2021/04/06 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > いと悪名高き山賊街道。
そこを、彼女と反対の方向から、やはりのんびり歩いてくる男が一人。
青い闘牛士服に、バックパックを背負う奇妙な出で立ちの男は、少女を見るとおやと手をあげて。

「こんにちは。お嬢さん。どうかしたかい?」

と気さくに話しかけてくる。
こちらもまた、かなり簡素な出で立ちである。
背負っているバックパックもさほど膨らみがなく、どちらかというと冒険というよりハイキングの装備と言った方がしっくりくるかもしれない。

「さっき、温泉がどうのって聞こえたんだけど……。
もしかして、君も温泉に入りに来たのかな?」

アルシェ > ここ数日で出会った者といえば行商人か自分と同じ冒険者
けれど、そのどちらもが複数人でのグループだった。
目の前からのんびりと歩いてくる男が気さくに声を掛けてくると、どんよりとした顔を上げ。

「えーっと……入りに来たってわけじゃないんだけど、全然見つからなくて。
 もしかして温泉の場所とか知ってたりしますか?
 穴場の、誰も知らないようなのだと、すっごく助かっちゃうんですけど!」

あまり見慣れない服装には目を瞑るとして、軽装の相手はどうやらこの辺りの土地勘もありそうな感じ。
とすれば、お目当ての温泉のことも知っているかもしれない。
期待はしない……ようにしても、ここ数日の疲れもあって嫌が応にも期待値が高まってしまう。

始めの内は遠慮しつつも、台詞の後半ともなると食いつき具合が半端なく。

クレス・ローベルク > 突如として食いつきが良くなった少女に、男はおおう、と受け流すように言う。
よほど、彼女の変わり様が可笑しかったのか、ちょっと苦笑いを含んだ表情で、まあまあと手で諌めてから、

「確かにそういう場所も幾つか知ってるよ。
ちょっとしたコネで仕入れた知識もあれば、俺が見つけたのも一つ二つはある、んだけど」

と、そこでちょっと間を開ける。
ちょっとした会話の間、といった時間でしかないが、その一瞬で男は彼女の身体をちらりと見る。
見られていると露骨に感じるほどの時間ではないが、しかし感覚的に鋭ければ、或いは男の視線を肌で感じられたかもしれない。

「(ま、俺も最近溜まってきてた頃だし……それに、こんな手に引っかるような子なら、お灸にもなるしね。うん、理論武装完了)」

そう心に決めると、男はうーん、でもなあと、頭を掻いて悩むような素振りをする。
見る限りでは、少し迷惑そうな表情に見えるだろう。

「温泉に入るつもりはないけど探してるってことは、多分貴族とか商人から温泉を探すように言われてきた冒険者か何かだよね。
同業者同士だからこそ、あんまりただで情報を渡すのはやりたくないかなあ。でも、君お金持ってなさそうだしなあ」

等と勿体ぶってみせてから、本題に入る。
相手の表情や口ぶりから、彼女が相当温泉を探していて、疲れているであろうことも計算の上。
『教えてくれないかも知れない』という不安を煽った上で、取引の提案をするという、交渉術だ。

「じゃあ、こうしよう。俺と君とで模擬戦して、君が勝ったら教えてあげる。負けたら……その時は、君の持ち物の中から、価値の有りそうなものを一個貰っていく。どうかな?」

――ここでは、敢えて身体の要求はしない。
そんな事をしなくても、男は自ら身体を差し出させる為の"武器"を常備している。
その名も、試練の媚薬。二回の投与で発情を、三回の投与でさらなる発情を与える、剣闘士の武器である。

アルシェ > 世の中は案外捨てたものではないのかもしれない。
ウナギ昇りの期待値は裏切られることなく、肯定されてしまう。
となれば、ミレーではない少女にはあるはずのない尻尾を振り回すような勢いで距離を詰め。

「けど? けど!? けど、なに!?」

何やらこちらを値踏みするような視線を感じる。
けれども、そんな些細なことよりも、相手の言葉のその先が重要で。
それ以上もったいぶるようならば、首根っこを引っ掴んでガクブルさせかねず。

「う……バレてる………
 しかも見抜かれてるし………」

そんな勢いも、相手の洞察の前に空気の抜ける風船のようにしぼんでしまう。
見る見るうちに元気のなくなった少女に差し伸べられた提案
それに食いついていいものか、相手の方をじっと見つめ。

「え? んー……それで、いいの?
 むぅ………模擬戦かぁ……可愛い駆け出し冒険者にハンデはあったり??」

そんな申し出をしてくるくらいなのだから、腕に覚えはあるのだろう。
伸るか反るかで言えば、答えは決まっているのだけれど。
それでもダメ元で一応はそんな交渉を持ち出してみた。

クレス・ローベルク > 表情豊かというべきか、それほど苦労してたのかと思うべきか。
食い入るようにこちらの言葉を待つ少女は、正に目の前に肉をぶら下げられた犬のよう。
その後で一転、まるで萎れた花のように元気がなくなった彼女を見ていると、何というか可愛げというものを感じてしまう。

「(まあ、だからといって手加減するつもりはないけど……って)」

そう思っていた矢先に、まさかの堂々のハンデ要求。
これは、呆れるというより、寧ろ「ふふっ」と吹き出してしまった。
この状況でハンデを要求するその胆力は、呆れるより先に面白い。喉元でくくっ、と笑ってしまった。

「ごめんごめん。良いよ、その可愛さに免じて、最初の一撃はそっちに譲るよ。カウンターなし、防御か回避のみで応じる。
ついでに、剣も今腰に挿してるのじゃなくて――」

そう言うと、ベルトポーチからナイフを取り出す。
剣闘士の演出の"幅"として、現在訓練中の武器だ。
近接戦も投擲もできて、しかも剣と同じく服のみを切り裂く魔術もかけられているすぐれものだが、

「これで戦ってあげる。剣に比べてリーチがないから、大分戦いやすくなるんじゃないかな?」

どう?と首を傾げて聞いてみる。
彼女からすれば結構な譲歩だが、しかし男からすれば実はそこまで問題ではない。
実際の所、試練の媚薬はこのナイフとそこまでリーチは変わらないのだし。

アルシェ > ダメ元で吹っ掛けた交渉にまさかのOKが出されてしまうと、目を丸くしてしまう。
そこまで腕が立つのか、はたまたそれだけ侮られているのか。
どちらが正解なのかは分からないけれど、受けないという選択肢はあり得ない。

このまま見つけられずに王都に戻ったら、儲けはナシ。
現地調査つが主だとしても、遠出用に多少の買い出しはしてきているために、つまりは絶賛大赤字ということで。

「……乗りました!
 今更、前言撤回はナシですよ!」

腰に提げていた大振りのナイフを引き抜くと、ナイフの間合いとしては大きすぎる距離を取る。
初撃の権利を貰ったからには有効に使わないといけない。
防御無視の前傾姿勢は、見るからに助走をつけた突進スタイル。

「それじゃあ、行きますっ!」

そう宣言してからの深呼吸。
小柄な少女の身体が、放たれた弓矢のように一直線に男の眼前と迫り―――

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からクレス・ローベルクさんが去りました。
アルシェ > (後日継続)
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からアルシェさんが去りました。