2019/01/09 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にフラニエータさんが現れました。
■フラニエータ > ベージュのパンツドレスを纏わせた黒髪の貴婦人が一人、大型のカジノ施設に居る。
カード?それともルーレット…何をしようかしら?
なんて考えているのだろうか、顎に手を当てて辺りを散策している。
時々毀れる笑顔は、勝った客の歓喜の声を聞いたからなのだろうか。
――そんな訳が無い。
しっかり変装を終えた女が賭け事に興じる他の客からお財布を頂こうとしているだけ。
勿論バレては困る。財布を掏り、数枚の紙幣を取り、戻す。
元々お金持ちばかりの、しかも賭け事に熱中している客。
財布の中身等覚えていない、そんな客を狙っているのである。
「ククク…ほんと、賭け事って怖いわね…周りが見えなくなっちゃうんですもの…」
賭け事に全く興味を見出さない女、その笑顔の真意はこんなものである。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にアデラさんが現れました。
■アデラ > そうして黒の貴婦人が物色を続けていた最中の事。
いつ頃からだろうか――彼女と同程度には黒い衣服の少女が、少し離れて貴婦人を見つめていた。
体術の心得は薄いのか、尾行のつもりであろうが、隠れられているとは言い難い。
もっとも少女自身、隠れるつもりなどあまり無いようで、人の間を抜けて貴婦人へと近付いて来る。
賭けを愉しんでいる様子は無い。手元にコインも無ければ、コインを運ぶケースも無い。
カードゲームの台に目もくれず、やがて少女は辿り着くだろう。
「ねえ、お姉様」
猫撫で声で、媚びるような響きを纏いながら。
「あまり悪いことは、してはいけないと思うのよ?」
などと咎めるのは――彼女の密やかな〝稼ぎ〟の事か。
■フラニエータ > 女の笑顔が途切れたのは、ふいに一言をかけられたから。
己を追ってきている小娘の存在は分かっていたが、風貌からして問題ないと高を括っていたのが間違いだった…
女は心の中で舌打ちをする。
しっかりとその風貌を見据え、値踏みをすると、彼女の黒の衣装が目に映る。
「ふぅん…」
彼女がこの場で自分に声を掛けてくるのは正義感からなのだろうか…いや、そうではない。
その事を強引に確信した女は言葉を続ける。
「…悪い事?覚えが無いのだけれど…どんなことをしたのか、お姉さんに教えてくれる?」
女は小首を傾げながら、優しく黒髪の少女に笑顔を向ける。
しかしながら流石にこの距離での会話は不味い。
女は長椅子の、自分の横をぽんぽんと叩き、座るように促した。
■アデラ > 招かれるままに長椅子へ腰を下ろした少女は、口元を手で隠してクスクスと笑う。
そこら中に彷徨いているような富裕層に気配ばかりは似た――貴族か、その崩れか、そういう所だろう。
見た目にも決して、荒事に適しているようには見えない。
そういう少女が声を潜めて、口を彼女の耳へと寄せた。
「まあ、しらばっくれちゃって。大声を出しちゃってもいいのかしら。
〝大変! この人があなたのポケットに手を入れてたわ!〟なーんて。
証拠は見つからなくても……ふふっ、お仕事はし辛くなると思うの、ね?」
吐き出す言葉は脅迫めいたもの。
例え証拠を残していなかったとしても、告発が有った、それ自体が警戒の材料にはなる。
面倒に巻き込まれたくはないだろう、と少女は10以上も年上の女に囁き、
「……ね、お姉様。こんなところでのお話は目立つし、椅子も固くて嫌いよ。
個室を借りるなんて素敵じゃないかしら。丁度お姉様は、それくらいのお金は持っていそうだし――」
隣へ置いた身を、肌の熱を感じるまでに寄せて。
「――私もね、悪いことって大好きなの」
■フラニエータ > 彼女の言葉を聞けば、女はやれやれと肩を竦める。
ここまで知っておきながら告発しない彼女の真意はどこにあるのか、女は少々掴めずに居た。
しかし続けられる彼女の誘いの言葉に、女はその口角を上げた。
「…貴女、少し生意気ね…しっかり黒く染まりきっているわ…
私、そんな子は大嫌いなの…」
そんな否定の言葉を発しながらも、寄せられる身、その腰に手を回し、ぐい、と強引に引き寄せた。
密着に近い体を軟く擦りつけながら、彼女に向かってそっと囁きを返す。
「…もっと悪い事、教えてあげる。――いらっしゃいな。」
そっと彼女の掌を押さえ、指を絡め…立ち上がる。
女は彼女の手を引きながら、実は既に借りている個室へと導き始めた。
周囲には仲睦まじげな姉妹に見える笑顔を振りまきながら、もう一度彼女にそっと囁いた。
「私の黒で染め直して…戻れなくしてあげるわ…」
■アデラ > 腰を引かれ、身体を擦り付けられて、少女は心地良さそうに目を細める。
それは猫の頭を撫でた時だとか、日向にまどろむ時のような無邪気なもの。
然し少女はその顔のままに指を絡められて、引かれるままに立ち上がり、言う。
「生意気――は、良く言われるわ。でもね、その方が色んな人に好いてもらえるの。
それにね、大嫌いだなんて言っちゃってもいいのかしら。私の機嫌を悪くさせたら――」
言葉とは裏腹に与えられる密な接触。
姉妹のように歩きながら、そして傍目には怪しまれぬような笑みを浮かべながらも、その言葉が背を這う。
〝戻れなくしてあげる〟等とは――少女好みの、残酷な台詞だ。
繋いだ手から伝わる小さな身震い。恐怖ではなく期待に、少女の身体が震えている。
「――ふふっ。必死に染めてみてちょうだい。じゃなきゃ酷いわよ、お姉様?」
個室へ辿り着いたならば、少女は靴だけを寝台の脇で脱ぎ、笑みの質を変えるだろう。
幼さのまだ残る顔で、娼婦のように淫らに微笑みながら、上向きの視線で女を見上げる。
何をしてくれるのだろう。どこまでしてくれるのだろう。期待に唇の端を緩ませながら。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からフラニエータさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からアデラさんが去りました。