2018/03/02 のログ
■フェリシア > 大木を隔てて聞こえる男の言葉は山賊にしては控えめで、人道的であった。
「……」
また悩むこと数秒間。
がさ、がさ、と落ち葉や草の音がして、やがて倒れた大木の向こうに見えるだろう、立ち上がる女性の姿。
山中を歩くには武装が足りないが、この格好で戦場にも赴くので動きにくくはない。
胸元に刺繍されているのは王国軍の紋章。
相手よりいくらか年上らしい落ち着きのある貌だが、
これまでの言動に落ち着きがないのでどう見えるかは分からない。
「えーと…、平気。この辺は山賊が出るから、もしかしてって思って驚いただけ」
摘みかけの薬草は相手に踏まれることもなく無事な様子。
それを確認した後、よくよく見れば自分より若い年恰好の男に緊張感が抜けたような微笑みを見せ。
「私はフェリシア。ここには良い薬草が生えててね、それが摘み終わったら帰ろうと思ってたんだけど」
■ルシアン > 現れた姿は、こんな森の中には少し不似合いにも思える様な、看護師の服装の女性。
自分よりは少し年上なんだろうか?先ほどまでは、此方の格好やら言動で驚かせた事もあるのだろう。
とりあえず敵対するような相手ではなさそうと、ほっと一つ息を付けば杖を下ろして。
「それはすまなかった。…こんななりだけど、僕は山賊じゃない。信用してもらえると助かるんだけど」
ふむ、と客観的に改めて自分の格好を思い返す。これだけ汚れてれば山賊扱いも無理ないな、と困ったような苦笑い。
自分も、相手も安心させようと、少し声の調子は明るくなって。
「僕はルシアンと言う。こんなところに人が居るとは思わなくて…不注意だった。…薬草を?」
狩りの成果である獲物を軽く掲げてみせて。ふと、足元を見れば青年でも知っている種類の薬草がいくつもある事に気が付く。
成程、これが目当てか、なんて納得して。
「そっか。…なら、もし良ければ手伝わせてもらえないか?ついでに、少しだけ僕にも分けてくれると嬉しい。…どうだろうか」
自分にも、これが有れば有り難い物。そんな申し出をしてみて
■フェリシア > 「心配しないで。今もあなたを山賊だと思ってるわけじゃないから。
彼らにも派閥やグループがあるみたいだけど、以前接触したときは…うん…あなたみたいな話し方をする人はいなかったよ」
ふっと笑いながら冗談混じり。
お互いに雰囲気が和らげば、先ほどまでの緊張感は消え去り空気も変わることだろう。
となれば隠れている意味もなく、大木の後ろから落ち葉を踏み締めつつ出てくる。
身を屈めていたせいで膝やスカートの裾に草であったり、葉であったりついている。
それを軽くはたくことで払いつつ、申し出に、きょとん。
「山賊に見紛うことができないような律儀な人なんだから。
ここは山なんだし、分けるだなんて言わず必要な分だけ摘めば良いよ。
この辺りに生えてるこれはね、殺菌効果があるから傷口が化膿しないように使うと良いの。
あ、でも棘のある植物も多いから気をつけてね」
相手の足元に生えている薬草を指差しながら、ついでに忠告。
自分が先ほど失敗し、怪我をしただなんて余計なことは口にせず、ようやくの薬草摘み再開となろうか。
■ルシアン > 「そっか。感謝する。…ん…前に山賊に会ったことが?よく無事で…」
安心すれば、女性の言葉に少し驚いたような顔。
この辺りの山賊にはあまり良い噂を聞かない訳で。とはいえ女性は服装から軍属であるようだし、そういうツテだろうか。
しゃがみ込み、獲物を側へ置いてから足元に生えている草を指先で触れた。
一応は植物の知識は自身にもあるが、薬草なら女性の方が詳しそうだ。
指さされたものと同じ種類や、その傍にある別種の草も、あまり傷つけないように摘み始めて。
「ん…それじゃ、そうさせてもらう。…化膿止めにも使えるのか、これ…うちの使い方と違うなぁ。
ああ、こっちのも確か打撲なんかに効くんじゃ…っ!?」
不意に声が跳ね上がった。調子に乗ったせいか、近くにあった棘のついた茎を引っ張って小さく指先を切ってしまったらしい。
―――先ほど何処かで誰かがやらかしたのと、よく似た光景かもしれない?なんて事はつゆ知らず。
軽く傷口を口に入れて舐めて消毒の積もり。
■フェリシア > 「無事なのは…虎の威を借りる何とかというか…。
ルシアンくんこそこの辺りを縄張りにしてるなら気をつけてね」
相手の予想は大当たりである。
正確には軍兵士の後ろで山賊を観察したに過ぎないのだが、彼らの粗暴さは十分に理解できた。
そんな他愛無い会話も混ぜつつ、1人から2人へと増えた薬草摘み。
ここで出会っただけのことはあり、薬草の効能を知っている様子に感心したところ。
忠告しておいたはずが自分の二の舞になったのを目にし、あぁ、となんだか他人事ではないため息零す。
「ルシアンくん…服は薄汚れてるけど湯浴みはどのくらいの頻度?
