2020/03/03 のログ
ランバルディア > 男は更に森の奥へ、姿を消した――。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からランバルディアさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にサフィリアさんが現れました。
サフィリア > ゴトゴト、ゴトゴト、順調に動いていた馬車が不意に止まった。
馬の嘶き、御者の声が微かに聞こえるものの、幌を被った荷馬車の片隅で、
膝を抱えて座り込んでいる己には、何が起こっているのか知る由も無い。

「何か、あったのかな……もしかして、見に行った方が」

独り言ちてはみたものの、幌を持ち上げて外へ顔を覗かせるのは、
あまりにも蛮勇が過ぎる気がして、二の足を踏んでしまう。
修道院長から言付かって、王都の分院へ持って行く途中の布包みを、
傍らから膝の上へ引き寄せて抱え込み、息を潜めて外の気配を窺うしか出来ず――――。

サフィリア > 突然、背筋が凍りつくような咆哮が響いた。

其れが御者の喉から迸り出たものであると悟ったのは、
次の瞬間、幌が大きく切り裂かれたためで。
銀色の刃が西日を照り返し、紅くぬらぬらと光っているのを認め、
其の紅色の正体に思い至るよりも早く、身体が動いていた。

今の己はきっと、普通の人間には『少年』に見える。
其れはつまり、発見されたなら嬲りものにはされないかも知れないが、
男ならば即座に殺してしまえ、ということにもなりかねないという意味だ。
抱え込んだ包みを手放すことも忘れ、馬車から飛び降りて走り出す。
飛び降りた拍子に木靴が脱げてしまったけれど、構っているゆとりは無かった。

とにかく逃げなければ、捕まらないようにしなければ、と、其ればかり考えて走る己の背中に、
数人の怒号が響いていた――――。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からサフィリアさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にサフィリアさんが現れました。
サフィリア > ――――あれから、どれぐらい経っただろうか。

既にとっぷりと日は暮れ落ちて、視界は宵闇に覆われている。
街道から少し離れた叢の陰に、己は膝を抱えて座り込んでいた。

先刻とは違い、座っているのは已むに已まれぬ事情があるからである。
とにかく追っ手を撒こうと闇雲に走り回るうち、足元の石に思い切り躓き、
実に見事に転んで足首を捻った。
靴は既に脱げ落ちていたが、どちらにしろ今は履けないだろう。
明らかに赤くなって、腫れ上がりつつある右の足首を両手で交互に押さえ、
せめて、少しでも冷やそうとしてはいるが。

「どう、しよ……」

こんな状態では、今、追っ手に見つかっても逃げられない。
朝が来るまで此処に蹲っていたら、危険は去ってくれるだろうか。
ばくばくと煩く乱れ打つ心臓の辺りを、ぎゅ、ともう一方の手で掴んで、
心細げに周囲の暗がりを窺いみる。