2017/03/26 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”2」にエズラさんが現れました。
エズラ > 一人目の客が最初の注文をしたまさにその時、戸口に新たな客が立った。慣れた様子で店に足を踏み入れ、主に軽く手を上げることで挨拶――そこで、自分以外の客の姿に気付いた。

「……――」

思わず口笛のひとつも吹きそうになったが、それはこらえて。黒で揃えた装いに、まばゆいばかりのブロンド。おまけにその顔ときたら、「女のように」整っている。己の出で立ちとのあまりの差異に泣きたくなりつつ、数席離れた席に腰かける。

「いつもの、くれよ。」

短く注文を済ませると、腕を組む。既にどこかで一杯やってきたらしく、男の目はそれなりに虚ろではあったが――不思議とその佇まいに、隙や緩みというものがなかった。

イーリス > ゆると両の腕をカウンターテーブルに預け、やや凭れかかる体勢で、カウンターの向こうの、この街の情報に精通した情報屋たる初老の男へと声をかけようと、唇を開きかけたその時。
扉が開く音に、その唇は再び閉じられて言葉を発する代わりに、やや緩慢な動きで戸口の方へと視線を投げた。
見知った人物ではなかったが、それゆえに、その言動を追う視線は少しばかり警戒を示したもの。
酒が入っているようでいて、隙がない。警戒するに値する、と無意識に判断したように、すっと眼差しを細めて。
だが、その警戒心を露わにした眼差しも一瞬のこと、ここでそういうのはナシ、と言わんばかりに、注文した麦酒がグラスになみなみと注がれてカウンターへと置かれたから、気が削がれたみたいに、はっと短く息を吐いた。
そして、グラスを引き寄せ、口へと運ぶ。
程よく冷えた麦酒は良く喉を通り、一気に半分ほど飲むと、ふぅ、と満足げに息を一つ。
特段、入って来た客に声をかけるわけではないが、その動向には気を配っているのか、正面を向いていた身体を僅かに戸口の方…新たな客の方へ向けるように、さりげなく片腕をカウンターテーブルに預ける姿勢へ。

エズラ > こちらに運ばれてきたのは、小さなグラス。半分ほどを琥珀色の蒸留酒が満たしている。主に短く礼を言うと、口元に運び、わずかばかりそれを傾け、喉の奥へ流れ込むアルコールの熱を飲み込み――

「~~……ぶはぁ……――」

鼻から抜ける、強烈な潮の香りにぱっちりと目が開いた。そして――おもむろに、数席隣の「彼」に向き直る。鋭く細まった琥珀色を、値踏みするように見つめる。

「オレのようなのが珍しいか、兄ちゃん。」

ここはただの酒場ではない――少なくとも、「かたぎ」が好きこのんで足を踏み入れる場所では。それ故、客同士互いを警戒するのも一種の定石といえた。しかし――相手を真っ直ぐに見つめていた男が、急に顔をしかめて、身を乗り出す――

「ん……ンン……!?」

奇しくも、いましがた相手に吐いた台詞を、そのまま返されてもおかしくないような視線を向けて――

イーリス > 僅かに目を細めて、さりげなく、を装っていたものの、不意にこちらへと相手が向き直ったことで、よほど己が不躾な視線を向けていたことに気付いたようで。
その上、声までかけられてしまうと、警戒心を含んでいた瞳が、少し驚いたように瞬いたが、

「あぁ…いや…」

やや気の抜けた、咄嗟に上手い言い訳をするわけもなく。
だが、すぐに、やれやれ、とばかりに軽く首を振り、やや大げさに首を竦める仕草をすると、

「聊か警戒しすぎた。無礼を詫びよう。………とはいえ、解るだろ、ここは…“そういうところ”だ」

警戒は解いた、と言わんばかりの言葉なのは、相手が如何なる行動に出ようとも対処できる自信があるのか、それとも言葉通りに警戒を解いたのか、どちらとも付かぬ口振りで。

「それに…君の方こそ、私のようなのが珍しいと見える」

そこに来てようやく、ふっと表情を緩め、口元に笑みを乗せては、揶揄するような台詞を返して。

エズラ > こうして真正面から改めてその顔を拝むと、後ろ姿や横顔以上にはっきりと分かる――何か感心したような表情を形作っていたが、あんぐりと空いていた口を慌てて閉じた。

