2018/03/14 のログ
ノア > 疲弊しきった心身を癒そうと、湯治に訪れた温泉宿。決して立派な造りでもなく、こじんまりとした隠れ家風。質素ながら身体に染みる食事、王都にはない静寂、心地好い温泉.. 其れらは女の心を、じっくりと癒してくれた。

「 ............... 」

身体の方は 未だ本調子でなく、ほんの少し怠さが残っている。周りを大自然に囲まれたこの静かな温泉宿で、暫くは ゆっくり休もうか.. そんな事を ぼんやりと考えながら、バルコニーの椅子に深く腰掛け 外の景色を眺めている。

ノア > 女の他にも宿泊客や、日帰りの湯治客は居るものの、酒を呑んで騒ぐような客は一人も居ない。皆穏やかに、この温泉宿を満喫しているのだろうか。

「 ......... ん、 」

隠居するつもりなんて更々無いけれど、今はこの静けさがとても居心地いい。デッキチェアの上、時折脚を組み替えたりしている内に.. いつの間にか、瞼が重たくなる。うつら うつら 公共のバルコニーで、 小さな寝息を立て始めた。

ご案内:「温泉宿」にブレイドさんが現れました。
ブレイド > 最近は依頼で少し王都から離れた場所まで足を伸ばすことが多い。
採取だの、調査だの、配達だのをメインに、討伐などの危険度の高いものは避けているものの
遠出の仕事も受けるようになったのだった。
そして今も配達の仕事。その帰りだ。
流石にここから王都へ戻るには一日では済まないため、教えてもらった温泉宿へと来たのだった。

ブレイド > 「ん…ふー……風、涼し…」

荷物をおろし、風呂に浸かり、旅の疲れと汗を落とし
公共バルコニーへと足を踏み入れる。
山中の宿というだけあって、風が心地良い。
周囲を見回せば人はおらず、いや、一人…デッキチェアで寝息を立てる女性以外はいないというべきか。

「……」

寒さは和らいだとはいえ、こんなところで眠るなど……

ノア > ─── 其れから、数十分程経った頃..
日が暮れて、急に冷え込む気温に 肩を震わせ目を覚ます。

「 .....っ、 ん.. 」

未だうつろな目を、うっすらと開く。霞む視界の中 琥珀色の瞳が、自分以外の誰かを捉え

「 ぁ... ごめん、 なさ い.. すわる ? 」

デッキチェアに座りたかったのかな.. などと考え、邪魔になっていただろうと 軽く謝る。まだ半分、夢の中.. とろんと寝惚けたまま、ゆっくり上体を起こした。

ブレイド > 「んえ?目ぇ覚めたのかよ。
毛布もってこようかと思ったんだけどよ」

虚ろな視線、眠たげな声。
女性の方をみると上体をおこしていて。

「ああ、気にすんなって。
むしろ身体少し冷えたんじゃねーの?気をつけろよ?」

ひらひらと手を振る少年はラフな格好に頭にはタオルを巻いている服装。
さすがに宿でフード付きマントなど装備できない。

ノア > 少しずつ視界がハッキリしてくれば、其の容姿を改めて視認する。相手は少年、一人のようで。幼さ残る顔立ちから、湯治に来るには随分と若すぎる印象を受けた。

そんな彼に、席を譲ろうと上体起こすも..

「 .........毛布、 」

"毛布" と聞いて、再び ぱたり寝転ぶ。

何だろう.. 大自然に囲まれた この温泉には、誰もが優しい気持ちになれる効能でも含まれているのだろうか... そんな、馬鹿げた事を思いつつ。膝を曲げ身体丸めたまま、

「 掛けてくれるの ? 」

お世辞にも愛想が良いとは言えない目付きや、ぶっきらぼうな喋り方だけど.. 初対面、 ましてバルコニーで寝ちゃうような女を気遣ってくれるなんて、 優しいんだな.. と。女は くす と肩揺らし、 柔く微笑んだ。

