2021/08/12 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」に影時さんが現れました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にラファルさんが現れました。
■影時 > 「そうさな。応用であり、何より手段だ。だが、常々云っているように手段に拘らねぇのが忍者と云う生き物よ。
状況を問わねえなら、自力でどーこーする方が面倒がなくていいよなァ」
似たような手段であれば、己もある。分身の術の応用だ。
「分け身の術」と嘯く其れは己と寸分たがわぬ分身体を作り出せる。
其処を捻ってわざと容姿を変えたものを作り出す。それも多く。
氣力の多さに任せ、鬼の面を被った下忍の集団のように見せかけた其れは時に「鬼面衆」なる異名をとったことがある。
だが、大がかりな術よりも、軽く、疲れない方法をどちらかと云えば己は好む。
その観点で云えば、己も絶対にそうしろという強制の教え方はしない。
とどのつまりとして奥義も所詮手段だ。よく考え、その手段を使い分けろと説く。
「なら重畳という奴だ。ああいう使役獣、か? 牛馬とも違う類ィってのは貴重みてぇだからなぁ」
魔術師の類であれば支配の魔術を使うのだろうが、件の隠れ家に繋がれている獣はそうではないらしい。
魔獣を調教できる者は、世の中何人位居ることだろう。
そんな専門職によって相応に時間をかけた調教によって、人に仕えることを覚えたモノたちに相違ない。
大人しくさせるにはこれまた相応の餌が多く必要だろうが、軍事的な価値というのは金銭になる。
「ラファルみてぇな竜の耐性や感覚を抜ける域になりゃ、嗚呼、もうヒトが死ぬなこりゃ。
残りもうちょいか――……じゃァ、少し本気出すか!」
竜にも効くレベルの薬毒はつまり、人間にとっての劇薬に違いない。
空気に触れるだけでむず痒く、我慢できない――を通り越した地獄になりかねない。否、こんなありきたりの想像を超える何かだ。
弟子が数える今この場の敵の残数を聞けば、血に塗れた苦無を引き抜き、宙に放り上げる。
刹那、自由になる左右の手指を用い、ぱ、ぱ、ぱ、ぱ、と。続けざまに印を組み、気を疾走らせる。
「哈ッ」と気合を込めて術を発動させ、落ちてきた苦無を掴めば、己の左右後方、そして隠れ家の天井に5つの気配が生まれる。
分身の術で生じたその気配たちは、黒藍色の装束に赤い鬼の面といういでたちの忍びの姿を象っていた。
「散れ」
――と、号令すれば、分身たちは術者が体得した忍びの技そのままに速やかに、そして何よりも静謐に動く。
それらは弟子と同じような、否、氣を集中させて硬化した指先の抜き手や、隠れ家の建材から顕現させた石の刃で標的を屠り、消えてゆく。
そうした分身体との感覚共有で、捕虜の現在位置と惨状、何よりも生存を確認する。
捕虜はどうやら「長く」使う予定だったらしい。メンタルケアなどはそっちのけとはいえ、生存に関する最低限は確保されているようだった。
■ラファル > 「必要な時に、必要な手段、一つに拘らずに、だったよね?」
その為に、服装も必要だという事だ、自分で出来るからとして、其れに拘ると、碌なことはない。
それが彼の―――師匠の教え。
出来るは、多くで困ることはない、それが、忍者という物なのである。
師匠は、分身を行うのが見える。手早く処理をするのは、敵の増援が戻って来る前に、と。
人地時の安全確保のため、なのだろう。
「ボクは――っと。」
役割は先ほど与えられた。
幼女の役割は、ドレイクへの対応だ。自分に関しては、問題はなく倒せるとしても、師匠が、万が一ダメージを与えられると、大変になるのだろう。
だから、幼女がドレイクへの対応に当たることにした。
邪魔をしようとする盗賊などもいるのだけど、幼女は、其れを意に介さない。
其れこそ、体格の小ささと速度を持って、するりとすり抜けるようにして、奥へと、進んでいく。
捕虜などに関しては―――無視。
それは、先程師匠が元気に助けてくれる事だろう。
加速し、本気で邪魔な盗賊の頭を蹴り砕き、幼女は大きな広間へ―――ドレイクのいる場所へ。
そこに走り込めば、未だ盗賊たちは居ない、此処まで到達してないのだろう、自分の事を怯えた目で見るドレイク達。
