2017/12/29 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にエイミさんが現れました。
■エイミ > (街道沿いの不慣れな道を、また似つかわしくない女が一人で歩いていた。
王都近くの修道院に勤める女には、山賊街道は一人で歩いていい場所ではない。ふつうであれば。)
…護衛さんっ、どこですか…??どこにいらっしゃるんですか…!??
(先程から探しているのは、護衛として雇った者だが、目を離した隙に道中突然いなくなってしまっていた。魔物に襲われたか、それとも計画的か。
仕事を途中で放棄してしまったのかはわからない。
ともかく世間知らずな女は一人、場違いにも山中で街道をふらふらと歩いている。)
夜になる前に、ここを抜けないと…!呼び出しに、間に合いませんし…!!
(修道院からの便りで呼ばれた女は、急ぎの道だった。見上げる森は影も深く、今にも魔物が飛び出してきそうで顔が青ざめる。
胸から下げたお守りをぎゅっと服の上から押さえて)
■エイミ > (踏み込んだ足が乾いた小枝を踏み抜き、音をたてる。それに跳ね上がるように肩を震わせ、振り返った先には暗い森の茂み。
ざわりと何かが音をたてて動いているように感じて)
神様…お守りください。
(小さく祈りの形をとると、街道沿いを小走りに走り始める。この森を抜けていかねば、目的の村にはたどりつけず、頼まれた仕事はこなせない。
女のせめてもの旅支度のブーツが地面をけり、外套がはためいた)
■エイミ > (無事に森を抜けられるかどうかは、運次第だ―…)
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からエイミさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にノウブルさんが現れました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にエイミさんが現れました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からエイミさんが去りました。
■ノウブル > (――王都からは離れたこの場所を、酷く急いでいるのには訳がある。
と在る依頼により請け負った筈の護衛仕事、其の対象が何故か
己と対面するよりも遥か前に、出発してしまったというのだ
しかも、其の相手には既に「己と出発した」事になって居るのだから性質が悪い
誰かが自分の名を騙って連れて行ったのか、其こに何らかの悪意が在ったのかは知らぬ
だが、兎も角――急がなければならぬ状況なのは、確かだった。
未だ時期は昼間とは言え、深い森の中は薄暗く影に包まれる
其の中を、まるで獣の様な速度で全力踏破しながら、周囲へと光らせる目)
―――……こういう事が在るとは…な。
(自分が、例えば争いに巻き込まれる事はよくある事だ。
けれど、間接的な形で、護らねばならぬ対象が諮られるのは余り無い。
故に、少しばかり――不快感、が翻るのだろう。 早く見つけねば、と)。
■ノウブル > (思えば、己にも非は在った。 直前に請けていた別の依頼で、呪印を少しではあるが、解放する羽目になったのだ。
その影響から抜け出るまでに数日、故に、護衛対象と逢う日を伸ばしたのだが
――迂闊だった、と、言わざるを得ない。)
……何処から漏れたのかは知らないが…。
(相手が、そう言った策謀に掛けられやすい類の人間だったのか。
其れとも、いっそ詐欺師にでも引っ掛かった、と言う状況の方がまだ安心できる
そう言った個人的な事情すら、未だ知らぬまま故「山を越える」と言う話だけを頼りに探す今