「……ああ、いや、まぁなんつーか……そうだな、そう、珍しい――」

そして極めつけは、その声。間違えようもない――己の喉から出るそれとは根本的に異なる。曇ったか――と自嘲気味に笑って、グラスを傾ける。

「驚いたぜ、「こういうところ」にゃ似つかわしくねぇ「坊ちゃん」かと思っていたがよ――」

よく観察すれば、その肩幅、腰つき、何もかもが――相手が「女」であると物語るに十分ではないか。

「男装の麗人、つー言葉、あんたのようなのに相応しいな――」

イーリス > 相手の表情を眺めれば、警戒は解いたようだが、代わりに訝しがるような眼差しを向ける。
しかも、相手はあっさりと珍しい、と断言するのだから、こちらが曖昧に誤魔化した上で詫びたのとは対照的な正直さに、なんだかバツが悪いのもあってか、黙っていたものの…。

「………。麗人は知らんが、それで」

どうやら隠し通せるものでもなかった事実を指摘され、返答に悩むように、やや長い沈黙の後、一息ついて口を開くと、

「私が、“男装の女”だったとして、どうする?君同様、私も少々腕には覚えがある。売られた喧嘩は買う主義でね」

素直に肯定はしないが、否定もしない言い方をしたのち、己の腰にあるダガーを示すように、ぽん、と軽く腰を叩いて。
女であれば、身ぐるみ剥され、奴隷市にぽい、なんてこともあり得る街である。
甘く見るな、と忠告めいた仕草なれど、酒が入っていることもあり、口許には軽く笑みを浮かべており、さほど本気で言っているわけでもないのは、相手にも伝わるかもしれず。

エズラ > 「アハハァ……そうカリカリすんなよ、別にチャンバラしようってんじゃねぇ。」

相手が腰の得物に触れたのを見て、クックッ、と喉を鳴らして軽く両手のひらを相手に向ける。相手が本気でないことは、店の主が無反応を貫いていることからも明らか――しかし、己に対する反応それ自体は、この街で生きる者としてごく当たり前の態度であり、相手が手練れであることを示すものでもあった。

「ただ――興味津々ではあるぜ。あんたのその男物の服の向こう側が、どうなってるのか、についてはな――」

何のことはない、好色の虫が疼いているのであった。手元のグラスを完全に空にすると、少し勢いをつけてカウンターに置く――

「つうわけで、こういう場所だ。飲み比べでもしねぇか?オレが負けたら代金はもつぜ。今日は少しは懐が温かいンでね――」

唐突に、酒場じゃ「よくある」申し出を。相手が負けた場合のことについてはあえて口に出さず。そもそも、受けるかどうかすら。

イーリス > 相手も、腕に自信があるらしいことは、剣呑な雰囲気にさえならずにさらりと流す辺りからも理解できる。
男であろうとする意識が強すぎるのか、女だと指摘されれば、すぐに噛み付いてしまうのは無意識のことであったが、相手の言葉に少しばかり眉を顰めたものの、

「君と同じかもしれんぞ」

女ではないかも、と今更ながらの言葉を付け加えたあと、ありがちな提案に、ふ、と唇が弧を描くと、半ばほど残っていた麦酒を一気に呷り、グラスをカウンターの向こうへと押し返す。

「男に二言はナシ、だな。たっぷりご馳走になるとしよう」

すでに勝つ気十分で言い切ると、かたりと音を立ててスツールから立ち上がると、相手の隣へと座り直す。
さてやるか、と気合も十分、至極楽しげな表情で、酒をオーダー。
ハンデの心算で、相手が今まで飲んでいたものと同じものをオーダーし。