ブレイド > 「?アンタにかけないでどう使うってんだよ。
寒くねぇとか寒さを感じねぇってならいいけどさ」

むしろこちらが不思議そうな顔をして。

「まぁ…湯治客しかいねぇって言っても、こんなところで寝るのもあぶねーとは思うけどさ」

どうする?と聞きながら、にかっと微笑み返してみせる。
湯治に来るには若く見える女性だが…誰かのツレ…というわけでもなさそうだ。

「一人なら気が抜けちまうのもしかたねーけど」

ノア > 再び寝転ぶ女。横向きの体勢で、身体ごと貴方を向いている。何となく、 久しぶりに誰かと話した気がして.. 本来ならばすれ違うだけの客同士だけれど、もう少し話してみたかったから。

「 .....ん、 寒い。」

微笑んだかと思えば、今度は不服そうに。毛布を掛けてはくれないのか とでも言いたげに、 つん と唇尖らせてみたり。

「 そ、一人。湯治に来てるの。けど まぁ.. ココの主人もお爺さんだし、他の宿泊客もお年寄りばっかだし。うん。」

などと、平均年齢の高さを言い訳に。何より此処に来てからの数日間があまりに穏やか過ぎて.. 貴方の言う通り、確かに女の気は緩んでいた。

「 そっちは一人 ? 折角なら、もっと若い子集まるとこ泊まれば良かったのにー 」

笑ったり、拗ねたり.. 今度はほんの少し悪戯に目を細め、揶揄ってみたり。コロコロと態度変えつつ 改めて、貴方の顔立ちを じぃと見詰めた。

ブレイド > 「まー、そうだろうな。
暖かくなってきたっつっても…風がよく通るのも考えもんだ」

呵呵と笑って風を受ける。
受ければ気持ちはいいが、この中で眠るのは流石に少し無謀だ。

「確かにじーさんとかばーさんが多いみてーだな。
オレも紹介されて始めてきたけどよ…まあ、こんな中なら安全か」

こんな山の中だというのに…いや、山の中の目立たない宿だからこそか。
刺激を求める若者にはあまり人気がないのだろう。応えながらも少し奥に引っ込んで毛布をとってくる。

「依頼で近くまできてさ。教えてもらった宿がここってわけだ。
でも、嫌いじゃねぇぜ?こう、静かなとこもよ」

まるで少女のように表情を変える女性に笑いかけながら、毛布をふわりとかける。
見つめられれば、不思議そうに。吊目を少し丸くして。

「なんだよ。変なもんでも……あー、目つきは生まれつきよくねーから気にすんな」

ノア > 貴方の話を聞いていると、何だかやたら大人びていて。其の見た目とのギャップに、思わず くす と肩を揺らした。

「 ふふ、若い癖に おじさんみたーい 」

妙に大人びた少年と 他愛もないお喋りを楽しむ、大人げない女。ふわり.. 掛けられた柔らかな毛布の暖かさに、表情緩ませて

「 いや、目付き悪いとか 少ししか思ってないよ。」

どうやら.. 少しは、思っていた。其れを隠す事なく口に出してから、 続けて本心を..

「 けど 優しい。 ありがと、冒険者さん。」

にこりと笑い、真っ直ぐ伝えた。依頼と聞いて冒険者だと判断したけれど、合っていただろうか.. もう少しお喋り出来るかな、 と 話し始めるも

「 こんな山奥まで、大変だね。この辺 よく来 ──
  ─── っ、 くしゅ.. ん。」

よく来るの ? なんて訊ねようとしたところで、くしゃみが邪魔をする。未だ療養中の身体は、思っているより脆くなっているようだった。

ブレイド > 「おじ……!?せめて大人っぽいとか言えよ…くそ…そんなに老けた感じするかよ」

女性の言葉に存外ショックを受けた模様。
思わず自分の体を見下ろしてしまう。格好とかおじさんっぽいのかなーとか思ったり。

「優しいとかじゃねーよ。ふつーだ。ふつー」

目つきに関しては、自分でも良くないと思っているので気にはしていない。
だが、優しいと言われれば、少し頬を赤くして照れくさそうに。

「っと、部屋に戻ったほうがいいんじゃねぇか?
こんなとこまで湯治に来たってのに風邪ひいちゃたまんねぇだろ」

くしゃみをする女性。
ずいぶん冷えてしまったようだ。ここで話を続けるのも流石に身体に悪いだろう。

ノア > おじさん呼ばわりにショックを受けたらしい少年が、身体を見下ろす姿には「 いや、格好の問題じゃないからー 」などと突っ込んだり。頬を赤く染める姿を 「 ぁ、照れた。」などと揶揄ったり。他愛ない会話でも女にとっては久しぶりのお喋りで、随分楽しんでいたのだけれど..