己の嗅覚と聴覚と、そして経験と勘、それらを総動員して、広大な土地を駆け巡るしか無い)
―――……時間を考えれば、追いつく距離だが…。
(恐らく、単純な距離だけであるならば。
但し、其れは相手が徒歩での移動をしている前提だ。
もし馬車など何らかの移動手段を有していた場合は、計算が狂う。
道中、馬の形跡や休息の跡など、そう言った判り易い痕跡は見当たらなかったが故に
恐らく、徒歩だろうという公算は大きい、が)。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にチルユキさんが現れました。
■チルユキ > 塒で腹を空かせて眠り込んでいた頃。
二つの気配に意識を引き上げられ、半ば本能的にその前へと降り立つ。
質素な格好をしていたが、場違いに肌理や髪が綺麗な女と、顔立ちの整った男が寄り添って此方を強張った顔立ちで見遣ることに、表情が薄かった唇を三日月のように吊り上げて、笑った。
――――幾許か後。
頬や左腕に、左足の太腿の辺にぱくりと裂けた切り傷より赤い血を流す己と、
誰もいない場。
女の血の一欠けらを頂いた処で、気絶させた筈の男から攻撃を受け、取り逃がした。
二人が偽装依頼をして駆け落ちを仕組んだとは、知る由も無い。
只々腹が益々減って、理性が剥がれる音が、する。
――もう一つ、それらを追うように現れた気配に意識を絡め取られる。
とん、と木々の間を抜けて其処を目指す。
野生動物のように気配は殺せても、錆びた鉄の匂いを風が攫う。
風下は選び、木の枝の上で男が通り掛かるのを待つ。
其の瞬間、肩へ指を掛けて背後から地に引き倒してしまおう、と。
■ノウブル > (――無事ならば、其れで良い。
もし何事も無く、二人が目的の場所に辿り着けたのならば、其れで。
問題は己が其れを知らされることは無く、要するに――単に心配なだけだ。
そんな折に、ふと、鼻を掠めたのは血の香り――魔性の、気配を孕む。
恐らくは、多く流れた側の気配に紛れてしまう程度の量だったのだろう
木々を抜ける速度は獣の如く、最も血の香色濃い其の場所へと辿り着けば
土に滴った鉄錆の気配に、僅か周囲を見回して――其の、刹那。)
―――――………!!
(無駄のない、襲撃の機会。
己が、上であると気付くのと、彼女が迫るのはほぼ同時だったろう。
咄嗟に、背中に背負う剣の柄へと片手を伸ばし――けれど、其の動きが鈍ったが故に
きっと、己が身体は、其の儘地面へと押し倒される事となる、か。)
―――……っ……、……チルユキ、か。
(-―知る、其の顔。
其の顔は、何時か見せたように、餓えに染まっているのだろうか。
己が声が届くのかは判らない、が、瞳が、彼女の瞳を見据えて。)
……食えなかったのか。
(そう、ぽつりと問うだろう。
――彼女の香り、彼女の流した血の香り。
未だ飢えが満たされぬのなら――きっと、「誰か」は無事の筈だ)。
■チルユキ > 手に掛かる、薄い温もり。
生きている誰かの手応えに、小さな刃のように尖った爪が食い込もうと力を籠める。
背に乗り上げるよう組み敷いた体躯は鍛えられた膂力に任せれば跳ねのけられる程度の重みかもしれない、が。
手は両肩に。膝は男の太腿を地面に縫い止めるよう置かれて力を籠める。
ぱたぱたと男の脚を、地面を濡らすように血が落ちる。
「―――…………」
遠く、名を呼ぶ声。
誰の名前か、己の名前か。靄がかかったように理解することが出来ない。
緩く首を傾げた。さらさらと流れた髪が男の頭傍を伝い落ちる。
鼻先で、朱い髪を掻き分けるようにして。男の項の辺にあてる。
小さな舌で舐め上げるのは、血流の在処を探る為。
牙が其処を伝う
「――……………たべたい」
