2018/09/23 のログ
■アルファ > 天上に明々と君臨する月もか細くしか届かぬ路地裏にも等しい通り道。微かに騒音が響く。殴られた浮浪者が廃材を撒き散らして吹き飛んだ音。そして
それを行った青年は微かに血塗れた手指を舐め上げる。擦りむけた肩甲骨の傷痕も、それだけで何事も無かったように消え。
咥内に広がる鉄錆めいた馨の甘露、人と魔の混血の味に苦虫を潰したように歩を勧めた。掌でジャラジャラと金属音が立てられるは、ぎっしり詰まった金貨袋。
勝ちすぎるのも不味かったか、と。視線を背後の盗人に落として元の通りに戻ろうとして、歩が止まる。
魔の色覚に確かに映るヴェールのような靄。そしてその先に場違いな麗人が横たわる姿。
人差し指を顎に添えて思惑―― 察して余りあるこの危険な場所での防壁かと思えば、ゆっくりとその人の元へと歩み寄り。
「もし、そこな綺麗な御仁。宜しければ宿代くらい貸しましょうか?」
警戒せぬようにと腰を落とし。その低く静かな声でささやきかける。
■ナイチンゲール > 「……んん?」
半ば眠りに落ちていたところへ、突然声をかけられる。むくり、と緩慢な動作で起き上がり、眠たい目を擦りながら目の前の人物を視界に捉えた。微かに感じる血の匂い。そして人間とは違う魔力の強さ。そんな相手が目の前に現れて宿代を貸してくれると言ってきた。……ああ、これは。
「ああ……いやすまん。ありがたいが私はこう見えても無一文なんだ。カツアゲされても困るぞ」
どこかズレた回答。まだ頭が覚醒し切ってないのか、目の前の彼をカツアゲしに来た輩だと勘違いしたようだ。くしゃくしゃと髪をかき混ぜつつ、眠そうに目を瞬かせる。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にナイチンゲールさんが現れました。
■アルファ > 「ふふっ。」
まず第一声が笑い声。そして見た目とは随分と違う所作と話し方に眸を踊らせて。中腰のまま暫し見守った。
「カツアゲするなら貴女が寝ているうちに、その綺麗なドレスから何まで全て引ったくるさ。
こんなところに呪いをしているのは、路銀が尽きたからじゃないか?
今日はちょっと小銭を設けさせて貰ったんだ。ほんの少しリッチな宿屋に誰かと相伴したくなった。
それがとても綺麗で、お金が困ってて、見知らぬ男でも警戒してくれないなら、願ったり叶ったりなんだが。」
見守るのみで触れはしない。彼女の返答が来るまで。壁に背を預けて片足を崩した座りで待った。
■ナイチンゲール > 「……なんだ、カツアゲじゃないのか。こんなところで会って少しボロボロのようだから、そういう輩だと思ったぞ」
何気に酷いことを言いつつ、しかしこちらも願ったり叶ったりだと嬉しそうに笑って立ち上がる。
「いやあ、今日は本当に調子が良いと思ったらどん底に突き落とされて無一文になってしまってなあ。もうこんな汚いところで寝るハメになってたんだ。捨てる神あれば拾う神ありだな」
そう言って翡翠のような瞳で相手を見つめる。まるで観察しているような視線だ。
……この魔力の感じ、魔族のものだろうか。しかし何処と無く人間味も感じられる。不思議だな、とナイチンゲールは思った。自分と同じ、自由気ままに生きるタイプの人物だろう。そうじゃなかったらこんな自分を宿に誘ったりはしない。
「……じゃあ、エスコートしてくれるのか? 男前さん」
すっ、と黒いレースの手袋に包まれた手を差し出して、にこりといつものように微笑む。
■アルファ > 「あ……これは。さっき俺から金を奪った浮浪者と喧嘩してな……むぅ。出会う場所が悪いとしか言いようがない。
……どん底かぁ。俺は、賭けにも買ったし、面白い美人さんも見つけてとても良い日だ。
この幸せを少し分けてあげれれば良いんだけれど。 ――それで。どうする?」
