2019/08/21 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にオリヴィエさんが現れました。
■オリヴィエ > 今日もスリ稼業に勤しむ少年。
本当の稼業はシーフなのだが、小銭稼ぎにスリは丁度いい。
例えば、人の出払った家屋に盗みに入ったりとなると、下準備やら何やら、
計画を立てる段階で色々手間だ。
男でも女でも、色が絡むと隙が生じるもの……
そういう機微を知って、財布の紐を固くする者もいるが、
一瞥すればそういう手合いだと分かるので近寄らない。
■オリヴィエ > あくまで自然に通行人を装い、警戒心が薄そうな獲物を探す。
しばらく前に少し離れた区画で一仕事したが、警戒を促すお触れなどは出ていないようだ。
しかし、油断は禁物……
いざスらんとする相手だけでなく、周囲の目敏い人間にも気を付けなければならない。
捕まって私刑にかけられても文句は言えないし、
それを止め立てする者も、恐らくは現れないだろうから。
別のストリートに出るために細い路地を歩きながら、少年は両手の指のストレッチをし。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にセーデさんが現れました。
■セーデ > 立ち並ぶ娼館の1つから、女性が歩み出てくる。
んーっ…と背伸びをしつつ、それでも気は引き締まらないようで、にへらと痴情に歪んだ笑みを浮かべている。
先程までこの店にてお楽しみだったようだ。
しかし未だ夜は更けきっていない。同伴もなくこの時間から出歩くということは、娼館をハシゴするつもりなのだろう。
女の装いは、全身を継ぎ目なく覆う桃色のタイツ。まるでゴム地かボディペイントと見紛うばかりにピッチリと肢体を覆う。
たわわに肉をつけた胸も尻もまるまると模って、女性らしい輪郭を見せつけている。
そして、骨盤のあたりにぶら下がるのは、林檎大にまで膨れた巾着袋。
ベルトもしていないのに、まるでタイツに直接縫いつけられたかのようにぶら下がっている。
ゴツゴツとした輪郭は、中に金貨が詰まっていることを匂わせる。
未だ興奮冷めやらぬ様子で熱く湿った吐息を放ちながら、タイツの女性は娼館地区の奥へと歩みを進める。
その歩調に戸惑いはなく、次に向かう店にすでにアタリをつけているかのよう。
そして、通りにスリ魔が潜んでいることなど微塵も疑ってないかのように、油断がみえる。
■オリヴィエ > (ん……?)
と、少年は自然とそちらに視線を吸い寄せられる。
眼球が動いた理由は、すぐに分かった。物凄く眼を引く人物がそこに居たからだ。
(全身ピンクじゃないか──いや、ソレはいいとして。
あれは、どうやって着るんだろう?)
奇妙な風体の人間が多い国である…
随分目が慣れたつもりだったが、それでも注目せざるを得ないルックスだった。
奇抜な服装だが、中々……いや、かなりいい体付きをしている。
目の保養になるなあ、と思いながら視線を動かした先には財布だろうか? 巾着袋。
すりの異名は巾着切り、とも言う。
まるで獲物にしてくれと言わんばかりではないか。
少年は、人けの無い路地裏で、すれ違いざまに女の巾着袋に手を伸ばす。
その動きは迅速で、普通の人間なら手が動いたことすら意識出来ないだろう早業。
■セーデ > セーデは薄暗い路地裏にも躊躇なく入っていく。よほどこの街に慣れてるのか、それともバカなのか。
実情としては前者であり、次に行きたい店への近道であったためだが、やはり周囲に対する警戒は見せていない。
事実、人気のない通りで正面から人が歩いてきても、そちらを一瞥すらしないのだ。
「うふ、ふふ……」とか「はぁ……♥」とか、上の空の声混じりで吐息をつきつつ歩いている。
当然、オリヴィエが己の巾着に手を伸ばし毟り取ろうとする瞬間にも、その怪しい行動を感知する様子はない。
歩いてくる彼を避けようとも、伸ばす手を払おうともせず、虚ろに正面を見たまま。
……しかし。
オリヴィエがセーデの巾着に触れた瞬間、その巾着自身がぞわりと蠢いた。
次の瞬間には、タイツと同じ布地でできた袋が破裂するように破れ、5つの弁を持つ星型に開いた。
裏地には小さくもおぞましい触手の群れが無数に生え、無造作にその身を蠢かせている。
女の腰元にて突然口を開いた巾着の成れの果ては、ヒトデに見えようか、それとも脚の少ないタコにも見えようか。
そのヒトデないしタコは5本の触腕を開くや否や、スリを働こうとしたオリヴィエの手にみっちりと絡みついてくる。
「…………………!!」
腰にぐいとかかる力。やや遅れて響く、大量の金貨が溢れて地に落ちる音。
この期に及んでようやく、セーデも窃盗犯の存在に気がついたようで、そちらに視線を向ける。
「………んー? キミ、何やってるのかなー?」
ニマァ、と厭らしい笑みで小さなスリ犯を見下ろすセーデ。
巾着に化けていたとみられる触手生物は少年の手に巻き付くように絡み、離さない。
■オリヴィエ > すりとる瞬間、張り詰めた神経は、相手のあらゆる動きを見逃すまいと注がれる。
少しでも事前に怪しい動きが感じ取れれば、いけそうだと思っても、ぐっと踏み止まる。
おっとっと、とでも言いながら酔いどれのふりをしてすれ違うのみ。
果てして、今回は。
色に耽った、あるいは耽る予定でもあるのだろう女は、気付いた様子はない。
よしいけ、それいけと少年の手が巾着に触れた──
と、
「うっ!? ひゃああっ」
思わず、声を上げてしまった。
見れば巾着だったものが変形し、今まさに金貨をものにせんとした手に絡み付いている。
ゾゾゾゾゾ、と背筋に鳥肌が立った。
「え、いやっ、何も……」
何をやってるのかな、と言われるとさりげなく手をグイグイ引き戻そうとしつつ。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からオリヴィエさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からセーデさんが去りました。