2016/11/29 のログ
ご案内:「九頭龍山脈北東部 廃村」に《鋳薔薇卿》さんが現れました。
《鋳薔薇卿》 > がさがさと、蔦の絡まる緑の腕を左右に振り回し無造作に藪をかき分けて、安価な細剣を背負ったグリーンマンが現れる。
その首から上はなく、断面をつなぐように花瓶が差し込まれていた。
黒い薔薇が風に揺れる。

『ここも変わらぬな……む?』

足を止め、地面を調べるようにかがみこむと、乾いた地面に蔓を伸ばす。

『人の入りがあるな。旅人か、冒険者か……いや、これは』

立ち上がって周囲を見渡すと、瓦礫の陰に数人の人影が見えた。
武器を持ち、こちらを睨む姿に見覚えはなく。

『賊のねぐらになっていたか……まったく、わが追憶の地を汚しおって』

《鋳薔薇卿》 > 緑人は背中の細剣を右腕で抜き、ひゅんっと軽く振った後水平に構える。
剣先がまっすぐ前方をむき、上下にぶれることなく静止した。

『この身、このなまくらでどこまでやれるか。……だが、下等種ごときに遅れは取らん』

敵の数は見える限り10名ほど。瓦礫が遮って死角ができていることを考えると、伏兵も用心するべきだろう。
リーダーらしき重装備の剣士が口笛を吹くと、四方から武装した荒くれたちが走りかかってくる!

『まずは小手調べといこうか。
──《緑の僕よわが命に従え》ソーンウィップ!』

左手を下方へかざすと、地面からにょきにょきと緑色の蔓が伸びてきて、男たちの足元を掬った。
突然の障害物によろけ、転倒する戦士たち。ただ隊列もないままがむしゃらに突っ込んでくるものは、同胞の体を踏み越えて、なおも向かってくる。
と、グリーンマンの後方から、火の矢が放たれた。

《鋳薔薇卿》 > 『チ、魔法を使う程度の知能はあったということか。だが……ふんっ!』

右腕を素早く後方に向け、軽く振ると、
蔓の体に届く前に、二つに切り折られ、地面にばらばらと落ちる。
もう一度、今度は空を突くように腕を素早く伸ばせば、次の矢を番えようとしていた射手が、距離があるにもかかわらず、血しぶきを上げてのけぞった。

『ただのグリーンマンと甘く見るからこうなるのだ。
さて、あとは前方と』

雄たけびを上げながら、長剣や鉄斧を振りかざし向かってくるごろつき。
斧による横一線の薙ぎ払いを身をかがめてかわし、頭上を通り過ぎる鉄塊に、気合一閃、細剣を突き出してぶつけた。

『《巌を穿つ緑の尖塔》──ハァッッ!』

火花はなく。衝撃音もなく。
ただ一瞬のうちに分厚い斧を“貫いた”細剣の先が、そのまま戦士の喉元へ伸びる。
やや遅れて、振りぬいた斧が粉々に砕け散った。

《鋳薔薇卿》 > 『……何だ、この身でも剣技はそこそこ使えるようだな。さて、シメと行こうか』

瓦礫の陰から、かすかな息遣いが聞こえる。
斧使いの顎骨をあっさり貫き通すと、血糊に染まった剣を前方にかざした。
何人かの伏兵が、背を向けて走り去るのが見える。

『逃げられると思うのかね──《茨咲く牙城》!』

グリーンマンの右腕が数秒のうちに激しくぶれて、
ぐ、と握りこんだ剣先を上に向ければ。

大気を切り裂いて発射された、多数の“刺突の剣圧”が、逃走者の体を悉く貫いていた。
どさどさと、倒れ込む曲者に背を向けるように、剣をひゅんっと振る。
さて、血糊を拭こうとして、グリーンマンの動きが止まった。

ご案内:「九頭龍山脈北東部 廃村」にノワさんが現れました。
《鋳薔薇卿》 > 『おい、まだ買って一月も経っとらんぞ。安物はこれだから困るわ』

3分の2ほど、柄に近いところがぽっきりと折れている。
これでは使えない。また新しく買い直すことになりそうだ。

『まったく、人族の技術では限界だな。やはり質を求めるとそれなりの品を買ったほうが良いか』

ノワ > 何やら遠くで戦いの気配を察知し、知り合いの盗賊が被害にあっているのかとやってきたが――いるのは、おそらく新しくやってきた盗賊たち。顔も見知らぬ男たち。
であれば――特に助ける必要もないかと思っていたが、たたかう相手は魔物のような存在で。