声を掛けたのは好奇心から。女を連れ込む下衆な科白は、果たしてこんな治安の悪い場所で野宿する女性が
どんな豪胆な行動と罵声を取るか、興味があったから。
静かに見つめられる碧眼には、紅海を透かしたような静かな眼差しを返しても。
その内面は張り手が飛ぶか、のらりくらり交わすか、どうでるかと賭け事を真似た予想をしていた。
だからこそ、エスコートなどという上等な文句にはサッと、目許に朱が昇り。
「……冗談だったのに。
いや、男前じゃないが。せめて安心できる部屋は提供するよ。」
目許に次第、昇る色を見られぬように俯き、試したつもりが逆に動揺した無様を翡翠に晒して仕舞わない様、瑣末な抗い。
でも、最後には長い前髪から覗く薄紅で微笑み交わし。
しっかりエスコートする手を差し伸ばし。
「俺はアルファって言う冒険者だ。貴女のお呪いに誑かされなかったのは、魔の血が引いているから。
……名前を教えて欲しいな。」
伸ばした手はレースの手を確りと握り。そして見た目より力強く肢体を引き上げて立ち上がらせようとした。
■ナイチンゲール > 「いや、こんなところで寝ていた私も悪いな。すまない。ただ、野宿するならこんなところぐらいしかないからな、この街は。今は身を寄せる場所が見つかったが……。良ければ、宿に着いたら傷に薬を塗るか?
ふふふ、そうだな……私もこの夜に君に出会えて良かったかもしれないな。出会わなかったらドブネズミと寝ていたところだ。
……もちろん、今日は散々な日だったから、少しばかり幸せを分けて貰わないとやってられないさ」
じっと見つめてから、ふわりと目を細めて微笑みかける。目元を赤く染めて照れる仕草にも、自然と笑みが溢れてくる。照れ隠しに俯く様も可愛らしいと、女は口元に手を当ててクスクス、と笑い声を零した。
「それは良かった。ありがとう、会ったばかりの私に宿代を出してくれるなんて。君は今夜の私の王子様、だな」
そう茶化すように言い、彼の手を握り返して引っ張り上げてもらう。立ち上がった際にカツリ、と高いヒールが煉瓦にぶつかって軽やかな音を鳴らした。
「私の名前はナイチンゲール。薬の行商人をやっているが……まあ見ての通り着の身着のまま生きている放蕩人だ。……よろしく、アルファ」
■アルファ > 握る手を引いて据えた臭いの場所から明るい月影の許を二人はゆく。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からアルファさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からナイチンゲールさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にリュシーさんが現れました。
■リュシー > ――――― ん、ありがと。コレ、すごく甘いねぇ。
(夜の歓楽街、とある娼館の裏手にあたる、なかば物置と化した薄暗い路地。
ひと目でソレと知れる露出の高いドレスに身を包んだ若い女性と、
地味なワンピース姿の少女とが建物の外壁に凭れて立ち、
女性が手にした大粒のブドウの房から、ひと粒、またひと粒、
少女はデザートのご相伴に預かっている。
女性のほうは労働の合い間の休憩、という大義名分があるが、
己のほうは単純に、油を売っているだけ、という有り様で)
……ていうか、さぁ。
コレ、結構高かったんじゃないの?
ぼく、思いっ切り食べちゃってていいわけ?
(己よりすらりと高い位置にある彼女の顔を見あげて尋ねると、
彼女はあっけらかんと笑って『休憩中の護衛代としちゃ悪くないわ』なんて言ってくる。
えええ、とわざとらしい顰め面をつくってみせ)
いやいやいや、それ、どう考えても無理でしょ。
ぼくじゃどう頑張っても、護衛にはならないって。
せいぜい、囮になるぐらいじゃないの?