幼女が敵意を見せていないからこそ、動けずにいるのだ、敵なのか、如何なのかを見極めようとしているのだ。
彼らは、人によって調教されているから、暴れることが出来ないのだろう。
『―――にひ。
ボクに、従え。従うなら、殺さない。』
竜気を解放しながら、幼女は、彼ら―――ドレイク達のボス格に竜語を放つ。
真なる竜の詞に、ドレイク達は、ひれ伏す、服従を誓わせる。
格が違い過ぎるなら、人の調教の上からでも、支配は、出来るものだ、と。
■影時 > 「おぅよ。直で手ェ下さずに済ませることだって、手段だ。目的のためには手段に成り下がる」
そう、手段だ。難易度の高い術も毒も金銭も何もかも、定めた目的の前には須らく手段である。
興のために手段に淫することはあるにしても、いざ必要なことがあれば優先すべきは何よりも明白である。
今なすべきことは、この場に残存する敵の掃討、もしくは制圧だ。
火薬でも術でも何でもいい。この隠れ家を吹き飛ばしてしまえば事足りるが、それでは捕虜が死んでしまう。
であれば、分身の術を使う方が無駄なく、正確な対処ができる。
掃討した敵の死体は、砦の外に放りだしておく。
隠れ家の一角で力なく項垂れた捕虜の有様を認めれば、情けとして薄汚れた毛布をかけ、下忍を象った分身たちが消えゆく。
像がほどけ、還元される氣を呼吸と共に引き戻し、弟子のほうを遠く見遣ろう。
「薬毒の扱いの再履修に加えて、獣回しの方法でもそのうち教えとくかとは思ってたが、あれだな。
……こっちはあんまり意味が無ぇかねえ」
元々は城か砦と思しい遺構だ。当然ながら、厩舎やそれに類する設備の痕跡だってある。
無ければ、広間らしいスペースを活用してしまえば、仮の拠点としてでっちあげることもできるだろう。
そう言った場所に繋がれている使役獣たちが、高位の竜種の眷属の言葉に抗議の声を挟む余地もなく、首を垂れる。
竜種の高位、低位の差もそうだが、弱い生き物が強い生き物に遭った際、どういう心情等を催すか。
其れを考えると、教授に足るかどうか考える処である。
ある意味の力技とはいえ、別のアプローチで似たようなことを無駄なく遣れるのは、結局教える余地が薄いことにもつながる。
「……――さぁて。ラファル、いいか?捕虜は一応無事だ。
そろそろ残りの奴らも戻ってくンだろう。其れなりに歴戦となれば、血の匂いには敏感だ。
おのおの気配を顰めて隠れろ。この隠れ家に入る直前を見計らって、後ろから遣るぞ」
苦無に纏わり付いた血を倒れた敵の一人の服で拭い、腰裏の鞘に納めつつ広間に入ろう。
ドレイクを従えた姿に声をかけ、続くこの後の対処について指示を出す。
夜となれば、身を隠すに足る木々や岩陰には困らない。
罠を仕掛けてどうこうより、隠しようもない、隠す気もない血の匂いで動かす方が適切だろう。
■ラファル > 「ん!」
目的のために、手段を選ぶ、手段の為に目的を選ぶのは違う事なのは、幼女でも理解できることだ。
師匠の言うことに軽く頷いて、今の目的を考える。
師匠と自分ならば、制圧は簡単であり、殲滅をする必要はない、生きている方が、目的に適うと思われるのだ。
そして、捕虜に関しての事を考えての行動を行う。
『ドレイク達、この子たちを守りなさい。そして、静かに隠れて居なさい。』
ドレイクに、指示を飛ばす。
彼らの鱗は、ラファルには劣るが、十分に強靭である、そして、それは堅牢な壁となるし、もし、襲われたとしたら、ブレスなどで薙ぎ払うことも出来るのだ。
一番安全な隠し場所、と言えるはず。
テイマーの支配を上書きをしているので、問題はないと言えるのだ。
「うへ……っ。おべんきょ……っ。」
薬学の再履修という言葉に、うへぇ、とは思うのだけど、必要とするのは理解している。
自分もまた、それを行わなければならないと思うので、舌をだしてみても、学ぶことには同意することにした。
竜に関しては、母親が最上級のドラゴンであり、ただ、ラファル自体も風の王と言えるべき種族テュポーンだ。
竜王を名乗って言える幼女だからこそ、のごり押しだ。
他の種族であったとしても、まあ、ある程度は、出来る事だろう。
「あいっ、ドレイク達には、捕虜を守らせるよ!足手まといは要らないし、ね!
