2018/12/16 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道」にメリルさんが現れました。
メリル > 「まったく、先に仕掛けたのはそっちだろうってのに…!」

周囲に聞こえぬよう、文句を呟くのは一人の少女。
茂みに身を隠すようにしながら、視線を辺りへと巡らす。
そこからそう離れてない場所、点々とした灯りが幾つか見える。
文句を言っても仕方無いか、そう思い手にした剣を握り直す。

事の発端は少し前だった気がする。
理由なんて言うまでもないだろうが、街道を歩いている途中で山賊達に遭遇。
その時はまだ見えていたのが数人程度、ならばと相手をして叩き伏せたのだが…
実はまだ控えてました、なんて感じに更に人数を増やしてくれたから堪らない。
街道から少し外れた、身の隠せる場所が多そうな木々の間に逃げ込んだ訳である。
その間にも、また数人叩き伏せたのだけど。

一人にやられている上に、殺さずの加減をしているのが相当お冠らしい。
逃がしてくれる様子はないし、諦める様子もない。
自然と溜息が零れる、後どれくらい叩き伏せれば良いのだろうと。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道」にマヌエラさんが現れました。
メリル > 結構な人数ではあるが、場所が場所なのだから簡単には見付からない。
山賊達の動きを隠れながら見続け、散っている内の数の少ないところへと忍び寄る。

抜き足差し足忍び足、手にした剣を水平に、その刃に魔力が宿っているのを確認する。
加減用の力、武器の刃に乗せる魔力に丸みを帯びさせ、切るのではなく叩きの鈍器代わりのものへと変化させているのだ。
これで、ごつん、と上手くやれば失神ものである。

「相手がボクで良かったよ、君達さ?
他の人達だったら、遠慮なくずばーっていってるところだよ?」

なんて声を掛けると同時に、地面を蹴って横っ飛び、更に飛んだ先の木を蹴って、更にその先の木を蹴って…
声に反応した山賊達が、その方向へと振り向いた時には、襲い掛かる少女は真後ろから姿を現わした。
その動きにまで反応出来る山賊達ではない、閃く剣閃が背後から打ち込まれ、そこにいた数人もまた倒れ伏せた。

「はーっ…次に行こう、次」

ひゅんっ、と剣を一度振るい、次の目標を探るように視線を向け直した。

マヌエラ > 「まあ。すごおい」

瞬く間に複数人の屈強な男を叩き伏せた魔剣士。彼女が視線を向けなおした先に、山賊にはどうも見えない女がいつの間にか立っていた。目を丸くして、小さく控えめにぱちぱちぱち、と拍手を送っている。

「とっても強いのね……びっくりしたわ。かっこいい!」

にこっと微笑む姿は状況が分かっているのかいないのか。
服の上からでも分かるグラマラスな姿態や、帽子にローブに杖にじゃらじゃらとついた魔術具とは対照的に、表情は幼い。

「剣を扱っているのに、わざと手加減しているなんて……まるで高潔な騎士さまのよう!」

絵物語から出てきた相手を見る子供のように目をきらきらさせているのが星明りの下でも分かったことだろう。……そんなことを言っている場合ではないのだが。

メリル > 一息吐いたところで、その声は耳に届いた。
そこに反応して剣を振るわないのは、その声が女のものだったからだ。
先程に見た山賊達に、女は含まれていなかったから。
無関係であろうとは考えるも、そこに拍手が入ってしまったのだから大人しく見ている訳にもいかなかった。

「待って、ちょっと待って、君!?
今どんな状態か分かってやってるの?ねぇ!?
それわざと?絶対にわざとだよねぇ!?」

拍手の後に、更に声を上げる女。
せっかく静かに面倒もなるべく少なく、出来れば見逃して欲しいな、とやっていた努力が水の泡である。
剣の代わりに空いた左手で指差し、女に劣らぬ…むしろ、女よりも声を荒げて言葉を向けてしまう。

そんな事を言っている少女だが、その視線は相手を見定める為に向けられていた。
表情は幼いも、スタイルは自分よりも…何か悔しい。
…じゃない、身に付けた杖や装飾品から、魔法の使い手だろうと予想。
といった感じに思考を巡らせていると、更に言葉を続ける女。
違う違うと指差していた手を、横に振る。

「そりゃ、手加減しないと死んじゃうし、ね?
じゃなくて、そんなんじゃなくて、今は静かにしてってボクは言いたいんだよ!?」

もう、この頃にはお互いの言葉はしっかりと周囲に聞こえているだろう。
散っていた灯りが、明らかにこちらに向かい寄って来ているのだから。

マヌエラ > 「はい、何でしょう――。
 えっ。わざと? 何がわざとなのでしょう?」

きょとんとした顔で、小首を傾げる女。
自分の行為が、メリルに声を荒げさせたこと含め隠密を台無しにしたことに全く気づいていない様子。
それは魔剣士の苛立ちをますます煽ることになるだろうか。

「まあ! 成る程、静かにして欲しいのですね!」

納得がいったと、笑顔で、そして大きな声で復唱する。

「承知しました、静かにしますね!」

茶目っ気たっぷりに、しー、と人差し指を唇の前に持ってきて沈黙のジェスチャーをする。
が、その一秒後。

「まあ、大変です剣士様。山賊の皆様が、揃ってこちらに!」

緊迫した空気で(遅過ぎる)、集まってくる松明を指差し

「これは、力を合わせて乗り切るしかないようです! がんばりましょう!」

自分のせいでこうなったとは微塵も感じさせない、善意100%の笑顔で励ました。

メリル > どうやら、今の状況を作り出した事に無自覚。
更に、時既に遅し、な状態での大声。
そこまでしておいての、唇に指を立てる沈黙のジェスチャー。
きっと、今の自分みたいに誰もが顔を手で覆うはずだ。

