2019/12/01 のログ
■ジナイア > 空から太陽の気配が消えて、真っ黒な帳にごく細い月が昇り、星がちかちかと存在感を増してきた頃。
ダイラスの歓楽街と港の中間あたりにある酒場は、常連らしい日に焼けた漁師やら、船員らしき屈強な体つきのものやら、はたまた彼・彼女らを相手に春を売っている者やらで賑わっている。
どの卓でも酒は勿論だが、中にはカードやサイコロがやりとりされている所も少なくない。
皆が上機嫌に、中には歌い、中には嬌声を上げて、紫煙がうっすらと漂う空気に酔いしれている様。
その酒場のドアを軋ませ、冷たい空気と共に室内へと滑り込む人影がひとつ。
一歩入って素早く後ろ手にドアを閉め、灰色のフードを下ろせば赤銅色の肌に長い黒髪の女の貌が現れる。
翠の双眸がゆっくりと瞬きながら室内を見渡すが、空いている卓はない。
その視線がカウンターの隅にようやく空いている椅子を見つけて、女はほっとしたように密かな吐息を漏らし、人々と卓の間を縫って近づいて行った。
「―――やあ、食事を頼みたいんだが」
カウンターの奥の店員へと声を掛けながら、椅子の上へと腰かける。
応えて差し出されたメニューをありがとう、と片手で受け取りながら、背後の喧噪をちらりと振り返る。
此処が賑やかなのは果たして、海の男たち故なのか、果たして”ハイブラゼール”の成す業なのかと、詮無い事を考えながら。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” 酒場」にガリアさんが現れました。
■ガリア > (ハイブラゼールから、明かりが消える事は無い。
其の賑わいは夜が続く限り繰り返され、朝が訪れても尚終わらない
欲望渦巻く街とは良く言った物だ、歓楽街として確かに正しい姿では在るが、兎も角
女が歩けば男に口説かれ、男が歩けば娼婦から袖を引かれる様な街で
其の喧騒を避けながら、酒場まで辿り着いた影が一つ。
屈強で背の高い海の男達が集う場所では、小柄さが際立つやも知れない)
「――――おーい、食いモン。 肉。」
(雑な注文が一つ飛んだ。
そして、間髪居れずに返って来た言葉が、「満席だぜ」の声だ。
マジかよ、とげんなりした声が響いた後。 もう立ち食いで良いやと適当に粘れば。
じゃあ、端のスペースにでも立ってな、なぞと言われる始末だ。
仕事柄、落ち着いて食事をしない事も多々在るとは言え、やれやれと肩を落としては
適当に、きっと女が座った方向へと歩いて行くだろう。
にぎわう店内、煙や料理、数多の人の臭いで、鼻なぞ効かぬ。
おそらくは、気付かぬ儘の様相で)。
■ジナイア > 背後に投げた視線を、手元のメニューへと戻す刹那。
聞き覚えのあるような声を喧噪のなかに拾って、訝し気に再びゆっくりと振り返る。
その翠の視線が捉えるのは、紫煙の中近づいてくる見覚えのある男の姿だろう。
同時に熟れた唇の端が持ち上がるのは、好意と好奇心の証だ。
「―――ガリア。戦場以外で会うのは初めてだな」
喧噪にかき消されない程度に、相手が近づいてから声を掛ける。
もしかしたら相手の視線は、声の前にこちらを視認していたやも知れない。
「キミも夕食か?奇遇だな」
言いながら隣の席を見るが、生憎独り客らしい旅装の男が席を埋めている……
女は一寸、首を傾げると素早くちらりと店の奥を見て
「――――なあ、キミ。
さっきから、店の奥に居る可愛い娼がキミをちらちら見ているぞ。
どうだ?少しばかり勇気をあげるから、誘ってみたら」
隣の男へと、親切そうに声を掛けながらコインを掌の下で滑らせる。
――――それは訝し気に見返してきた男に、一杯の杯を手に件の『可愛い娼』へと声を掛けに行くには十分だったようで
そうして空いた隣席を翠の目で指して、彼に悪戯っぽく笑いかけよう
■ガリア > (否、恐らくは声の方が先に届いたのだろう
