2018/06/17 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」に空木さんが現れました。
■空木 > 剣閃迸るや、刃に巻かれた哀れな犠牲者は物も言わぬ骸を大地に横たえた。
人数にして二桁には達しないであろう死体が、街道沿い外れにぽつんと鎮座している廃屋前の野営地に横たわる。
「ふふ。旅馬車を襲い、略奪を働いてきたならば、たかが牝一匹ねじ伏せられましょうとお思いで……?」
女は言うと物言わぬ死体を尻目に、悠々と天を仰いだまま歩み始めた。
夜の帳も落ちて、天が顔を覗かせようかという時間帯。返り血塗れの女が一匹ふらふらと歩んでいる。
見れば、女の頬は体を重ねた直後のように高潮し、息は荒く、口元にいたっては一筋涎まで伝う始末。
ちゅるりと舌で血を絡め、新たな犠牲者を探して徘徊する。被害者あるまじき行為であった。
剣戟の後は体が疼いて仕方がない。ここで“よいにおい”のするものでも出ようならば、多少は慰められようか?
■空木 > 女は、盲目であった。
目が見えぬ故に音と匂いには人一倍敏感で、野営地でくすぶる焚き火の音がまるで当たり一面を照らしているように聞こえていた。
周囲に満ちている濃密な血の香りに混じって臓物や骨粉が混じっているのも感じ取ることができた。
状況だけ考えるならば、女のそれは正当防衛に該当するかもしれない。
山賊どもが野営中押しかけてきたのを片っ端斬りまくっただけに過ぎない。
とはいえ、半数を割り、残り二人になったところで命乞いを始めた男を容赦なく膾斬りにしたあたりは、弁護の仕様がない。
しかるべき正当な裁きを下すべきであろうものを殺したのだ。罪に問われるかもしれない。
「ふふ、ふふ……」
抜き身の刀を握ったまま幽鬼のように徘徊する様は、もはや亡霊そのものに近い。
新しい獲物を探せと訴えかけてくる刀にしたがって、ふらふらと足元の悪い野営地をうろつく。
音が人より強く感じられるとはいえ、音を出さぬものには意味を成さぬ。よって足元を探るようにすり足を使いながら、ふらふらと歩く。
■空木 > 「ふう」
ため息を吐く。興奮の余り廃屋を外れて歩いてきてしまったようだった。
旅の目的はとある商人の護衛であったが、肝心の商人が自分を置いて脱兎のごとく逃げ出してしまい、行方を見失っていた。
目が利けばあるいは追跡できたかもしれぬが、もはや後の祭りだった。
女は息を静めようとしばらく街道を歩くことにした。
「うふふ」
刀を抜いたままで。
しばらく行ったが、ついに商人もいなければ見逃した山賊の気配もない。ついでに道まで見失った。
これでは戻るのも難しいだろう。
女は天を仰ぐと、とぼとぼと道をたどり始めたのだった。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」から空木さんが去りました。
ご案内:「山中/九頭龍山脈 山賊街道/山中」にヴィンセント・ミラーさんが現れました。
ご案内:「山中/九頭龍山脈 山賊街道/山中」からヴィンセント・ミラーさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にヴィンセント・ミラーさんが現れました。
■ヴィンセント・ミラー > 隠れ里の捜索に時間がかかり、気づけば夜になっていた。
野宿をするわけには行かず男は街か少なくとも一晩過ごすことが出来る場所を探すことに。
この辺りは賊の集団が出没するし、おまけに今は暗い。
灯りの類を別段持っていなかった男は周囲の気配に気を配りつつ街の方角へと向かっていた。
幸いにして方角に関しては夜の星が教えてくれる。
あとは賊の類に遭遇しないことを祈るだけだ。
仮に出くわしてしまっても銃を携帯しているので撃ち殺せばいいのだが、後の事が面倒だ。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からヴィンセント・ミラーさんが去りました。