2016/08/24 のログ
ご案内:「山賊街道・バフ―ト近隣」にリーゼロッテさんが現れました。
■リーゼロッテ > 奴隷の売買で栄えてきた街、そこから少し離れた山中にて夕暮れの工事が進んでいく。
時折、航路の途中でそこへ立ち寄りたいという声が聞こえることがあるも、ドラゴンフィートとしてはそこへは馬車を向かわせることは出来ない。
ドラゴンフィートは奴隷を認めない、だからそことは基本的に商売はしない。
そして、ここに馬車駅を築くのは、妥協点というところだろう。
ここからなら降りていけるが、馬車や護衛は出さない。
そんな妥協に一人納得行かず、むくれた表情で工事の様子を眺めていた。
「嫌なら嫌って言い切っちゃえばいいのに…そう思わない?」
資材置き場で切り株に腰を下ろし、両足をばたばたと遊ばせながら不機嫌そうにつぶやくと、傍らにいる大きな隼に語りかける。
脳裏に響く返答は、人間の世は面倒らしいなと、少女より情勢に達観した答え。
大人びた答えに、むすっと頬を膨らませてそっぽを向くと、隼は呆れたように翼を脱力させる。
「いいですよ~だ、どうせ子供だし」
だから子供なのだと隼は心の中で呟くも、リーゼには伝えない。
作業をしていた男達の一人が、釘やらの金物が足りなくなったと二人に伝えると、拗ねた少女はライフルの銃床で隼の翼を弱く小突く。
「ほら、御使いだよ。私はここで留守番するから」
やれやれと呆れた隼は男が持ってきたメモを足に括りつけたベルトに挟んでもらい、空へと旅立った。
作業員も戦えるには戦えるが、本職ではない。
日程の開いていた彼女に護衛と隼での輸送を仰せつかり、こうして退屈そうに様子を眺めていたのだ。
見張りとしての仕事と、近くの木々へと向かうと、三角飛びの様にトントンと木々を蹴って上へと上がっていく
一番高いところへと抜けると、枝に腰を下ろしライフルを片手に辺りを見渡すも、不機嫌顔のままである。
■リーゼロッテ > 見張りをつづけていると、下から声が掛かる。
なんだろうと覗き込むと、汗だくの男がこっちにこいと手招きしているのが見えた。
ひょいひょいと、格好の割に身軽な動きで下へ降り立つと、どうやら夕食の準備をするらしい。
「……ぇ、わざわざ狩りですか?」
最近、森で狩りとかしていないからと、新鮮な肉を求めて軽く辺りを回ってくると、男達が弓矢を手に準備をしていた。
あれだけ土木作業していたというのに、力が有り余ってるなぁと思えば、クスクスと微笑みながら頷く。
とは言え、全員が全員つかれていないわけでもなく、ほどほど疲れた男達は、少し下ったところにある川まで水を汲んでくると樽を担いで歩いて行った。
自由気ままな護衛対象達が去って行くと、ぽつんと残された少女はどうしようかなと考えながら、先程の切り株に腰を下ろすと、手遊びに近くに咲いていた花を摘み、茎の部分を器用に編んでいく。
「~♪」
鼻歌混じりに動かし続け、いくつも草を編みこんでいく。
どうせしばらく戻ってくるまで時間は掛かるだろうからと、手の込んだ花冠を作ろうと、意識を傾けて暇つぶしにのめり込む。
ご案内:「山賊街道・バフ―ト近隣」にセリオンさんが現れました。
■セリオン > 時間は掛かるだろう――その考えは、確かに間違いではない。
だが、掛かり過ぎではないかと、疑念を抱かざるを得ない程に、時間が過ぎる。
弓矢を持った男達はどうしたのか。
獲物が見つかったなら、直ぐにでも戻って来るだろう。
見つからないなら見つからないで、一度は戻ってきて、安全を知らせもするだろう。
妙に、戻りが遅い――
少女が心に、不安を抱かざるを得ない程に時間が過ぎた時、切株の背後、茂みから足音がする。
然し振り向いてみれば、そこに居たのは、一人の女だった。
「あら……可愛らしい子。こんなところで、何を?」
その問いはそのまま、女に向けられるべきものである。