「――わるい子?」

空中に浮かぶ、神聖属性を宿した銀の槍に乗る褐色の銀髪銀楼のミレー族の少女。その背後に同等の槍を4本、空中に浮かべてグリーンマンを睥睨している。
もし――相手が『わるい子』であるならば、この4本の槍が一斉にかの緑男に殺到することだろう。

ご案内:「九頭龍山脈北東部 廃村」に柏崎 悠さんが現れました。
ご案内:「九頭龍山脈北東部 廃村」に柏崎 悠さんが現れました。
《鋳薔薇卿》 > 『……んん?』

学院教師の給料から、貯蓄を差っ引いて、
……迷宮の話題を広めるのにかかる金と、眷属の消息を調査するためにかかる資金……

ざっと3か月もあれば買えるな、と結論付けたその時。
頭上からつぶやきが降ってくる。薔薇が花をもたげると、空に浮かぶ褐色の少女。
身体特徴からするに、ミレー族のようだ。
が、気になるのはそれが乗る槍。……いやな気配がする。神聖属性というやつだろう。

『何だお前は。この鋳薔薇に頭上から声をかけるとは。礼節を知らぬとみえる。
我がその問いに答える必要があるのかね?』

初対面である。いきなり臨戦態勢で話しかけられれば、誰だって身構えるだろう。
細剣を左腕で無理やり直し、辛うじて鞘に納める。
それから、ふん、と鼻を鳴らす音が聞こえた。どうやらあまり友好的ではないらしい。

ノワ > 「会話、できるんだね」

本当の『魔物』であるなら言葉をかけても特に反応はない。襲い掛かってくるのであれば、なぎ倒すだけ。だが――
反応があるなら、また別。
生み出した『槍』を操作する術にて高度を下げて、地面にふわりと着地。先ほどまで乗っていた銀槍を右手にもち、頭上に4本の槍を浮かべたまま敵意を霧散させて首をかしげる。

「……でも、見たことない。花なの?魔物?でもしゃべれる?敵?」

花瓶に入った黒い薔薇から聞こえる尊大な声に、興味津々という様子で尾をふりながら半眼の赤い瞳をじ、っと花瓶に見つけてしきりに問いかけ。

《鋳薔薇卿》 > 敵意は消えた。ならばこれよりそう身構えることはないのだろう。
が、少女は降り立ったが、槍は頭上に浮いたままだ。

『やっと我が意を理解したかと思えば、質問の多い奴だな。
一度しか言わん。しっかりと刻み込んでおくのだぞ』

ゆっくりと、しかし力強い声で続ける。

『我は《鋳薔薇卿》とよばれている。
王都の魔法技術学院で教鞭をとっておる。喋る薔薇、と聞けば知る者もいるだろう。
かつてはこの村を……すっかり荒れ果て、錆びれてしまったが、ここを含む複数の村落を治めていた領主だった』

そう言ってくるりと背を向け、蔦の両腕を後ろで組む。

『ここは我にとってよき思い出の地。そして、嘆きの地でもある』

そよ風が吹くままに、しばらく無言でいたが、再び振り返り、少女の方を向いた。

『が、時々雑草どもが湧いて出て、我が物顔で好き放題やりおるのでな、今日も毟りにやってきただけよ』

そういうお前は何だ、と問いかけた。

ノワ > 「むむ、だって、おしゃべりできるならおしゃべりしたいから」

質問の多い奴だな、と不快げに声を掛けられると表情こそあまり変わらないが、狼系の特徴をした耳と尾はしゅん、とへたれる。
どうやら反省の意を示している様子だが……

「……?いばらきょー。えー、と、おーとの、まほー、ぎ、きょー、べん?うん、しゃべる薔薇。喋る薔薇なのはわかるよ
あ、ここにあった村の領主さんだったの?へぇ、すごいね」