喰えなかった。名前よりもうん、と素直にうなづくのは、己より誰かより、本能に類する方に沈むからだろう。
■ノウブル > (其の瞳に、人らしき正気は保たれていない――そう、見える。
けれど、其の瞳を己は既に知っている、餓えて、餓えて、見境の無くなった瞳
他者の血でなければ己が渇きを癒せないが故の、業を背負った瞳。
己の事を、或いは認識すら出来ていないのやも知れぬ
押さえつけられている肩は、抗おうと思えば、きっと抗えるだろう。)
…………そうか、腹が減っているのか。
(一言、其れだけで凡そは理解した。
剣の柄に触れていた掌を放せば、代わりに其の指先を舞い上げて、彼女の背へと。
とん、と、促し、許すようにして、其の体躯を己が元へと抱き寄せてやれば
瞳は、頭上に茂る木の葉の闇へと、静かに投げられて。)
………腹を満たせ。 ……話は、其れからだ。
(頚動脈へと、彼女の牙の先端が触れる。
其処を穿たれれば、他の生き物と何ら変わらず、鮮烈な命の気配が迸るだろう。
いつかの様に、手首を裂いた時よりも溢れる其れは、彼女の飢えを満たすには十分な筈だ。
……もう片方の掌が、彼女の後頭部へと添えられ、緩く撫ぜてやるなら。
きっと、促すんだろう――構わない、と)。
■チルユキ > 抱き寄せる手に暴れる様子はなく、
縫い止めようとした手指の力が僅かに弛む。
上肢が折り重なり、抑えつけていた膝がずるりと地面へ落ちる。
恐慌でも、怒りでも、拒絶とも違う触れ方に緩く首を傾げる。
知っているような気がするけれど、
動きかけた思考が霧散する。
触れさせられた頸動脈へ、牙が緩やかに沈む。
細い鉤針のような硬さが柔らかな体内へと埋め込まれていく。
整った筋を切り開く感触、と。溢れ出る温かな血の匂い。
赦し、差し出してくれた男に刻む苦痛は、針を穿つ行為と何ら変わりなく、
ずる、と牙を引き抜く。溢れ出る血に唇を触れ合わせ、
舌が血を拡げるように何度か掬う。
鎮痛は、酩酊は、唾液に絡むもので、表面だけに未だそれが与えられる。
「――――…………何の」
話、なんだろうか。鈍い思考はやはり目の前に呑まれる。
■ノウブル > (――餓えている筈だ。
けれど、彼女の襲い方は、決して要領が良いとは言えない。
問答など無用に、襲い、噛みつき、血を奪う事だって出来るだろう。
狩の仕方が下手とも言えるだろうか、けれど其れ以上に。)
……御前は、優しかったのだろうな。
(――それは、勝手な推測だ。
彼女の過去なぞ知らぬし、今の姿を見て言うべき事ではないかも知れない。
だが、己が首筋へと其の牙を穿たれ、溢れ出す血潮を舐め取られながらも
何処か穏やかに、そう耳元へと呟くんだろう。
――ざわりと、身体の刻印が、身勝手な起動をする。
頚動脈を穿たれるという肉体の危機を察知したのだろう。
おそらくは、程なくして自己治癒が始まる、何時かの様に。)
……何でも良い。 ……御前の事を話せ。
(何の話でも、構わない。
己が其処から拾う情報も在るだろう、或いはただ耳にするだけでも。
けれど、そんな事よりも。 今は、もっと飲めば良い、そう促そう。
足りはしない筈だ、其の脚に負った傷を癒す為にも。
だから、きっと、こんな事も付け足すんだろう。)
―――……良いのか? ……また、獲物に逃げられるぞ。
■チルユキ > ぴちゃ、り、と
小さな音を立てて溢れ滴る血を舐め取る。
舌先を尖らせて、多少舐め広げながらも取りこぼすことが無いように。
冷え切った手指に仄かな熱が灯る。
飢えが多少満たされると、麻痺していたようになっていた飢餓感を強く自覚するようになる。牙を再び穿とうとして、僅かにどうしてか、躊躇った。
「――………? 優しく、ない。お前は、あまい