女は、肩に、獣の皮を羽織っていた。森で、獣に擬態し、狩りをする為のものであろうが――
その左肩が、浅くだが破け、下の皮膚にも血が滲んでいるのだ。
そして、未だに戻らぬ男達。
「この森は、人殺しが出るようで、危ないですよ?」
肩の痛みも気にならぬかのように、女は、やけに善良な笑みを浮かべて見せた。
■リーゼロッテ > 「……遅いなぁ」
色とりどりの花を編みこんだ冠が出来上がり、出来栄えに満足そうに微笑むものの、これが出来上がるまで帰ってこない彼等に一抹の不安を覚える。
山賊程度に遅れをとるとは思えないけれど、ここらは色んな輩がいる。
流石に探しに出たほうが良いだろうかと、腰を上げたところで背後からの音にビクッとしながら振り返った。
「ひゃっ!? ……えっと、そちらこそ、そんなところで何を…?」
手にしていた花冠を揺らし、それから切り株の上へ。
左肩が僅かに負傷している彼女の様子に、心配そうにまゆを潜めたが、続いた言葉に僅かに寒気を覚えた。
怪我をしているのに、そんな笑みで擦り傷程度のように語れるのは格好といい、タイミングといい、奇妙で。
「山賊街道…ですからね、その怪我…どうしたんですか?」
いきなり銃口を向けることはないものの、胸の前で握っていたライフルを、しっかりと両手が握りこむ。
何かあれば直ぐに攻撃ができる射撃前体勢、どうにか苦笑いを浮かべながら、青い瞳がじっと彼女を見つめ続ける。
■セリオン > 「なるほど、彼等は山賊でしたか。ならばとどめを刺すべきでしたかね?」
何か、会話が噛み合わないと言おうか、おかしなことを言う女だ。
腰には、凶器となり得る道具が幾つか下がっているが、両手には何も得物を持たない。
よほど注意深ければ、その手がゴツゴツと骨ばった、それ自体が武器となり得る手だとも気付こうが――
「なに、大したことはありません。矢を射かけられたんですよ。
殆どは避けましたが、一つだけ肩を掠めましてね」
矢を、射かけられた。
この言葉に、不穏な予感を抱くのなら、それは当然のことだろう。
戻ってこない男達の、手にしていた弓矢。そして目の前の女の、肩に羽織った獣の皮。
もしや、男達が彼女に対して、獣と見間違い、誤って矢を射かけたのだとしたら――?
しかし、だとするならば、なぜ彼女は平然としているのだ。
数人の、弓矢を持った男に森の中で狙われて……?
「あちらにまだ、倒れているかと思いますが――さて、葬って来ましょうか」
と言って、女は、腰の斧を一つ、右手に持った。刃の欠けも多い、安物の、手入れも不足のボロ斧だ。
それでも思い切りたたき付ければ、人間くらいは十分に殺せるだろう得物――
それを持って女は、再び森の中へ入ろうとする。
■リーゼロッテ > 「山賊? でも、山賊なら森の中とかより、そっちの街道とかによく出るんですけど…」
こんな森の中を敢えて進む商人は殆どおらず、もっぱらこの道を進むことが多いはず。
若干話が噛み合わない中、怪我の理由を問えば、矢を向けられたと聞き、脳裏で状況が繋がる。
少しだけ表情が驚きを浮かべたものの、続く言葉にぞわりと寒気を覚えた。
「ま、待ってくださいっ」
森の中へ入ろうとしたところで呼び止めれば、一歩前へ出て、少しだけ彼女に近づいた。
動揺が顔に浮かぶものの、彼女をここに引き止めないと危ういと思えば、凶器を握る彼女を見つめながら言葉を続ける。
「多分…その人達、山賊じゃなくて、ここで作業していた人達だと思います。夕食の材料獲りに狩りをしてくるっていってましたから…」
矢を放った正体について説明すれば、勢い良く頭を下げる。
「ごめんなさい、間違って撃っちゃったんだと思います…」
顔を上げれば、悪気はなかったと謝罪を紡ぐ。
勿論、矢を射かけてしまったのは悪いことだが、多分彼等も人と分かれば謝罪していたことだろう。
問題は、彼女がそれでも攻撃をしている可能性があること。
