2015/11/18 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にヴィクトールさんが現れました。
ヴィクトール > (件の出来事から直ぐのこと、この男はここへ走っていた。騙されたことに地下室でベッドを蹴っ飛ばして当たり散らしていたが、兄に諭された言葉に考えることがあり、仕事に出て行った隙にぬけ出すと、従業員の娘に手紙を渡して走り…今に至る。朝になろうという頃、男が辿り着いたのは山中にある大きな滝だ。爆音が鳴り響くそこへと足を踏み入れるのは、何も滝に打たれに来たわけじゃない。元に戻ってしまった相棒、それを抜くと切っ先を滝へ向ける)……イメージ、だな、静かに、冷静に(兄に諭されたのは冷静にならなかったことだ。戦いの中、術に掛けられたのに気づかなかったのも、闘争本能に呑まれ、冷静な判断を失ったことだと。意志を爆ぜるほどに膨らませて叩きつける剛の力、それではなく別の力も取り入れるべきだと。言葉を思い出しながら、男は剣を滝に突き刺す)
ヴィクトール > (お前は騙された。だが術が解けるまで相棒は形を成した。お前がそこに有ると認識し、強く意識した結果なのだから、冷静にその力を維持できればもっと応用が効く。馬鹿な自分にも分かりやすく説明してくれた兄に感謝し、馬鹿は馬鹿なりに出来ることを思いついた)……奴をぶった切ったイメージはできてたってわけだ、その力を形にするイメージもだ(剣が折れそうな圧力、あの時剣に進化をもたらした。ならもう一度…誰にも歪められない、自分の意志で成す。やられっぱなしは癪だ、絶対に手に入れてやると目を閉ざしたまま、男は両手で剣を握り締める)……っ!(おられるあの瞬間、滝の水圧を代わりの力としてイメージし、あの気持を揺り起こす。お上品な剣だからって、お前が折れる必要はない。食い殺せ、お前は俺と一体なのだと…変わっていく瞬間を浮かべ、真っ黒な魔力が剣に集まる)……っ!!(ズバァツ、水を切り裂き、黒が散っていく。剣は変わらずただの鉄の剣だ。まだ足りない、もっとだと感情を理性で閉じ込め、集めて圧縮して…力に、形に。見えぬものとの戦いが始まった)
ヴィクトール > (ハズレ、失敗、ミス。振りぬく刃は尽く自身の力を散らすばかりだ。振れば振るほど力は失われる、それなのに変わらない。元々細々と何かをするのが苦手な男はとにかくじれったい気持ちが強まるばかり。剣の動きが乱雑になり、闇雲に力を失う悪いループに嵌り込む)……クソっ!(剣で水面に八つ当たり。派手に水飛沫が飛び散るだけで、体が濡れて冷えるだけだ)ちげぇ、落ち着かねぇと…キレてちゃダメだっつってんだろ(自分に言い聞かせ、深呼吸。切っ先を上にした大剣、剣脊に額を押し当て、頭の熱を逃がすように荒々しい感情を抑えこんでいく)
ヴィクトール > (我ながらどうしてこうも短気なのだろうと思う、腹違いの兄は母似だったらしいが、自分は残念なことに父似らしい。兄づてに聞いた父親も風来坊の感情的な輩と聞かされた時は、ひでぇ話だと自嘲気味に呟いてごまかしたものの、今になっては恨めしいほど、このカッとなりやすさが嫌になる。滝から離れると、一旦立て直そうと、焚き火を起こすことにした。転がっていた枯れ枝を拾い集め、枯れ葉を山にする。金属の着火棒をすりあわせて火花をちらし、葉に火種が宿れば優しく息を吹きかけて火を膨らませ、枝を放り込む)……(木の弾ける音、揺らめく炎が生まれるとその前に鎮座し、冷えた体を温める)イメージ…(意識すること、それを形に成すには強いイメージが必要だ。温まり、苛立ちが抜けつつある今、目を閉ざしてあの剣をもう一度浮かべた。一晩しか触れ合えなかった相棒、黒い輝きをもう一度…傍から見るとまるで座禅である)
