2017/01/02 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にラフェルさんが現れました。
ラフェル > 九頭龍山脈、その脇を通る山賊街道。
道から外れた場所に馬車が一台倒れていた。
あらかた積んであった品は失い、そこにあるのは何体もの亡骸。
山賊に襲われた後であるのは一目瞭然である。
街道からは目に付き難いその場所に、ふわりと小さな天使が舞い降りた。
救えぬ者であろうとも、声なき声が届けば来るもので。
辿り着ければこの状況に気付き、その表情は沈む。

掛けられる言葉は既に無くも、その亡骸一体一体の側に寄る。
両手を祈るように組み、黙祷を捧げていく。
せめて、来世は幸せになれるように、という願いも込めて。

ラフェル > 祈り、与える小さな奇跡は彷徨う魂を浄化し、輪廻の流れの中へと送る。
それをすべて終えれば、軽く溜息をつく。
思い出していた…ここに来る前、砦のようなものがあった場所の事を。
争いの多い場所らしく、そこに無数の亡骸があった事は分かった。
だが、あったという事が分かっただけで、実際にそれを見る事は無かった。
魂が正しく輪廻の流れへと戻されなかった…つまりは、何らかの形で亡骸を、魂を、悪戯に操った者が居るという事だ。

肉体、魂までもを貶める所業。
一体何者がそんな事をしたのか、何を思ってしたのか、理解に苦しむ事だ。
ちらりと視線を夜空へと向ける、今日は少しだけ雲っているか、はっきりと星や月は見えない。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にマノとロノさんが現れました。
ラフェル > 「考え方はそれぞれに違う、それは分かっています…
でも、それが相手を必要以上に傷付ける理由になるなんて、思いたくはないものですね」

生きていく為には、何かを殺めなければならない。
それは小さくも大きくも変わらない、それが生きていくという事なのだから。
でも、それはあくまでも必要最低限行うべきもの。
必要以上に何かを殺めて、一体何があるというのか?
…強い思いが、つい呟きになって零れてしまう。

視線を戻し、見落としが無いかを確認する。

マノとロノ > 静寂に包まれた山中に突如、ポン、と気の抜けた破裂音が響き、同時にちょっとした閃光がきらめく。
頓挫し荒らされた馬車、そこに佇む有翼の少女……そこから10m程度の位置に、突然、2つの小さな人影が現れた。

「………あれ。テレポーテーション、失敗……」

2つの人影、1人は赤い瞳、1人は青い瞳。いずれの瞳も、星の光を集めたように仄かに光っているように見える。
その4つの瞳がきょろきょろとせわしなく周囲を見渡し、赤い瞳のほうがぼそりと呟いた。
……そして程なく、目の前にいる有翼の少女の存在に気づき、そちらに4つの視線を真っ直ぐに向けた。

「お姉さん、ここで何してるの……? その……馬車は?」

赤目のほうが問いかける。性徴の感じられない、しかしかろうじて男の子とわかる声色で。
2人とも冬の屋外に現れたにしては妙に寒々しい軽装だ。

ラフェル > 確認が終わったら、この場を離れよう。
そう考えていたところに、変わった破裂音が響く。
少なくとも何ら力を持つ存在は居なかったはず、なのに、いきなり感じられた。
もっとも…その後に続く、現われた相手の呟きもあってか、転移してきたのだとすぐに気付ける。
ただ、その声は小さな子供の声であった。
当然だが、そちらへと注意は向けておく。

向けられる視線、人影は、声と同じく小さなものだった。
共に掛けられる声、ここまでの間に、相手からの敵意や害意はない、注意はしておくも警戒はしていない。

「少々雲薄くも掛かって、良い天気とは言えませんが…こんばんは、ですね。
私は…ここで亡くなった方達に、正しき道への導きを。
多分、山賊なのでしょう…襲われた後でした」

まずは礼儀として挨拶を。そして、問い掛けをしてきた相手へと答える。
自分も詳しくは分かっている訳ではないので、それを正直に。

「貴方達は…?ここへは、間違って参られたようですが…
答え難いのでしたら、無理には答えは求めません」

転移の失敗を呟いていたのだ、それは分かっている。
だから、元々の目的を問うてはみた。
この季節、軽装では長く引き止めるのも悪いと思い、答えずとも気が引けないようにと気を使い。

マノとロノ > 「こんばんわ、お姉さん。
 ……この辺で、女の人がひとりで歩くの、珍しい。盗賊とか、崖とか、物騒なところだから。その馬車も襲われたんだね…。
 でもお姉さん、翼が生えてる。飛べるのかな……?」

山賊がたむろする危険な地域であることは2人も知っている。
冒険者や行商がパーティーを組んで往来することはあっても、女性が単独で、しかも街道をそれて佇んでいるのはなんとも違和感がある。
……まぁそれ以前に、その女性には羽根が生えていたり光輪がついていたりするわけだが。ただの人間ではないのかもしれない。
距離がまだあるためか、彼女の足が地上からわずかに浮いていることにはまだ気づいていないようだ。

「僕はマノ。こっちはロノ。よろしくね。
 ……ええとね、この山地の地面の中、下の下のほうに、僕達の産まれたところがあるの。
 そこから王都にテレポートで戻ろうとしたんだけど、間違ってここに出ちゃった。
 なんか、よくわかんないんだけど……色々「強い」人がいると、そこに引っ張られて「出ちゃう」ことがあるの」