完全に油断していた訳ではない、とは言え
まさかこんな所で知った声を耳にするとも思わぬ
顔を挙げ、一度周囲を見回してから、正面に居る女の姿に気付き
其れから、やれやれ、と苦笑気味に後頭部を掻いてから、其方へと近づいて行く
勿論、其処までは最初に言われた通り、テーブルの端に佇む心算だったのだが。)
「――――………、……実際のトコは?」
(――突如女が、隣の男へ声を掛け始めたのを見ては。
一瞬何か言いたげに口を開き掛けた物の、其の会話の意図を遅れて察しては
口をつぐんで、其の結果を暫し見守ろう。
かくして、空く事となった席へと、代わりに己が腰を下ろせば
――さて、本当に娼の視線は注がれていたのやら
真実を問いつつ、ふ、と口端を吊り上げて。)
「お互い、気の休まらねぇトコが好き見てーだしな。
ンなトコで気晴らしか? 其れとも、飯ついでに良い男でも探しに来たかよ。」
(初めて、戦場以外で顔を合わせたと言うのに、此れである。
相変わらずの口の悪さと、遠慮の無さは変わらぬだろう。
だが、軽く片手を掲げ、隣の女を指で示しては
「一杯、ショットで」なんて、席の礼に蒸留酒の一杯でも送るだろう
勿論、自分の分も一緒に、だが)。
■ジナイア > 真実への問いには、笑みを変えないまま、さあ、と軽く肩を竦めて見せる。
そうして隣の席へ着く彼を横目に見ながら、立てたメニューを指先で弄び、熟れた唇は悪びれもしない声を零した。
「店の奥に可愛い娼がいたのは本当だし、もしかしたらこちらに顔は向けたかもしれないな。
まあ、彼だって酒を片手に彼女と喋れるだろうし、彼女の方だって声を掛けられるのは満更でも無い筈さ」
唇に笑みを絶やさないまま、弄んでいたメニューを二人の間辺りに滑らせる。
口の減らなさに肩を揺らして、蒸留酒を頼む声を訊けば瞬きながら彼を振り返って
ありがとう、と穏やかに微笑んだ。
「私は故郷も捨てたところだしな。落ち着いた場所に居ることの方が、落ち着かなくなるかもしれない。
――――そうだな、それもあるのかもしれない。現に隣にいた彼も、結構いい線行っていた」
そういって、今や店の奥で女を口説く旅装の男を指差す。
はは、と笑って店員を目線で呼び、メニューを指して幾つか注文をして。
「私は実際のところ、紅葉の自然地帯を少しばかり散策してきた後だよ。
キミは?それこそ飯ついでに、良い女さがしか?」
片手で頬杖をついて彼を見ながら、挑戦的とも思える言葉を。
■ガリア > (不明瞭なままにしておく、と言う事は
つまるところ、「気にする事でもない」と言う事か
実際に娼が視線を向けていなくとも、男から声を掛けられれば応じるだろうし
男が上手くやれば、楽しいひと時を過ごせるやも知れぬ。
――故郷を捨てたと聞いたのは、さて、初めての事だろう。
随分さらりと言うものだ、と、僅かばかり視線を向けて
其れから――奥に向かった男の顔を、先刻は気にも留めていなかったが故に
改めて確認するかに眺めては。)
「―――……存外骨は在りそうだが、優男だな。
良いのかよ、口減らずの相手をするのと引き換えに、狙い目を手離しちまって。」
(既に、他の女を口説き始めている旅装の男を見ては
は、と肩を竦めて、再びテーブルへと視線を戻した
料理よりも先に互いの手元へと置かれるだろう、蒸留酒のグラスを手に取れば
女の言葉に僅か耳を傾け、其れから、少しだけ間を置いて。)
「―――――……は、そうだっつったら?」
(蒸留酒のグラスを、指先でつまみ、掲げたなら
女の方を見返して、何処か挑戦的な其の言葉に、応える様問い返した。
今はまだ、穏やか。 けれど向けられる金の瞳は、間違い無く
何時かの、あの夜と変わらぬ。
ひょい、と、グラスを女へと向ける。 乾杯するか、と言わんばかりの其れを
さて、唯の乾杯と受け取るか。 それとも、それ以外の意味も、受け取るか。
