2017/02/17 のログ
■ファトム > 鼻を鳴らして匂いを吸い込んでる様子が、たき火の明かりに晒される。
人間はそんな仕草はそうそうしない、そうするとこの男は人間じゃない。
鼻を大事にしていること、匂いを判別してること。
この男はミレー族か、それに近い者であると少女は判断した。
でも、まだ油断はできない。
ミレー族なら安心できるけど、それに近いというだけで危険じゃないとは言い切れない。
今まで何度も危険な目に合ってきた少女は、すっかりと疑心暗鬼に陥っていた。
邪魔をしないようにこっそりと。
それが余計に警戒させることになっているのは、言わないでおこう。
人間や魔族じゃないというだけで、少女の警戒心は幾分和らいでいた。
「平和だよ、人間さえ来なきゃ……。
ここはミレー族の里がたくさんあるから、人間にはきっと宝の山にも見えるんだろうね。」
陽気な声、人間だったら嫌な感じがするのに。
人間じゃないというだけで、その陽気な声はちょっとだけ好感が持てた。
近寄ってくる男に対して、警戒はしても敵意は見せずに。
ミセリコルデを太腿に戻しながら、少女はもう一匹魚を焼き始めた。
顔がよく見える位置まで近寄ってきた男、背はそんなに高くない。
高くないと言っても、少女にしてみたら十分大きいのだけれど。
武器みたいなものも見えないし、本人が狩人でも奴隷商人でもないというなら、たぶんそうなんだろう。
逆に、もしそうだったらまたミセリコルデの刃を見せることになる。
「……そう、それならよかった。
…うん、そう。私は…ちょっと前に逃げてきた。」
ミレー族かどうかを名乗るのは、ずいぶん久しぶりにも思えた。
羽を無くしてから、少女の姿は人間とほとんど大差がない。
だから、保管ミレー族に人間だと勘違いされることも何度かあった。
■ガリア > (目的は、森の巡回だ。 もし彼女がただ森の住人で在るだけなら
その場で静かに立ち去る事も在り得た話だから
見つかってしまったのは予想外、そして、彼女の姿も予想外
この付近にはミレー族の集落も多く存在する故に
態々単独行動を続けている理由を、己は生憎知らないが
何れにしても――放って置く事が出来ないのは、何と無くの同族意識が在るからだろう
ミレー族ではないが、己は魔族と類別されても不思議では無い、人狼故に。)
――――……人間にも色々居るからなァ、人に寄っちゃそうなるんだろうよ。
……オメーは、何で集落に居ないんだ? ……偶々一人で居ただけなら良いんだけどよォ。
(――集落にかくまわれている、と言う姿には思えなかった
再び魚を焼き始める少女の姿を見下ろしながら、先刻よりの疑問を問うては
焚き火の近くへと、ゆっくりと腰を下ろして、腰元に括り付けていた袋を地面に広げよう
中身は、己が携帯食料として持って来ていた乾し肉
其れを、焚き火を借りて、軽く火で炙ろうとしながら。)
逃げて来て、どの位になる?
