2017/03/31 のログ
レナーテ > 「血の匂いって……それって、ここで血が流れてると分かってここへ?」

さもありなんと言った様子で語る彼に、目を丸くしながらも心臓が不安の脈拍を強める。
今目の前にいる彼は、たしかに自分を助けてくれたが…なにかおかしい。
その不安は更に次の言葉で強まる。

「ご飯……って」

笑みが狂気のように感じていく。
倫理観とか、死生観の違いと言えばそうだが、死者を食物とする言葉にぞわりと寒気を覚え、小さく身震いした。
マイペースな彼とは裏腹に、こちらの浮かべる表情は不安に満ち、彼の申し出の声が聞こえれば、びくっと跳ね上がるようにして背筋が伸びる。

「っ…! ぁ、いえ…大丈夫ですから…」

彼の善意が本当に善意なのかがわからない。
遠慮する言葉もどこか震えていく、それでも彼を突っぱねることはできなかった。
命を救われたのは事実で、その恩に仇をなすのは出来ない。
小さく手が震えるのを誤魔化そうとぎゅっと胸元に両手を握り込むように押さえつける。

カナム > 「うん。僕鼻が良いからさ」

鼻が良いで済む内容でないとは自覚していない
他の人より少し嗅覚が鋭いだけ
それぐらいにしか考えていないから当たり前の様に話を続ける

「そう?傷は放っておくと腐るからちゃんと手当してね」

大丈夫と相手が言うならそうなのだろう
特に無理強いはせずに食べ終わった死体達を掴み、引きずって一か所に纏める
他の動物の残飯にすらならないものを散らかしっぱなしにするのはあまりよろしくない
後片付けぐらいしておかないと

「~~~♪」

鼻歌交じりにお片付け
チラリとレナーテの方を見れば少し様子がおかしく見える
やっぱり大丈夫じゃないんじゃない?と首をかしげて尋ねてみて少し近付いてみる
自分に恐怖を感じているとは思ってもいない

自分の事が怖いのなら先程の戦闘で自分を狙っていた筈、と信頼している

レナーテ > 鼻が良いと言われても、それに何か答えることすら出来ない。
続く言葉にはそのまま何度か頷くも、死体の片付けを始める彼を見やりつつ、その場にへたり込むようにして尻餅をついた。
先程までの戦闘で心身共に弱っている、それにプラスして異様な少年が鼻歌を歌って死体を転がしているのだ。
逃げようか、けれど助けられたと、生真面目な部分が脳内で問答を繰り返し、俯いたまま一人考え込んでいく。

「……っ」

近づいてくる姿に少し反応が遅れ、顔を上げれば瞳孔を震わせるようにして怯えているのが分かるはず。
地面に転がしてしまった小銃を手にするには一瞬すぎる、とっさに腹部に添えた拳銃の方へと手を伸ばすが…握らず、震える手をぎゅっと握りこぶしにして下ろす。

「カナムさん…人は人を燃やしてご飯なんて言わないです、血の匂いがしたら、危険と離れます…。正直なところ…普通ではない貴方が怖いです、でも…助けられた恩もあり…よくわからなくなりそうです」

彼が思っているより、得体のしれ無さに怖さを覚えている心中を吐き出す。
自分の気持ちを口にして理解してしまうと、一層恐怖が身体を駆け巡る。
全身が小さく震え、瞳が薄っすらと濡れていく。
撃ちたくなるほど不気味だが、恩を裏切ることは出来ず、ぐっと本能的な恐怖を押さえ込みながら彼を見上げた。

カナム > ドサリと音を立てて最後の死体を転がす
これで後は穴でも掘って埋めるだけ、心地良い食後の運動の満足感を味わい汗を拭う

「怖い…そっか、仕方ないね」

不安そうな彼女の手が得物に伸びるおは理解している
その手が途中で止まればこちらは何もせず
怖いと言われれば……仕方ないかと思う
普通じゃない、その言葉には少し寂しそうに笑い

「大丈夫だよ、怖い僕はこれ片付けてまた帰るから
山から出てけって言われたら困るけど…どうしてもって言うならそうするよ」

最後に、ごめんねと付け足して死体の元、そしてさらにその奥へ向かう
泣きそうな顔で怖いと言った彼女の前に残り続けるのも悪いと薄暗い森の奥へと進んでいく
怖い相手に攻撃しないなんて優しいなぁと考えながら

レナーテ > 「……」

銃に手を伸ばした時、もし彼がナタを振るったら…自分のほうがやられてしまうと、反射的に動いた後に思ってしまう。
遅いことだけれど、更に恐怖が重なって手の動きが鈍るも、彼は何もしない。
ただ、憂いの交じる笑みがズキリと胸に突き刺さり、瞳が僅かに見開かれる。