ヴィクトール > (こういう時にこそ、所謂頭の良さ…とまでは行かないが、どれだけ脳みそを使いこなしているかが重要になる。妄想するにしたって、妄想する題材を明確に浮かべられなければ、妄想すら出来ない。水の轟音、炎の不規則な調べ、森が風に揺れる自然の響き。それが聞こえなくなる程の極地の集中に…至る前に眠りそうになり、頭がガクリと揺れた)……っ(寝てどうするんだ。心の中で己の愚かさにツッコミを入れると、自嘲のため息が溢れる)…呆れて落ち着いちまったよ(結果としては果たせたが、なんとも間抜けな落ち着け方だ。今度は深くため息を吐いて剣を掴み立ち上がり、再び滝と向かい合う)
ヴィクトール > (ただ、この間抜けな時間に一つだけ気づけたことがあった。それはこの練習に決定的に足りない要素があることだ。腰に手を当て、男は滝を見上げる)死ぬかどうか…つーのがねぇんだよなぁ(あの時の戦いは命の奪い合い、もし男が負けていればここにはいなかっただろう。そう思える戦いにだから極地の意識、イメージが荒ぶる感情が一瞬だけ引き、剣をイメージ出来たのかもしれないと思えた。滝の前で物思いに耽る男だが)…でもどうしろってんだそれ(死の手前、それを再現すると本当に死にかねない。流石に倒れた時に頼むといった兄に躯を晒すのは、馬鹿な彼とて偲びない。極限まで体を冷やしてみるか、血を抜いて限界まで体をいたぶるか。どれも後戻りが大変そうな極地ばかりだ、それが当たり前なのだが…結局、ともかく練習しようと剣を振るい初める。馬鹿が何考えても変なことになると、あっさり開き直った)
ヴィクトール > (滝の抵抗もそのうち男の腕がなれてしまい、圧力として感じなくなってきた。そこで切っ先を滝浦の岩へ突き刺し、岩の間を引きぬくようにして滝と岩の圧力で、一層の抵抗を掛けた。だがこれは思いもよらぬ結果をもたらしてしまう)……っと!(滝の上は倒木が折り重なってダムのようになってしまっている部分があるのだが、僅かな振動が、微細なバランスで保っていたそこを崩してしまう。壁から崩れた倒木が一つ、滝から流れ落ちたのを咄嗟に避ける)…なっ!?(だが、それに絡まっていた蔦が男の足を捕まえた。意識していればこんなものにかからないのだが、無意識下の存在に対しては、意識するというタイミングが入るためワンテンポ遅れが生じる。猛スピードで水中へ引きずり込む蔦は、男の巨躯を滝壺の底へと引きずり込んでいく)
ヴィクトール > (ぐんぐん男を水中へ引きずり込む倒木、今まで起きたことのない水中へのいざないという出来事に混乱に陥ってしまう。それは意識するという力を発揮できない、最悪の状態だ。兄が彼に冷静を求めたのも、こんな時でも力を振るえるようになるためだろう。馬鹿力をイメージして引きちぎることも、魔力で切り裂くイメージも浮かばない、ひたすらに自身の力だけで蔦を解こうとするが、徐々に減っていく酸素がそれすらも拒む)…ぐっ(肺が押し潰されるようにつまり、酸素を求めて喉が引くつく。このままでは溺死だ。やっと混乱から落ち着いてきたのだが、既に遅い。酸欠は手の動きを凍らせ、意識を沈めていく。手を伸ばそうとする景色が閉ざされていき、男の意識が沈みかける)
ヴィクトール > (世界が暗くなる。意志を具現化する男でも、こうなってしまったら全くの無力だ。剣を握っていた手から、力が抜け、滑り落ちる。眼前をすり抜けていく剣が消えると、真っ暗な水中に何かが見えた気がした。天使のような体、これは本格的に殺される。せめて美人に連れて行かれたいもんだと冗談が浮かぶ。さてどんな天使様かと視野に飛び込んだのは…真っ黒な鳥頭をした異形、そして手にした剣を男へと突き刺そうと振りかぶるのが見える)…っ(痛み、足先に感じるそれが、幻覚から男を取り戻した。落とした剣の切っ先が、男の足先を傷つけたのだ。何している?早くどうにかしろ、あれだけ文句を言ってお前は死ぬのか? 朦朧とし、目の前が歪む男に幻聴が届く。ふざけるな、死んでたまるか、剣を強くしに来て死ぬなんぞ、冗談にも程がある。もう一度意志の魔法を使おうと思ったが…男は剣を握り締める。振りかぶり、幻覚を剣へ押し付けていく。真っ黒な刀身、すべてを切り裂く刃、これも立派なイメージだろうとにやりと笑うと…全ての力を振り絞って剣を振り下ろした。瞬間、滝壺の底が爆発し、真っ白に泡だった水が周辺に溢れかえり、蔦と倒木を粉砕した男が宙に舞う)