……冬に其れじゃ、随分とキツかっただろ。
(のんびりと、問う。 奴隷商人の類なら必要の無い会話だ。
それで、多少なりと彼女の気が解れれば良いのだが)
■ファトム > この森でミレー族に会うことは、何ら珍しいことじゃなかった。
九頭竜山脈の奥地にあって、集落が点在しているこの場所。
そんな奥地であっても、人間はいると知れば必ずやってくる。
この間も、剽軽な人間がここにやってきた。
迷い込んだだけかと思ったら、ここに物資を運びに来た。
なんだかいろいろと言われたけれども、人間に言われると下心があると思ってしまう。
同族に近い存在で、奴隷商人やミレー族をとらえに来た狩人でないなら警戒する必要もない。
敵意もなくなり、すっかり先ほどまでの警戒心はなくなっていた。
「いろいろなんていない、人間は皆…一緒だよ。
ボクは……集落にいるよりも、ここにいるほうがいいの。
ここね……昔はミレー族の集落があったんだ、ちいさいやつ。」
少女は、ここに住んでいた。
だから、ここから離れるつもりもないし、ほかの集落に行くつもりもない。
たくさん思い出がある場所だから、ここ以外に行くつもりはない。
それに、ミレー族っていうのは意外とよそ者を毛嫌いする。
同じ種族だと助けてくれたりもするけど、よく思わない人もいる。
そのミレー族が、人間に毒されているかもしれないと思われると受け入れてくれない。
少女に至っては、助けてはくれるけど集落には受け入れてくれなかった。
だから、いつもここで独りぼっち。
「…半年、くらいかな。
魔族が攻めてくるかもしれないからって、人間が私たちを連れて別の町に行こうとしたから。
その時に、お母さんと一緒に逃げたんだけど……。」
そこで、少女は膝に額をくっつけて、黙り込んでしまった。
気は解れる、だけど思い出したくないところを思い出してしまって。
■ガリア > (――話と言う物は、大抵に置いて、そう簡単な物では無い
彼女にも又、一言では説明も、語るにも不十分な事が在ったのは確かだろう
人間に対する根強い不信感が、彼女の過去の現れに他ならないなら
随分と、非道な扱いを受けて来た事くらいは、察せるけれども。
先端を二つに割った木の枝へ、肉を挟みこんで火に潜らせれば
魚とはまた異なる、香ばしい薫りが立ち上るだろう。)
……其れなら知ってる、っても、別に村ン中まで入った事は無いけどな。
そうか、其処に住んでたんだなァ…、……そいつは、災難だったな。
(決して、同情だけでは無い。何度も脚を運び、其処に存在を確かめて居た村が
次に訪れた時にはもう、跡形も無く消えて仕舞って居たのだ
其の光景を目の当たりにした時の感情を、今でも、まだ思い出せる
彼女にとって、其処からはきっと辛い記憶しかない筈だ
母親の事を口にした直後、急に押し黙ってしまったのに気付けば
――少し考えてから、手にしていた炙り乾し肉を
枝ごと少女へと差し出しては。)
……取り合えず、食うか? ……食えば、少しは前向きになれるぜ。
(焼き魚が焼けるまでは、まだもう少し掛かるだろうから
自分は、まだ炙っていない乾し肉を結局、片手でがじがじと齧りながら)
■ファトム > 干し肉というものは、もとをただせばお肉なのだ。
焼けば十分いい香りはするし、少食な少女でもお腹は空く。
焼き魚が焼けるのはもう少し時間がかかりそう。
少しだけ、干し肉を見ながらすぐに視線を魚に戻す。
串に刺した魚の向きを変えて、もう片面を焼きながらここにむらがあったことを知っていると話す。
村の人は皆、ミレー族なのにお人好しでだれもかれも信じる人ばかりだった。
もしかしたら、誰かと面識があってここにむらがあると、教えてもらったのかもしれない。
そんな人の好さが、集落をつぶすことになった。
道に迷った人間を迎え入れた、その人間が奴隷商人だった。
それからしばらくして、村は襲われた。
少数のミレー族に対して、大勢の人間が押し寄せて。
あっという間に、村はなくなった。
「いい人だらけだったから…馬鹿を見ちゃったんだよ。」
自嘲気味に、少女は笑顔を作った。
めったなことで笑わなくなった少女は、こんな風に笑うことしかできなくなった。
