2021/10/22 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” カジノ会場」にジギィさんが現れました。
ジギィ > 海風の吹く街にある巨大な娯楽施設。
黒い夜空に白い月がぽかんと浮かんでいるのとは対照的に、夜が更ける程に色とりどりの光であふれ行き交う人々の色彩も増していく。

そんな都市の大型カジノのひとつ、広間に幾つものカジノテーブルが並んで、それぞれルーレットやあらゆる種類のカードゲーム、はたまたスロットなどに熱中する人が卓を占めている。
室内はそんなひとびとの掛け声やらちょっとした悲鳴やら嬌声やらで賑やかで、それそのものが高揚をさそうものでもあったが
こういった娯楽施設の付きものというか、標準の出し物としての音楽も一応備わっていて
今そのための小さなステージには、バンドを背後に銅色の肌の女エルフがひとり、マイクを握って歌声を披露している。

歌の内容はよくあるもの。ちょっとした男女の駆け引き。
初心な男が酒場で魅力的な少女に声を掛ける所から始まって、彼女がどれくらい綺麗かをささやいて
そうして二人して飲んだくれて、結局少女には逃げられてしまう。
翌朝独りのベッドで彼はまた彼女を想って、再会を望む切ない言葉が少しコメディのように綴られて終わる。

女エルフはくるくると舞うように狭いステージを端から端までステップを踏んで愛想を振りまく。
合間に観客を見るが、どの目も次はどこの卓にいくか、それとも負けが込んだのかうつろに考え込んで居るような体。

(せっかく陽気な歌にしてるのになあー)

内心思いながら、時折バンドと絡んだりして自分は自分なりに楽しんでおく。ここの観衆に、自分の歌で何かを想って貰おうだなんておこがましい。
最後、中央で最後の音を締めくくると、にっこり笑って一礼。
拍手が起こるか起こらないかの内に次の歌姫とバトンタッチして、軽い足取りでステージを降りる。

「…ふぅ――――っ」

一曲だけだからと、ちょっと張り切って動きを入れ過ぎたかもしれない。終わった後から額から汗が流れて、それを手の甲で拭う。
この広間の簡易ステージにバックステージなどという設備はない。

(うーん、ちょっと遠いー…)

行き交う客を縫って向こうに見えるバックヤードへ向かうしかないが、今すぐこの人混みを掻き分けるとなるととても遠くに思える。
女エルフはひとまず、目に留まった近くのバーカウンターで喉を潤そうと、慣れないヒール付きの靴で足取りを進めていった。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” カジノ会場」にキニスさんが現れました。
キニス > ハイブラゼール。
港湾都市ダイラスの名物ともいえる大歓楽街。
大陸でも最大の流通を誇る都市のカジノともなれば、当然金持ちが集まる。
そして、その金持ちを狙う暗殺者や情報を収集しようと暗躍する賊が現れるのは周知の事実だ。

そんな富豪たちを守るのがこの男の役目である。
一人の金持ちがハイブラゼールのカジノで博打を打ちたい。
しかし、一人では心許ないという理由で、彼含め信用できる腹心の部下を連れてきたというのだ。

護衛もひと段落を終え、カジノを見て回っていた際に、銅色の肌を持つエルフの歌声が耳に入る。
その陽気なメロディとくるくると舞う、まるでアイドルのように振舞う彼女に興味が沸き、最後までその歌に酔いしれる。

彼女が舞台から降り、バーカウンターへと向かう途中。
一人で拍手をしながら彼女の方へ近づく。

「やぁ、お疲れ様。素晴らしい歌声だったよ。どうやら真面目に聞いてるのは俺だけみたいだったけど」

ニコっと笑って、歌に対する率直な感想を述べる。
彼女が汗をかいているのを確認すれば、胸ポケットからハンカチを取り出してそれを差し出して。

「…随分と熱心に歌っていたようだね。何か飲むかい?」

バーカウンターの方を指差し、「奢るよ」と付け加えながら、そちらへ誘導する。

ジギィ > 尖った爪先や踵で誰かを踏んだり蹴ったりしないか内心ひやひやで歩く。
途中、丁度また額に伝った汗を手の甲で拭った所で拍手とともに掛けられた声に振り向くと、エルフは若草色の瞳を一度瞬きさせてからにっこりと営業スマイル。

「やーん、聞いててくれたの?ありがと。
 熱心ていうか、折角バンド付きで歌わせてもらったから。ちょっと張り切っちゃった」

うふ、と最後笑い含みに言ってから、ハンカチについては「汚しちゃう」とやんわり辞退。内心バーカウンターに辿り着いたら冷えたおしぼりを貰って思いっきり拭こうと思っていたので、そんなにた遠慮深いタマでもなかったりするが、まあものは言い様。

「奢ってくれるの?ありがと!お兄さん、イケメーン!
 あーでも、アルコールじゃないやつね。私今凄く酔いやすいと思う」

営業スマイルのまま、誘導されるがままにバーカウンターへ。
途中もしかしたら踵で彼の足も踏んだかもしれないが、にっこり笑って誤魔化したろう。

「あーん、マスター疲れた!まずライム入りのお水と、冷やしたタオル頂戴―
 あ、お代は隣のイケメンが持ってくれるって!」

カウンターに辿り着くや否や。
ぺたーとカウンターテーブルに突っ伏して顔見知りらしいマスターにおねだり。奢ってくれるパトロンに対して愛想の欠片も無いが、何はともあれ一休みしたかった。

「…でー
 イケメンお兄さん、何者?
 あ、わたしは『ジギィ』って呼んでね。今日は歌うたいのアルバイトー」

突っ伏した手に冷えたタオルが渡されると、つっぷしたまま彼の方へと顔だけを向ける。その顔が火照っっているのは、銅色の肌でもくらいだ。