まずは穏便に事をすまそうと、謝罪を紡いだものの、これで落ち着いてくれるかはわからず、緊張と不安で高鳴る胸にライフルを握る手の甲を当て、不安そうに彼女を見つめる。
■セリオン > 初め、女は、少女に背を向けて森へと向かっていた。
が、背後からの呼び止める声と――〝予想していたような〟言葉。
にぃ、と頬を歪めてから、直ぐにその表情を消し、険しい表情に変えて振り向く。
「作業していた……その口振りからすると、貴女の知人ですか?」
それから、しばらくの間、口を閉ざした。
その沈黙を、少女は何と受け取るか――少なくとも好感情からのものとは受け取らないだろう。
現状、事実関係が確認できない今、まず謝罪を行ったのは、人として正しい判断なのであろうが、
「……ふむ。ついて来なさい」
悪党に対して行うには、些か、善良に過ぎるものだったかも知れない。
森の、少し奥まった所へ、女は少女を誘導して行く。
その間、女は常に、少女へ背を晒し、武器も斧以外には手を伸ばさぬまま。
やがて――茂みの中から、脚が二本、にゅっと突き出しているのを見付けるだろう。
「殴り倒してしまいましてね、治療はしたのですが――」
実際、倒れている男には、さしたる傷は無い。
衣服の一部が破けてはいるが、その下の皮膚に傷が無いのは、〝治療〟とやらを施したからなのか。
呼吸も穏やかで、少女がもし近付いたのなら、その男はゆっくりと目を開くだろう。
「――どうも、加減を間違えたようで」
その男は、すぅと立ち上がるや、少女へ向かって飛びかかって行くだろう。
まるで本当の山賊か、暴漢のように、力任せに少女を組み敷こうとする筈だ。
■リーゼロッテ > 彼女の本性が浮かび出ていたとは気づくことなく、振り返った表情に、コクリと素直に頷いた。
ならば敵と襲いかかるか、それとも変な要求をしてくるか。
そんな心配をしていたものの、思いの外あっさりとした答えに少しだけ安堵して、表情が緩む。
心配しすぎだったのかな? と思いながら彼女の後に続くと、不自然に伸びる二つの足に、少しだけ丸くすると、ライフルを背中に回し、足早に男の側によっていく。
「大丈夫ですかっ!? 怪我は……ぇ、治療してくれたんですか?」
茂みに埋もれた男の肩に触れ、呼びかける。
彼女の宣告通り、傷は塞がっており、とどめを刺そうと言っていた割には穏便な対応にきょとんとしながら、そちらへとふり返った。
「加減、ですか? それって――きゃっ!?」
何を間違ったのか、子供のように首を傾げて問いかけたところで強引に捻じ伏せられ、小さな悲鳴が上がる。
元々力は弱いため、こうして力任せな事をされてしまうと抜け出ることが難しい。
紋章の力で吹き飛ばすのは最終手段として、抑えこまれたまま彼女の方へと、焦りの表情を向けた。
「何をしたんですかっ!? ちょっと…止めてくださいっ…!」
この行動の理由をといつつも、仲間に正気を取り戻すよう呼びかけて、じたじたと藻掻く。
結局彼女は敵なのか、ただの変人なのか、判断がつかないことが手を鈍らせてしまう。
■セリオン > 「いえ、治療術ではあるのですがね、私の術はいささか特殊でして……。
私の精気を分け与えて、身体の治癒能力を促進させる類の術なのですが、
どうも私の精気を受け取った人間は、男女問わず欲情するようなのですよ」
半分までは本当だが、半分ばかりは嘘だ。
術により、相手に発情状態を引き起こすことは可能だが、それは首や頭部など、思考を司る部位の近くへ用いた場合に限る。
つまりこの女は、意図的にそういうことをしたのではあるが――それは少女のあずかり知らぬこと。
男の手は、少女の衣服を掴み、脱がすか引き裂くかして、肌を露わにしようとしていくだろう。
理性を失った男の手は、細かい動きこそは下手だが、力は普段より恐ろしく強い。
このままでは、身の危険と言おうか、貞操の危険が――
「えいっ」
――という段階で、女が両腕を、男の首に巻き付けた。