ヴィクトール > がはっ!?(みっともなく背中から川へ着水し、強打すると苦悶の声がこぼれた。ぜぃぜぃと必死に酸素を吸い込み、仰向けに待ったまま男は紺色の空を見上げている)……(手にした大剣を持ち上げる。そこには騙さた時よりも細身で、真っ黒で、刃が妖しく煌めく求めていた大剣の姿があった)…は…ははっ、はははっ……はぁっははっ!!(溺死しかかって完成とは、馬鹿過ぎるほどのイメージの補い方だ。愚かすぎて笑いしか浮かばない、よほど愉快なのが咽るほど笑い続けると、体中が痛む中、剣を杖に立ち上がる。だが災難は終わっていなかった。これだけ派手なことをしたら、滝の上にある自然のダムはどうなるだろうか?簡単なことである、大量の倒木を伴って崩壊だ)
ヴィクトール > (何やら激しい物音がすると滝の方を見やれば、まずは決壊した水が一斉に滝を下って落ちてきた。山の中で津波に襲われるとは…と思うよりも、男は指に傷をつけ、血を剣へ滴らせながら構えた)もっとだ…もっと俺と一体になれ、お前はもう、俺の一部だぜ。俺の最高の…相棒だからよぉっ!!(剣がじゅるりと血を吸うと、刀身の黒色に赤が解けていく。まずはこの津波をどうするか、体で覚えたイメージ方法をしっかりと復習し、リラックスしながら剣を構える。一瞬、一撃で殺す。赤黒い脳裏の映像に浮かんだ未来、男はさも普通に剣を薙ぐ。そして…瞬きの斬撃が生まれ、何時振りぬいたのやらと思わせる速さで剣は振るわれていき、その破壊力が津波を切り裂いて拡散させる。今度は流木だ、男は剣を地面に突き立てる。あの女のバカ見たいな速さの剣を大剣で処理できなかった、こういう時に練習をしていた双剣が欲しい。ならば、相棒に命じるのだ。そうなれと)いくぜ、根性みせろやぁっ!!(叫び、剣を手にする。明確に浮かぶイメージを意志に載せ、具現化する。剣は真っ黒なモヤに包まれ、底から引きぬかれたのは、刀身が短くなり、片刃となった堅牢そうな双剣。正面から突っ込むと、当たりそうになる流木を刀身で受け流し、時に切り伏せ、すり抜けるように刃を振るう。秒も掛からぬ一瞬の出来事、剣を振るった男に流木は何一つ当たらなかった)
ヴィクトール > ……(男は剣を重ねあわせる。再び黒い靄が剣を覆うと、それが消えていきながら手品の如く大剣に戻っていく。真っ黒な大剣を右に左に払うと手首を返し、鞘へと収めた)――っしゃおらぁっ!(感無量、偽物を魅せられた時よりも強く靭やかな相棒が完成したのだ、無理もない。一層の力を手に入れ、兄の言っていた冷静に戦うという感覚も理解できた。今回欲した全てを手に入れ、雄叫びは山の麓にまで届きそうなほど大きかった)早速兄貴にみせてやるか! また剣の名前、付けてもらわねぇとな…!(本当は自分で考えたいが、そこまで頭が足りない。ここは博識な兄に一任しようと、大急ぎで山を下る。太陽が登る頃、男は王都の兄の元へとたどり着く。心配させるな、無理をするなの二つを拳にされ、顔面に見舞われたが、安いものだ。こうして大剣は新たな名前を授かる。彼が見た幻覚、天使と鳥の化け物、そして血を吸ってさらなる進化を遂げた化け物らしい剣の特製。その二つを合わせる。魔剣アンドラス、大剣は悪く無いと言いたげに翳された太陽の前で輝いた)
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からヴィクトールさんが去りました。