娼へと杯を向けた優男の様に――己が酒を差し出すのは、目の前の女、で)。
■ジナイア > 頬杖をついて彼に翠の視線を据えたまま、ふ、と熟れた口元が笑み零れる。
女が零す言葉は並べて、その場の軽口も来歴の告白も温度は変わりない。
もう片方の手指がふわりと視線の間に浮かび、惑わす様に舞って
「容姿が優れる、というのはいつの時代でも価値あることだ。その基準はその国、時代で様々だけどね。
―――わたしはどちらかと言うと、口減らずと応酬するのが好きみたいだな」
男と同様、手元へと滑らされたグラスを手に取る。
習慣の様に少し掲げて――――女のそれよりは遅れて掲げられたグラスに、いや言葉に
少し首を傾げながら、グラスは軽く、音立てて触れ合わされるだろう。
その後はまた、習慣の様にそのグラスの琥珀色を、一口。
こく、と飲み下した後
熟れた唇にはまた、笑みが。
「―――そうか。
では、キミこそこちらの減らず口に構わない方が良いかもしれないな。
ああ、奥の娼が好みだったら悪いことをした。
代わりに見繕おうか―――あの店の女の子はどうだ?」
片手で頬杖、グラスを持ったままの掌の人差し指が、テーブルの合間を縫うエプロン姿の少女を指す。
波打つ亜麻色の髪と大きな茶色の瞳の、ハイブラゼールでは珍しい、ごく普通の(ように見える)少女だ。
「―――…頼んだ肉を、食べ終わってから口説くと良い」
男が背後から叫んだ言葉を、覚えている。
翠の視線はそう微笑んで、また一口、杯で唇を湿らせた。
■ガリア > 「そりゃそーだ、ンなモン関係ねーって言う奴ァ
全員とはいわねーが、大体見栄張ってるもんだぜ。
……、…ったく…物好きなこった。」
(――言葉の応酬が、交わり行く。
かつん、と響いたグラスの音は心地良く、程なくして一杯で唇を
或いは舌を湿らせながら、香る酒精に双眸を細めた後。
ふと、女が示した方向へとちらり、視線を向けて。
其処に居たのは、確かに、この街では逆に珍しい類の娘。
田舎育ちが街に昇って来ました、見たいな雰囲気の在る其の姿を
追いかける男連中の視線は、決して少なくは無い筈だ。 ――が。
直ぐに、ふい、と視線を切ってしまえば。)
「――――………口説く手筈まで助言してくれるたァ、優しいこった。
……、…遠慮するぜ、間に合ってる。 ……口説く相手は、俺が選ぶ。」
(――肉料理が、目の前へと運ばれてくる。
きっと、普段なら間髪入れずに齧りついて居ただろう、が。
今は、手を付けぬままに、何事かグラスを揺らしたまま思案して。
そして、きっと女の頼んだ料理が運ばれてくる頃に、だ。
漸く、グラスの中身を、くい、と一気に煽ってから。)
「―――あの優男の失敗はよ…、……貰ったコインで、目の前の女を口説かなかった事だぜ。」
(――まるで、不器用にも程が在る言い回しで。
口減らずな儘に、言外に言うのだ。 ……着飾った娼婦よりも
或いは可憐に駆け回る娘よりも。 もっと良い女は、此処に居る、と)。
■ジナイア > 物好き、と言われれば、知らなかったのか?としれっと言い返す。
ふ、とまた唇を笑ませて、頬杖をついて彼を翠が眺める。
示した少女は、男の関心をほんの少しは買ったようだが
如何せん、視線を切ってしまう彼に「贅沢だな」と不平を零して見せた。
また店内を物色していれば彼の前に肉料理が運ばれたようで、香ばしい香りが紫煙と酒の匂いを散らして届いてくる。
思わずそちらを見てしまって彼へと戻した視線は、バツが悪い様に苦笑を浮かべていただろう。
「気にしないで先にやっててくれ。私も飢えているというほどではない。
それよりも他に、お勧めは―――」
等と一種性懲りもなく、店内に視線を彷徨わせていると、女の注文も運ばれてくる。
バターの落とされた蒸し魚。添えられた香草の香りが合間にふわりと漂う。