吸った隙を、討ったりしない …差し出して」
血が、生きているひとの血が、温かいけれど。無ければ殊更飢えるのだろうけれど。
己の跳ねのけるしなやかさを持っている癖に、
屹度、剣に掛けた指を外さず、血を吸う隙をついて突き刺すことも出来るんだろうに。―――先刻女をかばうために男がそうしたように。
だから、甘い、と。態々告げる理由等分からなかったけれど。仄かに感覚がざわついた。
触れた肌の表面を巡る何かの気配、に。びくりと指が跳ねる。
害意ある動きが無いようで、けれどどこか神経質に唇が離れる
「―………… ?」
問われて浮かぶのは先刻遭った二人。唇が離れ、動きが鈍る。不意に、誘うように 挑発するように 告げられる。
「……だめ」
膝が、男の片脚に絡む。挟み込んで、逃げられないように。
肩から離れた細い手指が、男の耳朶の下に差し込まれ、首筋の形に沿わされる。
ガリ、と。咥えこむよう歯が沈んで、治癒に塞がりかけた疵を磨り潰す。
肉のひとひら齧り取るように。
血混じりの透明な唾液が舌先から滴り落ちて、創の奥深くへ潜り込んでいく。
男の意識を揺さぶるような酔いが、 鬼が感じている飢えの幾許かが伝播するように拡散する。地を掻き毟りたくなるほどの、己が己でなくなるほどの強い飢餓がごく一瞬は。男の耐性すら薙ぎ倒すように。
■ノウブル > ……甘い、か。 確かに、そうかも知れん。
だが、討たない理由は…、……前にも、話した筈だ。
(背に、そして後頭部に添う掌へと、僅か力が篭った。
深く、獲物を逃がす危機感を煽った事で、更に深く刺さる牙
痛みには慣れている、けれど、其処から溢れ返る血の代わり
ふと、己が脳髄を酩酊感にも似た感覚が、急激に回り始めるなら
其れが呪いなのか、それとも毒なのか、何れにしても、癒そうとする呪印が
一層先刻よりも其の解放度合いを強めて、肉体を、活性化させる。
――其れを、押さえ込む。 己が理性と共に、今は、其れを手放さぬ様にと。
娘の耳元に、きっと、乱れる呼吸と、僅かに吐息を詰める気配と。
娘の感じる其の上が乗り移ったかのような、飢餓感にも似た衝動をやり過ごそうとしながら
けれど、きっと、其の華奢で軽い身体を、其れまでよりも、強く抱き締め。)
………ぐ、う……っ……。
(呻きと共に。
其の身体へと、熱が灯って行く。 文字通りの体温の上昇、細胞の活性化。
人として生まれながら、人とは違う身体が、危機に瀕して本能を揺さぶる
柔らかな、腕の中の、其の存在へと、焦がれる様に。
娘の下腹を、雄の腰が、柔く打つんだろう。 其れもまた、本能めいて)。
■チルユキ > 口中で滴り落ちる鮮烈な血、からだの欠片。
吸血鬼では、血は糧となっても かけらは糧になりえない、けれど。
小さなそれを強引に飲み込んだ、
男の体躯で強まる魔の気配と、抑え込まれているような違和感。
唇が傷に触れ、舌先が窪みを何度となく跳ねる。
耳朶に掛かる吐息が先程より乱れるのを、痛いのか、と、思った。
苦痛を和らげるのと引き換えに、強い衝動を煽り唆す、もの。
唇が血を吸い上げて、探る舌先が唾液を落とす。体内の深くに潜り込ませるように。甘い毒を含ませるかのように
柔らかな舌が窪みに埋まり、ぬるぬると蠢く
頬と太腿から滴り落ちていた血が痕を残して止まり
強まる腕の力に、血の甘さに酔った双眸がゆらりと揺れる。
体温が低い身体を抱きしめる腕が、熱を帯びたのが伝わって
「―――ァ、」
腕の中の背が緩く撓り、声が零れる。
疑似行為を彷彿とするその反応に、被せるように頸動脈の疵を噛み締めてしまう。
告げられた言葉が頭の中を巡り、
「ひとを襲った、 喰わなかったのは、返り討ちにあった、だけ。
―――ノウブル、……」
男の理性を軋ませたのと裏腹に、幾らかその欠片が戻る。
