2018/11/19 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にデメトリアさんが現れました。
デメトリア > 暗がりに沈む九頭竜山脈にて、カンテラがいくつか揺れていた。
カンテラを持つ誰もが王国軍に所属する者だったが、精鋭というわけではなく、戦場にはあまり立たず雑用を任されている者達ばかり。
研究職の彼女もまた同じく。肌寒い夜風に震えながら、足場の悪い山道を歩く。

「ん、危ない。日が昇ってから捜したほうが効率が良さそうなんだけど……。」

石につまずきそうになって、思わず愚痴がこぼれた。
少数ではあるが王国軍の人材を使って捜すのは、王族の姫君。
《平民の男と駆け落ちしたから捜せ》との命であった。
男はこの辺りの里の出身らしく、身を寄せているのではと捜索に入ったが――見つかる気がしない。
むしろ、今頃誰も知らない異国で仲睦まじく暮らしていれば良いなどと思ってしまうタチである。
それでも職務には忠実で、指示された方向を深く突き進むように山の中を入っていく。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にルシアンさんが現れました。
ルシアン > 山狩りの始まった街道の近く。夜の闇に沈もうとする中、揺れる灯りを見て溜息をつく姿が一つ。
頭からフードを被り、肩には袋と弓矢を背負う猟師の姿。参ったな、と小さく息を一つ。

「こんな時期にどこのどいつだよ…迷惑な話だ」

山に雪が降る前に、もう少し稼いでおこうと山に入ったのが数日前。
首尾よく獣の足跡や痕跡を見つけ、近くに良さそうな獲物が居ると察して追いかけ始めたのが今日の朝。
もう少しで追いつくか、と言う気配がしたところを…不穏な気配に無遠慮な明かり。
猟場を荒らされ、多少機嫌が悪くなるのもやむなし、か。

近くにその仲間らしい灯りが一つ。
せめて文句の一つも言ってやろう、と足を向けて…少女が通りがかる少し上の山肌へと。

「おい。お前たち、こんな時期に一体何やってるんだ?」

誰何の声を投げかけてみる。自身の姿は、闇の中。灯りを向けられればぼんやり緑の人影が見えるだろうか。
声をかけた相手が誰かは、青年の側も気づいておらず。

デメトリア > 闇の中から声をかけられ、少女は少し驚いたような顔をして向く。
首を傾げカンテラを向けるものの、その仄かな明かりでは届くような距離ではなかった。
声からすれば男性。この辺にも集落は点在しているので、そういった人々が不思議に思ったのかもしれない。
職務中だということを示すようにコートの刺繍が見えるよう、明かりにかざし。

「軍の者です。現在人探しをしています。
 ご迷惑をおかけして申し訳ございませんが、あと少しで引き上げる予定ですからご協力下さい。」

王族のメンツがあるそうで、詳細を一般の民には口に出来ずに誰を捜しているとは口にしないが。
ここは敵意がないことと、これもいわば国に与えられた任務だということは知らせておきたい。

ルシアン > 軍か。まず、言葉を聞けばそんな感想。
灯りの中に見える人物の衣装についた装飾も、比較的夜目の利く青年にははっきり確認できた。
――正直あまり関わりたい部類の相手ではない。普段なら、そう思うのだけど…。

「…え?」

返ってきた声は、どうも年若い女性の響き。
それも、僅かに…どこかで聞き覚えがある、様な気がした。
一度出会っただけ、それもそう長く言葉を交わした訳でもないのだから、すぐに思い出すには難しかったのだけど。

「…少し待って欲しい。危害を加える気は無いから…っ、と」

茂みから体を出し、急な崖を危なげない足取りでひょいひょいと身軽に降りてくる。
森や山歩きは狩人ならば慣れたもので。そんな調子で、少女と数歩の距離まで近寄ってくれば。

「…驚いたな。ひょっとして、デメトリア…?こんばんは、僕の事、わかるかい?」

目を細めて相手の顔を見れば、今度は目を丸くして。フードを背後に卸して顔を晒せばひらりと手を振った。
さて、少女の側は自分の事を覚えているだろうか。

デメトリア > 様子の変わった見えない相手に対し、警戒を見せないのはのんびりした性格ゆえに。
佇んだまま不思議そうに何者かの出方を見ていると、現れたのは山に相応しい姿の男性であった。
そうして近づいてくれば明かりも届くようになり、マントから覗いた顔は―――。

「あ……えーと……。」

記憶を手繰り寄せる。出会った場所はすぐ思い出したが、名前を教えてもらったはずだ。

「る……るぅ……ルシアンさん!」

少し時間はかかったが、多分正しい。
ようやく思い出した名前を口にしながら、笑顔を見せて私生活モードへと変わってしまう。
たしかあの時はいかにもよそ者といった雰囲気で、迷子だった。
こんな山で会うということは、そしてあの時とちがい歩き慣れた様子は、おそらく。

「ルシアンさんはこの山の方だったの?」

ルシアン > 自分の名を呼んでもらえれば、嬉しそうに笑顔になって頷く。
此方も背負った荷物からランタンを取り出し、灯りを付けて。
これでお互いの顔くらいははっきり見えるようになったはず。

「うん、ルシアンだよ。…それにしてもびっくりした。君が軍の人だったって言うのもそうだけど…
 それにしたって、どうしてこんな所に。…ああ、いや。あんまり部外者には言えない事だったりするのかな…?」

以前に出会った時は、迷子の自分を助けてもらった情けない場面だったのだけど。
その時の柔らかな様子の少女と、軍の印象がどうにも結びつかなくて。
それでも、今の少女の表情で、やっぱりあの時の彼女と変わらない事は分かるのだけど。

「この山に住んでるわけじゃ無いけどね。獲物を狩りに、良く入ってるんだ。この辺りは庭みたいなもの…ってのは言い過ぎかな。
 …でも、こんな真っ暗な中なんて、よっぽど慣れてないと危ないよ?」

大丈夫?と気遣ってみる。自分とは違い、この少女がそこまで夜の山中に慣れているとも思えず。

デメトリア > 「人探しっていうのは本当だよ。ただ……この状況見ても見つかるとは思えないから
依頼元に納得してもらうために精一杯やってるって感じが強いけど。」

たしかにおいそれと口に出来ないことはあるが、さらりと事情の上辺を言うくらいは許されるだろう。
この辺りの人に迷惑をかけているのは事実だし、何も知らせないのは不親切だとも思った。

「あぁ、そうかぁ。夜行性の動物は多いから……。」

この時間にここにいるのかと、納得。
そんな相手からしてみれば、たしかに自分は歩き慣れていないのがまる分かりだろう。
ブーツにもヒールがあり、険しい山道を想定した格好ではない。
だから、痛いところを突かれたとばかりに苦笑い浮かべて。

「大丈夫。そろそろ集合の合図があると思うから、そんなに深くまで行くつもりはないの。
 この後も少し向かう所があってね、これを繰り返して、朝王都に戻って報告するのが今日の仕事かな。」