「そういえば。…奢ってくれる君の名を聞いておこうか。私はイーリスだ」

酒が用意される合間、ふと思い出したみたいに己の名を告げる。

エズラ > 「へぇ……こりゃ、ちと甘く見ちまったかよ――?」

麦酒をするりと飲み干した姿を見て、ついにヒュウ、と口笛を。隣に座った相手の体躯は、なるほど女の体格にしては明らかに鍛え込まれた、それでいてしなやかさを失わないものであると分かる。ほどなくボトルとグラスが運ばれてくる。

「エズラだ。戦で食ってる――とはいえ、しがない街のゴロツキと思ってくれりゃいい――」

ボトルを傾け、グラスに注ぎ、相手に差し出す。続いて己の分を注ぎながら――

「ダイラスの蒸留所の中でも、とびきりの曲者だぜ、こいつは。慣れるにつれヤミツキ、ってやつ――」

先程まで相手が飲んでいた麦酒とは比較にならないほどきつい酒。軽くかかげ、乾杯。そしてそれを口元に運ぶや、逆落としに己が臓腑へ浴びせかける――

「~~……くはぁ~……たまんね……――」

恍惚とした表情で、熱い下腹を張り詰めさせつつ――さて、相手は?と視線を移す。

イーリス > 麦酒程度は水と変わらず、喉を潤すだけのものである。
相手の軽い口調に、ふふっと笑っては、差し出されたグラスに手を伸ばす。

「なるほど、戦で、な。…道理で君は抜け目がないはずだ、いろいろと。
…しかし、これは。………なかなかのモノを飲むんだな、君は」

軽い自己紹介を終えたあと、グラスを軽く掲げて、相手と同様に乾杯の意を示し、口許へ運ぶ。
が、さすがに先ほどまでの水替わりの麦酒とは比較にならないアルコール臭に思わずそんな感想が口を付く。
それを易々と飲んでいるのだから、なかなか手ごわい勝負になりそうな予感に、少しばかり苦笑いが滲む。
とはいえ、相手に負けじとグラスを傾け、くいっと一気に呷る。
匂い以上のアルコールの強さに、喉を焼くような感覚と、胃へと落ち込んだ後のカッと焼け付く感触。

「っ…ふ」

漸く一息ついたものの、眉を顰め。慣れるまでは悪酒と言えるようなそれに、先ほどまでの勢いはどこへやら、言葉少なに、

「…君の番だ」

と焼け付く喉から声を絞り出しては、飲みなれぬ酒に悪戦苦闘中。

エズラ > 「白旗ならいつでも受け入れるぜ――並の酒じゃねぇ。命の水、ってやつよ――」

流石というべきであろう――一杯目とはいえ、空にするとは。ますます相手に興味がわいてくる。相手のグラスを満たし、自分のグラスへとボトルを傾け――

「潮の香りがたまらねぇだろ?蒸留所が海辺にあるのさ――ダイラスじゃなきゃこうはならねぇ――」

相手が海の王者とは知らず、酒の蘊蓄もそこそこに――自分のグラスを再び空にして。

「……ップ……ふ、う~……流石にキツい……」

そうは言っても、男のめはニコニコと楽しそうに歪むのであった。そして相手が酒をあおる仕草を観察――

イーリス > 「まだ1杯だぞ」

とは強がってみたものの。
一気に呷ったのが悪かったのか、胃に落ちた酒が、まるで熱を持ったみたいにじわじわと身体の内部を焼くようなそんな錯覚さえ覚えるほど、アルコールが回ってくる。
しかも、そう、彼が言うように、潮の香り、である。
海の上、船上暮らしの身とはいえ、酒に潮の香りとは慣れないせいで、どうにも身体が受け付けていない。

「………だろうな、ダイラスでなきゃ、こんな酒…あぁ、いや、こういう酒はないだろうな」

思わずその風味とアルコール度を貶すような言いぐさになってしまったことを訂正したものの、早々に相手はグラスを空にするから、また自分の番が回ってくる。
確かに慣れれば美味いのだろう…慣れれば。

「………君の方こそ、さあ、もう飲んだだろう?降参して構わんぞ」

負けず嫌いゆえに、親切な台詞を口にして、相手に降参させようと………するのが無駄なのは、言葉とは裏腹に笑みを浮かべているその姿で解る。
とりあえず平静を装って、再びグラスを口に運ぶと、潮の香りとアルコールが鼻孔を擽る。

