2016/02/21 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山中 街道沿いの泉」にシャロンさんが現れました。
■シャロン > 「――ふぅ、漸くここまで、ですか」
少女は独り言ち、泉のほとりに荷を下ろす。今日の仕事は山麓にある村――ドラゴンフィート周辺の警護。そのついでに農作物を荒らす魔獣や人を襲う獣、あるいは山賊などを軽く懲らしめるようにと言い含められている。手伝いを申し出てくれた者も居たが、彼らの手はまだまだ他に山積する仕事に回してもらう。そうして単身での山狩りが程よく終わった頃合いだった。日が傾き始める中、少女は魔法で拡張した空間から金属製のスタンドと魔法式の炎熱石、そして干した肉の塊を入れた小口の鍋を取り出す。鍋には水を満たし、炎熱席には魔力を込めて、火に焚べる形で簡単なスープを作る構えだ。同じように魔法で保存しておいた野菜を入れて、ことこと。煮こむ間の手持ち無沙汰を、長閑な風に任せながら暖かな日差しに目を細めた。
「……んー、美味しいスープになるかしら?」
ふつふつと水が沸き始めれば、煮込みの匂いが周囲に散る。それは空腹を刺激するには十分で。くぅぅ、と腹を鳴らしながら気分転換を楽しんでいた。
■シャロン > 鍋の中身は徐々に透き通った琥珀色に変わり、肉や野菜に満ちていた滋味を蓄える。干し肉の表面にまぶされていた岩塩と胡椒が溶け込み、香辛料の効いた煮込みスープが少しずつ完成に近づいていく。その間に手元に取り出すのは、黒小麦の堅パン。腰の投擲用短剣を閃かせ、まずは半分に、そして数枚に、と食べやすい様に整形する。切り出したパンを用意しておいた金属串に挿すと、また別の炎熱石の周囲にたてて、トーストになるよう仕上げていく。
「……ん、これでお肉のスープとパンですから……後はチーズかなんかほしいですが――」
それは若干贅沢か、と思い直し、ちりちりとパンを焼く。やがて香ばしい匂いが漂う頃にスープの準備もできた様子で、湯気立つ両者を眺めながら、炎熱石を保温状態に。鍋から金属製水筒の蓋にスープを取り分け、右手にはパンの一枚を持ち。
「――いただきます、ですね」
誰も見ていないとは分かっていても、いつもどおりに挨拶。染み付いた所作を終えると、熱々のスープに口をつけた。あっさり目のスープは、しかし肉の滋味が感じられる代物。透き通った玉ねぎやくたくたになったキャベツ、柔らかくなった人参や芋なども我ながら上手にできたと思う所。こうして、少女一人の、ささやかで遅い昼食がゆっくりと過ぎていく。
■シャロン > しっかりと食べ終わると、ふぅ、と一息。なんだかんだで食事という時間は素晴らしいと思う。疲れも何もかも程よくほぐれて溶けていってしまうのだから。少女は立ち上がると、周囲においておいたものを片付けていく。炎熱石は中々素敵な掘り出し物だなぁ、とか思いながら懐に入れて、鉄のスタンドと串をかたして、鍋には浄化の魔法をかける。水場の水は油が混じるから使わない。そして全てをかたし終わると。
「さて、それじゃあとひと踏ん張り行きましょう――!」
気合を入れなおすと、とん、と足元を蹴り、金の疾風が山の方へと駆けて行く。
ご案内:「九頭龍山脈 山中 街道沿いの泉」からシャロンさんが去りました。