そういうときはちょっとした傷でも化膿しやすいからきちんと消毒しなくちゃ。ほら。早速、実践実践」
自分も舐めて終了だったことは棚に置き、薬草の葉を揉み、柔らかくなったそれで相手の傷ついた指先を包もうと腕を伸ばし。
■ルシアン > 「この辺りには時々来るんだ。でも山賊とは正面から会った事は無い…と言うか、気配がしたらすぐ逃げてる。
フェリシアさんも、この辺りでよく薬草を?確かにこの辺、たくさん生えているけれど」
一般人からすれば恐怖の対象である山賊。多分、今、此処に来る事は無いだろうけども警戒するに越したことは無くて。
それでも、会わないならば世間話程度の空気で話題にもなったりする。
指先を切ってしまった事が若干気まずそうにするものの、何だか呆れられてしまったように聞こえたため息に若干渋い顔。
「湯浴み?…此処に入る前だから…2日か、これで3日目かな?
こんなの、平気……あ…す、すまない…」
ええと、と軽く考える仕草。一応、体を川の水で軽く拭いたりはしている。
流石に匂ったりはしない…はず。それでも、清潔とは少しいいがたい状況なのは事実であって。
一度は遠慮しようとするも、しっかり準備されて腕を伸ばされたなら、遠慮がちに手を差し出して。
少し落ち着かない様子で、でも大人しく治療されるはず。
■フェリシア > 「私はたまたま…かな。そんなに頻繁にきてるわけじゃないの。
仕事で色々な場所には行くけど、今ここにいるのは…私用みたいなもので」
良かれと思って寄り道したのが思わぬ小さなトラブルで長引いている最中。
そういえば馬車を待たせていた。そろそろ御者が痺れを切らす頃かもしれないと、思い出す。
「男性だし、山だしね…汚れやすいよね」
逆に山だからこそ簡単に湯浴みもできないのだろう。
理解はできる。が、健康面を気にする職業柄渋い顔になったのは否めない。
差し出された指先の傷口を、柔らかくなり水分の滲み出た葉で包むとしばし。
居心地の悪そうな相手の顔を時折視線だけで見上げては、思わず笑ったりしてしまいながら。
「――――上手に大人しくできました」
わざとらしく子供扱いし、褒めてやれば馬車を待たせている方向を振り返り。
カゴに入った薬草も本来の目標を超える量が入っており、十分であった。
「じゃあそろそろ行くね。これと…これは別の場所で摘んだんだけど、お茶にして飲めば腹痛に効くから分けてあげる」
あと何日山にいるのか分からない相手にせめてもと、薬草を分け。
「またね」などと挨拶をすれば、女は少し慌てた歩調で森を抜けていく。
思わぬ山での出会いに笑顔を残しながら―――。
■ルシアン > 話を聞き、うなずいたりもしつつ。
――なんだか、子ども扱いされたような言い草には、少しだけ、むっとしたような顔をするけれど。
それでも、薬草を分けてもらい、きちんと手当もしてもらえば感謝の気持ち。
「ありがとう。…また、どこかで逢えれば嬉しい。…それじゃあ」
ひらり、と手を振って。何処か嬉しそうな笑顔で女性を見送った。
さて、と――自分も、獲物の鳥をまた背負い直して。
貰った薬草と、獲物とを抱えつつ、再び森の中へ。
今日の出会いに感謝しつつ、再び散策に向かったとか。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からルシアンさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からフェリシアさんが去りました。