流石に探索を諦めて湯気の立つ皿に向かい合う。
店員に礼を言ってちらりと横を見れば、まだ手を付けていない様子の彼の皿にまた、首を傾げて見せた。
そうして、グラスを呷ってから零した男の言葉に数度瞬いて、はは、と
可笑しそうに声が漏れる。
「まあ、そうかもな。歩いていく手間は減る。
―――最も、ソレで私が口説けると思われても、それは論外だな。
…どうした、酔ったのか?」
すいと、無造作に赤銅色の手を伸ばして
男の額に―――触れてみようと。
■ガリア > (肉料理は、良い物だ。 冷めても問題無く美味い。
問題は、其れを目の前にして、まるで食欲も失せたかの様に手を付けない事か。
己が隣で、何時もと変わらずのんびり注文を追加しようとメニューを眺めだす女を他所に
空になったままのグラスを、ゆらゆらと揺らして、そしてテーブルに置き。)
「―――――………どんな顔して会えば良いもんかと思って、よォ。」
(そして――女の指先が、己が額へ触れようと伸ばされる間際に
きっと、そんな一言を零すだろう。
其の儘手を伸ばせば、きっと指先を避ける事は無い筈だ。
とは言え、何だよ、と訝しげな視線向けるくらいはしたろうが。
別段熱が在る訳でもなく、酒に酔った様な体温の上昇も無い。
ただ、其の指先によって目元が女の視界から隠れている、其の合間に。)
「……戦場じゃ、其れ所じゃなかったからな。
ンなモン気にしてたら、彼の世にまっしぐらだ。
……だから…、…ンな街中で顔合わせちまったら、余計判んなくなっちまった。」
(――戦場では、戦場に居る事其れ自体が言い訳になった。
だが、此処は街中だ。 己への言い訳は出来ず、かと言って、あの言いザマだ
我ながら、ガキか、と思わなくも無いと、小さく溜息零してから。
嗚呼、クソ、と小さく悪態を零して。)
「―――……あの優男みてぇに口説くのァ無理だ。
"俺っぽく"言うならこうだ。 ……此処に居る誰よりも、孕ませるなら、アンタだぜ。」
(言うに事欠いての、発言が。
そして、恐らくは其の自覚も在る、が。
――手の隙間から、女の瞳を見詰める金の瞳は
あまりに、自分に忠実に過ぎる言葉だからこそ
嘘偽りが無い事も、示す、かも知れない)。
■ジナイア > 手指から伝わってくる彼の体温が心地いい。
その、熱っぽいわけでもないそれに翠の視線を細めて、またそれ故に訝し気にまた、首を傾げる。
さらりと黒髪が肩から零れ落ちて、彼の発した言葉を反芻するようにはたと数度、瞬きをした。
「――――判らない?」
何がだ?と継ぎながら、ゆっくりと手を翻して
掌よりはひやりと冷たい手の甲で、触れるだろう。
まるで、少しでも浮かされる熱があるのなら、冷まそうとてもいう様に。
翠は、いつかの如く、問う色を乗せて金に据えられて
問い詰める、と言うよりは伺う。
―――そうして、溜息と、悪態に続いてもたらされた言葉。
女の、その唇が何かを呟こうとするように少し、開かれて
瞳が数度また、瞬いて合間から金を覗き込む。
周囲は相変わらずの喧噪なのに、その言葉がはっきり捉えられてしまったのは、如何なる仕業なのか――――
「――――…全く」
数度、唇を震わせた後
ゆっくりと手を離し、ゆるゆると首を振りながらながら零すのは、そんな言葉だろう。
下ろした手を眺めて、溜息が、吐息が零れる。
次に上げた翠の瞳には、困惑はもう、隠しきれない色となって漂っていた。
そうしてそのまま、こくりと頷くのだ。
「―――解った…取り敢えず
注文を片付けるとしないか」
冷めるのは申し訳ないしな、と付け足した言葉は、調子を取り戻せていただろうか…
■ガリア > (きっと、浮かされてなど居ない。
寧ろ、余りにも冷静に。 余りにも、平常に。
そう"確信"して仕舞った事が何よりも問題だった。
周囲の喧騒に紛れた言葉を、捉えた者等他に居まい
少なくとも、たった一人に伝わるなら其れで充分であったし
