2019/12/15 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”2」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 広場の中に、人だかりができている。
その真ん中には、二人の男が居た。
一人は、青い闘牛士服の男。もう一人は、革鎧を着た冒険者然とした男。
闘牛士服の男が、今まさに突き上げるような蹴りを男の腹に浴びせ、くの時になった男の顎を拳で強かに叩いた所である。
男は一瞬宙に浮き、そのまま背中から倒れてしまった。

「はい、KO。残念でした。次の方どうぞー」

男がそう言うと、観客達の前で控えていた黒子達が、倒れた男を運んでいく。
観客達はそれを横目に、男の後ろに積まれた金袋を見る。
参加費の一袋百ゴルトが、今や何と十袋。
そして、勝てば総取り――つまり、男に勝てば千ゴルトという訳だが、その挑戦者は誰も居ない。

『武器アリで、挑戦者は剣抜いてるのに、あっちは全然抜きやがらねえ』
『勝てる訳ねえよ。闘技場のクレスだろ?魔族さえ相手にしてるっていうじゃねえか』
『闘技場出張版っていうなら、奴隷とかと戦わせりゃ良いモノを』

と、ひそひそと囁き合う観客達の声。
さて、果たして挑戦者は現れるのだろうか。

クレス・ローベルク > 勿論、此処まで男が勝っているのは、トリックが無い訳でもない。
一つには、観客と、試合場の距離が近い事、である。
これは人目に付かぬ場所で戦う者達には、プレッシャーとなりうる。
そして、もう一つは、

「(意外と戸惑うもんだよね。素手の剣士ってヤツは)」

剣を持ってるのに使わない、素手の剣士。
そんなモノと戦った経験を持つ者は、少ない。
どんな動きで攻撃してくるのか、どんな動きで避けるのか。
その理合は剣なのか、拳なのか。
戦っている者に適用される法則が、解らない。
これは意外とプレッシャーになるのだ。

「(とはいえ、やりすぎ、かな)」

出来れば、これ以上は楽勝したくない。
これは闘技場が行っている、正規のイベントなのだ――男も、エンターテイナーとして仕事をしている。
故に、今の観客達の引き方は、良くないものだと感じている。
そろそろ、強敵が欲しい、と。

クレス・ローベルク > ――さて、果たして挑戦者は現れるのか
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”2」からクレス・ローベルクさんが去りました。