柔らかな肢体が小さく跳ね、密着した下腹が浮く
■ノウブル > (己の血肉が糧となり、この娘の肉体を永らえさせる事に
何か、特段の感慨を持つ訳では無い――餓えているから、与える、純粋な。
嚥下する音が間近に聞き取れるなら、そう、其れでいいと
僅かに力を緩めた後頭部の掌が、柔く其処をなでるだろう、あやす様に。
痛みには――慣れている、だから、今この身に巣食い始めているのはそうじゃない。
けれど、其れを娘へ伝える事はしない――伝える、理由も無い。
僅か、身じろぐ娘の身体を、己が腕の中へと縫い止めるような力の入り様は
娘の齎す酩酊と、樹陰の齎す狂騒の、為す物。)
………なら、良い。 ……どちらも、災難だったな…。
(運が、悪かったのだろう。 娘も、其の相手も。
血を飲む事を己から制する事は無い、噛み締められ、深まる首の傷から更に溢れる血流
命の糧が失われ、身体が其れを補充し、其の反動が遅れて身体を駆け巡る。
ぐ、と、浮き上がった娘の腰を抱え寄せれば、密着を齎して――)
……チルユキ…。 ……餓えは…、……。
(満たされたのか、と。 其の先を告げられなかったのは、血を失ったからではなく。
身体の奥から沸き上がる様な獣の衝動が、己を、押し潰しそうになって居るから、か)。
■チルユキ > 膚に触れていた唇が離れる
引き剥がす、にも近い。
代わりに溢れ出る血の流れを留めようとするように掌を宛がう。
己の、失った血の量が多かったのだろう、
以前なら疾うに満ち足りていた、其れ以上の量を頂いたにも関わらず未だ飢えが喪失しない、のは。
「お前は、植物みたい……だね…」
衝動を、飢えを、否定しない。其れが相手が忌避する対象にふるわれるものだったとしても。
獲物を地に縫い止める為の組み敷いた筈が、
何時の間に、逆転したのか。
引き止める腕に崩れた軽い体躯が密接する。
相手が血を差し出す様を、甘いと、振り払える筈だと、告げたけれど
今この状況は状況は似通う。
爪を伸ばして腕を裂き、強引に抗えばこの狩人は深追いせずに容易に手放すだろうと思われた、
「―――――………飢えは、だいぶ、……
うで、解いて、」
■ノウブル > ………陽の光で生きて行けるなら、其れも良さそうだ。
(空腹に苛まれる事も無いだろう、餓える事も。
娘が牙を離せば、宛がわれる掌の下で血の噴出は静まって行く。
止血と、そして今稼動している事故治癒とが、恐らく急速に傷を塞いで行く筈だ。
――見上げる瞳の、其の向こう、己を見詰める瞳が
言葉を交わせる程度の理性を、取り戻しているなら。
―――抱き締める腕を、まるで、衝動の儘に一度強く力込めてから。
ゆっくりと、引き剥がすようにして、力を抜いて行くだろう。
おなじ、ように。)
――――……離れて置け。 ……傷は塞がる、血も戻る。
……ただ…、……御前は…傍に居ない方が、良い。
(――まるで、移された様だ。
相手の理性を奪った「餓え」が、己へと感染したかの様。
其の後頭部から背中から、といた腕が離れ間際、娘の其の頬を柔く擽り触れて
そして、地面の冷たさを得る様に、土へと落ちる、か)。
■チルユキ > 「お前の糧は、ひとじゃ無い」
対価と引き換えに通貨を得て、通貨と引き換えに穀物を、肉を得て、食す。
飢えた身を振り払い、引き裂き、逃げ出されることも、恐れる視線を向けられることも無い。
其れなのに何故、光合成を望むのか。
必要ないのに何故、差し出すのか。
手放すのか。飢えて、迄。
一瞬込められた力に息を詰める。
気遣われた、けれど、矢張りその気になれば己を薙ぎ払えそうな力を含めた其れ。
するりと、ここに来た時と違えた軽い所作で、腕の隙間から抜けて、後退する。