馬鹿を見た、本当にそんな気がしていた。
だから、少女はここに来るものはミレー族以外は信じなくなった。
「…いらない、あんまり食べないんだ。」
せっかくあぶってくれた干し肉だけど、少食な少女はそれを拒んだ。
お腹は空いていないし、そもそもさっきから焼いている魚は自分が食べるものじゃない。
焼け始めて、いい匂いがする魚を代わりに、男に差し出して。
「……何をしに来たかは知らないけど、お腹空いてるんでしょ。
よかったら食べて、ボクじゃ食べきれそうにないから。」
それに、久しぶりに安心して話せる相手だから、少しくらいは持て成してあげたい。
■ガリア > (それが、初めて見た少女の笑顔だった
ただ、生憎ながら己から笑い返せる様な其れでは無かったけれど。
哨戒から帰還した後で、王都側に報告はした
けれど、王都の人間が対応するには余りにも村の規模が小さく
何よりも、既に手遅れにも程が在った
ミレー族が奴隷として売買される事が当然の社会では
虐殺などの重罰行為を行ったとされない限りは集団として動けない
そもそも、何処に連れ去られたかも判らない、誰が居たかも判らないでは
騎士団としても、如何しようも無かったのだが。)
……別に、悪いのは御前達じゃネェさ、其れは確かだぜ。
(――単純に、何が悪で誰が悪かを決め付ける事が出来ないのが現実だ
けれど、少なくとも彼女の住んでいた村の住民が
何か間違いを犯したのかと言うのなら、きっと其れは違うだろう
差し出した乾し肉を要らないと拒まれたなら、素直に戻して自分で齧る
簡単に一切れ分を、ぺろりと食べて仕舞ったなら
……直後、目の前に差し出される焼き魚に、思わず瞳を瞬かせて。)
――――……だから言っただろ? 平和か如何か確かめてたのさ。
……俺様ァ遠慮とかしねーからな、貰えるんなら、在り難く頂くぜ?
(――実際、良い匂いだし、何より美味そうである。
空腹度合いなんて簡単に上昇してしまう大喰らいとしては
断る理由なんて微塵もなく、喜んで受け取り、にぃと笑って
それから、がじがじと、少女に比べれば大分豪快に齧りつくだろう
骨なんて、噛み砕いて租借して、尻尾まで全部食べ尽くしててしまう様な勢い)。
■ファトム > 例え、王都に報告したとしてもミレー族の集落を助けるようなもの好きはいないだろう。
ミレー族は、人間の社会では奴隷として扱われている。
その奴隷を売り買いできる承認を抱えているのは、貴族だ。
知っての通り、騎士団は貴族の気分次第でいかようにも動く。
貴族を護るための盾として、また貴族が振るう剣として。
その剣が、貴族の手先である奴隷商人にわたり、そしてそれがミレー族に振るわれた。
報告をしたとしても、動いたかどうかなんて知れたことだろう。
少女にとって、人間とは絶対悪の存在だった。
恐怖の象徴と言っても過言ではない。
その心に刻まれた傷は、どうやったって治らない。
「……そう、なのかな…。」
誰が悪いとか、そんなことは問題じゃない。
でも、決してみんなは間違った生き方はしていないはずだった。
こんな仕打ちをされるような、間違った生き方はしていないはずだった。
少女にしたってそうだ、一体何か悪かったのだろう。
それを毎日考えていた。
もちろん、答えなんか出るはずもないのだが。
「……変な理由だね、平和かどうかなんて…確かめてどうするの?
人間がたくさんやってきたら、きっと平和じゃなくなっちゃうのに…。」
手渡した魚は、小ぶりながらも脂がのっていた。
それを豪快に、頭から嚙り付いて尻尾まできれいに食べてしまう男に、少し度肝を抜かれた。
こんな風に食べるような人を、見たことがなくて。
そんなにお腹が空いていたんだろうかと思うと、残っている魚に視線を送る。
明日の朝ごはんがなくなるけれど、この時期ならそろそろ木の実も何か生っているかもしれない。
もう少し魚を焼こうと、準備を始めた。
■ガリア > (騎士団にも、色々と在る。
騎士団長の名の元に、其れまでの貴族からの圧力を排除した活動を行う師団も在れば
旧態依然のまま、表向きは如何在れ、裏では貴族達の手先となって居る
師団、或いは個人の騎士も、当然存在はするだろう
