2020/11/02 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山中の獣通り」に燈篭さんが現れました。
燈篭 > 寒さが通る山脈山中 獣道
其処には一匹の陸の竜が道なき道を通っていく
姿はまさに赤い大蜥蜴 翼の無ければ 角もない
逞しい四肢 赤い鱗 太増しい尾を携えた四肢の獣竜そのもの

その竜の背で、呑気に瓢箪を抱えて寝こけるは、頭と肘に角を携えた小鬼
この小鬼、ぐぉぉ くかぁ と鼾をかきながら、しこたま酒を浴びたのか 頬を染め、その顔は機嫌の上といったところ

「んぐぉぉ……ふごぉぉ……。」

四肢で揺れる身体といえど、角が上手く支えているのか、未だころりとなる気配もない
なぜこの陸の竜を枕に、鬼が酒精を浴びて眠りこけているかといえば、少し話は遡る

燈篭 > 小鬼、この物騒な気配が漂う山の中を、酒を片手に歩いていた
今の時期、山賊云々よりも、今日この日は冒険者が山脈の中をうろつくものが多かった
盗賊狩りか はたまた湯脈巡りか 鬼の知るところではなかったものの、偶然居合わせたのが事の始まり

冒険者 陸の竜 そして鬼 三者一同にとある獣道の交差でばったりと出くわす
ならばと始まったのは三つ巴 この童は鬼かと言われる前に、竜の子かとすら言われた
角が引き起こした勘違い 鬼は誰が竜だと怒れるものの、暴れているうちに竜と己だけとなってしまった

ならばと今度は、この互いが殺し合いを始めるべきと思えば、互いにしたことは食む 呑む それだった
勝ち取った肉を喰らい、腹を満たす竜、殺しつくした肉を吸い込み、酒に変えた飲み干す鬼
2人はその場で、己らの首さえとれば、英雄だった者らで舌を打つ

互いに言葉なんてわかりゃあしない
しかし、鬼は語り、竜は聴き、時折英雄を溶かした酒を与えると、それは竜ですらも気分を良くさせた
命に満ちた味がする酒 互いに機嫌のよいまま、道中こうして、竜を枕に眠りこけた鬼が出来上がった次第

「んごっ……?」

ここで鬼、陸竜の背中で揺られながらに目を覚ます
欠伸を一つ身を起こし、寝起きの一杯
ぐび ぐび ぐびっ

「ぷはぁ……んぉ、なんだお前さん、まだ動いてたのかい。」

そう言って、ベチベチと、赤い身体を叩いては、すっかり気分は呑み仲間

燈篭 > 鬼は機嫌が良かった
山登りだぁとその場の勢いで始まった山中千鳥脚
己を殺そうとするもので作った酒は久しく呑んでいなかった

誰かと殺し合いに興じながら、終わった後に酌み交わすことができたのが久しかった
また、その酒を互いに味わえた
相手が言葉もわからない陸の赤竜だといえども、変わらない嬉しさがある

故に鬼の機嫌はすこぶるなものだ
まだ残る英雄になり損なった者の酒の味を噛み締めながら、竜の背でゆらりゆらりと。
胡坐をかきながら道なき道を 草の分け目を進んでいくのを黙って見つめる

「なぁ竜よう。一体アタシを何処へ連れて行こうってんだい?」

時折覗く山から見える麓景色 冷たく広がる空色の光景 好い酒の肴だった。
それが竜の歩幅で流れていくのだから、貴重な酒の時間とも呼べた。

ご案内:「九頭龍山脈 山中の獣通り」に燈篭さんが現れました。
ご案内:「九頭龍山脈 山中の獣通り」に燈篭さんが現れました。
燈篭 > 道中、坂を上り始める竜に、踏ん張りを忘れていた小鬼
コロンと転がり始めを片手が掴むところはありはしなかった
なにせ竜には翼も角もありはしない

「おろ」

その一言の痕には、ころころころと坂を下っていく小鬼と、気づかず前進しつづける竜が分かれ目になったとか。

ご案内:「九頭龍山脈 山中の獣通り」から燈篭さんが去りました。