離れる間際に頬に触れた指の熱度に視線を上げ。
靡く髪の感触が男の指を攫って遠ざかる。数歩の距離、其れでも密接よりは開く距離。
「飢えて、いるの、は、…どんな感じ。
……なかにはいりたいの、」
まるで男が意思の力で治癒すら妨げていたように
急速に修復されていく首筋に目を見開く。
無思慮に動いた掌に、べったりと付着した血を見遣って、指先から手首までを緩々と舐め取る。無造作な問いと共に。
■ノウブル > ―――……俺は、狩人だ。
……狩人で在るべく生まれた、其れ以外を知らない。
だから、其れ以外の生き方が在るのなら…面白そうだと、思っただけだ。
(――深い意味はない、と、そう唇は告げる。
唯の、茹りそうな頭が呟いた戯言だ、と。
腕の中から、娘の身体がすり抜けて離れる。
其れに、己の中で渦巻いた感情のひとつには確かに、安堵があった。
其れを追う事無く、ゆっくりと身体を起こせば、這うようにして背後の樹へと凭れよう。
己が片掌で、片掌を互いに押さえつけるようにして組みながら
ゆるりと、首を横に振り。)
……俺が、俺でなくなる様だ。
俺が、唯の獣に成り下がる…、……無為に奪い、無為に殺し…。
……そうだな。 ……発情期で気が立っている雄虎みたいな物だ。
(――そうして、己がどんどん「ヒト」から離れて行く。
そんな気になるのだ、と、言葉は紡ぐが、視線を下げたまま
娘と、目を合わせようとはしないだろう。
膝を寄せ、丸まるようにして――篭る様に)。
■チルユキ > 「……お前はお前以外になれないよ。
わたしがここでお前を眷属にするだけなら、誰かがお前の帰属先を作り替えることなら、出来るだろうけど」
望むのか、と。
ごく軽い口ぶりで問うけれど。
自分が自分でなくなることを忌避するなら、この体は其れその物だ。
距離を離した男の背中を茫洋と幽鬼のように突っ立って眺める。
「なかにもぐりこまれるより、外側の浅いところがいい、気がする」
認識するから、理性で止めるから、
獣性を肥大させないのは男の理性と、距離感なんだろう。
ゆらりと距離を詰めて、丸くなる男の肩に額を乗せる。
胸元も膝もくっつくけれど、目を瞑る。獣が獣に寄り添うように。
意識が其の侭落ちようと、する。
■ノウブル > ―――……判っている、本当にそうなりたい訳ではない。
……だが、時々、そう思う事があるだけだ。
(望んでいる訳では無い、今の自分を拒絶したい訳では無い。
ただ、そう在った可能性、と言う物を、時折脳裏に描くだけだ。
今の自分に出来る事は、他の誰かに出来ない事でも在る。
狩る事、其れが己に出来る事であるなら――其れを捨てる事だけは、無い。
内側へと、内側へと、意識を閉ざして潜る様に、頭を伏せる。
呪印を解放させた後は、いつもこうして、何もかもを閉ざして孤独を得る
――だから、其の肩に、寄り添うように娘の身が再び、重なるなら。
僅かに瞼を見開き、それから、ゆっくりと細めて。)
………訂正だ…、……御前は今も…優しい奴だな。
(――気のせいかも知れない、ただ、獣が暖を取る様な程度の行動かも知れない
それでも、ただ、そう一言呟いたなら、片腕が己が背中から、剣も斧も、一度落として
そして後は、僅かばかりの静寂と共に、其の身に巡る熱を、ゆっくりと鎮めて行く。
其の合間、もし娘が眠るのならば。
きっと、落ち着きを取り戻した後でも、己が肩を背を、相手に貸すだろう。
――目覚める時までは、ずっと)。)。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からチルユキさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からノウブルさんが去りました。