2019/05/05 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山中」にエレイさんが現れました。
エレイ > 「──………」

ある日の昼下がり。
特徴的な銀と赤のジャケットを羽織った金髪の男は、切り立った崖を一人、登っていた。
──といっても、実際に登る作業をしているのは男ではなく、男のジャケットの背中から生えている、
平べったく細長い銀色の2本の触腕なのだが。

触腕はその先端を鎌のように尖らせ、ピッケルのごとく岩肌にざく、ざくと交互に突き刺しながら男を上へと運んでいる。
男は腕組みしてその動作を眺めながら、ふぅむと小さく唸る。
この触腕は先日、セレネルの海岸でふとした思いつきから編み出したもの。
今は、その動作テストの最中である。

エレイ > 「──んんーむ。実に便利ではあるのだが俺の性にはちと合わんのう、こーいう遠隔操作系ってのは……」

そうしてやがて崖を登りきり、頂上に足を踏み入れながら、眉下げて笑いつつそんな感想を漏らす。
男は元々自分で身体を動かすのが好きなタイプなので、こうした道具任せというのはなんというか、
もどかしく思ってしまうのである。

「まああでもイザって時に使えないと困るのでちゃんと何が出来て何が出来ねーか把握はしておかないとなあ……今のところは大体思い通りなんだがな」

なんて言いつつポリポリと頭を掻き、目の前に広がる風景を眺める。
そこには菫色の花が小規模な自然の花畑を形成していた。
男の一応の本来の目的は、この花──薬草の採取である。

「さて……じゃあちょいっと貰っていきますよ、っと……」

そう言って花畑にしゃがみ込み、花をいくつか摘み始める。
これも動作テストがてら、触腕にやらせてみる。触腕の先端をピンセットのような形状に変化させ、一つ一つ花を摘んでゆく。

ちなみにこの場所、山道からも普通に徒歩でやってこれる場所であり、崖登りは単なるショートカットに過ぎない。
なので、他の誰かが訪れる可能性もなきにしもあらずだが、果たして──。

エレイ > やがて目的の量の薬草を採取し終えると、それを鞄にしまい込んで。

「さて、帰りは──歩いて帰るとしまひょ」

そう言って、のんびりと大股で歩き出し、そのまま山道を下りていって──。

ご案内:「九頭龍山脈 山中」からエレイさんが去りました。