレイ > 「……。安心すろキミをそんなにした奴らはもうやっつけたからよ」

そこにいたのは手枷と足枷を嵌められた、憔悴した様子のミレー族の少女。
怯えた目で此方を見る彼女に男はへにゃりと笑みを向けてから、しゃがみこんで錠前に片手を触れさせ、
何かしら魔術などの特殊な仕掛けがないかを確認。

「……ほむ。普通の錠前だと感心するがどこもおかしくはないな。待ってろ今開けてやるべ」

そう中の少女に声をかけつつどこからともなく針金を取り出し、鍵穴に差し込んでカチャカチャと
音を立てて弄り始める。
男は本職ほどではないもののピッキングの心得を備えているため、よほど特殊な機構の錠前でなければ解錠は可能なのだった。

「──よし開いたな。次はその枷も取っ払っちゃうので俺に任せてくれるかな?」

程なく解錠に成功して牢の扉を開くと、中に入り込みながら少女に笑顔で問う。
いくらか躊躇した後、枷の嵌められた腕をおずおずと差し出す彼女に表情を和らげると、
その手をそっと取り、枷の解錠も始めて。

エレイ > 「……ちなみにキミの里はどの辺ですかねぇ? ……。……。そうか……そいつはなんちゅうか、大変だったのぅ」

解錠の合間に里の位置なども聞き出しておこうと話しかけるが、なんでもつい先日、
山賊たちとは別のミレー狩りに遭い、里を焼け出されたらしい。
辛うじて逃げおおせたはいいものの、その先で山賊たちに捕まって今に至るとか。
山賊たちは彼女をバフートに売り飛ばすつもりであったらしい。
そんな踏んだり蹴ったりな少女の境遇に同情して眉を寄せながら、やがて枷をすべて外し終え。

「うし……じゃあ行くとしようず。──ン、麓にキミのような境遇の子達を引き取って世話をしている
集落があるからよそこへ連れて行ってやる俺は優しいからな」

どこへ、と問う少女に笑顔でそんな返答を。
男は件の集落には、こういう案件で何度か世話になっており、すでにそことは顔見知りの関係であった。
本人としては集落に押し付けるような形になっているのが心苦しいが、流れ者の男にはそれ以上に最善となる
手立てもないので致し方なし、といったところだ。

「フフ、まああ別の意味で少々大変にはなるかもしれんが……少なくとも今よりは遥かにマシだから安心すろ。
えーと転送スクロールは……もうないか。しゃあねえ歩きだな、しっかり掴まっているべき」

不安げな少女に眉下げた笑みでそう告げると、一度バッグを漁るが転送魔術を封じたスクロールは在庫がなく。
フンス、と仕方なさげに鼻を鳴らせば、少女の小柄な身体をひょいと抱き上げ。
急に抱き上げられて慌てながらも、そろそろと男の首に腕を回す少女。

そんな少女に目を細めながら、男はゆっくりと牢を出て、地下室の階段を上がってゆき──

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からエレイさんが去りました。