「 .........うん、 」

名残惜しさに俯いて、酷くゆっくりとした動作で立ち上がる。明らかに自分より歳上の少年に正論言われては、仰る通りです.. と、頷く。折角掛けてもらった毛布を畳む手も、心なしか動きが遅い。

「 ありがと、 お喋り出来て楽しかった。
  じゃ ぁ..... おやすみ、 」

ひらひら指先揺らし、立ち去ろうとした女の脚が.. 数歩先で、 ぴたりと止まり

「 っ、 その..... 部屋なら 温かいし、  少し 寄らない.. ? 」

話している間は気が紛れ、 余計な事も思い出さずに済んだから。かといって初対面の少年に、もう少し話して居たい なんて言えずに... 随分と、ぎこちない誘い方をしてしまった。

ブレイド > 他愛のないおしゃべりといった感じのやり取り。
だが、その他愛のなさが心地よく、楽しくもあり…女性も楽しんでくれていることが表情でわかると
嬉しくも思えていた。だが、つきあわせて体調を崩させてしまうのも悪い。

「おう、オレもじーさんばーさんしかいねーと思ってたからさ…
なんつーか、たのしかったぜ。ゆっくり…って…?」

ゆるゆると部屋に戻ろうとする女性の足が止まる。
首を傾げて、つい言葉を止めてしまう。

「……いや、おっさんぽいかもしんねーけど、見ず知らずの男だぞ?いちおう。
少しは警戒しろよな…。オレは構わねーけどさ。
話せる相手もいねーだろうし、話し相手が欲しいってならよ」

誘われたことには少し驚くも、警戒心のなさに少し不安になる。
それでも、断る理由はないのだが。

ノア > 酷くぎこちない女の誘いに、返ってきたのは驚きの表情。続く貴方の言葉に女は、 くすっ と肩を揺らして笑い

「 ふは、っ... 安心して、少年を襲ったりしないからー 」

意味を はき違えて受け取った様子。歳を聞いた訳ではないけれど、恐らく10近く離れているのではないかと予想。貴方にとっても自分が、 所謂 "そういう対象" だとは思えない。逆に、女にとっても貴方は "優しい冒険者の男の子" という認識で

「 .....うん、 もう少し話してたい。」

笑って緊張解れたからか、今度はきちんとお誘いを。貴方が頷いてくれたなら 共にバルコニーを出て、宿泊中の部屋へと案内しよう。ドアを開けて、先に入るよう促して

「 あった かー い.. 」

続いて女も部屋に入る。室内の造りは、他の部屋と何ら変わらぬ質素なもの。唯一違うところと言えば.. 何泊する気なのかという程の、膨大な衣服の量くらいか。

ブレイド > 「いや、そっちじゃなくてだな…ま、いいけどよ」

年は離れているかもしれないが、魅力的な女性であることには変わらないのだ。
自覚があるかどうかは置いておくとして。
まぁ、襲うなど言うマネはしないつもりではあるが。
誘いには微笑みながら応じる。

「ん、邪魔するぜ…って、なんだ?
すげー荷物っつーか……ここに住んでんのか?」

招かれた部屋には衣類であると思われる荷物。
自分と同じく、ちょっと休憩程度によっていると思っていたのでこれには少し驚いた

ノア > 「 ん ? 言ったでしょ、湯治に来てるの。」

女としてはこれでも、厳選に厳選を重ね最低限の荷物のみを持ってきたつもりだった。療養に来た為 派手なドレスや装飾品などはないものの、他人が見れば.. まして異性ともなれば、理解出来ない荷物の量だろう。

そんな自覚はないままに、 畳んであった次の分の着替えだったり 室内で羽織っていたショールだったりをベッドの上から退かす。具合が悪い訳ではないけれど、動きは若干ゆっくりと.. 見ようによっては少し、頼りない足取りで。

