2021/01/19 のログ
■シゲン > 暗い山小屋の中を跳ね回りながら刀を探すのは一苦労であった
愛着はあったけれどもいい加減諦めようか、と思いかけた瞬間、不意に見上げた棚の上に置かれているのを見つけ、
身体をぶつけて棚を揺らして手の届く範囲に刀を落とす
「他人様には見せられない格好だ、これ」
後手に縛られていたから再びゴロンっと地面に横になれば、僅かばかりか刀身を鞘から引き抜き、
硬く結ばれた結び目をあてがうようにして、慎重にキリキリと結び目を切っていく
どこぞかへ出掛けているのか何なのか、姿を見せぬ山小屋の主たちが戻らぬうちに、と
慎重ながらも急いで結び目を切り解けば、さすさす、と手首にできた跡を軽く擦って
「どうにも縛られるってのは気分が悪くて良くないや…」
その昔、悪戯盛りの頃に父親に反省を促さす為にカビ臭い蔵の中に押し込められたのを
なんとなく思い出し気分が滅入る…王都に無事、辿り着いたならば、酒でも呑まねば気分は晴れそうにない
…生憎と手持ちは乗合馬車代に消えてしまったが、なんとかなるだろう
てな事を考えながら自由になった手で足首を拘束していた縄を切り、
立ち上がって刀を腰に挿せば普段感じているその重みに僅かばかり安心を覚える
羽織の埃を払って、いよいよ山小屋を後にしようか、と思った時に妙案を閃いた
「迷惑料くらい貰っていかなけりゃ…手持ちも寂しいことだし」
ぽんっ、と手を打てば山小屋の中で息を潜めて主が戻るのを待つ
すっかり暗闇に目は慣れて来たし、相手は何人か判らぬが帰り頭に、
1人か2人も斬りつければそれくらいの金は黙って出すだろう…そんな算段であった
そうしよう、と決めれば外からここに向かって近づいてくる気配を感じ、闇に紛れて身を潜める
近づいてくる下卑た笑い声と複数人の足音、扉が開かれた瞬間、
闇の中を仄白く濡れた刀身が一閃すると山中に悲鳴が響き渡るのであった―――
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からシゲンさんが去りました。