2018/03/01 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にフェリシアさんが現れました。
フェリシア > 街道をゆったりとした速度で走っていた馬車が止まり、間もなく扉が開く。
中から出てきたのは、王国軍兵士を治療するために働く看護師の1人であった。

「すぐ戻るから少し待っててね」

馴染の御者に声をかけ、待機してもらうと看護師は木々の間を通り、森の中へ。
太陽は高く、歩くには十分だが1本1本の樹木の背が高く、道に比べればやや薄暗い。
そんな場所を少し歩いたところで目的地となり、屈んで薬草を摘んではカゴに入れる。
潰して患部に貼ると痛みが和らぐのだと、兵士の1人が喜んでいたのを思い出しながら。

「魔法も大事だけど、こういう治療のほうが効く人もいるから…」

戦場では後方支援の魔力も貴重だし、治癒魔法に頼らない治療なら負傷者本人が行うこともできる。
併用することが最も効率的。

フェリシア > 「…っ」

ピ、と皮膚が切れる痛みに眉を顰める。
薬草の傍に棘の生えた蔓があった。
大した痛みではないが、指先を見れば鮮血がぷくりと膨らむように傷口から溢れる。

「………ドジした」

患者には傷口は清潔にだとか、ときに口煩いことも言うのだが。
自分のこととなると無頓着に指先を軽く唇で食んで、血を舐め取ってしまう。
そうして2度同じ失敗はしないようにと注意しながら薬草摘みを再開。
大量に摘むつもりはなく、適当に済ませるつもりなのだが。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にルシアンさんが現れました。
ルシアン > 薬草摘みの女性の作業の最中、不意に――小さく、鋭い、風を切るような音が耳に届くはず。
次の瞬間、頭上から女性の傍へと、ドサッと何かが落下してくる。直撃はしないものの、間近に落ちた大きなモノ。
それが大きめの野鳥であり――その首元に、一本の矢が突き刺さっている事に気が付くだろうか?

「……この辺り、か…?」

少しの後に、森の奥から何かを探してくる姿が一つ。
手に杖、背中に弓を背負った、狩人のような姿。その足は期せずして女性の方へと近寄っていくはず、で

フェリシア > 屈んでおり、丸まっている看護師の背が突然の衝撃と音にビクッとした。
―――が、声は出なかった。出ないほどに驚いた。

「なっ、な、ななな、なに…?」

落ちた際、看護師の膝に羽根が1枚ふんわりと飛んできたような近距離で。
心臓ドギマギさせながら落ちてきた何かを確認する。

「―――鳥。あぁ…びっくりした」

下手すれば山賊の放った武器か何かの可能性もあるわけで、
一応危機一髪のような距離だったとはいえ、落ちてきたものが野鳥だったことには安心した様子。
しかし次には狩りをしている何者かが近くにいるのだと悟り、立ち上がると周囲を見回す。
そのとき、微かに聞こえる足音に女は慌てた。
山賊そのものがここへ向かっているのかもしれない。
慌てた末、遥か昔に倒れたのだろう枯れた大木の陰に這うようにして隠れた。
薬草のたんまり入ったカゴがその場に残ったままだとか、
そもそも気配が全く消せていないだとか、そういうことは置いておくとして隠れた"つもり"。
視線は現れるのだろう山賊の元へと、こっそり。

ルシアン > がさがさと、茂みをかき分けて獲物の落ちたであろう場所へと歩いてくる姿。
山に入ってかれこれ数日ほど。歩き回って獲物を探し、すっかり薄汚れたような姿は確かに山賊か何かと見えても不思議もない。
勿論、当の本人はそんな意識もまるでないわけであり。

「……ん、居た」

自分の射た獲物を見つければ、満足げにそれを拾い上げる。
中々の大きさの鳥だ。羽の色艶も良い。食べても美味、売っても相応の値段になる。
獲物としては申し分ないそれ。息絶えていることを確認し、小さく祈る様に目を閉じる。
そして―――ふと、閉じていた眼を開けて顔を上げた。

「……誰か居るのか?」

僅かに緊張したような、鋭い声。視線を向けた先は「誰か」が身を隠す大木へと。
それがどんな人物かは分からないが、場所が場所だけに警戒の視線を向ける。両手で杖を握りしめつつ。

フェリシア > 枯れた細い枝の隙間から茶色い瞳が男を見つめていた。
一見した見た目は山の男だが、この辺りを荒らしていると言われる山賊かどうかは――
絶命した野鳥に祈りを捧げている様子から違う気がするのだが、確信はない。
どちらにせよ、あの野鳥を手にすればすぐにここから立ち去るのだろうと思っていたため、
急に声をかけられ看護師は一瞬にして、背に汗が滲んだのを感じた。

「…………」

声を出そうか、このまま逃げてしまおうか(逃げられるかはともかく)と迷う時間2、3秒。
その後、大木の陰から男のそれより幾分も緊張の強い声が。

「て…敵意はないの。ただ野草を摘んでいて…鳥が上から…。
 あなたのテリトリーを侵すつもりはないから、攻撃はしないで」

緊張に少し揺れた声ではあるものの、女の声音だということは分かるだろう。
変に動いて野鳥を仕留めた矢が飛んでくるのは避けたく、
看護師は四つん這いのような格好のつかない姿勢で隠れ続けるはめに。

ルシアン > なんとなく気配を感じた先からした声は、思っていたものと異なる女性の声で。
あれ?と予想外の事態に軽く首を傾げつつ。てっきり山賊やら追剥やら、そういう類と思っていたので肩透かし。
少し戸惑いつつも、小さく息を付いて呼吸を整えて。

「別に此処は僕のテリトリーでも何でもない。其方が危害を加える気がないなら、僕も手を出したりはしない。
 …もしかしたら、驚かせてしまっただろうか。だとしたら謝る。姿を、見せてもらえないか?」

鳥が、上から。そんな台詞に、ひょっとして自分の狩りの結果でやらかしたんだろうか、という考えに至る。
だとしたら流石に気まずい。一応、それでもまだ、若干の警戒はするのだけども。
こちらの姿は見えるように立ち上がり、杖を持つ逆の手を軽く上げて。
少し困ったような表情は、何処か幼く見えてしまうかもしれない。