2020/09/10 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道中間宿 湯処」に燈篭さんが現れました。
燈篭 > 山賊街道とつながるダイラスまでの道のり
道中には人が常に賑わう古宿がある

名前なんて誰も覚えちゃいないが、場所はある
ゾスからダイラスへつながるその場所は 遺跡帰りの探索者が 負け犬が
タナール砦で傷を負ったという古強者が
はたまた山賊共と殺り合ったなんていう奴もいるだろう

宿に着けば疲れ汚れた脚を汲まれた湯桶で溶かし、身を清めようと娘は悦ぶだろう
美味い飯にありつこうと男は腹を鳴らすだろう

鬼もそれに紛れるように、湯宿へ混ざった

鬼は赤く汚れていた
宿の者、やれ怪我をした童女がやってきたと山賊にやられたかと一瞬慌てるが、なんてことはない
返り血だと鬼はケラケラと笑い、服を洗ってくれないか 金は弾む、とゴルドではなく金の粒で大目に出した

そうなると久しぶりに一張羅を脱ぎ、湯治中に羽織る衣は浴衣となる
しかし小鬼、幼い外見に対し肩にかけた羽織と浴衣姿はしっくりと堂に入っており、愛瓢を片手に湯の中へと入りにいくのだ

「ふぅぅぅいぃぃ……」

身体を清め、髪を上げ、湯に浸かる頃には鬼も全身を浸からせた熱なんざ久しぶりだ
金の粒が入った革の袋と愛用の酒瓢箪以外手にあるものはない。

その湯処
外の景色こそは物騒な場に建てただけあって見えないが 良い木と岩を使って建てているらしい
中の木香と湯の匂いで満ちた空間は、誰も彼もが暇さえあれば浸かるだろう

「嗚呼、良い湯だ もう酔いが回りそうだ。」

瓢箪から出る透明な酒
誰彼が入っている中でも遠慮なく口に運びながら、鬼は湯治を楽しんだ

燈篭 > 一人小鬼が酒を片手に、景色ではなく湯の香りと木の香りで酒を飲む
それはそれで悪くない、と思っていると目に入るのは裸体の男女

裸の奴らを肴に飲むなんざどこの金道楽だと、鼻で一瞬笑うと、“山賊の酒”を楽しんだ
その酒、透明で且つ濃度が高い
密造されたような酒精は堕ちる胃に熱を落とすようなもの

角の生えた鬼が酒を時折傾け、湯に浸かるものだから興味を持つのは一人か二人
鬼がいる場を恐れず、その酒に惹かれたというのなら 酒好きの同志だ それ駆けつけ一杯
差し出すそれに、喜々と受けるのは唯の人間

瓢箪を傾け、口にした娘、一口で咳こみ、腹が熱いとわめくわめく
益荒男も口にすると、なんて酒だ 強すぎる
酒の中から余計な水が抜けた味だというのなら、それその通り
その酒はおそらく純化させたようなものだろうと小鬼は呟き、それを喇叭する鬼

ひぇ、と言いながらも鬼は笑い、湯を後にした

宿の者、飯ができているぞと誘いにくるも、これを拒む

「代わりに酒はないか
 手持ちがそろそろなくなりそうだ」

揺らした瓢箪の中で、水の揺れる音が薄い
なら、と宿の者
山脈から仕入れているのだという山の桃酒はどうかと誘い
鬼は少し顔をしかめて、赤く色づくその具合
梅酒よりも甘そうだと。酒よりも果汁のように見えてしまう

「おや、なんだこれは 意外に喉が灼けるな」

試しにと酒を掬った小杯から一杯
山の香と果肉の味だが強い酒で漬けている
この土地の酒という感じに、鬼はそれをくれと。
その漬け瓶丸ごとでいい。
嗚呼、果肉が無いと酒はもっと少なかろう
2つくれ。

指で示して宿の者、金の粒が出てきた相手だから、金払いも良いと踏み、功を為す

食事の場で一人、金物の杯に注いだ赤く色づく酒を手にがばりと煽った
大きく開けた口の中に、ばしゃっと浴びせるようなそれを大きく喉を鳴らして呑み、しゅるりと袖で拭う口元
地酒というには口当たりは甘いが、やはり濃さは良い
聞けばこの酒、男には需要が高いという
それはなんでだい、と鬼が顎を撫でて首を傾げた
男がこんな甘口好きなものか と

ちがいますよお客さん
女が呑みやすいからって酔っちまうんです
そういう酒に使われるんですよ

「ハッ、この宿もやはりこの国の宿だな。」

カラカラと笑い、鬼にはそんなものは関係ないと山の味を楽しみ、酒に酔う
あの山々の地酒の味に出会えたお陰で、鬼も気分が良い
身もさっぱりとして身体からは湯の香もする。

燈篭 > 後に人間のように酒と湯を楽しみ眠りに就く鬼
眠りはあっという間に訪れるや、目覚めた朝

宿を一人出る鬼は愛用の瓢箪酒を飲みながら一言

「ああ、やはり純化したような味がするな、この酒は」

じゃっぼんっと満ちた音を立てて、その場を後にした

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道中間宿 湯処」から燈篭さんが去りました。