「………」

唇にグラスの縁を当てたものの、そこで止まる動き。
そしてすぐに口元からグラスを外すと、眉を顰め、すすっとグラスを相手の方へ。

「今回は、君の勝ちだ、代金は私が払おう」

あくまで、「降参」とは言わない負けず嫌い。
口許を手の甲で拭ってから、麦酒、と口直しに店主へとオーダーするほど、相手が飲む酒は口に合わなかったらしい。

エズラ > さぁ、この戦はいつまで続くのか――という思いは、以外に早く雲散霧消。どうやら口に合わなかったと見える――差し出されたグラスを喜んで受け取ると、今度は一気に飲み下すことはせず、舐めるように口を付ける、本来の楽しみ方――

「こいつぁ意外な幕切れだ――ま、そう嫌わず時々嗜んでみなよ――じきオレの気持ちが分かるぜ。」

酒精にほんのり目尻を朱に染めつつ、ああそうだ――と思い出したように。

「ところでイーリス……酒代払ってくれんのもありがてぇがよ――」

ムフ、と助平心を隠そうともしない顔で笑みを浮かべる。にじ、と隣へ身体を寄せると、囁くように問いかける――

「どうせなら、そのジャケットの奥を拝ましてくれねぇか――?」

やけに滑らかな動きで腕を伸ばし――相手がその気なら苦もなく躱せるような動きではあったが――その腰を抱こうとする。ごつごつとした、「雄」を感じさせる手――

イーリス > 降参に合わせて押し返す恰好になったグラスを手にして、なおそれを口にする相手を見れば、はー、とため息ひとつ。
敗北を認めるようなそれを残し、口直しにオーダーした麦酒が出されると、それを喉を鳴らして飲むのは、喉と胃とに残る酒を洗い流すようなそんな態で。

「意外なのは私の方だ。酒の選択を誤った。………君の舌のようになるまで、あとどれだけ飲めばいいやら」

勧めてもらったものの、同意することさえ、少々躊躇われる酒で、苦々しい表情でぼそり。
その表情がすぐに驚きに彩られるのは、その伸びてきた手が腰に回されたため。
普段なら軽く往なしてオシマイ、なのだが、酒の所為か、それとも別の何かか、その手を拒むことはなく、間近で相手を見ながら、

「酔狂なことだ。…あぁ、いや、確かに君も、私も酔っているに違いないが…」

思わぬ申し出に違いないが、頭が上手く回っていないのも手伝って、口にした言葉も若干意味不明なもの。
それでも、拒絶しないのは、同意を示すものであり、酒の所為だけではなく、目許を朱に染めながら、相手を見上げては、ふっと口元に笑みを乗せ、私は酔っている、と言い訳のように呟いたのち、小さくとも頷く姿があって。

エズラ > お互い酒精に正気を幾分削り取られているのは明白であった。男自身、はねのけられるか、ややもすれば、斬りつけられるくらいのことはおぼろげに覚悟していたのだが。こちらに向けられた視線に、思わず生唾を飲んでしまう――

「お、おお――そうだな、そう――酔ってる、確かにそうだ――」

艶やかなブロンドを揺らしながら白い肌を朱に染めるその姿は、男装ということも相まって、男の臓腑に情欲の炎を灯すには十分で。いそいそとポケットから二人分の酒代――依り明らかに多い金額――をカウンターに放り、二人して立ち上がる――

「――行こうぜ――アテがある。「休めるとこ」ってやつだ――」

客同士のやりとりには一切口出しをしない――主が早くも片付けを始める中、店の外へと相手を誘い出すのであった――

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”2」からエズラさんが去りました。
イーリス > 酔っている。そう言い訳するだけの理性はまだ残っていたが、相手と共に立ち上がるも、動きは少々覚束ない。
んー、と返事めいた言葉を返したのち、ふらふらと、相手に促されるままに足を動かし歩みだせば…そのまま店を後にして―――。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”2」からイーリスさんが去りました。