2019/03/29 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”2 海沿いのカフェ」にクレス・ローベルクさんが現れました。
■クレス・ローベルク > 「……」
カフェの一席で、男がチェス盤を広げている。
相手は居ない。チェス盤の横にあるのは、所謂『詰めチェス』をする為の本だ。
一つ一つ、確かめる様に動かしては、やっぱり駄目かと呟いて、もとに戻す。
迷惑な客だが、しかし今はあまり客が居ないが故に、適当にメニューを頼めば、怒られる事もないのだ。
「うーむ、しかしあちらを立てれば……って奴だな。チェスって奴はなかなか難しいね」
キングの前に居るポーンを屠りつつ、男はつぶやいた。
■クレス・ローベルク > かつん、かつんと駒の音が鳴る。
その度に、白と黒の兵が、死んでは生き返り、また死んでいく。
「チェスの駒なんだから、当たり前なんだけど……これが自我とか持ってたら嫌だろうなあ」
実際、兵士のことをチェスの駒と称する指揮者も居る。
彼の目に、自分自身はどう映るのだろうか。
指揮される者と同じチェスの駒か、それとも自分だけは特別なのか。
「まあ、実際指揮者が兵士と同じ目線に立っちゃ駄目なんだろうけどね」
ぼんやりと思考を推し進めつつも、駒の動きは止まらない。
思考かチェスか、どちらかは手なりなのだが、さて、どちらに現が抜けているのか。
■クレス・ローベルク > それから暫く、あーでもないこーでもないと言いながら駒を動かしていたが、
「お?」
二手目でキングの前のポーンではなく、横のルークを取ってから、駒を動かす速度が上がった。
幾つかの手を試しては破棄し、試しては破棄し――
「あー!はいはい!そういう事ね!」
乾いた駒の音が小気味良く響き、戦場をあるべき流れに動かしていく。
黒のポーンで白のルークを制圧し、白のクイーンに自らのナイトを取らせる。
ナイトを取らせるのは損だが、しかし勝利には代えられない――
「よし、これでチェックメイト!」
最後の一音は高らかに。
何処にも行けない白の王は、末路を前に果てていた
■クレス・ローベルク > 「さて、それでは次は――」
次なる譜面に、駒は再配置される。
まだまだ、机上の戦史は終わりそうになかった。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”2 海沿いのカフェ」からクレス・ローベルクさんが去りました。