「 ん、 と.. ちょっと待って ね..... はい、どーぞ。」

何も無くなったベッドに腰掛けると、隣を ぽんと軽く手のひらで叩き 座るように促した。

ブレイド > 「そうだよな…湯治であってるんだよな?」

べつに周りに何があるわけでもないのに、これだけの服を何に使うのか。
少し首を傾げてしまうも、なにか理由があるのだろうと黙っておくことにした。

「べつに床でもいいんだぜ?
すわらせてもらうけどよ…」

ベッドに腰掛ける。隣にと促され、一応従うものの
拳ひとつと半分くらいは間を空ける。

「で、大丈夫かよ?足取りちょっと怪しかったぞ?
あんなところで寝てたから、熱とか…」

ノア > 「 床なんて座らせられない、 だめ。」

無理を言って誘ったのに、床になんて座らせられる訳がない。よくよく考えてみれば.. 依頼でこの辺りに来たという事は、疲れてるかもしれない。なのにこうして初対面の女の我儘に付き合ってくれるのだから、やっぱり優しい と。貴方が照れてしまわぬよう、心の中で呟いて。

「 .....ん、 大丈夫。少しうたた寝しちゃった位で、熱なんて。そんな か弱くないよ。」

などと、笑って返すけれど.. 言われてみれば、少し寒い気もしないでもない。きっと気のせい と、話題を変える。しかし其の顔は、ほんのり紅く染まっていて

ブレイド > 「だめって…いや、ありがてーけどさ」

子供みたいな言い草に、少し笑ってしまう。
おそらくは気のいい少女のような女性なのだろう。
少し言葉を交わした程度だが、何となくそう思えた。

だが、微笑む女性の顔をじーっと見ていると少し紅いような。
照れているとかそういうわけでもないだろう。
おもむろに手を伸ばし額に触れてみようとする。

「ちょっとわりぃな…………熱くないか?アンタ」

ノア > 「 .....っ、 」

王都の喧騒から離れた山奥の温泉宿で、 見ず知らずの少年相手のお喋りだからこそ、気楽に楽しめていたのかもしれない。もう少し、もう少しだけ.. と。適度に話題を変えながら、 貴方を引き留め甘えていたようで

熱が、ある。
高熱ではないものの、貴方の手のひらに額触られて.. わかりやすい位、残念そうな顔をした。

「 やっ ぱ、 ある..... よね。」

少女のよう なんて言えば聞こえはいいけれど、言い換えれば 大人げなくて幼稚なだけ。

「 .....楽しくて つい引き留めたくなっちゃった、ごめんね っ。付き合ってくれてありがとー 」

いい加減この辺りにしておかないと、風邪でも移してしまったら大変。眉を下げ、 困ったように微笑んだ。

ブレイド > 「…で、喉乾いたりしてねーのか?
他に、なんか欲しいもんとか……」

少し呆れたように女性の額から手を離し
ベッドから立ち上がる。

「とりあえず、横になっとけよ。
あんた、一人なんだろ?んで、ここには湯治に来たってわけだ。
そんなとこで独りで、具合悪くなっちまうなんて流石に心細いんじゃねーの?」

自分のことを思ってのことであろうが、追い出そうとする女性に向かってため息。

「見ず知らずのヤローでわりーけど、ほっとけるわけねーだろ」

ノア > 「 ん、っ.. ほんと 大丈、 夫..... 」

無理矢理誘っといて熱出して、一体を何しているんだろうと.. 今更ながら、絶賛後悔中。なのに貴方は、すぐに帰ってはくれなくて..