此処に居させて、隠れさせておく、で良いね!」
方法、自分に関しては問題はない。
ただ、ドレイクなどに関しては、変な動きをしない様に、指示を出したことを説明。
最初からいた場所に、其のまま居させればいいのだろう。
そう、言いながら幼女は、ヌルリ、と影に溶け込んでいく。
服はちゃんと、忍び装束を着ているのだった。
■影時 > 冒険者の身分で、城落としの手管を学んだとしても、其れが率直に活かせる機会がどれほどあるか。
それが、弟子をこの依頼の遂行に連れてきた理由である。
略式とはいえ、ひとつの拠点を忍びの技を使って陥落させる機会というのは、そう何度もあるものではない。
否、蓋を開けるならば機会は幾らでもあるかもしれないが、機会も獲物も、敵も全て有限だ。
「搦め手の小技より、直で手ぇ下す方が好みなら、覚えたりねぇ箇所については座学するっきゃねェなあ」
力業任せで結果的に手荒くなるより、幾つかの小技と手管を凝らすことでに綺麗に目的達成できるなら、後者を己は貴ぶ。
弟子の能力は確かに凄い。が、その能力の高さばかりだけで良しとするのは、少し危惧すべき要点である。
竜には効かなくとも、人間等には効果覿面の薬や毒、心理戦のあれこれ、というのは教授しなければ学びえない。
直ぐに身につかなくとも、何度も何度も繰り返すことに意味がある。
弟子の反応に肩を竦めつつ、口元を隠す覆面の下で息を零す。
今この場で倒すべきは逃さない。生かして帰さない。
万一力と技の一端を見知ったものを逃し、新たな敵が生まれた場合、其れは命取りになりかねない。
学びというのは、知ればそこに心構えと対処の一端を用意できる。無駄にはならない。
「ああ、其れで構わねぇ。守らせておけば、俺としても面倒は無い」
さて、己はどうするか。周囲を見回し、偵察で把握した隠れ家の立地、構造を思い返す。
今の月の傾き加減、天候を思えば、標的たちが荷物の仮置き場としている広場めいた場所の片隅の岩塊が都合が良いだろう。
風上ではなく、風下であることを確かめ、背を丸めて猿の如く足音も微かに歩き、岩塊の陰に身を伏せる。
――呼吸を整える。
血臭交じりながらも、それでも山の空気は清らかさが残る。
そんな自然の気を体内に吸い込み、巡らせて周囲の気配と己の気配を同じくする。等しくして、その輪郭を曖昧にしてゆく。
その果てに自然と一つになるかのようにして、その姿を隠す。
『『――……!!!』』
そうしていけば、遠く、遠く。聞こえてくる。
男たちががなり立てるだみ声、馬のいななき、馬がけん引する荷車の車軸の軋み。
幾つか響く唸りは、護衛兼威嚇用に引き出したこの場にはいないドレイクのそれだろう。
稼ぎはそれなりだったのだろう。下手な歌声も聞こえてくるが、隠れ家の前の広場に到着すれば其れも消えてゆく。
それもそうだろう。嫌に静かなのだ。そして何よりも、血生臭い。