マノと名乗った赤目の少年が、白い指を伸ばして地面を真っ直ぐに指差しながら、そう語る。九頭龍山地は遺跡が多い。
ロノと呼ばれた青目の少年は一切口を開かず、目をまんまるに開きながら、少女の白い翼や頭頂の光輪を興味深げに眺めている。

「死んだ人に、正しい導き……。お姉さんは、聖職者さん? 正しき道って…?」

マノは興味を抱いたことを聞かずにはいられないようだ。たどたどしく舌をもつれさせながらも、次々と問を投げかける。

ラフェル > 「物騒ですか…自然による危険ならば仕方なくも、人為的である危険は…悲しいものです。
はい、ご覧の通り、飛ぶ事は可能ですね」

常に人の行き交う場所では無いのは分かる、それ故に、その隙を突かれればこの有様となるのだ。
それは自分としては、心痛むものではあるのだが。
次いでの問いは、そのまま普通に答える形か。
それを示すように、一度だけ翼をゆらりと揺らす。

「マノ様に、ロノ様ですね、こちらこそよろしくお願いします。
私はラフェル、天の使いです…見習いではありますが。
なるほど、この山連なる場所には色々と感じましたが…そういった場所もあるのですね。
強い…ですか…私はまだまだ未熟ですし、私に反応したとは思えないのですが…」

互いの自己紹介を終えれば、丁寧に頭を下げる。
この付近の場所の事、そして転移を間違った理由、口元に手を添え、考えるような仕草を取って。
向けられる視線には、特に気にしたりはしていない。

「先にお伝えした通り、天の使い…そうですね…天使の方が分かり易いでしょうか?
正しき導き…生きとし生けるもの、それが死を迎えた時、その魂は再び新たな生へと導かれるものなのです。
それが、亡くなった方の正しき道…えっと、分かりますか?」

問われれば答える、留めるのは少々心配だが、仕方がない。
一応は自分の思う答えは伝えるも、相手が小さいからか、ちゃんと伝わったのかが心配で確認も。
こうして話していて分かる、相手には危険といえる感覚は感じられない。
それならばと、ふわりと小さく舞い、二人の前に。

マノとロノ > 「ラフェル。天の使いの、見習い……。天使……? ふぅん……?」

翼をはためかせ優美に浮遊してみせるラフェルの姿には、マノもロノも目を丸く見開いてその挙動を追う。
しかし『天の使い』や『天使』といった肩書きには首を傾げ、唸り声を上げている。
どうも、天国や地獄という場所そのものすら知らないかのように。

マノが先程発した、『強い存在』。強い魔力や、それに近い力や存在感を帯びた個体。
言葉を濁さずに事実を言えば、これまでそういったテレポート失敗事案が発生したのは『魔族』相手のみだった。
しかし、目の前にいる『天使』を名乗る少女は、魔族のような禍々しい雰囲気を一切帯びていない。
彼女の立ち居振る舞いや神々しい姿から放たれる、魔族とは真逆の清純さ、純真さを、ボケッとしたマノやロノでも感じられた。
おそらく魔族と対になる存在なのだろう、ととりあえずは納得しておくことにする。すぐさま襲われるということはなさそうなので安心だ。
……しかし、かといって、『天使』なる存在にエンカウントするのも初めて。

「死んだあと、魂が、新しい生に導かれる。……そう、なの?
 人間は死んだら終わり、二度と動かない。僕はそう思ってたし、そうなるのを何度も見てきた。
 ラフェルが導いてくれたら、死んだ人も生き返るの?」

怒りも訝しみも感じられない無表情のままで、夜目の効く瞳だけをらんらんと見開き光らせながら、そう問うマノ。

「……そもそも、僕たち、『魂』ってのがわからない。『命』ならわかるんだけれど。
 ねぇ、ラフェル。『魂』って、僕たちも持ってるの?」

星の光を集め、不自然な輝きを紅と蒼の瞳孔に湛えるマノとロノ。
よく見れば、その水晶体の造りは人工的なものに見えるかもしれない。

ラフェル > 「無理にでも理解をしてください、とは言いません。
そういった存在が居るのだと、その程度に知って貰えれば結構ですので…」

二人の反応から、天使という存在に関しては知らぬ存ぜぬらしいのは理解出来る。
今は、その名前だけを知って貰う形にしておいた。
いずれは分かるかもしれないと、そう思って。

二人において、自分がどう映っているのかは分からない。
ただ、感じられるのは自分を危険視していないという事と、向けられる興味だろうか。
そういった意味では、こちらも二人が人間でない事は分かっているも、正体をはっきりとは分かっていない。
とはいえ、正体が分からないからどうという訳でもない。
重要なのは、他の者に害意を向けるような存在かどうかだけである。

「魂は生きるものすべてに存在するもの、そのものです。
死んでしまえば、その生は終わってしまいます。
ですが、魂は新たに生まれる生へと宿り、新しい生を送っていくのです。
ですので…死んでしまった者そのものを、生き返らせる事は出来ません…残念ながら」

輪廻転生、そんな言葉で表されるもの。
それを説明するには少々難しく、答えてはみるも、正しく伝わったかどうかは何とも言えないか。
分かりますか?と言った感じに、首を傾げて。

「なるほど、説明に少々困りますが…言葉を変えれば、誰しもが持つ心、みたいなものでしょう。
ですので、もちろん、マノ様とロノ様も持っているものでしょうね」

真っ直ぐに瞳を見詰めながら、微笑み、答える。
相手が人工的なものに見える、そうであれ、関係はない。
こうして、言葉が通じ合うのだから。