そして、己もまた生きる為に騎士で在る事を選んだ一人だ
けれど、少なくとも貴族達に魂を売り渡した心算は無く
同じ様に、売り渡さなかった輩も多く知っている
問題は、そう言う輩ほど命を掛けて、国を護る戦いに赴いている故に
其の殆どに余り余裕が無い、と言う事なのだが。)
……俺から言えるのは、正直其れだけだわ。
世の中ってのは、どうしたって理不尽で出来てるからなァ。
……ん、魚、美味かったぜェ。
(肩を竦め、それから、歯に挟まった小骨を爪で取り除いては
其れすらも噛み砕いて、ごくりと飲み込んだ
美味かった、と、素直に感想零しては、少女へと向ける礼
再び、腹はくちたと笑って見せれば、新たに魚の用意をしようとする少女を
其の肩を軽く、片掌で抑えて制し――代わりに乾し肉を包んだ布袋を
少女の目の前へと、ひょい、と放って。)
人間てのは、怖いかもな。 でもなァ、人間にだって色々居るのさ。
ま、言った所で信用なんか出来無いだろうケドな、実際被害に在ってりゃ。
……其れ以上は良いぜ、折角の食料なんだ、取って置けよ。
それと…魚、美味かったから、代わりに肉やるよ、割と長持ちする筈だからな。
(――人間と共に生きる己にとって、人間と言う存在をひと括りにされるのは異議が在る
けれど、搾取される側であった少女にとっては、其れが全てなのも判っている
だから、あくまで一寸した主張程度に留めておこう、押し付ける気は欠片も無い
――そして、其れから。 ふと、己が被っていたローブをその場で、もそっと脱ぎ出そう
下には、薄着では在るが一応着ている、けれど、若しかしたら唐突過ぎて驚かせるやも知れず)
■ファトム > 少女は知らない、そんな人間がいることを。
中には確かに、いい人間もいるのだろう。
しかし、少女にとって人間とは、ミレー族を虐げる存在であり、そして。
お母さんを殺した種族、という認識でしかないのだ。
その認識を変えるには、相当長い時間が必要なのだろう。
「…………でも、ありがとう。
間違ってないって言われるだけで、ちょっとだけ軽くなった気がするよ。」
だから、ありがとうと。
そのくらい、こんな境遇である少女でも言える。
苦労して、一人ぼっちで、ずっと虐げられている少女だけど。
人と話して、少し気持ちが楽になったら自然と、笑えるようになる日も来るだろう。
人間は許せない。
どうやったって、人間を許そうと思うことは無理だけれど。
「……怖いよ、人間は怖くて…許せない。
いろいろいたとしても、ボクは…お母さんやみんなを殺した人間を許せないよ…。
…え、わっ。」
魚が美味かったから、代わりにと投げられた干し肉が入った布袋。
受け取るときにちょっとバランスを崩して、ひっくり返ってしまう。
確かに、一人でいると食料の問題はどうしてもある。
それを分けてくれるのは、とてもありがたいことだった。
この男なら、少しは信用できそうだった。
人間と一緒に暮らしている理由はわからない、けど。
少なくとも、少女よりもちゃんと生活はしているようだったから。
ローブを脱ぎだす男を、ただあっけらかんと見ていた少女。
しばらくは、今日はさみしい夜を過ごさなくてもよさそうだった。
ご案内:「九頭龍山脈の奥深く」からファトムさんが去りました。
■ガリア > (どれだけの期間、彼女は苦しんで来たのか。
其の間に培われた根強い人間への怒りと恨みを、一晩で晴らせる筈も無い
己程度が説得した所で通じない事も判っている、だから、主張は一度だけだ
ローブを脱ぎ終えたならば、少女に向けて、ばさりと放ろう
引っ繰り返っている其の上から、布団みたいに掛けられた其の衣服に
くつくつと、小さく笑っては。)
やるよ、それもおまけだ。 幾ら冬を越したっても、此処から先保つか判らないだろ?
せめて、ちったぁ暖かい格好しときな。
(己は、元来寒さには酷く強い。 人の形を保っていても其れは変わらず
別に、今の薄着だって、戦場ならば良く在る事だ
彼女が受け取るか如何かは判らないけれど、それでも押し付けるかに粘り
そんなやり取りを何度か繰り返しながら、きっと、今宵は過ぎて行くんだろう――)
ご案内:「九頭龍山脈の奥深く」からガリアさんが去りました。