力強い言葉でまくしたてる言葉。最初の、魔法技術学院というものは存在も知らぬために聞き馴染まない言葉のため首をかしげながら、その威を全く介さずに言葉を返す。
が、『領主』という単語は知っていた様子で、驚いた様子を見せて。
槍を地面にどん、と突き立ててからぱちぱちと拍手をする。

「ふーん……嘆きの地ってのはわからないけど、思い出の地ってことは、大事にしたいんだよね。
わかるよ。わたしも、おうち大事にしたいもん。
……んん?わたしの名前?ノワだよ。よろしくね、いばらきょー。」

力強い言葉に対するこちらの言葉は、どこかほわっとした柔らかいもの。魔物かと思った緑の人にのった黒いバラは敵対存在じゃないのだと気付き、にこっと笑みを浮かべて5本の槍を消滅させた。

《鋳薔薇卿》 > 『ふん。……先ほどまで殺る気満々だった奴の言葉とは思えんな。
だがまあ、いいだろう。我は寛大だ』

ころころ変わる態度にいらだっていたようだが、少女の頭についた耳が垂れるのを見ると、不快感を押し殺した。

『しかし、本当に理解しているのか…?』

反応からするに、どうも後半部分しか耳に入らなかったようだ。
ため息が聞こえ、花瓶が乗ったグリーンマンが身をかがめ、ミレーの少女を上から下まで眺めるようなしぐさをする。
よく見れば、獣の皮を縫い合わせたような、粗末な下着。突き刺すことだけに特化したような槍といい、身分を理解せず馴れ馴れしい態度を崩さないことといい。

『学があるかどうかすら怪しいな……
お前、ノワと言ったな。この付近で暮らしておるのか?』

ノワ > 「んと、この山って魔物いっぱいでしょ?魔物、食べてもおいしくないし、動物殺しちゃうから……
もし悪い魔物だったら倒しとかないと、ごはん食べれなくなっちゃうの。ごめんね、いばらきょー」

寛大さを示し、ふん、と鼻口が何処にあるかわからないのに鼻息めいたものを出す花瓶に対してぺこりと頭を下げる。
実際、魔物に対する殺処分はこの山で生きていく分には不可避だ。前も、狙っていた鹿を溶かし殺され、食えなくされた。
非常に――そう、非常に困るのだ。

「うーん、ごめんね、難しい事はわかんないの。
でも、いばらきょーは領主だったんでしょ?えらいんだよね?だから、すごいと思うよ。
でも、偉い人に対するれいぎさほー、っての知らないから。
前に魔王さんって人がきたけど、このしゃべり方でいいって言ってたから普通に話しちゃった」

褐色の体を揺らしつつ、不必要に近づいて警戒させないようにするのは動物的本能か。
自分の体を見られている、というのを何となく理解しながらも特に言及することなく、観察されながら弁明をする。
その中に、魔に属する者にとっては少しばかり驚く内容が入っているかもしれないが。

「学……はないかなぁ。わたし、この山でずーっと一人で暮らしてるから。
うん、あっちのほうだよ」

鋳薔薇卿の言葉に申し訳なさそうにしつつ、指さしたのは反対側の尾根。温泉地帯のある森林区画を、指さした。
ここからでは健脚な男性でも徒歩で2時間ちょっとかかる距離になる。

《鋳薔薇卿》 > 『なるほど、狩人というやつかね。
生活のためならばある程度は仕方がないか。……だが、そこまでこの山が食糧事情厳しくなっているとは意外だな。
探せば食材など多くあるだろうに』

この辺は、鋳薔薇卿には理解できない悩みであった。
自身が緑の魔術使いだと、実感が薄いのかもしれない。

『魔王陛下が……?
いや、心当たりが多すぎて絞り切れぬな。あの方々は皆、超越者の振舞いというものをわかってらっしゃる。
ときどき風の噂では聞くが、我も実際にお会いしたことは数えるほどしかない』

少女の姿をまじまじと眺めるように花瓶を動かし、息を吐いた。

『学が少々あれば、戦闘技術、生活水準も上がろうものを…まあ、そこはそれぞれかもしれぬが。
……西側の方向。温泉宿の近くか。
なるほど、確かに距離は離れているな。人族であればこの道のりは堪えるであろう』