「……死生観などは、生まれや土地…風習で変わったりします」

離れようとする彼の背へ、そんな言葉をかけると、力の抜けた足でどうにか立ち上がろうとし、小銃を掴むと銃口は空へ向けられた。
杖代わりにしてヨロヨロと立ち上がれば、震える声をぐっと抑えて、更に言葉を紡ぐ。

「カナムさんの…普通と私の普通は…違うみたいです。怖がってごめんなさい、とても失礼なことをしました…。重ねての失礼かと思いますけど…何故人を燃やすことを食べるというのか…教えてください。怖くならないように、理解したいです」

彼の気遣いが少しだけ恐怖を押しやってくれた。
そして、その背がとても寂しくも感じると、まだ不安そうな様子は残るも、彼の背を見つめながらお願いを告げる。
涙もよくないと思えば、裾を目元に押し付けて、それを拭っていく。

カナム > 「………」

背後で銃を掴む音がする
撃たれたくない、そうは思っても今更彼女を攻撃する気にはなれない

「…僕は相手の生命力を食べれるんだ
だから傷ついたって腕が落ちたって平気だしずっと元気で居られるんだ」

教えて、そうお願いされたので振り返り説明する
生命力と言ったのは自分がそう思っているから
食べるというのはまさにそのままの意味
食べ終えた後は全てあぁなってしまうと焼け焦げた死体を指さし

「あと、無理はしなくていいんだよ?」

目の前で自分と同じ存在が殺されれば恐怖を感じるのは当たり前の事
不安や恐怖を感じても何らおかしくないと肯定する

「それとそれと、僕は自分が人間だって断言できないよ」

魔族かもしれない、もしくは魔物の亜種かもしれないとはっきり口にする
なぜと問われれば分からないからと答える
記憶がないから答えようがない、と

レナーテ > 「人の…生命力を、ですか…」

その説明だけでも、少し気持ちが楽にはなった。
咀嚼して食らうのではなく、相手の力を吸い取って食事というなら、言葉通りに食事だったのだろうと。
何か吸い取る時に過負荷でも対象にかかり、燃えるのか…等と真面目に考察していけば、恐怖の表情は鳴りを潜め、代わりに思案顔でうつむくのが見えるはず。

「…無理とかではないです。戦争や争いは、相手を理解できないから始まると教えてもらいました。銃を持っておいて争いが嫌いだというのは矛盾してますが…悪意がない方のことを理解しないのは、自分で嫌うことをしているのと同じなんです。だから…無理じゃないです」

ゆるゆると頭を振ると、焦げ臭い匂いが満ちた空気に仄かに甘い花の様な香りが髪から広がっていく。
むっとした、少し頬が膨らんだような表情で答えれば、彼の語る生い立ちに暫し言葉が途切れ、何か戸惑うように辺りを見渡した。
それから、深呼吸を一つして、ベレー帽をとり、スカートの下に忍ばせたシッポを晒す。
折れた小さい猫耳と、器用に畝る尻尾は、自身も人ではない証拠だ。

「私も1/4は人じゃないです、それに…人というのは、人間かどうかというより、獣のように望むがまま力を振るわず、己を律する存在のことだと…思います。カナムさんが、食事のために殺生をしたなら…多分、ちゃんと律した行動だと思いますから」

一気に紡ぎ終えれば、何処と無く理屈っぽい答えに、後々になって気付く。
伝わっただろうかと、不安げに彼を見やる頃には、言葉通りの理解を示したことで、恐怖は消えていた。

カナム > 「そうそう…多分」

そんな感じがするだけなのではっきりと断言はできない
あくまで予想…けれど体感しての事なので見当違いでもないと思う
実際に相手を噛み砕いて飲み込みなんてしない

「ふーん…レナーテって色々考えてるんだね」

取り方によっては馬鹿にしている様にも聞こえるがそうではない
はっきり言って自分は細かい事を考えるのが苦手だ
武器を持って殺意を向けられれば相手は殺されても文句は言えない
さっきの戦いもそれぐらいしか考えていない、短絡的な自分には真似できないと感心したように頷く

「あれ、尻尾?」

それとどう見ても人の物とは思えない耳が見える
1/4、つまり人と他種族の元に生まれたのが彼女らしい
なぜか、とても親近感が湧いた
理由は分からないが彼女の事をとても快く思っている

