2016/12/25 のログ
《鋳薔薇卿》 > 瓦礫が散らばる村跡。広場のような丘の奥に、グリーンマンの姿があった。
頭部に黒い薔薇の入った花瓶が置かれており、それはいくら動いても落ちることはなかった。
両足を曲げるように、大きな碑の前に座り込み。傍らには酒の瓶が置かれ、その中で黒い花びらが舞っていた。
目の前には草の葉が敷かれ、上に載るのはこげ茶色のホールケーキと、肉塊を焼いたもの。
時折冷えた風が吹き、ちらちらと雪が舞う。

「さあ、今年も来てやったぞ」

蔓を伸ばし、赤紫色の液体が入ったグラスを掲げた。
ケーキに使っているのか、季節外れのサクランボの香りがかすかに漂う。
辺りは静まり返っており、黒い薔薇とグリーンマンのほかには喋るものは見当たらない。
無言の虚空に向かって、なおも話しかける。

「もう200年、いや500年ほど経つか。早いものだな」

《鋳薔薇卿》 > 「いやまったく……お前達ヒト族は相変わらずの滅ぼし合いだ。
我の言った通りだったろう。神が居ようが居まいが、他種族の和解、まして平和など訪れぬと」

この話は何度目だろうか。
毎年町が聖人の祭りでにぎやかになると、居場所がなくなった鋳薔薇卿は、ひとり、ここにやってくるのであった。
酒瓶を開け、ケーキを取り出し、亡者を惜しむ。
それは数百年前に魔族ながら正体を隠し、辺境でひっそりと小さな村落群を治めていた鋳薔薇卿の、今なお続けるささやかな慣習である。資源のない山奥に援助し、開発をさせていたのは遥か昔。穀物ではなく“血液”を納めさせ、また質のいい血を生産させるために医療福祉に尽力し、住民の生活水準はそれなりに上がったが。
人の口に戸は立てられぬ、と昔から言うように、いつまでも隠し通せるわけもなく。
やがて討伐隊が結成され、邪教徒の疑いをかけられた村は数日のうちに更地と化した。

「フハハ……ここを亡ぼしたのは我等ということになっているあたり、情報操作か、上手くしてやられたものよな。
なに、我は愉しかったぞ。お前達は面白くなかろうがな。……あれほど逃げておけと言ったのになあ。定命の癖に魔族なんぞに義理立てするから」

渇いた笑い声が空へ消えていく。
いや、声の調子からすると、本気で愉快そうに笑っている……
笑う。嗤う。嘲う。

《鋳薔薇卿》 > 狂ったような、けたたましい声が響きわたる。
やがて疲れたのか飽きたのか、それはピタリとやんだ。

「……ああ、笑った嗤った。さて、我はそろそろ戻るぞ。
“酩酊と狂乱の自称豊穣神”に邪魔されぬよう、目を光らせておかねばな。
なに、心配いらん、我を誰だと思っている。あの神きどりの気狂い、次あった時が奴の最期よ」

グリーンマンごと立ち上がり、残った酒を碑にとくとくと注ぎながら、呟く。

「まあ正直なところ、その前に剣を探さねばいかんのだが。封印されたはずみで紛失してしまってなあ。
あれの代わりとなると、なかなか見つからん。その辺の剣ではすぐ壊れるし」

《鋳薔薇卿》 > 空になった瓶をグリーンマンの腹部に埋め込むと、ケーキを一切れ、草の上に残し。

「ではな」

残りのケーキを草葉に包むと、緑男の両腕に抱え、碑の前を後にする。
供え物は、やがて鳥獣や虫たちによってバラバラに解され、跡形もなく消え去るだろうか。

ご案内:「九頭龍山脈北東部 廃村」から《鋳薔薇卿》さんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にディン・タウロスさんが現れました。
ディン・タウロス > (早朝、街を出て山脈へと入りが移動を山中へと向けて外れて歩き、目的である山賊達を探し、触手を斥候に放って探索させながら自身も歩いて)

「流石に朝から山賊も活動はしてないだろうから、見つけるのも一苦労になりそうだな。朝から活動してる山賊っていうのもそれはそれでどうなんだって気もするし」

(呟きながら山道を歩き、そして暫く歩けば山賊の住処を見つけたと触手から反応があり、獲物がいたようだとそちらへ向けて方向転換して歩いていく。まだ触手には手を出さないようにと指示をして)

ディン・タウロス > (それから暫く歩けば山賊が二人、洞窟らしき場所の前に立って見張りをしているのが見えてきて。木の陰に隠れて様子を窺い、今日はどうやって仕留めようかと少し考える)

「…別に食事に来ただけなんだし、凝ったことはしなくてもいいか。いいぞ、みんな。中にいる奴らを全部喰ってこい。一応、食べたら駄目そうなのがいたら連絡するようにだけど」

(言えばうぞうぞと辺り一面から大量の触手が現れ、見張りをしていた男達に襲い掛かり、それから洞窟の中へと入り始める。そこからはいつもの食事風景、山賊達に襲い掛かり食らいつき、体内に入りこんで内側からも貪り始めていく阿鼻叫喚の時間が始まる。山賊達の悲鳴を聞きながら、自分は適当な岩に腰掛けてのんびりと水袋から水を飲んで食事が終わるのを待つことに)

ディン・タウロス > (触手達の食事が終わるのを待ち、それが済めばもうここには用はない。触手達が戻ってくるのを眺めながら大きく伸びをして、街へ戻ろうと山を下りていく)
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からディン・タウロスさんが去りました。