もし伝わらないのだと言うなら、其の時は、其の時だ。
女の瞳に浮かんだ困惑の色に、そりゃあそうだろうな、と
己が投げたアンマリに過ぎる言葉への自覚を携えながら。)
「――――……そーだな。」
(――フォークを手に取り、肉料理へと突き刺して、口に運ぶ。
骨が無い分食べ易い、が、正直に言って、余り味がしない。
恐らくは美味いのだろう、不味い料理で酒が進む物でも無し
けれど、兎角、其れ以上の言葉無く黙々と
まるで処理でもするみたいに料理を平らげてしまえば
女が、まだ食べ終わらぬのなら、きっと静かに待っているだろう)。
■ジナイア > 返答に頷きを返して、自分も皿に向かう。
湯気と、バターの香りを漂わせる切り身を、フォークとナイフで以て攻略していく。
「―――…美味しいな」
呟きは、感情がこもった言葉と言うよりも、ただ零されただけの言葉。
それは果たして、思わずのものだったのか、それとも―――
彼よりも、量は少なかったにも関わらず、遅れて食器を置く。
ご馳走様、と店員に笑って皿を押しやって。
そうしてやっと、彼の金を振り返る。
その貌は、泣き笑いのように
翠は潤んで、唇は笑って
眉が微かにひそめられて、そうやって言葉を紡ぐ。
「―――…出ようか。
風に、あたろう………」
女は椅子から滑り降りると、そのまま彼を振り返ることはなく
人と卓の間をゆっくりと滑る様に縫って、戸口へと
女のグラスは、琥珀色を半分残したまま残される。カラン、と喧噪のなか硬質の音を立てて、氷が沈み込む――――
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” 酒場」からジナイアさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” 酒場」からガリアさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” カジノ」にシルフィエッタさんが現れました。
■シルフィエッタ > 怪盗としての潜入調査を始めてから、幾日かが過ぎた。
お陰でカジノの見取り図や盗むべき対象の場所はしっかり掴むことが出来た。
後は防犯用の魔法具や罠の類と警備の状態を確かめれば、情報としては十分。
後数日で調査も終わる――破廉恥な服を纏っての生活も、それまでの辛抱だ。
などと考えながら日々を過ごす少女だが、今日に限っては勝手が違っていた。
「……うぅ、まぁ、可能性として考えてないわけじゃなかったけど、さ」
頬を朱に染めつつ、呟く少女。その姿はホールの奥、数段高く作られたステージの上にあった。
普段は高名な吟遊詩人やら踊り子やらを呼んで、その技術の粋を披露させる場である。
しかし、今壇上に居るのは一糸纏わぬ人影が数人のみ。その誰しもが首に赤い首輪を身に着けていた。
それこそ、このカジノで不定期に行われる、"贄の日"と呼ばれるお祭りだ。
ルールは単純。1000ゴルド程度のチップを積めば、壇上の従業員を好きに扱って良い。
個室で二人きりになるもよし、壇上で嬲るもよし。それすら全て、一夜の主の自由となる。
そんな祭りの贄の一人に運悪く選ばれてしまった少女は、スポットライトの下、細身の肢体を晒す羽目になっている。
時折向けられる視線を感じながら身を竦める少女は、なんとも所在なさげだった。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” カジノ」にランバルディアさんが現れました。
■ランバルディア > 此処のところ脳内が甘ったるく蜂蜜漬けのような日々が続いていた。
様々な情報の集まる男の耳に、不定期である"贄の日"の情報が舞い込む。
――――気分を切り替えるには、丁度いいだろう。