「そうなのかなぁ?
でもレナーテがそう言ってくれるならそうなんだよね!」

ニコニコ笑い頷く
誰彼構わず襲った事はないので自分は恐らく律せている
完全に話を理解したとは言い切れないけれど自分の事をもう怖がってはいないと分かればそれでいい
嬉しいし満足だし何も不満はない

「やっぱりその怪我治すよ!」

だからそんな彼女が怪我をしているのはあまり嬉しくない
指先に火が灯りレナーテの太ももの傷口に軽く押し付ける
少しの痛みと温かさの後には綺麗に傷が塞がった太ももが見える

レナーテ > 多分という辺り、あまり本人もわかっていないと伺える。
けれど、こんな年頃になっても自分の種族特性を知らないのも奇妙なことだと思う。
物心付く前に彼の過去を知るもの…両親や家族と別れてしまったのかもしれない。
彼の一言一言から、考えを浮かべては黙々と考え込んでしまう。

「……! ごめんなさい、癖といいますか…性分といいますか…」

そんなことを考えていれば、彼の感心した言葉に反応が遅れてしまう。
ハッとした様子で顔を上げれば、少しだけ頬を赤らめながらわたくたと取り繕うように説明し、苦笑いで誤魔化そうとする。

「はい、母がミレー族と人間の血を半分ずつで…人間の父と結婚したので、1/4です。これぐらい血が薄くなると、耳と尻尾は生えないことが殆どらしいですけど…」

珍しく出てしまったらしい、と説明していくも、不意に彼の様子が変わる。
なんだか妙に嬉しそうな様子は、子供の喜怒哀楽の激しさというよりは、秋空のような変化。
徐々に狂気と思っていた部分が…単に幼いだけなのでは?と思いつつ在り、釣られるように柔らかに微笑んだ。

「そうだと思います。でも…理由は分かりましたが、急に食事と人を黒焦げにするのは、理由を知らないと怖く感じますから…一言何をするか告げてからのほうが――」

と言っている合間に、彼が指先の火を押し付けてくる。
言葉が驚きで途絶えるも、痛みがすっと引いていき、ぬくもりとともに傷が消えていけば、ほふっと驚きの吐息を溢し、傷があった部分にふれ…ムッとしてから彼を指差す。

「これもですっ! 火が身体に当たれば普通は火傷すると思いますから、急に押し付けられたら驚きますし、怖がりますっ!」

思わず、集落にいる子供を叱るような口調に成りながら、甲高い声で言葉をぶつけてしまうも、再びハッとしてから、眉をひそめ、苦笑いを浮かべながら、傷口に押し当てた方の手を握ろうと手を伸ばす。

「…直してくれてありがとうございます。でも、こうして驚きますから、ちゃんと説明しましょうね?」

クスッと微笑みながら、問いかける。
問いかける言葉と共に、少しだけ首を傾けながら。

カナム > 「気にしなくていいよー」

考え込むのを不満には思わない
何だか赤くなってて面白いと思う始末

「へーミレー族かぁ。ミレー…」

ドクンと鼓動が一度大きくなる
なぜだろう…自分でもよく分からないので自分の胸を見る
自分の体の事なのに自分でも分からない

「そうなの?」

肉を焼いて食べる、そんな食事の際の一手間を怖く感じるのはよく分からない
人は皆しているのにと首傾げ

「うわ、ご…ごめん…」

傷を治したのに怒られてしまった
燃やす炎と癒す炎
他者から見れば違いなんて分かる訳がないというのを考えていなかった
怒られればしゅんとして下を向く

「…分かった」

治す、その短い一言で説明はできたと思っていたけれど足りなかった
今度からはきとんと火で治すと言う事にする

これもまた何も知らないものからすれば訳が分からないのだとはまだ気づいていない

レナーテ > 気にしてないと言われれば、ほっと安堵の吐息を溢し、表情が緩む。
そして、自身の種族について伝えると、何か様子がおかしいのに気付く。

「…王都では、国が奴隷として扱うと定めた種族です。私は戸籍上人間の扱いですが…。その、ミレー族と何か在りましたか?」

胸元に向けられる視線、そこになにかあるのだろうかと彼の胸元に視線を向けてから、心配そうに彼へ視線を戻す。

「そうですよ、人型の生物は、基本的に人の形をしたものを食べません。なので、本来はこうやって人前ですることではないかと思いますが…しないといけない時は、起きる理由を説明した方がいいです。分からないことは、人を怖がらせることがありますから」