ふむ、と少し考えるように緑の腕を組むと。

『普段の暮らしというものを見てみたい。これから用事はないか?時間あれば、案内せよ』

ノワ > 「うん、そうみたい。話を聞いてると、わたしは狩人みたいかなー。
草花とか薬草とかは、いっぱいおいしいよ?だけど、お肉はねー……」

魔物が殺す鹿や鳥は大事な蛋白源。それを奪われるのは非常に好ましくないという考えは――目の前の『薔薇』には理解ができないのかもしれない。

「元魔王さん、って言ってた。クロイツって人だよ。
知ってるかな?まぁ、魔王っていっぱいいるーって言ってたから知らない人かもねっ」

魔王に対する敬意を持っているのを見て、やっぱりすごい人だったんだなー、という事を考えながら頷く。
続く言葉には、どうなんだろう、と思って悩みを見せて。

「前に、本って読んだけどよくわからなかったの。べんきょー苦手……
ん、道のりは、『槍』に乗ったから、ひとっ跳びだよ?」

言いながら、再び銀の槍を1本無造作に創造する。
神聖属性を帯びたミスリル銀の槍は、質実剛健そうな貫きの光を宿しており――
そしてどうやら少女は、これにのって飛翔することができる様子。

「うん、案内するよっ。
いばらきょーは、乗れる?それとも、花瓶だけわたしの頭にのっける?」

再び槍にまたがりながら、どうやって連れていこうかと思案して。

《鋳薔薇卿》 > 『クロイツ……はて、聞いたような、聞かぬような。
形容する二つ名でもあれば、思い出せるのだが』

鋳薔薇卿の本体が封じられてから数百年。
面識はほぼないと考えてもいいだろう。

『まあ、感覚とセンスで生き延びる奴も多いからな。
無理にとは言わん』

苦々しげに、しかしその言葉の端には笑みが含まれているように感じられるかもしれない。
槍に乗れるかどうか、聞かれて、しばらく考え込む。
万が一を考えると、できれば、神聖属性の武具は避けておきたい。

『いや、そうだな。
直接は乗るのは好まぬ、我にとって槍とは乗るものではないからな。
花瓶を持ち上げてくれるか。下のグリーンマンはわが使い魔だ、離れれば勝手に消える』

その言葉通り、花瓶を持ち上げれば不思議と抵抗少なく抜けて、主を失った蔓の人形はあっという間にほどけて大地に還っていくだろう。

ノワ > 「そっかぁ。まぁ、仕方ないよね」

二つ名、というものがあったかどうかは聞いた覚えがない。
聞いておいた方がよかったかな、と思うが次に会うのは彼が気まぐれに小屋を訪れるタイミングだ。すぐ、ではあるまい。
頭をふり、彼に対する考えを一度切って。

「うん、わたし、センスでがんばってる!」

にこりと、棘のなくなった――『薔薇』相手にこの言い方もなんだとは思うが――言葉に笑みをうかべて、続く問いにも理解を示し。

「じゃ、いばらきょーわたしの上にのせとくね。揺らさないようにするね。がんばる」

言われるままに花瓶を持ち上げると、今度は自分の頭にのせて。片手で器用にバランスをとりながら、槍の上にたち浮かび上がる。
そして――

「いくよー♪」

非常に楽し気に、馬を超える速度で飛ぶ槍の上。その少女の上にのった花瓶(?)の心境はいかなるものであろうか。

――また、少女の小屋に訪れた時、意外と料理の才能があることに話が弾むかもしれず。
場合によっては彼(?)に精気を供給することにもなるかもしれないが、それはまた別のお話しか。

《鋳薔薇卿》 > 『これはなかなか……いやまて、速い、速すぎるウゥゥゥゥ!!』

上機嫌で槍を操り、飛んでゆく少女の頭上で慌てる黒い薔薇。
バランス感覚はさすがというべきだが、しかし薔薇の声は風にかき消された。
後日、鋳薔薇卿の弱点に“強風または猛スピードが追加されたのは、また別の話”

ご案内:「九頭龍山脈北東部 廃村」からノワさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈北東部 廃村」から《鋳薔薇卿》さんが去りました。