「いいのが入ってるじゃないか、あの碧髪の子兎を個室で。
――そうだ、こっちに連れてくる前に……軽く、周りにサービスさせろ」
ホールの奥へ真っ直ぐにやってきた男は、ステージの上をちらと見るなり赤い首輪の一匹を目に留めた。
早々に従業員に声を掛け、チップを支払って。
規定の量よりも多めのチップを積み、ひとつ注文をつけてもらおう。
手元に連れてくる前に、"贄の日"に参加出来ず眺めているだけの客にステージ上での自慰を見せ付けるように、と。
そう申し付けた男は一夜の主人の特権としてステージの目の前特等席に歩み寄る。
「……話は聞いたか?連れ込んでから、なんてまどろっこしいだろ。
行く前に、さっさと準備くらい済ませて見せてくれ、……えぇと、…名前はなんて言ったかな?」
■シルフィエッタ > 既に周囲では何人かの娘が買われて、それぞれの末路を迎えている。
ある者は部屋に連れ込まれて、またある者は壇上で陵辱者達に囲われて。
そして少女もまた、やってきたスタッフから購入された旨を告げられる。
それ自体は娼婦と変わらないし、娼婦の存在に忌避を持っているほど潔癖じゃない。
だが、今日の客は中々厄介者の様子。その理由は単純、耳打ちされた追加注文の内容だ。
「へぇ、良い趣味してるんだね、もう――わかってる。ちゃんとやるから、君は下がって」
小さな声でスタッフを下がらせると、目の前にやってきた男と対峙する。
それが今夜の主だというのは、言われなくても理解が出来る。故に、一礼すると。
「そういうことでしたら、拙い手技ではありますが、お見せ致しましょう。
名前はシィとお呼びください。今宵の伽を仕ります故、どうぞ、よろしくお願い致します」
仕込まれた作法を見せながら、挨拶の口上を終える。
次いで、少女は一瞬目を瞑り、覚悟を決めて股座と胸元に手を伸ばした。
左手は薄くも柔らかな乳房へと向かい、その肉を揉みながら先端を摘んで転がす。
右手は無毛の秘所へと伸びて、包皮の上から陰核を擦り、湧き出た蜜を掬い上げ、潤滑とした。
壇上で行われる、華奢な少女のオナニーショー。それは、衆目の視線を集めるには十分な遊びとなるだろう。
■ランバルディア > とっくに始まっていた宴の中で、少女が買われて居なかったのが意外なくらいだ。
やはり、そのスタイルが問題だったのだろうか。
確かに、周囲の娘たちは豊満な身体で惜しげもなく揺らして見せていたりするけれど。
そんな風に思っている内に、堅苦しい口上が聴こえ、ショーが始まっていった。
「シィ、だな。わかった、……その不似合いな感じ、逆にゾクゾクしちまうね。
……シィ、始める前から濡れてたのか?」
秘所に向かった指が直ぐに蜜を絡ませた水音をたてるのを聞いて。
たっぷりと潤滑を使ってのショーの始まりをからかう言葉を投げかける。
周りから視姦する客たちを手招き、もっと近くで見るといいと誘う。
正面からの特等席は自分だけのものとしながら、もっと近寄るようにと彼女にも手招き。
ステージの端に腰を降ろすよう命じ、秘所を曝すM字の開脚まで続けて命じる。
「シィはオナるのはやっぱりクリ派か?それとも、ナカの方が感じる?」
うっすらと血管の浮かぶ内股に手を掛け、無遠慮に撫で回す。
買い上げた商品の品定めを行いながら、魅せつけられる痴態に勝手に膨らむ股間で昂りを示して。
自慰に熱中しきってしまうのを妨げ、羞恥を煽る問いに答えを急かす。
■シルフィエッタ > 見目にはそこそこ自信があるものの、それでも売れなかったのは体型のせいか。
背丈に胸元も尻も未だ発展途上、となれば少女趣味だという誹りは逃れられない。
また、この衆目の中に知人が居ないとは言い切れないというのもあるのかもしれない。
いずれにせよ、何故か売れ残った少女は、恙なく今宵一夜限りで彼の雌となった。
「……不慣れな丁寧と、慣れた雑なの、どっちが良いでしょうか?