火についてもそうですと、言葉を添えて説明するとしょげた様子に子供らしさを覚え、クスッと微笑んでしまう。
子供のまま何も知らずにここへ放り込まれたかのようだと思えば、重ねた手を解き、今度は彼の黒髪へと触れようと伸ばす。
届くなら…細い指が黒髪をその合間に通すようにして、優しく撫でるだろう。

「怒ってないですから…驚いただけです。カナムさんは少しだけ、人の世界を知らなかっただけです。ちゃんと覚えて理解すれば…何も問題ないですよ」

ゆるゆると再び頭を振ってから答えると、柔らかに微笑みつつ、ゆっくりと語りかける。
ほんの少しだけ、年の離れた弟が居たらこんな感じなのかもしれないと、淡い庇護欲のようなものが擽られた気がした。

カナム > 「……いや、何もないよ?」

奴隷と聞いてまた心の臓が痛む
分からない、もしかして自分何か関係があったのかも?
それともただ偶然胸が痛んだだけなのか…

「そっか…じゃぁこれからは周りを確認しないとね」

人前で食事をしなければ問題なしと考える
食べないという選択肢は勝手にどこかへ行ったらしい
髪と頭を撫でられれば大人しくそのまま目をつむる
くすぐったいけれど悪い気はしない

「覚えて…うぅ、あんまり多いと覚えきれないと思うよ?」

難しすぎる事は頭がついていかないので苦い顔をする
山で暮らしていて勉強なんてすることもなかったし頭を使うのは好きじゃない
考えるより行動する派なのだ

レナーテ > 「そう、ですか…」

でも何か引っかかりを感じる。
彼の様子から、そう思うものの、彼がないというのであれば、気のせいだろうかと思い直しつつ、少し表情が曇っていた。
人前ではしないという選択肢を選ぶなら、それはそれで正しい答えではある。
そうですねと笑みのまま頷けば、掌に黒髪が重なっていく。
瞳を閉ざし、されるがまま撫でられる様子は先程も思った弟の様な感覚を覚えて、自然と笑みが深まっていった。

「ん~…カナムさんがどれだけ知らないかによりますけど…でも、一つずつ覚えることが大切です。一気に覚えなくて大丈夫ですから」

とは言え、彼があまり乗り気でないのを見やれば、苦笑いのまま撫で続ける。
ふと、集落の方から信号弾が上がったのに気付く。
光の色からして、どうやら母子は集落へ逃げおおせたらしい。
夜空に輝く光弾を見上げ、それから彼へと視線を戻すと掌を下ろしていった。

「襲われてた人も無事戻れたようですし、そろそろ戻らないとですね。その、良ければ…助けてもらったのと治療のお礼に、おもてなししたいと思うのですが…」

どうでしょうか?と彼の様子を確かめる。

カナム > 「うん、そうだよ!」

多分、とは言わないでおく
きっと偶然の痛みだと納得する
撫でられるがままで軽く頷き

「一つずつ…なら、まぁ…」

最終的に覚える量は変わらない
それを知ったときは先程よりも苦い顔を浮かべるのだがそれはまだ先の話
空に浮かぶ光、何かの攻撃かとも思ったがどうやらただ光っているだけらしい

「そっかぁ…うん、それじゃぁ」

バイバイ、と言い終わる前におもてなしと誘われる
行っても良いものか…となんとなく考えてみるが
彼女が誘ってくれるのだから行ってもいいのかなと頷き

「じゃぁレナーテに着いてくよ!」

笑顔でそう答えた

レナーテ > 元気よく肯定されてしまうと、困ったように笑いながらもやはり気のせいかと思ってしまう。
それに、ミレー族と関わりのある記憶が抜け落ちたというなら、それはきっと…彼の心が閉ざしたのかもしれないと思える。
自分にも、忘れたくなるほど嫌な思いをした記憶はあるのだから。

「一歩ずつの成長は大切ですからね。…ぁ、ごめんなさい。あれは私達の合図なんです。 ね? カナムさんも知らないことはびっくりして少し怖いでしょう?」

あれもそうだというように、信号弾の光を指差す。
こちらの申し出に頷くなら、すっと掌を差し出した。

「じゃあ行きましょうか。夜道は危ないですから、転ばないように手を繋いでです」

笑みに微笑みで答えれば、彼の手を握ろうとするだろう。
集落からは遠くの仲間達とやり取りするための信号弾が何度か上がりながら、帰路を明るく照らす。
ミレー族が多く、皆楽しそうに暮らす集落に、彼はどんな顔をするのだろうか?
今宵は几帳面に整えられた自室へ彼を招き、暖かなベッドで安らぎの夜を与えてくれるはず…。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からカナムさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からレナーテさんが去りました。