「遅い…うん、どう考えても…」

そんな呟きに応えるかのように、再び声を上げる女。
それに合わせるように見える、幾つもの松明の灯り。

「あーもうっ、ボクの努力を返せぇっ!
………あ、君さ、出来れば殺さないようにお願いね?」

鬱憤晴らしのような叫びを上げるも、はた、と気付いたように女には伝えておく。
どんな力を持っているかは知らないけど、それをやられたら、それこそ本当にすべてが無駄になってしまうかもしれないから。
それを伝えた後、再び剣を水平に構え、込められた魔力を確認し…地面を蹴る。
山賊達からすれば、到達した時点では女が一人突っ立っている状態となるだろうか?
その瞬間から、闇の中から襲い掛かる少女が、端から一人ずつ打ちのめしていく訳だが。

マヌエラ > 「? どうなさいましたか?」

顔を覆う剣士に、再び小首を傾げ。

「申し訳ありません、何をどう返していいか分かりませんが……。
 不殺の旨、承知いたしました!」

にこっと微笑んだ。その間にも、剣士は電光石火で駆けていく。闇夜を飛び交う様は、まるで黒い風だ。
ゆえに、山賊たちが目にするのは、やけににこやかな魔術師風の女だけとなるが――。

「大丈夫ですよ、皆さん。命までは取りません。
 ……この台詞、とってもかっこいいですね! 言えてよかったです!」

困惑顔の山賊が驚愕に変わる。
現れた黒い風、魔剣士の慈悲深い打撃が次々仲間を討ち果たしていく上、
とっさに動こうとした山賊たちの脚に、何かががっちり巻きついて動きを妨げていたからだ。
動けないとあっては数の優位も機能しない。面白いように戦列が瓦解し、昏倒する男が一人また一人と増えていく。

メリル > 「後で話すからっ!」

今ここで話しだすと、きっと会話が止まらない。
そして、会話が止まらないと自分の手も鈍り出す。
うっかりやっちゃった♪、みたいな事になったら困ってしまう。
なので、一旦それは切るように試みた。

どうやら相手さん、不殺は理解してくれたらしい。
そして、なかなかどうして腕の方もそれなりだったか。
木々を壁代わりにして跳び回る中で、山賊達の足元から絡み付いている何かが見えた。
となると、今ここにいる全員がまともに動けないのだろう。

その後は、本当に楽なものだった。
声に反応したのは残りの山賊全員だったらしく、皆倒れた頃には周囲の気配は感じられなくなる
最後の一人を叩き伏せた後、とん、と女の隣に降り立つ。
刃の魔力を解除し、剣を鞘に収めた。

「うん、まぁ、うん、言えて良かったね?
でもね、まず君にはこれ」

はーっ…と深い深い溜息を吐きながら、右手を軽く振り上げ、こつん、と女の頭を小突いた。
避けたり防いだりしなければ、だが。

マヌエラ > 「あら、あら、まあ、まあ」

女が一声発するたびに、山賊が倒れていく。

「気絶させるなんて難しいこと、一撃で確実にしていくなんて。
 なんて……かっこいい……!」

たとえ相手が動いていなくても、その腕の冴えは見て取れる。
あっという間に賊を平らげ戻ったメリルに、駆け寄った。

「凄いです凄いです、剣士様! なんて業前を――はい? きゃあ!」

こつん、とされて、頭を抑えた。

「どうしたのでしょう? 私、何かいけないことをしてしまったでしょうか……」

この期に及んで理解していなかった。

メリル > 「難しいけど、慣れちゃえばこっちのが楽だよ。
何度も叩かずに済むしさ?
さすがに、腕がある相手とかは無理そうだけどね」

女の言葉に、えっへん、と胸を張ってみせる少女。
…が、すぐにぶんぶんっ、と頭を振って。
煽てられてはいけない、今はまだ、やる事があるのだ。
こつん、をされて、頭を抑えている女に改めて指差す。

「あのね、君?君があんな声を上げなければ、山賊寄って来なかったんだよ?分かってる?
ボクは出来る事なら、無駄に疲れる事は避けたかったの、ね?
上手くすれば、きっと諦めて帰ってくれたはずなんだよ。
もう少し、君は状況判断ってのをしっかりした方がいいよ、絶対に!」

びし、びし、と何度も指を突き付けながら言葉を向ける。
さり気無く、自分も大声を上げていたのは伏せているようだ。

マヌエラ > 「そういうものなのですね……!
 いえ、だとしても慣れるまでにも研鑽と実践が必要なはず。
 凄いことにかわりはありません!」

目をきらきらさせたが。

「まあ、まあ、ごめんなさい……」

びしびし指されるたびに声を上げて、しょげる。

「私のせいで、無駄にお手間をかけさせてしまったのですね。
 剣士様のお手を煩わせたばかりか、山賊の皆さんにも痛い思いをさせてしまうことになって……。
 申し訳ありません、剣士様……」

存外、素直に謝った。

「どう、お詫びいたしましょう……」