「 ............... 」

優しい言葉が、女の弱った心を ぶんぶん これでもかー と揺さぶる。これ以上我儘を言って、迷惑を掛けなくはないのに

「 .....っ、 」

立ち上がった貴方の服を きゅ、と掴んで。申し訳なさそうに..恐る恐る、貴方を見上げ

「 ごめ ん、 やっぱり 今..... 一人はイヤ.. かも。」

結局、何とも情けない弱音を吐いてしまった。

ブレイド > 「ったく、はじめっから強がんなって…
オレだって、一人で楽しい旅行だってのにこんななったらイヤなんだからよ。
みんなそうだろ。だから、謝らなくてもいいぜ?」

申し訳無さそうな女性の手をとって少し優しげな声色で。

「それに、少しの時間だけど縁があったんだから
オレもほっといたままにしとくなんて気分がわりーよ」

ケラケラと笑って、申し訳無さそうな女性に気にするなと念を押す。

「で、果実水とかとってくるけど、何味が好きだ?」

ノア > 「 尊い..... 」

"眩しくて見えない" とは、この事か.. 女は目頭を じん と熱くして。申し訳ないけれど、お言葉に甘える事に..

「 ん.. あんまり、すっぱくない やつ。」

飲み物は何が良いかと問われれば、しっかり注文を付ける位には元気。実際熱自体は大した事ないのだけれど、ただ誰かが傍に居てくれるという事が、とてもとても嬉しかった。

其の後は言われた通り、大人しくベッドに横になり貴方が戻るのを待つ。こんな調子で、いつ王都へ戻ろうか.. なんて、考えながら。

ブレイド > 「? ん、まあいいか。
すっぱくねーっつーと…りんごでいいか?
あれオレも好きだし」

などといいつつそっと女性の手をベッドへと戻し。

「あー、そうだ…オレはブレイドな」

すごく適当に名乗りつつ飲み物を取りに走る。

ノア > 「 ん... 林檎は すき。」

こくん と頷き、 横たわると

「 ......... ブレイ ド、 」

部屋を出る間際に告げられた名を、ベッドの上で小さく復唱した。戻ってきたら自分も名乗ろう と、にこり 柔らかな笑みを浮かべて..



飲み物を手に戻った貴方は、女の無防備な寝姿を見る事となる。すっかり安心しきったのか、気が抜けてしまったようで.. 結局 "ノア"と言う名を名乗る事も出来ないまま、 夢の中へ.....

─── 目が覚めて、 自身の身勝手さを酷く後悔する事となるのは 言うまでもなく。もしも再会が叶うなら、必ず謝罪と恩返しをしようと.. 胸に 決めて。

ご案内:「温泉宿」からノアさんが去りました。
ご案内:「温泉宿」からブレイドさんが去りました。
ご案内:「温泉宿」にノアさんが現れました。
ノア > 疲弊しきった心身を癒そうと、湯治に訪れた温泉宿。決して立派な造りでもなく、こじんまりとした隠れ家風。質素ながら身体に染みる食事、王都にはない静寂、心地好い温泉.. 其れらは女の心を、じっくりと癒してくれた。

女の他にも宿泊客や、日帰りの湯治客は居るものの、酒を呑んで騒ぐような客は一人も居ない。宿の主人を含め、見掛けるのはお年寄りばかり。皆、とっても穏やかだった。

とは云え、隠居する気など更々無い。此処に滞在して数日、身体の方も本来の調子を取り戻しつつある。あとは、気持ちの問題.. いつ王都に戻ろうかと ぼんやり考えながら、脱いだ衣服と着替えを 籠に入れて

「 ♪ ─── ─ ── 」

鼻唄混じりに、お気に入りの露天風呂へ。

ご案内:「温泉宿」にエズラさんが現れました。
エズラ > 「ふ、う、はぁ~……――」

喉の奥から気持ち良さそうな声をしぼり出して、四肢を湯の中へと広げる。
露天風呂に浸かった男は、ぼうとした目で空を眺めた。
長い遠征から戻り、新たに受けた生傷を癒やすべく、本日この宿の到着したのである。
荷ほどきもそこそこに、まずは目当てである露天風呂へとやってきたのであった――

「あ~……沁みるぜ、ったくよう」

幸い、致命的な外傷を受けることはなかったにせよ、身の端々に刻まれた新たな傷に湯が心地よい熱を伝えてくれる。
独り占めしている露天風呂に、新たに現れた者にはまだ気付かない――

ノア > 掛け湯で身体を清めていると、

( .....先客 ? )