首の左右の血管を絞め、迅速に意識を刈り取る組打ちの技。目覚めて然程経たない男が、再び地面に沈む。
「……このようにね。他にも何人かはいましたが、治療して差し上げると、今のこの人のように、私に襲い掛かってくる始末。
全く、元はと言えば私が被害者だというのにこの仕打ちは……」
と、顔を俯かせ、声も沈ませ、さも自分は辛いのだと押し付けがましいことを言う女。
それもこれも、少女が善良な人間であると見た為である。
善良であればあるほど、〝いきなり矢を射かけられ、更には治療した相手に襲われた〟という境遇には、同情心を抱くのだろう――と、踏んでいる。
そうして、少女の方へ、一歩、二歩……相手が離れようとしなければ、それこそ鼻の先が触れる距離まで近づこうとし、
「本当に、酷いと思いませんか?」
目の端に、軽く涙を滲ませて――演技ではあるのだが――哀れっぽく、少女に縋ろうとする女。
■リーゼロッテ > 「そういうことで……って、それならもっと早く言ってくださいっ!」
彼女の説明になるほどと納得しかかったところで、そんな危険な状態で引き合わされたことを思わず突っ込むものの、そんなに余裕はない。
服自体はかなり頑丈に作られているため、引き裂こうにもギチリと生地が阻み、脱がそうとすれば、じたじた藻掻いてそれを遅らせようとする。
「ぁ……」
吹き飛ばそうと思ったところで、彼女が絞め技で意識を奪い、男が沈む。
横に転がして身体を起こすと、安堵の吐息をこぼし、ゆっくりと立ち上がる。
「それは…その、災難といいますか、なんといいますか」
難儀な治療方法もあったものだと乾いた苦笑いを浮かべる。
とは言え、矢をいかけられた後、意識を失うほど反撃する彼女の奇妙だと思えて、やはり変な人なのかな? とは思っていた。
「それは…で、でも…それなら獣じゃないって言えば、皆それ以上矢を放たないです、から…」
眼前といった距離まで近づこうとすると、驚きながら後ろへとたじろぎ、距離を取りながら苦笑いのまま呟く。
なにかおかしいと、あまり知恵の回らない少女でも、彼女の異常さに何となく気づいているようだ。
■セリオン > 「あら、それじゃ私が悪いって言うんですか?」
狂人は、まともな理論が通用しないから狂人なのである。
少女の言葉尻を捕えて、それはひどい失言であるとばかりに、また目の端に涙を溜める。
「複数人に矢で狙われて、実際に射かけられて、傷つけられて――」
実際、物事の順番としては、女が攻撃をしかけたのが先であるのだが。
そうでなければ、いかに森の中とは言え、さして暗くも無い時間。金髪の女を、獣と見間違えもしないだろう。
が、そういう証言をできる者は皆、意識を失っているのである。
「それなのに貴女は、この人達がお友達だから――私が悪いって、そう言うんですか?」
後ろへ、後ろへと逃れて行く少女を追い、女は前へ前へと出続ける。
まだ完全に立ち上がっていない少女を追うのは、そう難しいことではなく、直ぐにも追い付いて――
まるで猛禽が、地上の小動物を掴むように、上から覆い被さって、少女を捕えてしまおうとする。
「酷い、傷付きました――慰めてください」
恨みがましく言いながら、女は、少女の耳に口を寄せて囁く。
その吐息には、閨の温度と言おうか、ただ恨み言を呟くには似合わない色香、湿度が籠っていて、少女の耳をくすぐる。
凶器となり得る二本の腕は、正面から、少女の背に回り込み、華奢な体を抱き締めようと――
■リーゼロッテ > 「悪いとはいっていませんけど…」
状況がわからないところもあるし、何より、正常に意識を取り戻せない彼等から話を聞くことも出来ない。
善悪の二択で答えるには難しく、更に泣きそうになるのを見れば、困ったように眉をひそめていた。
(「それは…被害妄想入ってる気がするけど…?」)
一斉射があったとしても、それ以上の攻撃はしないはず。
傷つけた以上にやられていそうな男の方をちらりと一瞥し、彼女の訴えに、どう答えたものかと苦笑いが僅かに引きつった。
