2016/01/26 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にオリアスさんが現れました。
■オリアス > 九頭龍山脈。ここにある廃坑道に、とある山賊の塒がある。
そこに現れたのは、一人の男。
ここに九頭龍山脈に覇を唱える、鉱山最強伝説が……始まるわけもない。
■オリアス > 「ここにいる山賊、出て来い!! 蛮族のお出ましだ!!」
大声で喚く男は、素手だ。山岳装備すらない。
かといって、頭がおかしいわけでも山賊志望でもない。
「ここの採掘権を村の人間から買い取らせてもらった! この坑道は俺のものだッ!!」
坑道から男たちがぞろぞろと出てくる。
とても迷惑そうに。
■オリアス > 顔を見合わせた山賊たちが肩を竦めて苦笑い。
『殺せ』
『おう』
とても手短に運命を決められる手ぶらの男。
「ついでだ、名乗っておこう……俺の名はオリアス・バンドデシネ………」
「ただの蛮族だ」
破顔一笑、凶相の男が両手を広げる。
手斧を持った山賊とダガーを持った山賊が彼に、オリアスに襲い掛かる。
■オリアス > 次の瞬間、血の花が咲いた。
オリアスがどこからか取り出した二股の短剣でダガーを絡めとり、そのまま山賊を刺した。
左手には長剣、手斧を持った男の太股を貫いた。
『ぎゃあああああぁっ!! 痛ぇー!!』
『どこから武器を取り出しやがった!?』
『落ち着け、手品だ!! 囲んで殺せぇ!!』
騒ぎ立てる山賊たちを前に、オリアスは凶悪な笑顔を崩さない。
■オリアス > 左手側から来た戦斧を持った大男を、ふらりと体を預けてナイフで刺す。
後ろからロングソードで襲い掛かってきた禿頭の男を、見もせずに長槍を向けて貫く。
背の低い男が真正面から投げたナイフを、歯で受け止めて小太刀を投げつけた。
一瞬で騒がしかった山賊たちが静まり返る。
まるでこちらが生きようが死のうが関係ないと言わんばかりの無軌道な暴力。
無慈悲だけが長所の山賊たちを黙らせるのに十分な理不尽。
「ああ……えっと………ここの坑道、使わせてもらえる?」
「採掘してーからさ……廃業するなりして、空けてくれ、ここ」
一瞬でまた素手になった彼は、血塗れの手で頬を掻いて爽やかに笑った。
■オリアス > ぎゃあぎゃあと騒がしかった。
それだけは覚えている。
しかし山賊たちはこの塒から撤退した、血だまりを残して。
「……さてと」
男は準備運動を始める。
これから始まる一大事業(と、本人は疑っていない)のために。
「オリアス鉱山組合、設立だ」
男はどこからともなくツルハシを取り出した。
それはまるで影の中から取り出したように、静かで。
■オリアス > 男は坑道でツルハシを振るう。
何度も何度も、穴を掘り続ける。
ランプで手元を照らし、鉱石の質を確かめる。
「鉄鉱、銅鉱……ミスリルが少しと、まだ掘れるな」
満足げに笑う。
ここは宝の山だ。
何故、山賊はここで寝泊りしながらこんな良質な鉱石に手をつけていなかったのだろう?
……彼は本気でそう考えている。
表に出て、計算機を取り出す。
ある国でソロバン、と呼ばれている原始的な計算機だ。
「鉄鉱が一山いくら、銅鉱も……ミスリル鉱が結構な値段で売れるとして」
邪魔臭そうに顔についた血を拭う。
■オリアス > 「鉱夫を雇うだろ、一日これくらいの値段で雇って……」
「俺の生活費だ、200ゴルド……いや250ゴルドだな、酒が飲みたいし」
「……待てよ、月末にお上に税金を払う、それは間違いなく」
「そして山賊どもは全滅するわけがない、傭兵も雇いたい」
「会計も俺一人でするのは面倒だ……ええと…」
ぱちぱち。軽妙な音と、悩ましげな声。
「まぁ鉱夫二人連れたとして試算で一日働けば50ゴルドの儲けだな」
オリアスは首をがくんと横に倒した。
彼なりに考え込んでいる時のポーズだ。
「……売り上げが差し引き50ゴルド………?」
「待て! 落ち着け、考えろ!」
その辺の血だまりに砂をかけて適当に均す。
■オリアス > 彼は決して頭が弱い人間ではない。計算はできる。
ただ。ただ、ひたすらに。
残念なのだ。
山賊に考えなしに喧嘩を売るのも。
鉱石の質も確かめずに採掘権を買うのも。
そして……山賊が闊歩する山中の鉱山組合を立ち上げるのも。
彼が残念だからだ。
■オリアス > 「……とりあえず掘れるだけ掘って鉱石を売りに出すか」
男はガリガリと頭を掻いて長い独り言を終える。
「眠たくなっちまうような、良い出来事があるといいなぁ」
こうして第七坑道からは、日夜採掘の音が響くようになる。
彼の物語は始まったばかりのような、もう詰んでいるような。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からオリアスさんが去りました。