私の一存で、という訳にはいきませんが、旦那様がお望みとあらば合わせます。
――周りがこうも欲望に素直ですから、淫気に中てられたのでしょう、えぇ」
既に壇上は嬌声に満ちているし、それ以外の場所でも淫らな遊戯は行われている。
営業の邪魔とならないならば、従業員すら売るカジノ側からすれば宣伝も出来て好都合なのだろう。
秘所に湧いた蜜を指先に絡め、陰核へと導く。にゅる、と滑る刺激に、腰がひくんと跳ねた。
やがて、腹の奥に火照りと疼きが生まれ、肌がほんのり桜に染まる頃、次の命令が下った。
「……むぅ、旦那様が剛毅な方で良かったですね?」
本来であれば、金を払わぬ者達になど肌を見せたくないのだが、仕方あるまい。
彼の言葉に従い、ステージの端まで進むと、そのまま座り込み、両足を左右に開く。
ほっそりとしたしなやかな太腿の向こう。桜色の粘膜をゆるりと割り開けば、蜜がとろりとこぼれ落ちて。
「ん、くっ――中よりは、クリトリスの、方が――ぁ、んんっ……ふ、くぅっ♡」
そもそも、この様に落ち着かない場所では自慰に没頭する気にもなれない。
それ故、見世物としての誇張を僅かに混ぜた、客を喜ばせるための素振りを見せて答えよう。
それ以上――真に蕩け、乱れる様子は、もれなく有料。今夜の場合は、彼だけのものにするつもりだった。
■ランバルディア > 自然と零れ落ちる蜜に、観客の視線が釘付けになっていた。
男だけがそれに手を伸ばし、拭ってやることが出来る。
彼女の体温を纏った淫蜜を指の合間でクチュクチュと弄び、ぺたりと下腹部に触れる。
「そう言うな、シィだって好みを売っときゃあ面倒な客が減ってちょうどいいと思うぜ?」
甘く啼く少女を見て、次は俺もと心に決める客は大勢いるだろう。
その時、今夜の尋問が大いに情報源として役立てられることへ明白で。
不慣れな体位や行為を求められるよりは余程手っ取り早く一夜を済ませられる。
少女が買われる事を求めていないとか、そんなところは知ったことではなく。
指に絡めた蜜で、下腹部に大きなハートの、形ばかりの卑猥な紋を描いてみせてやり。
「ははっ、まあシィくらいの歳ならやっぱりナカよりクリ派か、……どれ。」
淫核に触れる指使いが控えめであるのは、男の目には日を見るより明らか。
子供扱いにもにた挑発の言葉の、後。舌舐めずりを見せ蜜に塗れた右手首を掴み押し退ける。
内心すまし顔の透けて見える手慰みで誤魔化そうとする子兎には、お仕置きが必要だ。
高い上背を丸めて、桜色の粘膜へと躊躇いなく口付ける。
細い指先と違い熱を持った雄の舌が、包皮の上から淫核を舐め上げて。
包皮を剥いて突起をむき出しに。じゅる、と吸い付きしゃぶりついていく。
視線は上に、彼女の表情を下から覗き込んで。強弱への反応を窺い、彼女の好む強さ好む位置取りを探って磨り潰す。