「で、ですから…っ、別にそちらが悪いとはいってないですよ? でも…その、ここまでしちゃったら、お互い様、な気がしますし…」
後ろへとよろよろと下がっていくも、不意に覆いかぶさられるとそのまま勢いに負けて尻餅をついてしまう。
目を白黒させながら、何事かと想っていると、濡れた声が求めているのは意味深な内容だった。
脳裏に一瞬だけ恋人の顔がよぎると、今度は躊躇わず使う。
胸元の紋章が淡い光を放つと、両手に風の力を纏っていく。
とんっと彼女の胸元を突き飛ばすと、少女の力でも彼女を振り払えるほどの衝撃を持って距離を離してしまう。
「そ、それとこれとは別ですっ! そういうのがお望みでしたら…ちゃんと、そういうところに行ってくださいっ」
詫びに身体を差し出せるわけもなく、僅かに憤りが篭った声で言葉を叩きつける。
ムスッとしたままライフルへ手を回しながら、素早く立ち上がるも、射撃の構えは取らない。
■セリオン > 「おっ……!?」
弱い獲物と見くびって、思うようになると踏んでいたが――予想以上の反撃。
少女の腕の動きを見れば、軽く突き飛ばされた程度の攻撃でしかない筈だった。
だのに自分の体が――身長と体格から、少女より10kg以上も重そうな自分が、やすやすと吹き飛ばされる。
「そういう、ですか――さて、そういう行為というのが、どういうことか、貴女は知っているのですか?」
女は、両足から着地した。そして、その時にはもう、身構えていた。
斧は腰のベルトに戻して、代わりに引き抜いたのはメイス二振り。
斧では、万が一が怖い。相手に当てても自分に当てても、多量の出血で命とり。
その点、打撃武器ならば――膝を砕けば激痛だろうが、その程度なら死なない。
「生憎とね、二束三文の安娼婦だろうと、私の〝そういう行為〟には、首を縦に振ってくれないんですよ。
痣が残ると困るだとか、歩けないと仕事に障るだとか、あれこれと理屈を付けて逃げてしまうので……
だから仕方がなく、人の良さそうな貴女に目を付けたのですが」
もはや女は、本性を隠すことも無い。左足を前に出し、そこへ体重を乗せて、今にも前へ出るぞと宣言するような構えから、
「だから、慰めてくださいよ、その体で、その可愛い顔で!」
メイスの片方を、投げた。
狙いは、少女の持つライフルだ。
投擲の威力で武器を落とさせようと企みつつ、自分自身は、風の力で開けられた間合いを詰めようと地を走る。
仮に少女が、再び何らかの方法で距離を取ろうとしなければ、女は頭から、少女の胸元へ体当たりを仕掛けるだろう。
■リーゼロッテ > 吹き飛ばした相手が綺麗に着地するのを見やれば、やはりかなりの腕があると気を引き締める。
折りたたまれていた銃剣部分がシャキッと展開し、銃口には青白い魔法陣が光で浮かび上がる。
そんな引き締まった気持ちを崩すような問いかけに、アワアワとしながら頬を赤らめると、不機嫌顔のまま睨みつけるも、童顔故にまるで迫力はない。
「そ、それはその…っ…知ってますけど、いいたくないですっ!」
手にとったメイス、あれは当たったら確実な痛手となる。
銃床を肩に当てて構えると、なるべく距離を取ろうと後ろへと下がりながら照準を重ねていく。
「――っ! 最低、です…っ!」
ろくな抱き方をしないという宣いに、一瞬顔色が青くなるものの、侮蔑の視線を向けてソプラノの音が冷たく響き渡る。
突っ込んでくると身構え…そこからの投擲、トリガーを引き絞れば魔力の弾丸が放たれ、メイスを撃ち落とす。
「嫌ですっ!」
再び魔法陣が広がる時はあと一歩の距離まで近づかれる。
咄嗟に照準を彼女の腹部へ下ろすと、紋章を先程より強く輝かせながら魔力の弾丸を放つ。
弾丸の大きさは変わらないものの、その周囲を風の力場が包み、大きな弾丸となって彼女へと迫る。
そのまま直進するなら、先程より強く吹き飛ばそうという狙いだ。