心の底から漏れ出たような声が聞こえ、意識がそちらへ向く。立ち込める湯気越しに人影が見えれば、驚かせない程度の声量で挨拶を。

「 こんにちは、 失礼しますね。」

其れは貴方が知るより随分と柔らかな声色。見知らぬ相手、それもなかなかの "オッサン" だと思い込んでいるからこその、 よそ行き声だった。

じろじろ見る訳にもいかないから と、先客の姿を確認しないまま.. 脚の爪先から ゆっくり、湯に浸かっていく。初めは熱くて躊躇いがちに.. 直に其の温度にも慣れ、小さな吐息を漏らした。

エズラ > 何も考えず、呆けていた矢先――不意にかけられた声に、身を震わせる。
湯面が揺れ、自身の動揺をしばし恥じる――戦場から帰ったばかりだというのに、気が抜けすぎているかもしれない――

「お、おおっ、お気になさらず――?」

定型句を返し、その声の方――女の声であったので、少しばかりの助平心も浮かべつつ――を見た。
湯に沈む白い肌、しなやかな骨格、濡れたように――実際に濡れていたが――黒い髪。
その姿に、しばし見惚れた後で。

「……って、ノアちゃんじゃねぇか、久しぶり――オレだよ、おぼえてるか?」

王都の夜を駆ける女怪盗の姿がそこにあった。
こんな場所で会うことを訝しみつつも、再会の喜びに笑みを浮かべる。

ノア > 驚かせてしまったか と、 水面を揺らす相手に申し訳なく思いつつ。ゆっくり湯に浸かっていくと 不意に、相手から声を掛けられて

「 .....っ、 」

今度は此方が びく、と肩を揺らした。顔だけ くるりと声の主へ向ければ

「 エズラ... 」

オッサンだと思ってました、とは心の中に留める。よく知る顔に表情緩め。かなり遠慮して空けていた二人の距離を縮め、貴方へと近寄って

「 久しぶり。元気 だっ..... たら、来ないか。」

元気だった ? と訊ねるも、生傷が見えて言葉を途切れさす。女は白い指を そろりと伸ばし、そっと 貴方の二の腕に触れ

「 大丈夫 ? 」

緩く首傾げ、心配そうに声を掛けた。

エズラ > 「なーに、どうってことはねぇさ――この程度でネを上げてちゃ、戦場暮らしは勤まらなねぇよ――」

警戒を解き、親しげにこちらへと近寄ってくる相手の姿に、こちらもすっかり警戒を解く。
触れられた場所には、浅いが新しい切創があった。
その指先の感触がこそばゆい――

「ノアちゃんこそ、いつもは街でおしゃれしてショッピング――ってな具合じゃ――」

湯治客の多いこんな場所に来る――ということは、何か事情があるに違いない。
しかしすぐに、自分の問いを後悔して。

「――いや、まぁ別にどうだっていいか。」

暗に、先ほどの問いには答えずともいい、という風にそう言うと、ムフッ、といつもの顔に戻る。
近くへ来たのをいいことに、湯の中で相手の腰へと手を伸ばし。

「会えて嬉しいぜ――」

今はただ、それだけを。
白くしなやかな肢体が、湯にあてられて火照る様は、たとえようもなく美しく。
存在を主張するかのように湯面に浮く双丘を隠すつもりも一切なくまじまじと眺めている。

ノア > 思いの外元気そうで、ほっ と肩を撫で下ろし。明らかな生傷を避けて、其の肌に指先を這わせる。労るように、柔く 柔く。

「 .........ん、  うん。」

途中で言葉を切った貴方の優しさに気付けば、軽く頷くだけに。腰に手を回され寄り添うと 貴方の肩に頭を預けて、

「 あたしも。」

そう短く返し、ふぅ と吐息を漏らす。胸元に視線感じていても、笑って許せる。其の位 心身共にリラックスしていた。気持ちいい温泉、気を許した相手。ゆったりと過ごす時の流れに、 女は心地よさそうに目を細め

「 こんな風に静かなのも、たまには いいね。」

普段なら 酒場なんかが似合う二人だから.. 何だかおかしくて、くす と肩を揺らした。

ご案内:「温泉宿」からエズラさんが去りました。
ご案内:「温泉宿」からノアさんが去りました。