2015/11/10 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にエウレリアさんが現れました。
エウレリア > 九頭龍山脈を東に背負う山賊街道の中程、寒風吹きすさぶ山道には相応しくない豪奢な造りの馬車が停められていた。
それが単なる小休止で無いことは、馬車を取り囲む男たちの出で立ちを見れば明らかだ。

薄汚れているという一点を除いて統一性のない装備に身を包んだ10人足らずのならず者。
嗜虐にギラつく双眸と、黄ばんだ乱杭歯を覗かせて笑む下卑た表情が無法の気配を滲ませる。

対峙するのは一人の娘。

要所をフリルに飾られた緋色のドレスと、美術品の如き瀟洒な装飾が施された銀剣を佩く、見るからに貴族と思しきお嬢様。

薄曇りの中でも艶やかに煌めく金の長髪と、ドレスの襟元から覗く今にも零れ落ちそうなくらいに豊かな白乳。
傲岸さと酷薄さを滲ませる顔立ちもエルフの如き整いを見せる極上の獲物である。

貴族娘の唇に虚勢とも思えぬ薄笑みが浮かんでいるという点と、華奢な主を尻目につば広の帽子を目深に被った御者が微動だにしていない点が違和感を漂わせるも、とりあえずは分かりやすい『山賊に襲われて、絶体絶命のお嬢様』という図式である。

エウレリア > エウレリアと御者が醸す異質に困惑しているのか、山賊達は互いに目配せを交わし合うばかりで中々動き出そうとはしない。
お定まりのセリフを期待していたエウレリアが、しびれを切らした様に艶やかな紅唇を開いて水を向ける。

「―――それで、わたくしの道行を止めた貴方がた。一体どのような御用かしら?」

歳相応の若々しさと蠱惑的な色の滲む声音が、断崖の街道を甘く震わせた。
しかしてその内容は、随分と間の抜けた質問である。
山賊が旅人を止めて行う事などただ一つ。略奪に決まっている。

未だに消えぬ娘の余裕を、世間知らずのお嬢様の危機意識の低さと決定付けた山賊達が、戸惑いの表情に下劣な笑みを取り戻す。

『なぁに、大した事じゃあねぇさ。その御大層な馬車も、そこに積まれた荷も、そしてお嬢さん、てめぇのいやらしい身体も根こそぎ頂かせてもらおうと思ってなぁ』

リーダーと思しき髭面の言葉に、下卑た笑い声が追従する。

対する娘は長い睫毛を落として紅瞳を閉じ、弓なりに弧を描く細眉をひょいと持ち上げ笑みを深める。
「想像通り過ぎてつまらないわ。」そんな言葉が言外に聞こえて来そうな、心底彼らを馬鹿にした表情。

『てめぇぇえ! 調子に乗ってっと酷ぇ目に合わせ……。』

いきり立った比較的歳若いチンピラの言葉が終わる前に、その首がゴドッと落ちた。
その傍らには、ふんわりとスカートの緋色をたなびかせる貴族娘。
黄金の髪束から甘い華香を匂わせて、肩越しに向ける紅瞳に蔑みと喜悦を滲ませて――――ピゥンッと振った二閃が右の男の脇下を、左の男の首筋を、それぞれ深く切り裂いた。

『―――ッな!?』 『……おいっ!!』 『ふざけんじゃ……ッ!』

頭部を失った青年が噴水の様に鮮血を吹き散らしながら膝を付き、断ち切られた大動脈から盛大に血液を流出させる男たちがふらついて後退る中、硬直していた山賊達がようやくにして動き出す。
その残数はたったの5。

エウレリア > 真っ赤に染まる首筋を抑えて座り込む男と入れ替わり、進み出た大男が大上段より打ち落とす大斧の一撃。
無造作に伸ばされた白手が舞う様に狂刃の背を摘み、くいっと軽く腕を引く。

半身となった貴族娘の傍ら、優美に膨らむドレススカートを闘牛士のマントに見立てた様に突進してたたらを踏む大男。
その分厚い胸板を、反対側に位置した男が突き出した槍の穂先が深々と貫いていた。

意図せずして仲間の命を奪ってしまった槍使いも、蛇の如き軌跡を描いて眉間に突き立つ銀刺突にて後を追う。
残数3。

「あはははははははっ! 貴方がた、どうなさいましたの? わたくしの腕を断ち落とし、脚を貫き、むちゃくちゃに犯し殺したいのでしょう? よろしくてよ、ほら、ほら、ほらっ! 隙だらけですわよ、今ならわたくしの子宮に、貴方の硬くて長いものを突き立てる事も出来ましてよ?」

狂った様な笑い声を響かせて、血飛沫の舞う山賊の只中で踊るようなステップを刻む。
スカートが翻り、金の長髪が優美な弧を描き出す。
持ち上がったスカートを押さえつける白指が、しなやかな脚の付け根、熱く潤んだ割れ目に中指の腹を当てる。
そのままするすると持ち上がる繊指が、緋色の布地の下、己の前腕と変わらぬ程に巨大な肉塊の、熱く、硬い、脈打ちを感じ取る。

エウレリア > 舞い踊る貴族娘の背が、生き残った山賊の胸板にトンと当たって動きを止めた。
軽い衝撃にすらたゆんと揺れる豊かな柔乳。
手にした長剣を振るう事すら出来ぬ至近に戸惑う彼の首筋、情熱的なダンスを踊るパートナーに対する様に、伸ばした細腕が淫らに絡み―――直後、彼の顎下から頭頂を銀剣が刺し貫いた。

吹きこぼれる血よりも早く剣を抜いて身体を離し、恐怖に駆られて切りかかってきた男の胴に、トトトトトトンッと6連続の銀刺を放つ。
武器を取り落とした彼の手首を掴んで引けば、穿たれた孔から血を噴き出す死に体が踊る様にくるくる回った。
残数1。
狂気を孕んだ笑みを浮かべたエウレリアが、デザートに向けて紅瞳を流す。

「――――――………あら?」

最後の一人、殺さずに取っておいた、あどけなさすら残す年若い山賊の背は森の中、既に随分小さくなってしまっていた。

「……わたくしの誘いを拒むだなんて、初心にも程があるという物ではなくて? ――――ねぇ?」

唐突に問を投げられた御者が、呆れたように肩を竦ませる。
その様子にフンと小さく鼻を鳴らして銀剣を鞘に収めたその細身には、返り血の一滴すらついていない。

女主人の乗り込んだ馬車が、鞭打つ音と共に再び走り出す。
後に残されるのは、鮮血の華を赤々と咲き乱れさせた7つの躯のみ。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からエウレリアさんが去りました。